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西東京市・北海道富良野の森林を舞台にした遺伝,育種,生態などに関する研究ノートの一部を紹介します

IPOS案内

2007-09-13 | フィールドから
・IPOS(正式名称は忘れた・・・)案内で樹木園待機。街灯には大きな”ガ”が群がっている。このガが”クスサン”という種類だというのはOさんからの受け売り。今年は富良野では大発生しているようで、ゲオの駐車場でも大変なことになっていたらしい。妻は鳥と大型の虫が苦手なのだが、そこではカラスがクスサンを狙って飛来するという、世にもおぞましい光景が繰り広げられていた、と震えながら(?)語っていた。樹木園ではカラスがいないが、カケスは食するという話。さぞや、食べ応えがあるはずである。



・IPOSでは、用意した即席資料を元に30名もの学生達に現地説明。カラマツ交雑育種から説明したが、次から次へと質問の手があがり、こちらがたじたじなる。フェノロジーと温暖化の関係については鋭い質問も飛んできて、答えに窮する場面が続出である。今回、カラマツ交雑育種、ミズナラのフェノロジー、ブナ、苗畑という順番で説明したが、やっぱり苗畑は最初がいいかもしれん。なかなかベストコースを見つけられずにいる。

・英語自体は嫌いじゃないのだが、久しぶりに説明しようとすると言葉が出てこない。さらにNativeではない癖の強い英語だと、相手の質問がなかなか理解できない。破れかぶれに返答を試みたものの、おそらく”とんちんかん”な答えをたくさんしてしまったことであろう。全くナサケナイ・・・。最後に鋭い質問を繰り返していたオーストラリアの女学生が、故郷の森林のポストカードをプレゼントしてくれた。ハンノキの湿地林の中に巨大なユーカリみたいな木が立っている。気の利いたプレゼントにちょっと気を取り直したりする。

・ようやく部屋で作業する時間ができたので、長池さんからのコメントに答えるべく、地がきサイトの上層木のデータを拾い上げて入力する。一通り入力できたのだが、飯島くんとやりとりをする中で、外挿データの一部に疑問が・・・。やっぱり試験地そのもののデータが必要だということで、改めて家捜しをすると、なんと生野帳の状態で当時の毎木データが出てきた。

・野帳からデータを拾って、エクセルで打ち込んで、材積に換算する作業などを行う。結局、3プロット以外は全て発掘できた。3プロットは外挿データでいくしかないだろうが、これで精度はだいぶ高まるはずである。さあて、結果がどうなるか・・。

ヤチダモ収穫完了

2007-09-12 | フィールドから
・樹木園の苗畑に10cm間隔で播種していたヤチダモを収穫。残り500個体の掘り取り、測定、写真撮影。ユンボで掘り取り、根についた土を振るい落として、地上部と地下部に分けて乾燥させる。さらに、葉の面積と乾燥重量を測定し、SLAを算出する予定。



・しばらく苗畑作業を手伝ったが、後はひたすら写真撮影。2人がかりで撮影しても、いつまで経っても終わらない。一つの束が終わるころには、次の束が運ばれてきたりして、気が遠くなった。しかし、Oさんのアイデアで封筒に書かれた番号を写しこむようにすれば、番号を書かずにすむことが分かる。このシステムが開発(?)されてから、一挙に作業効率が良くなった。ついに15:00前に苗畑作業は完了し、撮影もほぼ目処がついたので休憩。



・少し前までヤチダモがざくっと立っていたところが平地になっている。うーん、感動だ。2004年に種子取りをしてから、ついに収穫までこぎつけた。播種から苗畑管理、恐怖のバッタとの格闘に至るまで、苗畑スタッフには大々的に協力をしていただき感謝の言葉が見当たらない。そのご恩に報いるためにも、ヤチダモ研究の集大成として、新しい世界を創出するような面白い論文を書きたい。

