衣裏珠の八葉蓮華 ≪創価学会 仏壇≫

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真実からガセネタまで、「正確な情報」の見極めはなかなか難しい・・・ 産経抄 八葉蓮華

2009-04-30 | 産経抄(コラム)

 トリよりブタが好き、と暢気(のんき)なことを書ける雰囲気ではなくなってきた。昼休みに薬局の前を通りかかると、レジに行列ができていた。ほとんどの客がマスクが入った袋を握りしめている。中には10袋以上も両手で抱えているお父さんもいた。   

 世界保健機関(WHO)が新型インフルエンザの警戒レベルを「フェーズ4」に引き上げた。「草なぎ事件」になぜか及び腰だったテレビのワイドショーもインフルエンザ一色となれば、「マスク景気」もむべなるかな。小欄もつられてレジに並んでしまった。  

 舛添要一厚労相は記者会見で、「正確な情報に基づき、冷静に対応していただくことが最も大切だ」と訴えた。もっともな話だが、真実からガセネタまで、ネットを通じて情報が瞬時に世界を駆けめぐる現代では「正確な情報」の見極めはなかなか難しい。  

 スペイン風邪が流行した90年前は、日本と大陸との移動手段は船しかなかったが、今やメキシコから成田まで半日ちょっとしかかからない。関係機関が水際で必死に食い止めているが、WHO事務局長が「封じ込めは不可能と判断した」と言うように、いつ感染者が国内で発見されてもおかしくない。  

 「国内患者第1号」が発見されれば、大騒ぎになるだろうが、いかに感染拡大を最小限で食い止めるかの方が重要だ。そのためには、政府が正確な情報を迅速に公開する必要がある。「テポドン発射」でしくじった経験を大いにいかしてほしい。  

 幸いなことに、きょうから大型連休に入る会社も多い。ほとんどの役所や学校も5月2日から5日連続で休みになり、会社や学校で流行(はや)る恐れは当面ない。神経質にならず、まずは遊びにでかけますか。経済の病状がさらに悪化しないように。

産経抄 産経新聞 4/29
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メキシコ風邪「パンデミック」地球のすみずみまで広がるのを食い止めたい・・・ 産経抄 八葉蓮華

2009-04-29 | 産経抄(コラム)

 お笑い女性タレントの入院で、にわかに関心が高まった結核は、もともと牛の病気だった。人類が牛を家畜化するようになったのは、6000年前ごろからだ。『結核の歴史』(青木正和著)によると、最初は、結核になった牛の乳を飲んだ人が感染した。  

 人に寄生した牛の結核菌が、人の体内の環境に適応するように進化する。やがて人型の結核菌は、空気感染によって広がっていったという。メキシコで死者が100人を超えている豚インフルエンザも、豚のウイルスが人から人へ感染する人型に、変異した可能性がある。  

 結核の場合と違うのが、感染のスピードだ。結核に罹患(りかん)した人骨は、エジプトのミイラから発見されている。紀元前のギリシャやインドの医学書にも記述がある。日本に大陸から渡来人によってもたらされたのは、弥生時代後期とされる。記録に残る最初の患者は、天武天皇だという。  

 人が海を渡ることがまれだった時代は、病気が地球のすみずみまで広がるのに数千年かかった。ところが20世紀に入ると、そうはいかなくなった。第一次大戦中の1918年に発生したスペイン風邪は、数カ月で世界を席巻し、死者の数は5000万人を超えた。  

 21世紀の今はさらに世界は小さくなり、毎日数十万人が航空機で海を渡り、都市部の人口の過密化も進んでいる。一方で、われわれは、過去にはなかった世界的な監視システムと、飛躍的に発達した医学という武器を持つ。  

 パニックに陥ることなく、何としてもパンデミック(世界的大流行)を食い止めたい。スペイン風邪とは実は濡れ衣(ぬれぎぬ)で、最初の流行は米国など他の場所だった。ともかく、“メキシコ風邪”の名を、歴史に残すようなことがあってはならない。

産経抄 産経新聞 4/28
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児童虐待「お母さんとおりたい」思いは踏みにじられる・・・ 産経抄 八葉蓮華

2009-04-28 | 産経抄(コラム)

