衣裏珠の八葉蓮華 ≪創価学会 仏壇≫

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虐待の連鎖に、歯止めがかからない・・・  産経抄 八葉蓮華

2008-10-31 | 産経抄(コラム)
虐待の連鎖に、歯止めがかからない・・・  産経抄 八葉蓮華
「子の使ひ垣から母が跡をいひ」と江戸川柳にある。子供に近所への届け物を頼んだものの、心配になった母親が、そっと届け先の垣根までついてゆく。あいさつがうまくできない子供がもどかしく、つい口を出してしまう。 ▼わが子の成長を願ってやまない母親と、けなげにそれに応えようとする子供、日本テレビの名物番組『はじめてのおつかい』でおなじみの光景は、いつの時代も変わらない。彼女にもそんな機会があったのだろうか、とふと思う。 ▼札幌市で21歳の女性が、小学6年のころから約8年間、母親によって自宅に、監禁状態に置かれていたことが、明らかになった。女性が2年前に保護されたときは、ほとんど会話ができない状態だったという。なんともむごい。別居していた父親から相談を受けた市は、ただ手をこまねいていた。 ▼仙台市ではきのう、2歳の次女を床に投げ落とすなどの暴行を加えて死亡させた容疑で、26歳の父親が逮捕されている。平成12年に児童虐待防止法が施行され、昨年の改正で、児童相談所が強制的な立ち入り調査ができるようになった。それでも虐待の連鎖に、歯止めがかからない。 ▼冒頭の句は、『江戸川柳で現代を読む』で知った。著者の小林弘忠さんによると、昔、子供いじめの主役は継母で、それを批判した句もある。もちろん、圧倒的多数を占めるのは、子供への情愛を詠んだ川柳だ。情けは、他人の子にも向けられた。 ▼「夕立に取り込んでやる隣の子」。長屋の井戸端会議の最中に、雨が降ってきた。家に走ったおかみさんが、びしょぬれになった隣の子を見つけて、洗濯物よりまず、その子を取り込んでやる。江戸といわず、ほんの少し前の、日本のどこにでも見られた光景なのに。

産経抄 産経新聞 10/31

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身なりの悪さと風紀の乱れ・・・  産経抄 八葉蓮華

2008-10-30 | 産経抄(コラム)
身なりの悪さと風紀の乱れ・・・  産経抄 八葉蓮華
近ごろ「泣ける歌」がもてはやされているらしい。学生時代は、長髪、無精ひげスタイルで、デモに参加して、「反体制」を気取った中高年層からは、この歌を推す声が上がりそうだ。 ▼松任谷(当時は荒井)由実さんが作詞、作曲した「『いちご白書』をもう一度」だ。昔いっしょに見た映画のポスターから、恋人のことを思いだす内容だった。「就職が決まって髪を切ってきた時 もう若くないさと 君に言い訳したね」。 ▼昭和50(1975)年に出た曲だが、このフレーズは、今でもあてはまる。別にルールがあるわけでも、強制されたわけでもない。入りたい会社や学校に、いい印象を与えるために、身なりを整えるのは、当たり前のことだ。 ▼神奈川県平塚市の県立神田高校の入学試験で、入学願書受付時や試験日に、服装や態度に問題がある受験生を不合格にしていたことがわかった。なかには学力テストの成績上位者も含まれていた。こうしたチェックは、前任の校長が発案したもので、平成17年度から行われてきた。 ▼もともと退学者や補導が多い「課題校」だ。近隣の高校との統合を目前に控えている。となれば、ズボンを引きずったまま、あるいは厚化粧で、入試に臨むような生徒を敬遠する気持ちはよくわかる。実際、身なりの悪さと風紀の乱れには、“相関関係”がある。19年度に中断すると、途端に新入生を中心にトラブルが頻発したという。 ▼確かに、担当教員が、コソコソ受験生を観察して、メモをとるなんて情けない。その点を謝罪して、校長はあらためて、「まじめな子」に来てもらいたい、と独自の選考基準を明らかにすればいい。少なくとも、朝日新聞が決めつけているような「不正」とは、思わない。

産経抄 産経新聞 10/30

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役人以外はとても期待できそうにない・・・  産経抄 八葉蓮華

