衣裏珠の八葉蓮華 ≪創価学会 仏壇≫

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「一足早く夏休・・・」  産経抄 八葉蓮華

2008-07-16 | 産経抄(コラム)
「一足早く夏休・・・」  産経抄 八葉蓮華
東京では梅雨もまだ明けていないというのに、連日暑い。昼下がりの電車に乗れば、あちらでもこちらでも外回りで汗だくになった御同輩が舟をこいでいる。冷えた生ビールまであと少しですよ、と声のひとつもかけたくなる。 ▼暑さのせいかまともな判断力をなくしてしまったかのような発言をしている政治家がいる。自民党の山崎拓元副総裁は、北朝鮮へのエネルギー支援について「(日本も)当然行うべきだ」と時事通信社のインタビューに答えた。 ▼日本政府は拉致問題が進展しない限り、非核化措置の見返りとなる6カ国協議参加国によるエネルギー支援に加わらないとの方針を堅持している。これが賢明な山崎先生のお気に召さないのだろう。 ▼先生は、日本も米国と同じように重油を金正日総書記にさっさとプレゼントしないと核問題は解決しない、と思い詰めておられるようだ。同じインタビューでは、「核問題が解決しない限り、拉致問題も解決しない」ともおっしゃっている。 ▼本当にそうだろうか。先の6カ国協議では、核計画申告の検証方法について具体的な合意はなかった。不十分な検証で重油95万トン分のエネルギーがやすやすと北朝鮮の手に渡る危険性だって十分にある。山崎発言は、拉致問題で進展を迫っている交渉団の後ろから鉄砲を撃つようなものだ。 ▼洞爺湖サミットで議長の大役を務めても福田康夫首相の支持率は上がらなかった。大きな要因の一つに、北朝鮮問題への取り組みに対する低評価がある。きょうから首相は、一足早く夏休みをとるそうだが、この国のこれからを静かに考えるいい機会だ。永田町では、内閣改造だ、やれ解散だとかまびすしいが、雑音に惑わされず、国益重視で秋に備えてほしい。

産経抄 産経新聞 7/16

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「原油高に苦しんでいるのは、漁業者だけ?」  産経抄 八葉蓮華

2008-07-15 | 産経抄(コラム)
「原油高に苦しんでいるのは、漁業者だけ?」  産経抄 八葉蓮華
不世出の大横綱、双葉山の実家は、大分県で回船業を営んでいた。10歳のときから、父親と帆船を操り、暴風雨のまっただなか、海にほうり出されて九死に一生を得たこともある。昨年11月に70歳で世を去った稲尾和久さんは、別府の漁師の息子として生まれた。 ▼素人相撲の横綱だった父親が、少年時代の双葉山に投げ飛ばされたという伝説も残っている。稲尾さんもまた、8歳で父親と伝馬船(てんません)に乗り、櫓(ろ)をこぎ始めた。のちに黄金時代の西鉄ライオンズで、「鉄腕」の異名をとった稲尾さんの最大の武器は、針の穴をも通すといわれた制球力だった。 ▼その源になったのが、少年時代の櫓こぎで鍛えた足腰の強さだったといわれる。もっとも当時は、野球選手になるとは夢にも思っていない。「右だ、左だ、前へ、遅く、速く、止めろ。指示通り操船できないと、おやじの青竹が頭に飛んでくる」。 ▼日本経済新聞の「私の履歴書」で、つらい体験を振り返っていた。エンジン付きの漁船を操作する今の漁師さんには、そんな苦労はないけれど、別の悩みが次々と持ち上がっている。海の汚れに、後継者難、何よりこの5年で3倍近くになった燃料費の高騰だ。 ▼全国20万隻の漁船が、きょう一斉に休漁するのは、窮状を国民に訴え、政府に必要な対策を求めるのが目的だ。もっとも、原油高に苦しんでいるのは、漁業者だけではないから、政府は燃料代の補充には慎重だ。そうかといって、魚の値段に上乗せすれば、消費者の魚離れに拍車がかかる恐れがある。 ▼少年時代の稲尾家の食卓には、魚のあらの煮付けが毎日並び、夕食は肉だったという友達が、うらやましかったそうだ。今に、魚の煮付けの夕食を、うらやむ日が来るのだろうか。