 ドイツの作家、エーリヒ・ケストナーの『ふたりのロッテ』の主人公、ロッテとルイーゼは、9歳の双子の女の子だ。林間学校でたまたま出会い、離婚した両親に別々に育てられてきたことを知る。意気投合した2人は、入れ替わって家に戻り、両親を元のさやにおさめる作戦を立てた。  

 奈良市の山中で、遺体で発見された松本聖香さんも9歳だった。両親が離婚してからは、母親の元で双子の妹とともに暮らしていた。今年1月、妹が父親の元に帰ることになった。聖香さんも、一度は「私も帰りたい」と言ったものの、「やっぱりお母さんの方がいい。お母さんとおりたい」と言い直して、とどまったという。  

 ひょっとして、母親の元を去ってしまえば、家族を再建することが、できなくなると、子供ながらに考えたのかもしれない。なにより、お母さんが大好きだった。そんな聖香さんの思いは、まもなく踏みにじられる。  

 大阪府警の調べで、母親と内縁の夫による、放置や虐待の実態が少しずつ明らかになってきた。聖香さんが、マンションのベランダに閉め出されている姿が、たびたび目撃されているほか、脳に微量の血腫が見つかっている。体には打ち身の跡やあざがあった。  

 児童相談所の権限を強化するなど、改正児童虐待防止法が施行されて1年たったが、またも悲劇を防ぐことができなかった。内縁の夫は、「しつけの範囲内だった」と供述しているという。そんな言い訳はもう聞きたくない。  

 ロッテとルイーゼは10歳の誕生日に作戦の総仕上げを行う。両親に、プレゼントはいらないからいっしょにいてほしい、と懇願したのだ。大成功だった。聖香さんの妹は、10歳の誕生日をたったひとりで迎えなければならない。

産経抄 産経新聞 4/27
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外交「握手ひとつでそこまで」隅々にまで神経を使っている・・・ 産経抄 八葉蓮華

2009-04-27 | 産経抄(コラム)

 ベネズエラのチャベス大統領は、強烈な反米主義で世界の「異端児」と言われてきた。ブッシュ前米大統領を「悪魔」とののしり、旧宗主国スペインの前首相をファシスト呼ばわりする。その好き放題に、スペイン国王が「黙れ」としかったこともあった。  

 そのチャベス大統領がこのところ、気持ち悪いほど「良い子」になっている。今月初め日本を訪問したときには、麻生首相との野球談議で、WBC優勝の日本を巧みにヨイショする始末だ。さらに「日本と強力な同盟国になりたい」という発言まで飛び出した。  

 極めつきはカリブ海のトリニダード・トバゴでのオバマ米大統領との「対話」だ。米州機構総会に出席するオバマ氏に本を贈呈したうえ握手を求めた。前日には「米国の友人となりたい」とまで語ったといい、オバマ氏も笑顔で手を握り返したそうだ。  

 輸出の約9割を占める石油が値下がりした。それもあって「敵対国家との対話」を掲げるオバマ大統領の登場を、米国などと関係修復する機にしようということだろう。興味深いのはこの「宿敵」から秋波を受けた米国内に、握手に応じた大統領への批判が起きていることである。  

 特に野党の共和党からは「握手は相手に利用される」と手厳しい。大統領側は「(チャベス氏とは)同意しない点が多いと明確にしている」と応じ、思わぬ論戦となった。間をとって「握手はいいが、笑顔は控えるべきだった」という意見まであるという。  

 「握手ひとつでそこまで」と笑う人もいるかもしれない。だが難敵ばかり相手の米外交は、隅々にまで神経を使っているということだろう。北方領土問題で、早々と「3・5島」などの「妥協案」が飛び出す日本の外交もそうあってほしいが。

産経抄 産経新聞 4/26
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檜町公園「裸になったぐらいで」34歳の芸能人に同情論・・・ 産経抄 八葉蓮華

2009-04-26 | 産経抄(コラム)

 草なぎ剛容疑者が逮捕された檜(ひのき)町公園は、東京の六本木と赤坂という2つの歓楽街のほぼ中間にある。江戸時代、ヒノキの林に囲まれた長州藩の下屋敷があったことから一帯は通称檜町と呼ばれる。その周辺はさまざまな歴史を生んだ街でもある。  