2008-10-29 | 産経抄(コラム)
役人以外はとても期待できそうにない・・・  産経抄 八葉蓮華
株の乱高下が止まらない。きのうは、日経平均株価が7000円を割ったかと思う間もなく急騰し、円高も一息ついた。それでも平均株価の1万円台回復がいつになるかは占い師でもわかるまい。確かなのは、冬のボーナスがお役人以外はとても期待できそうにないことだけだ。 ▼財布の中は秋を飛び越えてすっかり冬景色だが、不景気なときこそ物事は前向きにとらえたい。われらの円が、非情で強欲な通貨市場からナンバーワンの評価を得ていることをもっと誇っていい。 ▼金融危機の震源地である米国のドルは、皮肉にも値上がりしている。韓国やトルコ、南アフリカといった新興国の通貨のみならず、ドルの代役を期待されていたユーロも売られているからだ。世界の投機家はそのドルを売って円を買いあさっている。 ▼ブッシュ米大統領が「強いドルは国益だ」と繰り返すように、「強い円は国益」であるはずだ。大風呂敷を広げるなら、世界の通貨が総崩れの今こそ、円をドルに次ぐ世界の基軸通貨に“格上げ”させる大チャンスといえる。だが、そういった威勢のいい声はどこからも聞こえてこない。 ▼謙虚といえばそれまでだが、政府も日銀も目先の現象に振り回され、大胆な発想と行動力に欠けている。確かに輸出産業の被害は甚大だが、原油や原材料、輸入食料品は目に見えて値下がりしている。自称・楽天家の麻生太郎首相は、円高を最大限生かす方策にもっと知恵を絞るべきだ。 ▼政府が輸入を一手に握っている小麦をどーんと値下げするのも一案だ。実施のめどもついていない定額減税よりよほど功徳がある。国民が審判を下す時期は先に延びるようだが、このピンチを乗り切れぬようでは投手交代も覚悟せねばいけないだろう。

産経抄 産経新聞 10/29

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「読書週間」本好き同士の幸運な出会い・・・  産経抄 八葉蓮華

2008-10-28 | 産経抄(コラム)
「読書週間」本好き同士の幸運な出会い・・・  産経抄 八葉蓮華
読書週間が始まった。若いころ、貧乏で本が買えなかった勝海舟は、もっぱら立ち読みを日課にしていた。函館の回船問屋の主人、渋田利右衛門(りえもん)と出会ったのも、行きつけの本屋だった。 ▼子供のころから本好きだった利右衛門は、商用で江戸に出てくるたびに、大量に本を買い込んで、地元で公開するのを、楽しみにしていた。2人はたちまち意気投合する。数日後、海舟のあばら家を訪ねた利右衛門は、「書物でも買ってくれ」と、200両を差し出した。 ▼海舟の談話を集めた『氷川清話』にある有名なエピソードだ。200両といえば、いまの1000万円を優に超えるだろう。海舟の長崎遊学の費用も出した利右衛門は、自分がもし死んでも頼りになる人物として、灘の蔵元、嘉納治右衛門(じえもん)、紀州の豪商、浜口梧陵(ごりょう)らを紹介する。 ▼治右衛門の息子は、柔道の創始者で、海舟に師事することになる治五郎だ。梧陵は安政南海地震の際、大量のわらに火をつけて避難路を示し、村人を救った「稲むらの火」の物語で知られる。海舟と利右衛門の因縁は、これにとどまらない。 ▼利右衛門の息子が函館で開いた貸本屋で、読書に目覚めた少女がいた。やがて上京して、海舟が支援していた明治女学校に入学する。そこの教師をしていた島崎藤村と結ばれ、藤村が作家として世に出るのを陰で支えたのが、最初の妻、冬子だ。 ▼さわやかな秋空に誘われて、きのうは、東京都千代田区の神保町で開かれている古書の青空市に出かけた。東京株式市場は、バブル後最安値をつけたというが、古書店街は大にぎわいだった。こんな時代でもどこかで本好き同士の幸運な出会いがあり、それが歴史を切り開くきっかけになることを、願ってやまない。

産経抄 産経新聞 10/28

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高齢者を狙い撃ちする卑劣な手口・・・  産経抄 八葉蓮華

