「仲良くしよう」。血みどろの代表選を終えた民主党内から、こんな声が上がっている。武者小路実篤(むしゃこうじさねあつ)が、かぼちゃやじゃがいもの絵に書き添えた有名な言葉を思いだす。「仲よき事は美くしき哉」。
実は実篤はこの言葉を、花や果物など、野菜に限らずどんな絵とでも組み合わせた。今なら民主党関係者に頼まれて、菅直人首相と小沢一郎氏の似顔絵を描いたかもしれない。
「仲よし」といえば、新しい言葉のように聞こえる。実は『枕草子』のなかで、清少納言が藤原行成から、わたしとあなたは「仲よしなど人々にも言はるる」と話しかけられている。古くからある日本の美風は、当然互いの信頼関係が前提となる。
民主党内はどうだろう。「挙党態勢」ひとつとっても、菅、小沢両陣営の解釈はかけ離れている。小沢陣営にとっては、小沢氏や側近を実権のあるポストで処遇することを意味する。菅首相を支えて戦った議員らは、それを容認できるだろうか。
選挙戦を通じて、消費税や米軍普天間飛行場移設問題など、政策の違いの大きさもあらわになった。首相が小沢氏に妥協して、足して2で割るような政策しか打ち出せないとしたら、景気回復を遅らせ、日米関係にさらなる混乱を招くのは必定だ。代表選の結果をみれば、いまだに「小沢神話」に縛られているのは国会議員だけだった。一般党員やサポーターはとっくに目を覚ましている。
「熟議」や全議員による「412人内閣」などと、首相は言葉の遊びをしている場合ではない。危機を打開する処方箋(せん)を一日も早く示し、そのために必要な人材だけを登用してほしい。国民にとって、党内の「仲よきこと」は必ずしも美しくないのだ。
産経抄 産経新聞 9/16
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