産経抄 産経新聞 7/15

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「血塗られた金剛山・・・」  産経抄 八葉蓮華

2008-07-13 | 産経抄(コラム)
大阪府と奈良県にまたがる金剛山は南北朝時代の武将、楠木正成とゆかりが深い。後醍醐天皇に呼応してこの山麓(さんろく)で挙兵、千早城などにこもり鎌倉幕府の軍をさんざん苦しめた。日本人の間でいまだに根強い「楠公神話」の聖地といってもいい。 ▼こちら北朝鮮南東部の金剛山(クムガンサン)は朝鮮仏教の聖地である。山から海岸につながる景勝地としても知られ、北朝鮮最大の観光地だ。10年ほど前からは南北共同で観光事業が始まり、韓国から大勢の人が訪れている。朝鮮半島の融和を願う人たちの聖地のようにもなっていた。 ▼その南北融和の象徴といえる地が血塗られてしまった。観光にきていた韓国の53歳の女性が早朝、柵を越え観光区域の外の海水浴場付近に出たところで、北朝鮮の兵士に撃たれて死亡した。兵士は女性に停止を求めたが、逃げたので撃ったと言っているらしい。 ▼なぜ女性が柵を越えて危険な所へ行ったのかなど、事件には謎も多い。だが一度停止を求めただけで、いとも簡単に射殺した。しかも場所が海岸とあれば日本人なら誰もが、有無を言わせず拉致を実行した北朝鮮の工作員を思い浮かべたはずだ。ぞっとする非情さである。 ▼むろん韓国の人たちはそれ以上に衝撃を受けたに違いない。ちょうど李明博大統領が国会で、これまでの対北強硬路線を軟化させ「対話再開」を呼びかける演説を行った、その直前に事件は起きた。韓国内の融和ムードそのものが水をさされた思いだろう。 ▼困ったことに、こんな北朝鮮の非道ぶりが明らかになっても、ほとぼりが冷めるとすぐ太陽政策や融和論が頭をもたげてしまう。この国をめぐる歴史はそのくり返しだった。6カ国協議の代表たちにも、そのことを胸にきざんでほしい気がする。

産経抄 産経新聞 7/13

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「約束(プロミス)・・・」  産経抄 八葉蓮華

2008-07-12 | 産経抄(コラム)
小紙では、「約束(プロミス)」をテーマにしたエッセーコンテストを毎年行っている。12回目を迎えた今年もさまざまな「約束」のエピソードが集まった。 ▼大賞を受賞した「父の歌」は、音痴だった父親が、母の誕生日に歌をプレゼントする話だ。優秀賞の「ガリガリ小父さんとの約束」は、昭和22年、中国・大連からの引き揚げ船での、古今亭志ん生との出会いが描かれている。 ▼次回はぜひ、自民党の加藤紘一元幹事長にも、応募をお願いしたい。加藤氏は今月7日のBS番組で、平成14年に一時帰国した拉致被害者5人を、北朝鮮に戻さなかった当時の政府の決定を批判した。その発言が非難されると、自らのホームページにこんな釈明文を掲載している。 ▼「拉致という犯罪を犯した北朝鮮から、『日本は約束を守らなかった』などといわれてはならない。日本人の誇りを大切にすべきである」。せっかく、救出した人質を犯人の元に返すことと、「約束」や「誇り」がどう結びつくのか、きちんと説明してもらいたいのだ。 ▼「これが国内で子供を連れ去る事件が起これば、警察が総動員されて、取り返そうとビルを囲み、集中して取り組みますよね…拉致問題というのはそれと全く同じ問題なのです」。雑誌『正論』8月号で、中山恭子参院議員と対談した横田早紀江さんが言う通りではないか。もっとも、発言の一部だけを取り上げてあれこれいうのは、加藤氏に失礼かもしれない。 ▼読者のみなさんには、氏のホームページをのぞいて、横田さんの対談と読み比べることをお勧めする。国際社会との約束を破り続けてきた北朝鮮から、拉致被害者を取り戻すため、どちらの意見に耳を傾けるべきか、はっきりするだろうから。


