goo blog サービス終了のお知らせ 

goto_note

西東京市・北海道富良野の森林を舞台にした遺伝,育種,生態などに関する研究ノートの一部を紹介します

Lat45

2007-10-25 | フィールドから
・北海道の演習林会議に出席のため、北大の天塩研究林へ。昨日は午後4時から会議、終了後、懇親会。2年ぶりの参加だが、今回は札幌や苫小牧、京大などが欠席していて少々さびしい。飲み会の中で、北大のT氏から、論文にはならないが年報には記載できる、現場職員の経験的な技術のデータベースを作る、という話を聞く。インターネット時代における技術の発信としては、確かに一つの大きな力になると感心しきり。



・本日は、天塩研究林のエクスカーション。まず、D1のKくんの火入れ調査区を見せてもらう。灯油バーナーで4箇所の林床を強さを変えて焼いている(町や消防署への連絡、防火帯設置、火入れ後の見回りなどは大変だったらしい・・・)。Kくんの実験は、昔から行われている”火入れ地拵え”によって、土壌条件がどのような影響を受けるかを科学的に検証する、というものである。ササの回復が想像以上に早く、火入れすれば、そう簡単にセーフサイトを作れる、というものではないようだ。これぞまさに、演習林ならではの実験である。ちょっとうらやましい・・・というか、かなり悔しい。Kくんには、土壌断面を簡単に作成できる工具を紹介していただく。これは”買い”だ!



・次は、30mのCO2フラックスタワー。ここが特徴的なのは、針広混交林にタワーを建てて、森林が存在する状態からCO2の収支測定を開始し、その後13haもの範囲を皆伐してカラマツを植栽することによって、伐採の影響と若齢林のCO2収支の変化を明らかにしていることである。さらに、森林全体ばかりでなく、自動開閉するチャンバーを用いてササ、土壌、カラマツの収支をミクロスケールでも押さえている。



・仕掛けが大きくて、ストーリーはシンプルなので、実にインパクトがある。とにかく30mのタワーの上から皆伐、植栽後を眺めるだけでも圧倒的である。タワーからは演習林の東側に広がる蛇紋岩地帯のアカエゾマツもよく見えた。そうそう、天塩演習林の広さは当演習林とほぼ同じである。東側は蛇紋岩、西側は褐色森林土にくっきり分かれており、西側の針広混交林では、トド、エゾ、カンバ(シラカンバとダケカンバが多い)、ナラ、シナ、タモなどが分布している(なぜか、色がさみしいんだけど・・・)。



・蛇紋岩地帯では、アカエゾマツは実は地表から実生が出現している。しかし、稚樹のステージまでは至っていない。葉の形態をさっと見る限り、あまり特徴的には見えない。成長もけっして悪くはないようである。





・エクスカーション中に北緯45度を超える。当方の最北記録更新である。それにしても、他の演習林を見せてもらうのは実にいい勉強になる。操作実験の規模の大きさには感銘を受けるし、山自体もとても面白かった。足寄のT氏の言葉を借りれば、”富良野辺りの中央部が一番richで、北に行くほどpoorになる”、ということが実感できる。richな森林を生かしたユニークな研究を展開しないとイカンですなあ・・・。



・最後に、天塩川の支流でサケが上ってきているのを生まれて初めてみた。既に、繁殖のピークは過ぎ、多くの個体が朽ち果てている。TVなどではよく見たシーンだが、”生と死”が静かに寄り添っている姿を見せつけられると、何かを感じずにはいられない。

雪山登山

2007-10-19 | フィールドから
・昨日に引き続き、11林班、27林班、大麓山山頂付近の4サイトのロガーデータ回収と冬支度に行く。麓郷街道の紅葉はいよいよ深く、鮮やかである。インドネシアの留学生Bさんも大喜びで記念撮影。この時期、針葉樹の緑と広葉樹の黄色、オレンジ、赤のコントラストが見事である。