雨降り調査

2007-09-10 | フィールドから
・台風が去ったというのに天気が悪い。今日はヤチダモ収穫の続きを予定していたのだが、苗畑作業は無理ということで水曜日に延期。ということで、室内作業かと思いきや、前山大型試験地の測定が遅れているということで、気合でやってしまうことに決定。水曜日は参加できなくなってしまったので、本日の測定に参加することに・・・。

・前山では雨が降っていたが、もはやここまで来れば覚悟は決まっている。前回50個体を残していた中途半端プロットを軽く片付けると、次は250個体ほどの個体数が多いプロット。しかし、いい感じのテンションで午前中になんと完了。4人組だったせいもあるが、やっぱりみんなが作業に慣れているので仕事が早い。

・10年前には生存していた個体が枯死し、倒木になっているものはたくさんあるのだが、そのなかには既に倒木更新の母材となっているものもあったらしい。倒木の供給量、倒木になってからの更新母材として機能するまでの期間、などについても、こうした試験地をうまく使えばある程度は推定することができそうだ。午後からも230個体ほどのプロットを1つ片付け、これほどの悪条件にもかかわらず、かなりのハイペースで達成感!しかし、雨降り調査で、普通紙の野帳は厳しい・・・。今度の測定では、最初から防水紙に印刷するようにした方がいいかもしれないね。

・さて、地がき論文の原稿を見ていただいた長池さんから早くもコメントが戻ってきた。とても丁寧に見ていただき、重要な指摘をいくつか頂いた。やはり、この分野は関連論文の読み込みが浅いだけに、「何がこれまでの研究で欠けていたか?」についての基盤が弱いことがよく分かった。早速、頂いたコメントを元に、修正方針を考えなくては・・・。

天気予想

2007-09-06 | フィールドから
・本日も前山大型試験地の測定である。うす曇のなか、アカエゾマツの湿地林の一部が含まれるもっとも遠い部分の測定。想像以上のササの高さに皆さん、悪戦苦闘している様子。湿地帯と山地帯の境界域では、トドマツ、エゾマツ、アカエゾマツの稚樹が共存しており、中には雑種もありそうな雰囲気。境界部分の環境と3種の分布パターンを調べるだけでも興味深い結果が得られそうだ。

・午前中に1プロットを終了し、2プロット目の50個体まで終えたところでお昼。”3時半までは降らない”というI氏の予言もむなしく、昼食中にぽつりぽつりと・・・。木陰に避難している間にだんだんと強くなるが、1時直前に弱めになったところで再び出撃。さらに50個体を終えたところで本降りになって断念。あと30分持ってくれたらよかったんだけど・・・。

・明日の台風来襲にそなえて、そのまま演習林案内。天然更新試験地、七曲、湧き水へと向かう。湧き水ではマイナスイオンを浴びてリフレッシュできた、だろうか・・・。帰り途中に、本流沿いのカツラ大木、ハルニレ大木などを見学。ゲート付近の皆伐造林地では、カツラやウダイカンバ、オニグルミ、ヤチダモなどがびっしりと更新していて足の踏み場もないくらいになっていた。

・明日は、調査不能だろうという予想のもとに、皆さんの意識は一気に”観光モード”になりつつある・・・。別れをつげて、山部に戻ると、あまりの台風ののろさに明日は調査できるかも・・・、とのこと。早速、モード切替を依頼する連絡。さてはて、この天気、一体どうなるか!?

前山大型試験地測定

2007-09-05 | フィールドから
・昨日から前山の大型試験地測定が始まっている。今回は演習林各地から応援に来ていただいたので総勢25名程度の超パワープレイである。この試験地は50×50mのコドラートが連続して145個設定されている。今年はそのうちの99箇所を測定する予定である。昨日は久しぶりということもあって、個体を探すのに戸惑ったりしてなかなかはかどらなかったが、今日は昨晩の燃料補給のおかげか、のっけからいいペースである。