 公園のすぐ隣はマンションやホテル、美術館などがたつ東京ミッドタウンになっている。六本木ヒルズなどと並ぶ高級感の漂う一角である。だが10年ほど前までは、防衛庁(当時)の敷地だった。さらに戦前までさかのぼると、陸軍の歩兵第一連隊があったことで知られる。  

 昭和11年2月26日早朝、この「歩一」を青年将校らに率いられ約300人の兵士が出た。大雪の中を2キロ近く離れた首相官邸に向かい、占拠する。すぐ近くにあった歩兵第三連隊とともに、昭和史のターニングポイントと言える二・二六事件の「起点」となったのだ。  

 檜町公園の東には、「忠臣蔵」で大石内蔵助が内匠頭(たくみのかみ)の夫人に「雪の別れ」を告げたとされる南部坂がある。さらに西へ行けば、明治天皇に殉じた乃木希典大将の屋敷跡や乃木神社もある。それだけに、このあたりを徘徊(はいかい)する歴史愛好家は多いらしい。  

 草なぎさんがそんな歴史に関心があったかどうかは分からない。しかし34歳の芸能人にしては、思慮深く物静かな印象があった。だから老若を問わず「裸になったぐらいで逮捕することもないのに」とか「酔っぱらったうえでのことだ」といった同情論も強いようだ。  

 だが普段の「好感度」が強かっただけに、何とも異様な行動と思えたのだ。釈放されたものの、当分はテレビなどメディアに追い回されることだろう。歴史ファンとしては、街をこれ以上騒ぎに巻き込まないでほしいという気がしてならない。

産経抄 産経新聞 4/25
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母親を残して「一家を養える」介護が人ごとではない・・・ 産経抄 八葉蓮華

2009-04-25 | 産経抄(コラム)

 芸能マスコミは、アイドルスターの逮捕劇一色に染まっている。それでも小欄は、車いすの母親(80)を残して、父親の墓前で自らの命を絶った清水由貴子さん(49)の記事を探してしまう。介護が人ごとではない、年齢にさしかかったからだろうか。  

 平成8年11月27日付サンケイスポーツの記事で、清水さんが、東京・武蔵野市に建てたマイホームを公開している。「幸せです」。清水さんの声には「実感がこもっていた」と、記者は書く。糖尿病と腎臓病を患い、長い入院生活を送る母親と8歳下の妹の親子3人で、ひとつ屋根の下に住むことは、最大の夢だった。  

 浅草に生まれ、8歳で父親と死別した。貧しかったけれど、暮らしやすい町だった。同級生に銭湯の娘さんがいて、ときどきただでいれてもらえた。しょうゆの買い置きがなくなると、近所に借りに行った。子供が好きだったから、保母さんになりたいと思っていた。  

 スカウト番組「スター誕生!」で、グランド・チャンピオンを獲得して、すべてが変わった。17歳でデビューする。「これで一家を養えると思った」とテレビのインタビューで語っていた。スタッフの誰からも「ユッコ、ユッコ」とかわいがられた。萩本欽一さんがファミリーに迎えたのも、人柄にほれ込んだからだろう。  

 ずっと独身だったが、ドラマやCMでは、元気なお母さん役で親しまれた。新聞の切り抜きのどの写真を見ても、温かみのある笑顔を浮かべている。幸せの2文字が誰よりも似合うタレントさんだった。  

 きのうの「朝の詩」は、読者におなじみの柴田トヨさんの作品だった。「なんて幸せな 日の連続でしょう」と、人生の達人はいう。清水さんにもいつかこんな日が、訪れたはずなのに。

産経抄 産経新聞 4/24
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「世襲」生き残りをかけて、世襲問題と格闘してきた企業・・・ 産経抄 八葉蓮華

2009-04-24 | 産経抄(コラム)

 自民党の菅義偉選対副委員長が、衆院選の政権公約に、世襲候補の立候補制限を盛り込もうとして、党内で物議を醸している。世襲は、企業にとっても古くて新しい問題だ。  

 「創業者の孫というだけで、社長にするのはおかしい」。平成9年、当時、松下電器産業の相談役だった山下俊彦氏の発言を、メディアは松下の“お家騒動”とはやし立てた。山下氏は、昭和52年から9年間、社長を務めた。  

