またまた暴言、杉田某。「女性はいくらでも嘘をつける」というあなたは、女性ではないですか?女性である杉田某は、「いくらでも嘘をつける」。自分自身の体験からの発言なのかな?
首相としての仕事がイヤになった安倍晋三が政権を放り出し、菅義偉が政治権力の頂点に立った。菅は、安倍晋三=自民党・公明党政権のなかで、メディアと官僚を抑え込み、彼らを政権の手足としてつかう手法を編み出した。今、官僚たちは出世を求めて菅政権に頭を垂れてすりより、メディアは一方で政権を批判するような言説を極力抑えると同時にヨイショする報道を競い合い、他方では芸人や料理・旅番組を放映して愚民化に尽力している。
そうした状況を見据えて、菅は年来の政策(それは安倍晋三が手がけたものでもある)を実現すべく、あらゆるところに手を回し始めた。年来の政策とは、原発再稼働であり、リニア新幹線建設であり、アメリカ資本に日本を提供することであり、敵基地攻撃能力を高めてアメリカの隷属国として対中国「不沈空母」となることなどである。
新型コロナウイルスの感染者は、東京、大阪、名古屋など大都市ほど多い。COVID-19というウィルスは、感染者(無症状であっても)が非感染者に感染させるのであるから、人口が集中しているところは、ウィルスにとって繁殖の絶好の場なのだ。リニア新幹線はそのような大都市を短時間でつなげることによって、超大都市をつくりあげるという、およそ時代遅れの構想なのである。
もっともサービスが悪く、しかし収益率がもっとも高いJR東海が、そのリニア新幹線の建設を始めている。静岡県の最北部南アルプスの地下を駆け抜けるリニア、そのトンネルを掘ることによって、毎秒2㌧の大井川源流部の水が消え去るとされる(但し、この2㌧という数字も科学的根拠から導き出された数字ではなく、JR東海の見積もりにすぎない)。大井川に生活用水、農業用水、工業用水を依存する大井川流域に住む人々にとっては死活問題である。大井川流域市町は、したがってリニア新幹線の建設は、だまって見過ごすことはできない。
静岡県も大井川流域市町の危惧を共有し、川勝平太知事はJR東海や建設を推進したい国土交通省に対して厳しい要求を突きつけ、そのため静岡県内での工事が進んでいないことは周知の事実である。
ところで、静岡県知事選は2021年7月に行われる。現浜松市長・鈴木康友は、以前から浜松市長の次は県知事だと噂されていた。
しかしこれも周知のことだが、鈴木康友市長はスズキ自動車トップの鈴木修の傀儡政権として「スズキ市政」と揶揄され、何の実績もなく、海外旅行だけを繰り返してきた。鈴木康友は政党は異なるが、自民党総裁・菅首相とは仲良しである。
菅はリニア新幹線の建設を進めたい、スズキ康友は県知事になりたい。この二人の願望がつながった。9月のことである。鈴木修がスズキ康友を市長に据えたのは、現行7区の減区をさせるためであった。しかしすでに10年以上経過しているにもかかわらずそれが実現していない。何の行政上の成果がないスズキ康友に手を差し伸べたのが菅であった。菅は、おそらく減区に反対している自民党市会議員に手を回し、抵抗をやめるように促したはずだ。浜松市の区制についてどうするかの結論は今年12月に予定されていたが、突如9月、減区の結論をだすように動いた。おそらく来年7月の県知事選に、間に合わせるためであろう。「俺は長年懸案となっていた鈴木修の求める減区を実現した」という「成果」を胸に、県知事選へと進み出ようとしているのだ。
スズキ康友は、リニア新幹線の建設については賛成であり、菅の求めに応じて、川勝県知事のように厳しい対応はしないだろう。己を虚しくして、ただ権力ある者の意向に従うという市長としての情けない「手腕」(?)はすでに実証されている。
リニア新幹線の建設と浜松市の減区実現が、菅によってつながったのである。
リニア新幹線は、大きな問題をたくさん抱えている。まず言うまでもなく、自然破壊である。大井川の水を奪うだけではなく、南アルプスの環境を大きく破壊する。南アルプスはユネスコのエコパークに登録されているが、植物相、動物相、そして景観が大きく変容される。
それだけではない。リニア新幹線建設にはばく大なカネがかかる。総額9兆円といわれる建設費のうち、3兆円を財政投融資でまかなうことを、2016年6月、安倍晋三が表明した。その内容は、無担保で3兆円を貸し、30年間元本返済を猶予し、しかも金利は0・8%という低金利なのだ。金融取引上、ありえない優遇である。30年後から返済を始めるといっても、果たして返済はできるのか。人口減、東海道新幹線との競合・・・もし出来ない場合は公的に処理されることになるのではないか。まったく合理性のない融資案件なのである。
そしてもう一つ、リニア新幹線にはばく大な電力が必要なのだ。JR東海は新幹線の3倍としているが、「JRリニアの消費電力は時速500㎞で49メガワット」と予測され、新幹線の4・5倍と、阿部修治氏は書いている(『科学』2013年11月)。となると、リニア新幹線を走らせるためには、原子力発電所の増設と稼動が必要となり、新潟県の柏崎刈羽と浜岡の原子力発電所がその対象となるだろう。リニア新幹線と原発再稼働はセットなのである。原発反対、リニア新幹線賛成は両立しないのである。
さらにもう一つ。超伝導状態にするためにヘリウムを冷却して液化しなければならない。そのためにもばく大な電力が必要となる。それを避けるために、おそらくJR東海は、液体ヘリウムを購入するのだろうといわれている。ヘリウムが採取できるのは、アメリカ、ロシア、ポーランドだけであり、となるとJR東海はヘリウムをアメリカに依存することになる。高価な液体ヘリウムを外国に依存するしかないリニア新幹線。
リニア新幹線は、百害あって一利なしの事業である。菅政権は、その建設に向けて、浜松市政にも手をねじ込んできた。自民党の浜松市議団は割れた。きちんと思考力を持つ議員とそうでない議員。菅は竹中平蔵ともつながっている。となると、水道民営化も再び再燃してくるはずだ。
※本稿を書くに際して、山本義隆氏の論攷、「再度リニア新幹線について、そしてポスト・コロナ」を参考にさせたいただきました。