・我らが二班は、250本ほどのプロットを午前中に一つ完了(つまりha当たり1000本)。うむ、達成感。ところで、試験地内の5cm以上の個体は全て個体識別してあり、胸高位置に赤ペンキが塗ってある。個体識別の方法として、このサイズのステンレス札とステンレス釘の組み合わせに辿り着くまでに相当の試行錯誤があったと聞いている。今回の調査では、個体によっては釘を少し引き抜いたり、ペンキを塗りなおすというのも重要な作業となっている。



・前回の調査で新たに5cm以上に達した個体(進界木とよぶ)の番号が飛んでいるので、もれなく調査することが重要である。ときおり、進界木のデータもチェックしながら進めるといいようだ。ここ前山では保存林だけに”つる”も伐らないことになっている。しかし、巨大化した”つる”をかなづちで引き離すのは容易ではなく、かなりの時間を要する。



・結局、2個のプロットと50本だけ調査してあった残りプロットを完了。ちょうど時間となった。足がくたくたになったが、ゆっくりと、だが着実に調査は進んでいる。明日も天気が持つといいのだが・・・。全体的に、お祭りムードから職人ムード(?)へと変貌しつつ・・・ある。

ヤチダモ収穫

2007-08-31 | フィールドから
・昨日はアカエゾマツの現地調査で土壌調査。採土円筒で各サイトの土壌サンプルを採取する。これまで土壌にあまり注目することはなかったが、環境による土壌の違いの明瞭さに驚く。これは確かに地上の植生にも強い影響を及ぼしているはずであろう。とりあえず、湿地は確かに湿めっており、27林班は乾いている(砂質)、という当たり前のことがよく分かった。これが数値となって現れるとどうなるか、楽しみである。



・本日は、苗畑に植栽していたヤチダモの収穫、測定、サンプル処理を行う。もはや60-70cmの高さに成長しているヤチダモの2年生苗を惜しげもなく収穫。ユンボで掘り取り、根についた土を払い落とし、高さと根元径を測定した後、地上部と地下部に切り分けて乾燥重量を測るために袋に入れる。さらに、葉面積測定用に一枚(といっても羽状複葉だけど)の葉を採取する。

・苗畑スタッフ全員+高橋さんに手伝ってもらったので、苗畑での作業はがんがん進むが、写真撮影が追いつかない。北村さんと飯島くんにも手伝ってもらい、スキャナー、デジカメ2台を駆使して作業をする。完全に撮影機械となって、淡々と写真撮。一人200枚は撮影しただろうか・・・。微妙に葉が重なってしまうのを少しずらしたりするのに意外と時間がかかる。たまに何も手を加えないでも写真を取れるのが来ると妙に嬉しかったり・・・。しかし、冷静になると、1200個体もの面積を計算させるだけでも大変である。いつの間にか、またもや力技的な研究になりつつある・・・。



食欲の秋

2007-08-29 | フィールドから
・アカエゾマツの合同調査。今回は土壌サンプルの採取と紫外線測定、ならびに大麓山山頂付近の個体の樹冠幅測定と球果採取という内容である。今日は、大麓山の仕事を一気に片付けることに。登山道に、リスのものと思われるハイマツの食痕。これはいいエネルギー源だよねえ。人間が食べたっておいしそうだ。よく見ると、枝の上にも饗宴の後が・・・想像するとかわいい。



・6月末の調査であれほど花が咲いていた大麓山山頂の集団だが、思ったよりも球果が目立たない。開花スコアのデータと見比べてみても、それなりに咲いたはずの個体で数個しかなっていないものも・・・。よく見ると、花が傷害を受けたのか、球果になりきらなかったものが相当に多い。やっぱり厳しい環境なのだなあと改めて実感。



・少し下がった1350m付近の集団では、球果の”なり”が少し良い。資源が多いと良くなるということであろうか。”持って帰った球果を母樹ごとに並べると、色や形が実に多様である。単純に面白い。