産経抄 産経新聞 7/12

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「教員の世界の風通し・・・」  産経抄 八葉蓮華

2008-07-11 | 産経抄(コラム)
レオナルド・ダ・ヴィンチは、キリスト教の異端思想を守ってきた秘密結社、シオン修道会の総長だった。2年前にベストセラーになり、映画も大ヒットした『ダ・ヴィンチ・コード』は、こんな設定だった。 ▼幕末の英雄として、日本人に愛されてきた坂本龍馬は、やはり秘密結社のフリーメーソンに陰で操られていた、という説を聞いたことがある。秘密結社は、しばしば歴史の変わり目に暗躍し、大きな事件を引き起こすとされるが、正史に記されることはない。 ▼歴史ミステリーには、欠かせない存在だが、もしかしたら、今の日本にも存在しているのかもしれない。大分県の教員採用をめぐる汚職事件の闇の深さに目をこらすと、そんな想像をしたくなる。 ▼県教育委員会の幹部が、知り合いの小学校校長や教頭からわいろを受け取った見返りに、子女を合格させたことにとどまらない。県議が口利きしたケースや、管理職への昇任試験をめぐる金券のやりとりもあった。メンバー同士は相互に助け合いながら、外に向かって閉じられている。そんな秘密結社めいたグループの存在が浮かび上がってくる。 ▼そこに所属していないというだけで、合格点に達していながら採用試験に不合格になった受験生もいる。事件の背景に、県教委と教職員組合の長年にわたる癒着体質があるとすれば、大分県に限る話ではあるまい。事件の拡大によって、公教育に対する不信感が広がることが心配だ。 ▼不正とは無関係の大半の教員は、モンスターペアレントの問題などを抱えながら、子供たちと真剣に向き合っている。一刻も早く、不正の温床を暴き出し、教員の世界の風通しをよくしていくしかない。秘密結社は、フィクションだけの存在でいい。

産経抄 産経新聞 7/11

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「日本がなせる匠の技、弁当」・・・  産経抄 八葉蓮華

2008-07-10 | 産経抄(コラム)
今の季節、ビールのつまみに欠かせない枝豆が、カラオケや数独などに続いて、英語として認知されることになった、と共同通信が伝えていた。米出版社メリアム・ウェブスターが出している英英辞典の最新版から、掲載されるという。 ▼次に世界デビューを果たすのは、どんな日本語だろう。「弁当」こそ世界共通語にふさわしい言葉ではないか。北海道の高校生、松本早也乃(さやの)さんはエッセー「日本がなせる匠(たくみ)の技、弁当」で、そう主張した。この作品は昨年、東北大学文学部が創設した「青春のエッセー 阿部次郎記念賞」の、最優秀賞を獲得している。 ▼松本さんは、毎日学校へ持っていく弁当の、世界に誇るべき効用を次々と挙げていく。まず、お金が幅を利かせる時代に、わざわざ早起きして作る「慎(つつ)ましさ」だ。ごみを出さないから、地球にも優しい。何より、作り、作られることで、「思いやり」と「感謝の気持ち」を持ち続けることができる、と。 ▼きのう閉幕した洞爺湖サミットについて、日ごろから、日本について辛口の記事が目立つ英国各紙が、歓迎夕食会の豪華なメニューをやり玉にあげていた。キャビアやウニに舌鼓を打つ指導者が、食料危機を語るのは「偽善」だというのだ。 ▼確かに食事については、工夫の余地があった。安価な食材からでも、味と見た目、さらに栄養にまで気を配った弁当に仕立てることができる。そんな文化を紹介する絶好の機会だったかもしれない。 ▼首脳の夫人たちには、松本さんが「文化の極み」と絶賛する「キャラ弁」がお勧めだ。日本の母親が、ミッキーやピカチュウを毎日の弁当で表現し、出来栄えをインターネットで競い合っていると知ったら、目を回したことだろう。