・晴天ではあるのだが、大麓山山頂付近にやや雲がかかっているので晴れるのを待つことにして、12林班のエゾマツ試験地の木枠設置とロガー(一部)設置。こちらはすんなりと終了。11林班も終了していよいよ山頂へ向かうが、雲はますます厚くなってくる。



・1100mからの最後の急な登りは既に雪道。もう一度、雪が降ったら行くことができなくなるところだった。危ない、危ない・・・ぎりぎりのタイミングである。登山道も既に雪道。滑るので、思ったよりも体力を使う。途中のカーブで休憩しているうちに、さらなる雲の塊が押し寄せる。今日は山頂からの大雪山系の眺望が絶景だと思ったんだが無念。



・山頂は信じられない体感気温。完全に雪山登山である。とりあえず、全データロガーは正常に動いており、無事に回収できた。データをちらっと見た限り、さすがに山頂は寒そうである(当たり前か・・・)。さてさて、じっくりと見るとしよう。

トリプルブッキング

2007-10-18 | フィールドから
・来客3件。トリプルブッキングである。午前中、名古屋大のT氏と道立林業試験場のK氏を樹木園とカラマツ雑種試験地を案内。折りしも本日は樹木園の播種日。みんなで播種をしている様子を見ていただく。今年から立ち枯れ病防止を目的に、播種床の焼却している。焼却したところとコントロールでは色がはっきりと異なる。



・案内した中では、ブナ産地試験とトドマツ標高別試験に興味を持っていただけたようである。やはり産地試験は一目瞭然なところが強い。

・樹木園内でウダイカンバ密植試験地の測定をしている東京大のUくんを放置して、飯島くん、東大のBさんとともに、13林班と前山のアカエゾ湿地林にいく。紅葉が本当に美しい。ロガーを冬仕様に変更したのだが、吸い上げるパソコンの調子が悪く、危ないところであった。この仕事ではいろんなことが起こるからねえ。明日も何とか天気が持ちそう。大麓山頂トライアルである。


冬虫夏草

2007-10-11 | フィールドから
・エゾマツ人工林の現地検討。高齢級のエゾマツ人工林を3箇所回る。最も古いのは大正時代に植林されたもの(1914年植)。不成績な場所には、トドマツが補植されている。このトドマツは北海道でも最も古い造林地の一つらしい。



・東山の人工林は成長も悪くない。ゲストから円盤ディスクを採取して年輪を調べてはどうかというアイデアを頂く。また、土壌についても簡単な調査をすることに・・・。やっぱり文殊の知恵である。今年度の伐採予定の人工林については、伐根の腐朽調査をしていただくことになった。エゾマツ人工林の腐朽は調査事例も少ないので貴重な報告になる(はずである)。



・ところで、エゾマツ幹にちょっと見たことのないセミがとまっていた。当方は別に不思議にも思わずに、「まだいるんだなあ・・・」くらいにしか思わなかったのだが、実はこれは冬虫夏草の仕業らしい(セミは既に死亡している)。枝に止まったまま落ちずにいるのが、考えてみれば妙なわけだが全然考えもしなかった。よく見ると、ほとんどのエゾマツにセミがくっついている。異様な光景である。

雪虫のころ

2007-10-10 | フィールドから
・昨日検討した12林班に更新用各種母材を設置する。6処理ということで、ポールを中心に6角形に設置すると、何か怪しげな儀式をやっているような気になる。地がきと天然林で植生と落ち葉の被度などを調査しておく。地がき場所では、当然のように実生は生えていない(やったばっかりだから)。植生も0%である。落ち葉の量は場所によって意外とばらついている。種類はダケカンバがほとんどだが、ハリギリなどもある。



・天然林では、昨日設置したばかりなのにいきなり場所を忘れていたりして、探すのに手間取る。ササを刈り払って同様に設置。当然ながらクマイザサの被度が80%を超えている。高木種の実生はほとんどないが、少し標高の低いところではシナノキがササの下で多少更新していた。意外と暗くても大丈夫なもんだ。