 「経営の神様」松下幸之助、娘婿である正治氏(現名誉会長)に続く3代目、創業家以外からの初のトップだった。しかも取締役二十数人を飛び越えての大抜擢(ばってき)は、「山下跳び」の流行語まで生んだ。その山下氏の発言は、正治氏の長男、正幸副社長が社長に昇格する、創業家への「大政奉還」の動きを牽制(けんせい)するものだった。  

 どれだけの効果があったのか不明だが、その後も松下の社長は創業家以外でバトンをつないでいる。平成20年には、社名から「松下」がとれた「パナソニック」に生まれ変わった。世襲といえば、本田技研工業創業者の本田宗一郎が腹心の藤沢武夫と、親族を会社に入れないことを誓った“美談”が有名だ。  

 もちろん、世襲が悪いわけではない。トヨタ自動車は、あえて創業家4代目の豊田章男新社長のもとで、世界同時不況の大逆風に立ち向かう道を選んだ。菅氏の提案は、案の定世襲の衆院議員が3分の1強を占める自民党内から、猛反発を受けた。公約化に意欲を示す民主党に、追随する必要はない。  

 ただ、「職業の選択の自由」まで持ち出して、問答無用を決め込んでいいのか。生き残りをかけて、世襲問題と格闘してきた企業に比べて、自民党内の危機感が薄すぎるのが、老婆心ながら、気にかかる。

産経抄 産経新聞 4/23
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「裁判員の候補者」被告・検察のウソを法廷で見破る自信はない・・・ 産経抄 八葉蓮華

2009-04-23 | 産経抄(コラム)

 なんとか当たらないものかと楽しみにしていたが、生来のクジ運のなさで、はずれてしまった。裁判員制度スタートまで1カ月を切ったが、「あなたが裁判員の候補者に選ばれました」との通知はこなかった。  

 30万人近い有権者に通知が届いたそうだが、あくまでも候補者だ。1公判につき6人の裁判員に選ばれるためには、裁判長の面接という難関がある。法廷でネタの一つや二つ拾えるのでは、と邪心みえみえの小欄などはとてもお眼鏡にかなうまい。  

 思想信条や多忙のため、やりたくないという人も結構多い。最高裁が公表した「辞退理由として考慮されるケース」には、派遣労働者や幼児のいる共働き夫婦などのほか、麻雀(マージャン)店のプロ麻雀師というのまであった。「店や地方の大会が年に20回ある」からだそうだが、普通のサラリーマンやOLだって忙しい。  

 最高裁は、公判前整理手続きによって争点や証拠が整理され、約7割の裁判が3日以内に終わるはずなので、重い負担にはならない、と宣伝している。ただ、これは実際にやってみないとわからない。  

 きのう和歌山毒物カレー事件の最高裁判決があったが、初公判から実に10年もかかった。裁判員がかかわることになる1審だけでも3年半以上費やしている。むろん、新制度ではスピードアップされるだろうが、逆の不安も出てくる。  

 もし弁護士がすご腕で、被告が涙ながらに無実を訴えたら…。自白がなく、状況証拠だけで起訴された被告に裁判員は短期間で「死刑」の判断を下せるだろうか。世の中には天才的な詐話師もいる。小欄には、彼ら彼女らのウソを法廷で見破る自信はない。司法を身近なものにする裁判員制度の意義は大いに認めるが、やっぱりはずれて良かった。

産経抄 産経新聞 4/22
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ネットでブーム「天使のような美声」今や世界的な有名人・・・ 産経抄 八葉蓮華

2009-04-22 | 産経抄(コラム)

 家でテレビを見ていると、だしぬけにNHKのアナウンサーが、おれのことをしゃべり始めた。「森下ツトムさんは今日、会社のタイピスト美川明子さんをお茶に誘いましたが、ことわられてしまいました」。  

 てっきり幻覚だと思っていたら、翌朝の新聞の社会面にも、顔写真付きで記事が出ている。平凡な会社員にすぎないおれに関する報道は、過熱するばかり。常にだれかを話題の人物に祭り上げ、私生活をほじくりかえさずにはいられない。筒井康隆さんの短編小説『おれに関する噂』は、そんなマスコミを、強烈に風刺していた。  

 インターネットで世界がつながっている現代では、もっとすさまじいことが起こる。今月11日に放映された英国のタレント発掘番組に出演した無職女性のスーザン・ボイルさん(47)は、今や世界的な有名人だ。やぼったい姿でステージに現れたとき、審査員と観客の反応は冷ややかだった。  