2008-10-27 | 産経抄(コラム)
高齢者を狙い撃ちする卑劣な手口・・・  産経抄 八葉蓮華
散歩の途中で、手をつないで歩いている老人カップルに出会い、しばらくついて歩いた。作家の黒井千次さん(76)に、こんな内容のエッセーがある。仲も良いのだろうが、女性の足取りが覚束(おぼつか)なく、男性の手に掴(つか)まっているらしい。 ▼男が「濡れ落ち葉」と呼ばれるカップルには見られない、「共同作業の雰囲気」を、黒井さんは感じたという。落ち葉といえば、朝の冷気のなかで、カサカサと響く音を聞くのは、まことに気持ちがいい。 ▼この季節になると、通勤の途中で遠回りして公園の中を歩くことにしている。踏みしめる楽しみがあるからだ。落ち葉は、長い時間をかけて、土に戻り命の源になる。数日前の小紙生活面の記事に、生ゴミに乾いた落ち葉を混ぜる、堆肥(たいひ)の作り方が載っていた。 ▼もっとも、今年6月から、道路交通法の改正に伴い、75歳以上に表示が義務づけられた高齢運転者標識には、その形や色から、「枯れ葉マーク」や「落ち葉マーク」などと、揶揄(やゆ)する声が上がった。高齢のドライバーに、慎重な運転を呼びかけるとともに、近くを走る車に対して、幅寄せや割り込みなど、危険な運転を禁止する。これが標識の本来の目的だったはずだ。 ▼ところが、マークを付けた車を呼び止め、理由を付けて乗り込んで、高額な商品を売りつけようとしたり、金をせびる新手の悪徳商法があるという。高齢者を狙い撃ちする卑劣な手口は、一向に収まる気配がない振り込め詐欺に共通する。 ▼黒井さんは、「くすくす笑ったり、歌ったりする」乾いた落ち葉に、あるべき老いの姿を見る。そして、どうせ舞い落ちる枯れ葉なら、そんな落ち葉がいい、と、エッセーを締めくくる。しかし、世知辛(せちがら)い昨今では、それもなかなか難しい。

産経抄 産経新聞 10/27

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多くの人が普段通りに日常を楽しむ・・・  産経抄 八葉蓮華

2008-10-26 | 産経抄(コラム)
多くの人が普段通りに日常を楽しむ・・・  産経抄 八葉蓮華
昭和35年に日米安保条約改定を行った岸信介元首相は多くの名言や迷言を残している。「それでも後楽園球場は満員だ」というのもそのひとつだ。この年の6月、安保改定への反対運動の高まりに対し述べたとされているが、実際の発言は少し違っていた。 ▼記者会見で「国民は大きな不安感を持っている。人心の刷新が必要ではないか」という質問が出た。これに対し岸首相はこう答えた。「私と諸君とは見方が違う。デモも参加者は限られている。都内の野球場や映画館は満員で、銀座通りも平常と変わりはない」。 ▼これが後に「それでも…」と翻訳されてしまったのだ。首相としては「反対のデモ隊など国民の一部にすぎない」と強調したかったのだろう。安保が批准された後、社会が何事もなかったかのように元に戻ったことを考えれば、「名言」の方だったかもしれない。 ▼そんなことを思い出したのは今の米国社会からだ。恐慌という言葉も聞かれる金融危機は実体経済にも波及している。大統領選という政治決戦も近づいてきた。さぞ国民みんなが眦(まなじり)を決して、と思えばそうでもない。今は野球のWシリーズに夢中という人も多いのだ。 ▼これはしごく当たり前のことだと言っていい。時には流血の事態にまでなる政治危機や、生活を脅かす経済危機の最中でも、多くの人が普段通りに日常を楽しむ。いや楽しむことができる。それこそが民主主義社会の多様性であり余裕であり、底力ともなるのである。 ▼そう考えるとトップとはいえ、麻生首相が夜ごとホテルのバーで酒を飲むことにそう目くじら立てることもあるまい。もっともそのバーの料金をめぐり「高い」「安い」と論争になっている。日本社会もよっぽど余裕があるらしい。