産経抄 産経新聞 7/10

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「美辞麗句で飾られた」・・・  産経抄 八葉蓮華

2008-07-09 | 産経抄(コラム)
なんとも立派な孝行息子だ。きのう夜、大阪・道頓堀の飲食店「大阪名物くいだおれ」が59年続いたのれんを下ろしたが、名残を惜しむ人々で店先は遅くまでごったがえした。味はともかく?看板人形「くいだおれ太郎」の人気ゆえだろう。 ▼赤と白の派手なストライプ服で昭和、平成と太鼓をたたき続けた太郎は、第二の人生を前に甲子園やビーチバレーの観戦と大忙し。宮本勝浩関西大教授によると、閉店発表から3カ月間で店の売り上げが倍増するなど約8億8000万円の経済効果をもたらしたとか。 ▼人気者の太郎と比べるのは酷だが、北海道洞爺湖サミットの経済効果はもうひとつのようだ。青の湖面に緑の中島がまぶしい洞爺湖の絶景が会場のホテルから見えるはずが、霧に隠れてテレビにあまり映らず、関係者をやきもきさせている。主要8カ国(G8)首脳の中に雨男がいるようだ。 ▼もっと深刻なのは、サミットで経済問題を話し合っている最中に、東京株式市場の株価が、1万3000円割れ寸前まで急落したことだ。美辞麗句で飾られた声明を出そうとも、景気減速や食糧・原油の価格高騰に政治は無力だと、市場があざ笑っているようにみえる。 ▼ヘッジファンドに代表される投機資本は、原油だけでなく、小麦、トウモロコシなどあらゆる物をカネのなる木に変えている。暴走する経済にストップをかけるのがサミットの役割のはずだが、明確なメッセージを出せたとは言い難い。 ▼北朝鮮問題も同じだ。ブッシュ米大統領は「拉致問題で日本を見捨てることはない」と約束したが、あすから北京で北朝鮮の核問題をめぐる6カ国協議が再開される。数日後に小欄で「大統領の舌の根も乾かぬうちに…」と書きたくないのだが。

産経抄 産経新聞 7/9

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「真説親馬鹿の記」・・・  産経抄 八葉蓮華

2008-07-08 | 産経抄(コラム)
「最後の文士」といわれた尾崎一雄が早稲田大学を卒業したとき、母親に報告しても信じてもらえなかった。あんな怠けぶりでは無理にきまっている、と思い込んでいたらしい。 ▼「せっかくのお話ですが、あの子にその資格があるかどうかわかりませんので…」。あるとき母親が訪問客に向かって話しているのを、尾崎は小耳にはさむ。亡父の知人が、せっかく中学の教師の口を紹介してくれたのに、卒業してないことを理由に断っていた。 ▼時代が違えば親も変わるのか。わいろを使って、わが子を小学校の教員に仕立てようとするなんて。大分県の小学校教員採用試験をめぐって5人が逮捕された汚職事件には、あいた口がふさがらぬ。佐伯市立小学校の校長や教頭が、長男や長女の採用に便宜を図ってもらうために、県の教育委員会の幹部に、数百万円の現金や金券を贈っていた。 ▼こんな人たちから、教え導かれてきた子供たちこそ、いい迷惑だ。親と同じように教壇に立てたのは、汚れた金のおかげだった。そのことを知った若い教員は、さぞ肩身が狭いことだろう。 ▼尾崎は「真説親馬鹿の記」というエッセーのなかで、長女への溺愛(できあい)ぶりをつづっている。長女は、同じ年ごろで偶然名前も同じだった作家仲間の尾崎士郎の長女とともに、早稲田大学に入学した。父親と同じように文学の道に進み、そろって同人雑誌などを出すようになったらどうしよう。 ▼尾崎の想像はどんどん広がっていき、エッセーはこう結ばれる。「こりゃ親馬鹿の種は、当分尽きそうもないぞと、苦笑されるのだった」。親馬鹿は、これくらいがちょうどいい。わが子かわいさのあまり、馬鹿なことをしでかせば、結局は子供たちを不幸にするだけではないか。