 ところがボイルさんが、ミュージカル「レ・ミゼラブル」の名曲「夢破れて」を歌い始めるや、あまりに美しい声に、会場は騒然となる。その模様が動画サイト「ユーチューブ」に投稿されると、クリック数はたちまち数千万件に達した。  

 ボイルさんがネコと暮らすスコットランドの自宅には、各国メディアの取材が殺到している。セクシーな容姿の持ち主でないと歌手になれない風潮を改めよう、と識者が呼びかけるなど、ブームを超えた社会現象になりつつある。  

 筒井作品の「おれ」は、スター気取りで新聞社に乗り込んだ途端にマスコミから見捨てられる。ボイルさんの方は、歌手デビューすれば、大ヒットは間違いない、と太鼓判を押されている。天使のような美声を、小欄もじっくり聴いてみたい。

産経抄 産経新聞 4/21
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「ミツバチが激減」果物や野菜の不作につながりかねない・・・ 産経抄 八葉蓮華

2009-04-21 | 産経抄(コラム)

 日本の「プチ・ファーブル」と呼ばれる絵本作家、熊田千佳慕(ちかぼ)さんは、腹這いになって虫を見つめていた。平成8年の夏、横浜駅にほど近い赤いトタン板の家から、歩いて15分ほどの草むらだった。「虫と同じ高さで、両の目と心眼で見つめるだけです」。当時85歳の熊田さんは、そう語っていた。  

 虫の姿を心に焼き付けると仕事場に戻り、羽のひと筋、毛の1本もおろそかにせず、紙の上に再現する。こうして5年の歳月をかけて、『みつばちマーヤの冒険』(小学館)を刊行したばかりだった。草のにおいがあふれ、花のみつを吸い込む音まで聞こえてきそうな作品には圧倒された。  

 そのマーヤたちの世界に異変が起きている。3年前に米国で大量のミツバチが消失し、蜂群崩壊症候群(CCD)として、注目された。日本でも今、ミツバチが激減する現象が各地で起きている。国産のハチミツ作りへの影響が心配だが、ミツバチにはほかにも大きな仕事がある。  

 ナシやスイカ、イチゴなどの花粉交配に欠かせない存在なのだ。このためミツバチの不足は、果物や野菜の不作につながりかねない。実際、農林水産省によると、東京都や徳島県などで、イチゴの収穫量が見込みより少なく、形の悪いものも発生している。  

 絵本のマーヤたちを脅かしたのはスズメバチだったが、今回のミツバチ消失の原因はまだはっきりしない。寄生ダニや農薬のために大量死した可能性があり、またオーストラリアからのミツバチの輸入が止まっているのも一因とされる。  

 90歳をこえてからも、熊田さんは、「ファーブル昆虫記」の世界を描き続けているという。「虫は私、私は虫」と言い切る熊田さんになら、ミツバチは、本当のことを打ち明けるかもしれない。

産経抄 産経新聞 4/20
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「一刀両断」と「迷うべきこと」・・・ 産経抄 八葉蓮華

2009-04-20 | 産経抄(コラム)

 最期まで「老いの一喝」に徹してきた上坂冬子さんの「歯切れの良さ」の秘密はどこにあるのだろう。その疑問を上坂さん自身が一昨年11月、大阪での「正論」懇話会で解き明かしている。「これでいいのか 日本」という文字通り「一喝」の講演だった。  

 上坂さんは、今の日本では迷わなければならない、結論を簡単に下しちゃ困るという部分が、あっさりと割り切られている。反対に「一刀両断」に切らなきゃいけない部分が切られていないと指摘した。そこに一番の問題がある、というのである。  

 例えば「戦前の日本はすべて間違っていた」など、とても簡単には言えないことなのに、そう結論づける。逆に靖国神社問題では「日本の代表がお参りするのは当然」と言えばいいのに、できない。そして北方領土問題も「一刀両断」に切るべきことなのだという。  

 上坂さんによれば、この問題は「単純で簡単」だ。四島がソ連に「拉致」されたのは明白だからである。日本はそっくり取り戻すことだけ考えればいい。「面積で2等分」といった姑息(こそく)な考えすら出てくる政府関係者に、ぜひとも学ばせたい「歯切れの良さ」だった。  