産経抄 産経新聞 10/26

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投機と吝嗇とで巨万の富・・・  産経抄 八葉蓮華

2008-10-25 | 産経抄(コラム)
投機と吝嗇とで巨万の富・・・  産経抄 八葉蓮華
1世紀ばかり前の米国に「ウォール街の魔女」と呼ばれる女性がいた。へティ・グリーンという。父親の遺産をもとに株や債券、不動産に投資を続け、1916年に81歳で亡くなったとき、当時の金で1億ドルの財産を残した。今のレートで100億円近い。 ▼作家、ジェイ・ナッシュの『世界変人型録』という本によれば、彼女は金銭に関する第六感のようなものを持っていた。銀行の破綻(はたん)や金融恐慌を巧みにかぎとりながら、稼ぎまくった。さらに、大富豪にしては「常軌を逸した締まり屋」でもあったという。 ▼20年間、同じ服を着てウォール街を歩き回り、決して車には乗らなかった。食事は安いレストランですまし、安下宿を転々とし週5ドル以上の家賃は払わなかった。読んだ新聞は息子に売りにいかせ、その息子がケガをしたときは、治療代をケチり片足を切断させられた。 ▼モノを作って売るわけではない。「金」だけを信じ、投機と吝嗇(りんしょく)とで巨万の富を築く。「魔女」的な部分を除けば彼女もこの街の典型的な住人だったのだろう。そのウォール街が今、集中砲火を浴びている。言うまでもなく世界の金融危機の発信地としてである。 ▼特に株など買ったことがなく、毎日コツコツ働いているだけという米国人の反発は強い。「何で税金で奴(やつ)らの失敗の尻ぬぐいを」となるからだ。そこらの空気を察して、投票日が迫った大統領選の両候補ともウォール街を「強欲」と非難しているそうだ。 ▼国際的にも金融市場の改革を求める声が強い。だがへティの時代から投資家たちの「強欲」が世界の経済を動かしてきたのも事実だ。それを封じては世界経済そのものが破綻する。問題は投資する側とされる側との信頼をどう取り戻すかなのだろう。

産経抄 産経新聞 10/25

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突然の幸福に戸惑わないために・・・  産経抄 八葉蓮華

2008-10-24 | 産経抄(コラム)
突然の幸福に戸惑わないために・・・  産経抄 八葉蓮華
経済アナリストの森永卓郎さんは、ミニカーからペットボトルのふたまで、幅広いコレクターとしても知られている。その森永さんが、手に入れたいもののひとつに挙げているのが、『「その日」から読む本 突然の幸福に戸惑わないために』というタイトルがついた小冊子だ。 ▼1000万円以上の宝くじに当たった人にしか配布されないから、限定品には違いない。弁護士や臨床心理士といった専門家が、大金を手にした人のために、心構えや使い道、あるいは「誰に当籤(とうせん)したことを知らせるか」について、アドバイスをしている。 ▼平成16年の夏に、宝くじで2億円を当て、現金を受け取った岩手県一関市の42歳の女性も、この冊子に目を通したはずだ。しかし、知らせる相手を間違えた。当時、女性と交際していた51歳の男が、女性を殺害した容疑で逮捕された。警察は2億円の行方などを追及している。 ▼年間数百人単位で誕生する、宝くじ長者のなかには、かえって浪費して破産したり、人間関係がおかしくなったり、今回の事件のように、犯罪に巻き込まれる例も少なくない。冊子が作られたゆえんだ。 ▼「水屋の富」という落語の演目がある。飲み水を売り歩く水屋が、富くじで千両を当てる。隠し場所に困ったあげく、畳を上げて縁の下につるしたものの、心配で夜も寝られず、仕事にならない。とうとう泥棒に入られてしまう。 ▼「これで苦労がなくなった」とほっとする水屋のつぶやきに、大勢の善男善女が共感する。持ち慣れない大金が転がり込んできたら、ろくな事がない、と。もっとも、そんな苦労をしてみたいのも人間の本性だ。かくして年末にはまた、ジャンボ宝くじの売り場の前に長い列ができることになる。

