今の季節、ビールのつまみに欠かせない枝豆が、カラオケや数独などに続いて、英語として認知されることになった、と共同通信が伝えていた。米出版社メリアム・ウェブスターが出している英英辞典の最新版から、掲載されるという。 ▼次に世界デビューを果たすのは、どんな日本語だろう。「弁当」こそ世界共通語にふさわしい言葉ではないか。北海道の高校生、松本早也乃(さやの)さんはエッセー「日本がなせる匠(たくみ)の技、弁当」で、そう主張した。この作品は昨年、東北大学文学部が創設した「青春のエッセー 阿部次郎記念賞」の、最優秀賞を獲得している。 ▼松本さんは、毎日学校へ持っていく弁当の、世界に誇るべき効用を次々と挙げていく。まず、お金が幅を利かせる時代に、わざわざ早起きして作る「慎(つつ)ましさ」だ。ごみを出さないから、地球にも優しい。何より、作り、作られることで、「思いやり」と「感謝の気持ち」を持ち続けることができる、と。 ▼きのう閉幕した洞爺湖サミットについて、日ごろから、日本について辛口の記事が目立つ英国各紙が、歓迎夕食会の豪華なメニューをやり玉にあげていた。キャビアやウニに舌鼓を打つ指導者が、食料危機を語るのは「偽善」だというのだ。 ▼確かに食事については、工夫の余地があった。安価な食材からでも、味と見た目、さらに栄養にまで気を配った弁当に仕立てることができる。そんな文化を紹介する絶好の機会だったかもしれない。 ▼首脳の夫人たちには、松本さんが「文化の極み」と絶賛する「キャラ弁」がお勧めだ。日本の母親が、ミッキーやピカチュウを毎日の弁当で表現し、出来栄えをインターネットで競い合っていると知ったら、目を回したことだろう。
産経抄 産経新聞 7/10
八葉蓮華 hachiyorenge
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