産経抄 産経新聞 7/8

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「旅鰻」・・・  産経抄 八葉蓮華

2008-07-07 | 産経抄(コラム)
「江戸前」という言葉から、すしを連想する人が多いだろう。もとは、深川などで取れた天然ウナギをさしていた。ところが、江戸にかば焼き屋が増えてくると、とても江戸前だけでは賄(まかな)いきれない。 ▼そこで幅をきかすようになったのが、「旅鰻」と呼ばれる地方産だ。同じころ、平賀源内が知り合いのかば焼き屋に頼まれて、土用の丑の日にウナギを食べる風習を広めたといわれている。「丑の日にかごでのりこむ旅鰻」と川柳にも詠まれた。 ▼今年の土用の丑の日、24日と8月5日を前にして、産地偽装事件の余波が収まらない。需要のピーク期に、輸入の養殖ウナギに頼るのは仕方がない。そうはいっても、中国からの旅鰻を、江戸前ならぬ国産と偽って、大もうけをたくらむとは。泉下の源内もあきれかえっているはずだ。しかも一部の中国産からは、発がん性物質が検出されたとあっては、消費者の不安は募るばかりだ。 ▼万葉の昔から、日本人に親しまれてきたこの魚の生態は、長らく謎に包まれていた。3年前の6月、東京大学海洋研究所の研究船が、太平洋のマリアナ諸島西方沖で、ニホンウナギの赤ちゃんを見つけ、ようやく産卵場所を突き止めた。 ▼そこから日本や中国の沿岸にたどりつき、稚魚のシラスウナギに成長したところで捕獲され、養殖される。もっとも、3000キロもの旅程をこなす目的は、あくまで河川をのぼって成魚に成長することだ。 ▼昭和40年ごろまでは、日本各地に生息していた天然ウナギは、河川の汚染やダム建設などによって減り続け、絶滅の危機さえささやかれている。今回の騒動が、安くて安全なかば焼きを求めるだけの消費のあり方を見直し、江戸前復活への契機になればいいのだが。

産経抄 産経新聞 7/7

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「北海道洞爺湖のサミット」・・・  産経抄 八葉蓮華

2008-07-06 | 産経抄(コラム)
小学生や高校生に都道府県の位置を地図上で示させるテストで、半数以上が正確に知らない県がいくつもあった。最近のそんなニュースを読んで、別の不安にかられた。日本人の大人が北方領土の位置をちゃんと頭に入れているだろうかということだ。 ▼ソ連(ロシア)に不法占拠されて63年になろうとしている。その年月が領土への意識を希薄にしているのではと恐れるのだ。ましてや洞爺湖のサミットにやってくる各国の要人や報道陣がどれだけ北方領土の場所やその歴史を知っているのか、はなはだ心もとない。 ▼今年のサミット議長国の日本が会場に北海道を選んだのは主に警備上の理由である。だが北海道に属する北方領土の問題を世界にアピールする絶好の機会にもなるはずだった。何しろ今回はG8ばかりでなく、中国など新興経済国やアフリカ諸国の代表も集まるからだ。 ▼ところが日本政府はこれを首脳の全体会議で取り上げるつもりはなさそうだ。ロシアとの2国間会談で話しても平行線をたどるのは目に見えている。百歩譲って、政治力学上全体会議にかけるのが無理というのなら「からめ手」から攻めてみるしかない。 ▼北方四島を正確に日本領と記した地図や案内書を配布するのは当然である。首脳の夫人たちや手のすいたマスコミ関係者らを、根室や知床に案内する旅行を企画してみるのもいい。北方領土を目のあたりにすれば、この島々のもつ歴史を理解してもらえるはずである。 ▼むろんロシアはカンカンになるから実現は難しいかもしれない。しかし騒ぎになればなるほど、どちらが本当に怒っているかがわかるだろう。そのくらいのことをやって国際社会を巻き込んでいかないことには「島」は永久に帰ってこない。


産経抄 産経新聞 7/6

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「独立の英雄」「独裁者」・・・  産経抄 八葉蓮華

2008-07-05 | 産経抄(コラム)
アフリカ南部のジンバブエという国名は「大きな石の家々」という意味だ。21世紀研究会編の『地名の世界地図』によれば、それはこの国の古代遺跡にちなんだものだそうだ。直径数十メートルもある石造建造物がいくつもあり、その威容に圧倒されるという。 ▼20世紀前半からここを支配していた白人たちが認めたくないほどの立派な文化遺産だった。それだけに1980年に黒人たちが独立を果たしたときに、自分たちの誇りとしてこの遺跡の名を国名とした。いわば悲願だった独立の喜びが込められていると言っていい。 ▼当然のことながら、独立に当たりゲリラ闘争を指揮したムガベ氏は英雄となった。ジンバブエ国内だけでなく日本など非白人国でも英雄視された。1981(昭和56)年、首相として初来日したときなど、マスコミは手厚くその「素顔」などを紹介している。 ▼だが首相から大統領となるに従い「独立の英雄」はしだいに「独裁者」に姿を変えていく。「白人とも協力して」と柔軟姿勢だったのに、8年前には白人の農園を強制収用し、黒人に分配した。これで「アフリカの穀物庫」といわれた農業が崩壊状態となった。 ▼国民の批判が高まるのも当たり前で、今年3月に行われた大統領選では野党党首が1位になった。ところがムガベ氏は野党弾圧などで党首を決選投票辞退に追い込み、強引に大統領に居座ってしまった。国際社会のごうごうたる非難も、意に介する気などなさそうだ。 ▼独立を果たした時は50代半ばだったのが、今や84歳である。引き際を失ったのか、英雄転じて独裁者という歴史の「方程式」にはまったのか。いずれにせよ30年近く前、彼を讃(たた)えた人たちが忸怩(じくじ)たる思いにかられているのは間違いないだろう。