産経抄 産経新聞 10/24

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過疎化が進む・・・  産経抄 八葉蓮華

2008-10-23 | 産経抄(コラム)
過疎化が進む・・・  産経抄 八葉蓮華
日本海に浮かぶ竹島と東シナ海南部に点在する尖閣諸島は、どちらも日本固有の領土である。もっとも、実態は大違いだ。竹島(韓国名・独島)には、韓国の警察警備隊約30人が常駐し、その宿舎やヘリポート、砲台などが設置されている。 ▼黒田勝弘ソウル支局長によれば、最近では住民登録した住民のコンクリート家屋まであるそうだ。一方の尖閣諸島は、日本が実効支配しているものの、現在は無人島だ。なぜか政府は日本人の上陸さえ許さない。 ▼平成9(1997)年に、沖縄県石垣市議の仲間均氏が、行政区域の視察のために、尖閣諸島の魚釣島を訪れ、小紙の記者が同行取材を行った。このときも官房副長官は、「遺憾」を表明した。島の領有権を主張する中国、台湾のマスコミが大喜びで報じたことは言うまでもない。何を遠慮しているのか。自国民がその土地で暮らしの根を張ってこその、領土ではないか。 ▼東京版の1面で、宮本雅史編集委員が連載している「対馬が危ない!!」を読んで、そのときの思いが蘇(よみがえ)った。過疎化が進む対馬の人口の、3倍近い韓国人観光客が押し寄せているという。といっても、経済的に潤っているのは、韓国の船会社と韓国人経営の飲食店だけだ。 ▼集団万引や魚の乱獲などのトラブルも頻発している。何より気になるのは、韓国資本による島内の不動産の買い占めだ。島にある海上自衛隊の基地は、日本にとって、最重要の国防ラインである対馬海峡を監視している。 ▼その敷地の隣接地まで買われていたとは。国境の島に住む人々が、本土から見放されたと感じるようになったら、いくらレーダーや戦闘機を配備しても、領土を守れるはずがない。対馬の危機は、日本の危機だと、思い知らされた。

産経抄 産経新聞 10/23

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歌舞伎の伝統 新しい時代・・・  産経抄 八葉蓮華

2008-10-22 | 産経抄(コラム)
歌舞伎の伝統 新しい時代・・・  産経抄 八葉蓮華
もうすぐなくなる、と聞いてかけつけるのは本当のファンではないが、会議を抜け出して銀座に出かけた。かねて建て替えが噂(うわさ)されていた歌舞伎座が1年半後に取り壊されることが正式に発表されたからだ。 ▼昼の部の「魚屋宗五郎」は、菊五郎と玉三郎の顔合わせとあって1階の桟敷席から4階の幕見席までほぼ満席だった。1200円払って4階まで急な階段をかけあがったが、エレベーターはなく、お年寄りにはきつい。座席も一昔前のままでお世辞にも快適とはいい難い。 ▼物資不足の終戦直後に再建されたため耐震性にも問題がある。それでも天井桟敷の人々は、「改修すれば十分使える」と残念がる。桃山期の社寺建築を意識した豪壮な芝居小屋が銀座から消えるのは文化的損失といっていい。 ▼劇場を経営する松竹は「新しい時代にあった劇場に建て替える」というが、古い芝居小屋を地域活性化と商売に生かした例がある。「こんぴらさん」で有名な香川県琴平町の「旧金比羅大芝居(通称・金丸座)」である。 ▼金丸座は天保6年(1835年)に建てられた現存する芝居小屋としては最古級のものだが、長く廃屋になっていた。これを地元の人々が復元し、昭和60年に歌舞伎公演も復活。江戸の芝居見物気分が味わえると大当たりをとった。毎年春の公演には全国から観光客が押し寄せ、簡単に切符がとれないほどだ。 ▼新しいオフィスビルにできる劇場は、平成歌舞伎にふさわしい檜(ひのき)舞台になってほしい。ただ、登録有形文化財にもなった建築物を無にするのは、実にもったいない。何より空襲で劇場を焼失し、存亡の危機に立たされた歌舞伎の伝統を守り抜いた先人に対し、申し訳がたたない気がするのは小欄だけだろうか。

産経抄 産経新聞 10/22

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世界ランキング 柔道改革・・・  産経抄 八葉蓮華

2008-10-21 | 産経抄(コラム)
世界ランキング 柔道改革・・・  産経抄 八葉蓮華
男子テニス界のホープ、錦織圭(にしこり・けい)選手(18)は、昨年初めに603位だった世界ランキングを、最新の64位まで上げた。今年に入って、2月に日本人男子2人目となるツアー優勝を飾った後も、全米オープンで4回戦に進むなど、着実にポイントを稼いだ結果だ。 ▼同じようなランキング制度を導入し、テニスの四大大会のように、フランス、日本などで「グランドスラム大会」を開催することを、国際柔道連盟(IJF)が決めたという。五輪の出場も、ランキング上位者に限られる。 ▼つまりアテネ以後、わずか4大会しか出場しなかった谷亮子選手が北京五輪の代表になった「実績重視」の日本の選考が、完全否定されたことになる。柔道改革が欧州主導で進められるのを、嘆いても仕方がない。 ▼今や世界最大の柔道大国フランスの競技人口は、“本家”の3倍以上だ。今後は、米国に拠点を置く錦織選手のように、欧州の大会を中心にポイントを稼いで、トップを狙う日本選手も出てくるかもしれない。そのなかで語学力を磨き、人脈を築いて、将来IJFで重きをなす。そんな長期的な戦略も必要でないか。 ▼テニスの話に戻れば、四大大会のなかでも、もっとも格式が高いウィンブルドン大会では、年々派手になるプロ選手のファッションの流行に背を向け、いまだに「白いウエア」しか認めていない。これに倣って、日本開催のグランドスラム大会では、カラー柔道着を締め出し、白の柔道着に統一したらどうだろう。 ▼それはジョークにしても、「聖地」をアピールする方法を何とか考えたい。もっとも、大会がいくら盛り上がっても、自国選手がちっとも活躍しないという意味の「ウィンブルドン現象」まで、まねることはないが。