 それで思い出すのは、マーガレット・サッチャー元英国首相をめぐる話である。1982年、アルゼンチンに占領されたフォークランド諸島を取り戻すため強攻策を打ち出した。だが閣僚たちはみな消極的だ。そこでこう叫んだという。「この内閣に男は1人しかいないのか」。  

 たぶん危ないジョークだろう。しかし彼女もまた「一刀両断」と「迷うべきこと」との区別ができていたように思える。上坂さんを失った今、日本でそんな「仕分け」のできる人が何人いるのか、心もとない。そして限りなく寂しい。

産経抄 産経新聞 4/19
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3086本目の安打はいとも簡単に右前に抜けた、あと6年間・・・ 産経抄 八葉蓮華

2009-04-19 | 産経抄(コラム)

 張本勲さんの日本最多安打記録を破ったイチロー選手の快挙に水をさすわけではない。だが、米大リーグにはもっとすごい記録がある。ピート・ローズの4256本とタイ・カッブの4191本だ。野球の本場とはいえ、信じられないような数字である。  

 特に歴代2位のタイ・カッブは前世紀前半に活躍した選手だが、生き方そのものが破天荒だった。『世界変人型録』(草思社)という本によれば、母親が父親を賊と間違えて射殺したことを成人後に知り、人間が変わった。野球場で最も恐れられる選手になった。  

 信じられないケチで、孤独を愛し、大酒を飲み、本格的トレーニングなどしたことがなかった。自分をやじった相手チームの若手を試合後、射殺しそうになったこともあった。それでいて不朽の記録を残した。まるで自らの怨念(おんねん)を野球にぶつけているようだった。  

 68歳の張本さんは怨念ではないが、子供のときに手をヤケドしたハンディや、貧乏を背負っていた。「私らのころは、野球が駄目なら生活も駄目になった」と振り返っている。しかし野球に対する姿勢は真摯(しんし)で、常に明るくふるまおうとしていた印象が強い。  

 35歳のイチロー選手の場合も、人知れぬ苦しみや悩みもあるかもしれない。だが、そのバッティングは常に明るく軽やかそうである。開幕当初、胃潰瘍(かいよう)で試合を欠場するハプニングはあったが、3086本目の安打はいとも簡単に右前に抜けた。そんなふうに見えた。  

 算数は苦手でも、あと6年間、毎年200本打てばローズやカッブの記録を抜くことができるとわかる。むろん本人からは「簡単に言ってくれるな」と怒られるかもしれない。だが、みごと達成されれば、野球界は確実に新しい時代を迎える。

産経抄 産経新聞 4/18
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漢字離れ「漢字のビジネス化」大成功に導いたアイデア・・・ 産経抄 八葉蓮華

2009-04-18 | 産経抄(コラム)

 不況になると日本語ブームが起こるというジンクスがある。明治大学教授の加藤徹さんが、「中央公論」5月号に書いている。昭和32年の鍋底不況、48年の石油ショックのあと、そして平成不況のさなかの11年、13年と、いずれも書名に「日本語」の入った本が、話題となった。  

 好景気のときは、ビジネス本やノウハウ本が売れる。一方不況では、人々の目が内向きになり、日本語へ関心が向く。今回の世界同時不況のもとでは、漢字ブームの形であらわれた、という。  

 昭和50年の発足時にわずか672人だった日本漢字能力検定の受検者も、今や270万人を超えている。ただ、大ヒットの理由はブームだけではなさそうだ。創立者の大久保昇氏は、大手電機会社を退職して、京都市内で文化教室を経営していた。  

 漢字のビジネス化を思いついたのは、子供の漢字離れを嘆く講師の声を聞いたときだ。ワープロ、パソコンの普及も追い風となった。毎年12月に、世相を表す「今年の漢字」の1文字を清水寺で披露するイベントは、アイデアマンとしての、大久保氏の面目躍如だろう。  

 協会の理事長、副理事長を、長男とともに辞任することを明らかにした記者会見で、大久保氏はこう言いたかったのではないか。「漢検を大成功に導いたのは、私だ」。とすれば、自分のファミリー企業と協会との取引を今後も続けるという、往生際の悪さも説明できる。  