産経抄 産経新聞 7/5

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「生きる歓びを高らかに」・・・  産経抄 八葉蓮華

2008-07-04 | 産経抄(コラム)
横田めぐみさんが小学生のころ、新潟市の自宅の庭で、母の早紀江さんが育てていたコスモスをみて、大笑いしたことがある。「コスモスって、なんだか弱々しく揺れてる花なのに、どうしてこんなに茎が太いの」。 ▼確かにメキシコ原産で、明治の中ごろ日本にやってきたコスモスは、不思議な花だ。詩人の高橋順子さんが言う。「清楚(せいそ)な感じの女の人が逞(たくま)しい足つきをしているのに似ている。日本人好みなのは、その弱々しさを支える芯の強さと言ったらいいだろうか」(『花の巡礼』小学館)。 ▼昭和52年に、北朝鮮に拉致されためぐみさんの、これまで空白とされてきた期間を埋める証言を、小紙が入手した。韓国在住の元北朝鮮工作員によると、57年ごろめぐみさんは、平壌市内の工作員専用の招待所に暮らしていたという。 ▼北朝鮮が約束した「再調査」を、拉致被害者の帰国につなげるために、ぜひこの貴重な証言を生かしたいものだ。米政府が北朝鮮をテロ支援国家指定からはずそうとしているからといって、日本政府が浮足だっている場合ではない。 ▼めぐみさんの父、滋さんは、シーファー米大使との面会を前に言い切った。「米国には協力を求めているが、解決を求めているのではない」。拉致事件を解決するのは、日本だ。横田夫妻の決意は、コスモスのようにゆるがない。 ▼「あのコスモスのように/地に足をふんばって生きているのね きっと/しっかりと頭を揚げて生きているのね きっと」。今年5月に発売されたCD「コスモスのように」の一節。早紀江さんが詞を書き下ろした。めぐみさんはきっと生きている。高橋さんによればコスモスは、「生きる歓(よろこ)びを高らかにうたっている花」でもあるのだから。

産経抄 産経新聞 7/4

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「だまされた??」・・・  産経抄 八葉蓮華

2008-07-03 | 産経抄(コラム)
仕事柄図書館を利用することが多いが、最近利用者がささいなことで職員にくってかかる光景が気にかかる。地方自治体の窓口でも大声をあげたり、暴力を振るう行為が相次いでいるらしい。 ▼特に暴力団などが、行政機関や職員に不当な要求を突きつける動きが目立つ。いわゆる「行政対象暴力」だ。平成13年に栃木県鹿沼市の職員、小佐々守さん=当時(57)=が、暴力団関係者に拉致され、殺害された事件をきっかけに、社会的に注目されるようになった。 ▼事件の背景には、公正な廃棄物行政を進める小佐々さんと、不正を指摘された処理業者との対立があった。多くの職員が、事件の中心人物とみられる処理業者と鹿沼市との長年にわたる癒着を知りながら、見て見ぬふりをしていたことも明らかになった。 ▼組織が一体とならなければ、行政対象暴力には対処できない。この教訓を果たして、全国の地方自治体は胸に深く刻みつけたのだろうか。埼玉県深谷市に住む夫婦が、生活保護費の不正受給の疑いで逮捕された事件をみれば、はなはだ疑わしい。 ▼元暴力団員の夫が、職員に怒鳴ったり、ライターや電話の子機を投げつけたりしていたというのに、市はなんの対策もとらなかった。それどころか、6年前から計約2000万円をこの夫婦に支払ってきた。もっとも北海道滝川市の気前のよさにはかなわない。やはり元暴力団員とその妻に、支給してきた生活保護費は計約2億円にも上る。 ▼「だまされた」と、いずれの市も被害者の立場をとっていることに、納得がいかない。不正に気づいていたはずの職員を、組織として支える覚悟が、市のトップになかっただけのこと。これでは、たった一人で戦った小佐々さんは浮かばれない。