産経抄 産経新聞 10/21

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「幸せ」の2文字・・・  産経抄 八葉蓮華

2008-10-20 | 産経抄(コラム)
「幸せ」の2文字・・・  産経抄 八葉蓮華
詩人の大木実に「辻野先生」という作品がある。「詩ができました 先生みてください 本を読む楽しみを 文を綴(つづ)る喜びを 教えてくださった 辻野先生」。大木は、大正2(1913)年、東京・本所の電気工の家に生まれ、平成8(1996)年、83歳で世を去った。辻野先生は、尋常小学校3年のときの受け持ちだ。 ▼教科書以外の本を知らない大木たちのために辻野先生は、毎月自分の小遣いで児童雑誌の「赤い鳥」を買い、童話と童謡を教えた。このとき読書の習慣がついていなかったら、数年後神田の古本屋で、室生犀星の『愛の詩集』と出合うことはなかった、という。 ▼詩人になっても、先生のことを忘れない。詩はこう結ばれる。「みてください 先生 辻野先生 あやまりを直してください 三重まるをください 三年生のときの宿題の 作文のように」。教師の指導力不足を問う声も、「モンスター・ペアレント」と呼ばれるバカ親の存在も、なかった。 ▼童話屋から今月出たポケット版の詩集で、この詩人を知った。妻が米をとぐ音を聞いて、幼いころ死別した母の後ろ姿が蘇(よみがえ)る。その妻に召集令状が来たことを告げられないつらい日々もあった。南方から復員して、桜の花に「やり直そう」と誓い、わが子の誕生に、「熱いおもいがこみあげて」くる。 ▼ひとつひとつの詩から、つましいけれど、いやだからこそ、「幸せ」の2文字が浮かんでくる。詩集のタイトル『きみが好きだよ』は、「妻」という作品に出てくる。その言葉が、詩集を編む気持ちにさせた、と編者の田中和雄さんはいう。 ▼4人のノーベル賞受賞を知ったときの誇らしさとは違う、ほっとしたような気分でやはり思う。日本人でよかった。

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自然の条理に従って生きている・・・  産経抄 八葉蓮華

2008-10-19 | 産経抄(コラム)
自然の条理に従って生きている・・・  産経抄 八葉蓮華
今年は少し早いのだろうか。近所の垣根から、ヒイラギの芳香が漂い始めているのに気がついた。白くて小さな花は同じ季節のキンモクセイに比べ地味である。しかし、その香りの良さでは決して負けず、秋の深まりを感じさせてくれる。 ▼もうひとつ、この花樹の特徴は葉っぱの縁が鋭いトゲ状になっていることである。可憐(かれん)な花を守っているようだ。うっかりそのトゲに触れると、疼(ひいら)ぐ、つまりヒリヒリと痛む、というのでこの名前がついたという。転じて「柊」という字が当てられたらしい。 ▼そのトゲのために、日本では古くから魔よけや厄よけに使われてきた。農家の門口近くに植えたのは防犯の意味もあったのだろう。節分にはヒイラギの枝にイワシの頭をつけて戸口に飾った。こちらはトゲに加えイワシの臭気で鬼を追い払うということのようだ。 ▼もっとも、トゲが鋭いのは木が若いときだけだ。老木になると、葉の縁がすっかり滑らかになる。菱山忠三郎氏の『花木ウォッチング100』によれば、自然観察会で大きな老木のヒイラギを見せ「これは何の木でしょう」と尋ねても、そうと気づかない人が多いそうだ。 ▼年を経て円くなるというのは人の世界でも多い。だが日本という国を考えると、テロとの戦いには最初から尻込みする。海賊から自国の船を護衛する手だても持たない。これでは守るべき花や実が多いうちから、さっさとトゲをなくしたヒイラギのような気がしてならないのだ。 ▼そうかというと、いつまでたっても全身をトゲだらけのようにして、外に対して立ち向かう。少しは円くなっていただけないのかと思う人々や国々も多い。花樹たちの方がはるかに自然の条理に従って生きていることは間違いない。