・事業区会林道をひた走って西瓜峠に抜ける。ストローブ人工林では、ストローブの薄い緑にツタウルシの黄色、オレンジ、赤とがよく映えている。樹木園まで降りてくると、ふらふらと雪虫が飛んでいる。現場では見なかったのだが・・・。今年は雪が案外早いのかもしれないねえ。

紅葉の季節

2007-10-09 | フィールドから
・個性的な4名のゲストを迎えて、12林班でエゾマツの更新試験を行うための現地検討。また紅葉が進み、ずいぶんと赤や黄色、オレンジが目立つようになった。里山でも、林床のツタウルシが実にいい色をしている。



・地拵え場所と天然林内の比較を行うことで話がまとまり、明日の設置場所を決めていく。まさしくランダムという感じ。これは、1つ1つの環境条件をいかに定量するかが問題だろうな。



・ふと道端に目をやると、エゾマツが球果からそのまま発芽しているものを発見。ストローブマツでは見たことがあったが、エゾマツでは初めてである。変。



・ダケカンバに巻きついたツタウルシも赤く色づいている。これで日が差してくれると最高なんだが・・・。帰りがけには虹が見えた。明日は晴れてくれる、といいのだが・・・。




・苗畑では、明日の試験のための下準備。あーでもない、こーでもないと話しながら、結局、樹木園スタッフに手伝ってもらうことに・・・。今日はずいぶんと寒かったが、実は大麓山頂は雪が降ったらしい。ショック。19日、大丈夫か・・・。

サバンナ的光景

2007-10-04 | フィールドから
・Iさんに付き合っていただいて、12林班のエゾマツ林の現地検討。北西斜面と南西斜面で2つずつプロットを選ぶ。実際のプロットでは思った以上に林床が均質ではなく、マイクロサイトや潅木の下を選んでしまうと雪解け時期に影響がもろに出そうだ。伐採を取りやめたプロットT3は緩斜面で均質で、実にいい感じのエゾマツ林である。林床はクマイザサがかなり濃いが、播種実験などをするには実にやりやすそうだ。



・それにしても、今年はエゾマツの種子はなりが悪い。ウダイカンバも全然ダメである。アカエゾマツ、トドマツもダメ・・・。ミズナラも並みの下という感じで、ヤチダモの一人勝ち(?)といったところか・・・。



・南西斜面の方のプロットが傾斜が強く、どうするか考えどころである。後は当日に考えるということで、山部に戻る。ゲートを出たところではシカが死んでおり、それにトビが群がっている。既にあばら骨はむき出しになっており、アフリカのサバンナを思わせる光景である(トビはさしずめハゲタカか・・・)。周りは牧草地で何もないところなのだが、どうしてこんなところで死んでしまったのであろうか・・・。なぞ,だ。

・山の紅葉は日に日に深くなる。大麓山も山頂までくっきりと・・・。空の青、牧草の緑との対比が美しい。


大雪山系の冠雪

2007-09-30 | フィールドから
・地元の子供たちを連れて大麓山登山(公開事業の一つ)。今日は晴天で頂上まですっきりと見渡せる。1000mから登山開始。登山口まで休み休みの歩行。1200mから頂上までは登山道で、一人ずつが通れる道になっている。途中、Oくんのナキウサギ調査用の自動撮影装置を発見。林道を狙うアングルのものは見事にシャッターが切れた。ちゃんと動いているようで一安心。回収した時にどんな動物が写っているのか、楽しみだねえ(当方の足もその一枚だけど・・・)。



・ようやく山頂に着くと、ニュースで聞いたとおり、なるほど初冠雪の大雪山系はうっすらと雪化粧。これまた、なかなかいい景色である。しかし、山頂はやはり気温が低く、長い時間は居ることができない。記念写真を撮って、早々の下山。1100mまで降りたところで食事。山の上で温めたきのこ汁が美味しかった。



・昼飯後に寝ていたら、子供たちから「ひげ」が”ムーディ○山”に似ていると言われてしまう。当人とすれば心外なのだが、最近、ひげがうっとうしかったのも事実だ。それにしても最近、売れない芸人に似ていると言われることが多いような気が・・・なんでだろ?