産経抄 産経新聞 7/3

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「環境教」信者・・・  産経抄 八葉蓮華

2008-07-02 | 産経抄(コラム)
久々に目から鱗(うろこ)の新書に出合った。題からして挑発的な「偽善エコロジー」(幻冬舎新書)だ。レジ袋を使わない運動は「ただのエゴ」と斬(き)って捨て、牛乳パックのリサイクルは「意味なし」ととりつくしまもない。 ▼冷房28度の設定で地球温暖化防止はできないし、生ゴミを堆肥(たいひ)にするのは危ない…。いつでもどこでも「地球に優しいエコ」と唱えたがる「環境教」信者のみなさんには目の毒だが、著者の武田邦彦・中部大学教授は資源材料工学の専門家。データも豊富でなかなか説得力がある。 ▼偽善エコロジーはいたるところにころがっている。受信料をとる放送局は、「エコ放送」と称して説教くさい番組を垂れ流しているが、放送時間を短縮した方がよほど地球に優しい。 ▼コンビニエンスストアの深夜営業を規制しようとしている自治体も同じだ。店の冷蔵庫は24時間動いており、節約できる電力はしれている。それよりお役人のマイカー通勤を禁止した方が二酸化炭素(CO2)削減になるはず。 ▼まもなく環境が主要テーマとなる洞爺湖サミットが開幕するが、成果は期待薄だ。CO2を最も多く排出している米国のブッシュ大統領はもうすぐ前大統領になる。猛スピードで排出量が増えている中国やインドも経済優先の姿勢を崩しておらず、議長を務める福田康夫首相がいくら力んでも大勢は覆るまい。 ▼武田教授は、人類全体が一致協力できない以上「温暖化を防ぐことはできない」と喝破する。ならば、首相は議長特権を生かして拉致や北方領土といった難問をどしどし議題にのせるべきだ。何事も波風を立てたくない首相には無理な注文とはわかっている。だが、見せ場の一つもつくらないと、北海道でサミットを開く意味はゼロだ。

産経抄 産経新聞 7/2

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世界遺産に旅の思い出・・・  産経抄 八葉蓮華

2008-07-01 | 産経抄(コラム)
バンクシーと呼ばれる覆面画家は、ほんの数年前までは、警察から逃げ回る境遇だった。夜中に人の目を盗んで、商店の壁や公共施設に、落書き絵を描いてきたからだ。 ▼型紙とスプレーを使った画法で、反戦や反資本主義をテーマにした作品が多い。出身地の英国西部の町、ブリストルからロンドンに出て、今では世界中に出没している。3年前、ニューヨークのメトロポリタン美術館や近代美術館、ロンドンの大英博物館に忍び込み、自分の作品を勝手に展示したことでも物議を醸(かも)した。 ▼「芸術テロリスト」と批判される一方で、その作品の価値はうなぎ上りだ。オークションで、数千万円の値段がつくことも珍しくない。壁の落書きを、市当局が「間違って」消してしまい、付近の住民が抗議したケースもあった。 ▼もっとも、芸術作品として評価される落書きは例外中の例外だ。ただ軽い気持ちで、「旅の思い出」を刻んだ落書きは、迷惑以外のなにものでもない。まして世界遺産に登録されるような、歴史的建造物ならなおのことだ。 ▼イタリア・フィレンツェの「サンタ・マリア・デル・フィオーレ大聖堂」に多数ある落書きのうち、1割近くが日本語で書かれているという。今や売れっ子画家のバンクシーは、本名を含めて、その正体はいまだ謎に包まれているが、大聖堂の落書きの作者は、岐阜県の短大生、京都の大学生と、次々に身元が明らかになった。 ▼数年前に新婚旅行で訪れ、自分と妻の名前を漢字で残した水戸市の高校野球の監督は、夏の甲子園を前に解任されてしまった。携帯電話の写真とメール、そしてネットの力は、究極の防犯ビデオになりうることを示した。それはそれで、背筋が寒くなるような話ではあるが。

産経抄 産経新聞 7/1

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