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竜馬が舟で行った路・・・  産経抄 八葉蓮華

2008-10-18 | 産経抄(コラム)
竜馬が舟で行った路・・・  産経抄 八葉蓮華
大阪の中之島は、旧淀川が分かれる堂島川と土佐堀川との間にある。その狭い中州に大阪市役所や日本銀行大阪支店、中央公会堂などがたち、一大ビジネス街ともなっている。だがここは、日本の歴史を語る上でも忘れることのできない場所である。 ▼江戸時代、この中之島とその周辺には西日本各藩の蔵屋敷が軒を並べていた。ここに船で米や特産品を運び、近くの堂島米市場などで換金した。当時最大の経済センターである。オーバーに言えば、ウォール街のあるニューヨークのマンハッタン島のような所だった。 ▼人の動きも活発だった。司馬遼太郎氏の『竜馬がゆく』によれば、坂本竜馬は薩長連合を仲介するため海路、薩摩藩の屋敷に入った。幕府方の様子を探った後、淀川を舟で上り京都に向かっている。ちなみに、福沢諭吉もここの中津藩蔵屋敷で生まれている。 ▼そんな歴史の街をようやく電車が走るそうだ。「ようやく」と言えば語弊がある。これまでも東西に長い中之島を何本かの地下鉄が南北に通り抜けていた。しかし東西を結ぶ線がないため、一部は「陸の孤島」などとありがたくない呼ばれ方をされているという。 ▼最近では都心でありながら空き地も目立ち「都市計画の失敗」という見方もあったようだ。そこへ京都と大阪の淀屋橋とを結んでいた京阪電鉄が途中から枝分かれし、中之島の西端まで東西2・9キロを地下で走ることになった。明日いよいよ開業するそうである。 ▼むろん中之島の企業マンにとっては朗報だ。地盤沈下が著しい大阪経済の活性化にも一役買うかもしれない。だが歴史好きにとって中之島と京都とが直結することもうれしい。竜馬が舟で行った路(みち)を電車でたどってみるのも楽しい気がするからだ。

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においをかいでみる・・・  産経抄 八葉蓮華

2008-10-17 | 産経抄(コラム)
においをかいでみる・・・  産経抄 八葉蓮華
テレビドラマの祖母役で、かつお節を削りながら孫娘とあれこれ話すシーンがあった、と、女優の沢村貞子がエッセー『わたしの献立日記』に書いている。収録が終わると、若い女優がため息をついて聞いてきた。「沢村さん、おうちでもこんなことをしているんですか?」。 ▼「そうね、よくやってるわ」「アラ、スーパーへ行けば、チャンと細かくしたものを袋に入れて売ってますよ、知らなかったんですか?」。沢村は、「知ってはいるけれど、使いたくない、とは言えなかった」という。確かにスーパーを見渡せば、便利な食材にことかかない。 ▼冷凍野菜もそのひとつだ。たとえばインゲンだったら、筋を取る手間がいらず、そのまま切って、ゆでたり、炒(いた)めたりできる。必要なだけ袋から出せばいいから、少量使うときも重宝する。東京都八王子市の主婦が食べたその冷凍インゲンから、基準の3万4500倍という高い濃度の殺虫剤ジクロルボスが検出された。 ▼中国で製造されてから、日本の売り場に並ぶまで、何度も行われた検査をかいくぐってきた。ギョーザ中毒事件もまだ解明されていない。つまり今のところ、猛毒の混入を防ぐ手立てがないということか。 ▼女優業のかたわら、夫のために丹精込めた食事を作り続けた沢村は、冷凍庫を愛用した。といっても、中身はすべて手作りだった。ゴボウ、タケノコ、干しシイタケを細かくきざんで炒め、みりんやしょうゆでゆっくり煮込んだ自家製「すしの素」や、出盛りのグリーンピースをさっとゆがいて小分けしたものなど。 ▼とてもそこまではできない、という向きは、せめて市販の冷凍食品の袋を開いたら、においをかいでみる。こんなひと手間をかけて身を守るしかない。

産経抄 産経新聞 10/17

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