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「平凡な人生を送るな・・・」  産経抄 八葉蓮華

2008-07-17 | 産経抄(コラム)
「平凡な人生を送るな・・・」  産経抄 八葉蓮華
芥川賞と直木賞の発表が、これほど大きなニュースになったのは、久しぶりではないか。芥川賞の受賞者が中国籍で、第1言語が日本語ではない外国人であることは、ともに史上初めてだという。 ▼小欄は、楊逸(ヤンイー)さん(44)が前回の芥川賞候補になったとき、その表現の妙味に感心してこう書いた。「母国語と日本語のはざまで格闘してきた外国人作家が芥川賞の歴史を変えるのも時間の問題だろう」。 ▼だから今回は、直木賞に決まった井上荒野(あれの)さん(47)を取り上げる。父の故井上光晴さんは、「全身小説家」といわれた。全国各地に「文学伝習所」と呼ばれる文学を学ぶ場を設けたことでも知られる。井上さんは大学時代から、父がノートに書いた作品を、原稿用紙に清書するアルバイトをしていた。 ▼それが同時に作家修業になった。井上さんによれば、初期の作品では父とそっくりだった文体が、書き続けるうちに自分のものになっていった。受賞作『切羽(きりは)へ』では、父が少年時代を過ごし、小説で描いたこともある、長崎県の島を舞台に選んだ。「父には書けないものを書いた」という自信の表れだろう。 ▼刊行日が父の命日だったことも因縁めく。井上さんの小説が、ある雑誌の新人賞を取ったとき、「トランプ占い師」でもあった父に、占ってもらったことがある。井上さんが切ったカードを3枚ずつ3列に並べると、どの列も足すと9になった。 ▼「こんなのはめったに出ない。よほど幸先がいい」。驚いてみせた父が、実はペテンの名手であったことも、家族はみんな知っていた。「荒野」という名に、「平凡な人生を送るな」との願いを込めた父は、どこかでうそぶいているに違いない。おれの言ったとおりだろう、と。

産経抄 産経新聞 7/17

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