 しかし、公益事業であげた巨額の利益の「私物化」は、もはや許されるものではない。今の心境を漢字1文字で、と記者に聞かれた大久保氏は、「2文字は出やすいけれど」と言葉を濁した。どんな言葉が浮かんだのか知らないが、「反省」の2文字でないことだけは、確かだ。

産経抄 産経新聞 4/17
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異常な空間「満員電車」痴漢の被害と冤罪におびえながら・・・ 産経抄 八葉蓮華

2009-04-17 | 産経抄(コラム)

 生物学者の本川達雄さんが、琉球大学から東京工業大学に移ったとき、一番面食らったのが満員電車だった。込み具合を数値化してみるところが、さすが科学者である。  

 電車に定員の2倍が乗っていたとすると、1平方メートル当たり約5人、1平方キロメートル当たり500万人の密度になる。動物の正常な生息密度は、体の大きさで決まるそうだ。ヒトサイズの動物なら、1平方キロメートル当たり1・4人。つまり通勤電車には、360万倍もぎゅうぎゅうに詰まっていることになる(『世界平和はナマコとともに』)。  

 痴漢は、そんな異常な空間が生み出した犯罪といえる。一昔前までは、被害に遭った女性が、泣き寝入りするケースも多かった。その反省から近年、警察当局は摘発に力を入れている。一方で被告が無罪となるケースも目立ち、痴漢冤罪(えんざい)は、映画のテーマになるほど社会問題化していた。  

 14日には、強制わいせつ罪に問われていた大学教授に、最高裁が、1、2審の実刑判決を破棄して、逆転無罪を言い渡した。無実を訴えてきた大学教授は、「有頂天になる気もない」と語る。冤罪に苦しむ人が、まだいるはずだというのだ。  

 今回の判決は、捜査当局にも大きな衝撃を与えた。今後捜査に消極的になるようなら、卑劣な犯罪者たちを喜ばすことになる。2年前、西武鉄道を経営する西武ホールディングスの株主が、痴漢を防ぐために、防犯カメラの車両への設置を提案したが、実現に至らなかった。もちろん、究極の対策は混雑の解消だ。  

 それまでは、痴漢の被害と冤罪におびえながら乗るしかない。本川さんも、痴漢に間違えられないように、じーっと体を硬くしていたら、肩が凝って、磁気ネックレスを手放せなくなったそうだ。

産経抄 産経新聞 4/16
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子供でもわかる「思いやり」話せばわかる相手ではない・・・ 産経抄 八葉蓮華

2009-04-16 | 産経抄(コラム)

 北朝鮮のメディアは女性が元気だ。テレビでは、抑揚をたっぷりつけて将軍様こと金正日総書記をうたいあげる民族服の女性アナウンサーが有名だが、新聞も負けていない。朝鮮労働党の機関紙「労働新聞」は、宋美蘭という女性記者が書いた浪曲調?の記事を掲載した。  

 金総書記が平壌市内の工場を視察したときのお話。工場関係者は「やせ細った父なる将軍様」を見て声も出ない。「工場を離れる将軍様を見送り、(工場関係者の)むせびなく顔には、二筋の涙がとめどなく流れていた」と名調子が続く。  

 感動的な「将軍様物語」の一席だが、北朝鮮では、将軍様の病気は長く伏せられていた。なぜこの時期に、当局が「激やせ」を人民に知らせてやろうとしたのか。理由はほどなく明らかになるだろうが、文学的には、物語の最終章がそろそろ近づいていますよ、とのサインと解釈できる。  

 涙あり、アクションあり、お世継ぎ騒動あり、と最終章はドラマチックに始まった。景気づけにミサイルをぶっ放すわ、核問題を話し合う6カ国協議に「二度と絶対に参加しない」と声明は出すわ、やることなすこと派手だ。  

 派手だけならまだしも、隣人から無理難題を言ってみかじめ料をとろうとする。しかも話せばわかる相手ではない。結構な金額の「思いやり」代を渡してきた警官も「もっと悪い奴(やつ)がいる」とすぐにはきてくれそうにもない。  

 では、どうすればいいのか。戸締まりを厳重にして、核とはいわないが、暴漢をやっつけられる飛び道具が必要なのは、子供でもわかる理屈だ。それを「危うい強硬論」と批判する某新聞やテレビ番組がある。言論の自由だからとやかく言わないが、きっと将軍様もお喜びになっていることだろう。 

産経抄 産経新聞 4/15
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