岩魚沢のハリギリ

2007-09-20 | フィールドから
・京都からハリギリ葉(と葉についている病気)のサンプリングに来た阪口くん達を連れて、岩魚沢へ。阪口くんは、ハリギリとハリギリの生葉に寄生するハリギリ褐班病菌の系統地理、ホストの遺伝的多様性と寄生率に関する研究を全国規模で行っている。北海道では、ここ富良野を皮切りに、さらに10箇所(?)くらい周る予定らしい。今年は前山方面ばかりなので、久しぶりの岩魚沢は実に新鮮である。試験地内の個体密度は低いことが予想されていたので、中央部付近の比較的多いプロット周りを中心に歩く。かなりの悪天候が予想されたが、幸いなことにそこまでひどくはならずに済んだ。これまた同行した津田さん効果だろうか・・・。



・この病原菌は、葉に褐色の斑をつくるので、素人でもすぐに分かるようになった。岩魚沢のハリギリは、ほとんど全個体がこの病気にかかってはいたが、その程度はかなり軽微である。本州では葉が真っ黒になって落ちるような個体もあるらしいので、それから考えればたいしたことはない。以前、二次林のハリギリがなぜか枯れていくという話を技術スタッフから聞いたのだが、この病気と関連するのだろうか、ちょっと興味がある。

・岩魚沢森林内のハリギリは下枝が枯れ上がっていて、12mのカマつき樹高棒でも太刀打ちできないのが結構あった。発見だったのは、葉がデカイせいで遠近感がおかしくなる、ということである。いつもの感覚だと、”この枝なら届く!”はずなのだが、カマは空を切り、枝葉は1mほど上にある。やっぱり葉が特大サイズだからなんだろうか。



・ハリギリの中にはDBH80cmを超える特大サイズもある。こうした個体の幹はえもいわれぬ風格が漂っている。樹皮の切れ込みとデカイ葉が揺れているのを見ると、まるで恐竜がでてきそうな錯覚を覚える。太古の浪漫をなぜか感じてしまう大好きな樹種、である。


焼松峠2007調査完了

2007-09-19 | フィールドから
・岐阜大学の津田さんを迎えて焼松峠の二次林地がき試験地の更新調査。天候がかなり悪そうだったのだが、そこは晴れ男の津田さんだけに朝から晴天である。試験設定から6年目になるのだが、5年目は調査しなかったので、4年前と比較しながら調査を進める。4年前にはウダイカンバが爆発的に増えたわけだが、そいつらが定着しているかどうかが検討課題の一つであった。

・主要樹種の組成はあまり変わっていないが、増減の傾向は樹種によってかなり違う。イタヤカエデは倍増、ヤチダモは横並び、シナノキは漸減、ハリギリは半減といった感じである。問題のウダイカンバであるが、最初に定着したものは漸減だが、4年前に爆発的に増えた小さな実生たちは9割がた消失している。少数派だが、カツラは全滅である。

・ウダイカンバは草本層から出たところをシカかウサギに食べられている。こうなると、カエデ林になるんだろうか・・・。今年はヤチダモとシナノキが大豊作なので、また勢力図は変わりそうだ。予断を許さない。とにもかくにも、雨は降らずに調査は完了。ほっと一息、である。

・平坦部と斜面部を比較すると、平坦部は当然安定しているが、斜面部ではかなり小さな地滑りが起こって、入れ替わりが激しい。ふうむ、一体全体どうなっていくのか分からないが、ゆっくりと確実に動いているんだねえ。面白い!