100年カラマツ

2007-08-21 | フィールドから
・樹木園裏のカラマツ林は植栽されて今年でちょうど100年を迎える。これほど高齢級のカラマツがまとまって植栽されているのは、北海道広しと言えども極めてまれである。ということで、みんなで一気に測定をすることに。140個体以上が残っているので、DBH測定、樹高測定、樹木位置図測量などいくつかの組に分かれる。数えてみると総勢10名以上のパワープレイである。



・当方の役割は、”アドバイザー”ということになった。アドバイザーというといかにもカッコいいが、結局、うろうろしているだけであんまり役に立っていない。唯一、作業風景やカラマツの写真をたくさん取ったのが唯一の”仕事”といえるだろうか。しかし、いつも概観しか見ていない100年生のカラマツを、改めて間近で見て回ることができたのは実によかった。100年生としては決して大きいとはいえないが、胸高直径は60cmを超えており、前回の93年生時に比べても2cmくらい成長している。樹高は35mを超えているものがあった。

・よくよく見ると、かならずしも林縁が大きいわけでもなく、むしろ手前側(林床がササではないところ)で樹高が急に低くなるようだ。個体ごとに見た場合、「横に太るか、縦に伸びるか」がこうした高齢級の人工林でどのように決まるのだろうか・・・。x軸にDBH、Y軸に樹高をとり、シンボルを林床タイプや林縁か林縁以外で区別してみるといいかも。

・ところで今回の樹木位置図も作成では、Timbertech社から2名ほど来ていただき、デジタルコンパスのデモンストレーションをしていただいた。当方のレーザーAce300を愛用していたのだが、この機種は斜面だと誤差が大きいらしく、こうした欠点をカバーする機種が次々と出てきている。個人的には、測定と同時にXYZの座標が出るソフトにかなり魅力を感じた。技術スタッフもこのシステムにはかなり手ごたえを感じていたようである。



・最後にカラマツ林を二つに分ける小さな沢を測量する。図面には載らないほどの沢であるが、こうした小沢はこの地域の山には無数にあるとは技術スタッフKくんの言。今回、小沢の右と左で何か違うものが検出されるだろうか・・・。ちょっと楽しみである。


Yale大学案内

2007-08-17 | フィールドから
・夏季休暇ボケの頭のまま、Yale大学一行、Graeme教授と7名の学生たちを案内する。学生達はみんなデカイが、実は歳は若く30歳代前半が多かった。Graeme教授は73歳という高齢にもかかわらず、パワフルに指導をしている。教授から、アメリカ北部ではテーダマツとリギダマツの雑種第一代が造林樹種として用いられているという話を伺う。本日の案内コースは、樹木園、岩魚沢、湧き水、直営現場、経才鶴、東山というフルコース。



・経才鶴からの帰り途中に、倒木更新後に一列に成立した巨大な樹木群を見せる。その場で、施業の細かい点についてかなり突っ込んだ質問を受ける。Yale大学の造林学教室では、ここと似たような施業研究が展開されているらしく、傘伐施業、蓄積プロットの取り方、高付加価値広葉樹材の生産など、かなりコアな部分について議論を行うことができ、こちらも大いに勉強になった。天然林の状態もかなり似ているらしく、一度、現場を見てみたいという気になった。

・東山ではストローブマツの生産現場を見る。一人の学生はストローブマツを対象に研究をしているらしいが、ここでの成長は悪くなく、また節間の長さもアメリカに比べて短いということはないらしい。そうすると、必ずしも産地の問題とかではなく、単に量的にまとまらないのが問題なのだろうか・・・。つまり、人工林としてはむしろ成功しているといってもよいのかもしれない。




・それにしても、学生達は実に熱心だ。技術スタッフのNくんが感心していたが、経才鶴で遠景には目もくれないで、クマイザサの下層に出現する草本(エゾノヨツバムグラ?)を一生懸命探した人は、彼らが初めてではないだろうか。ところで、Yale大学でもここのストローブ林で行っているのと同じアイデアで、格子状皆伐を行っていると聞いて、なんだか嬉しくなった。考え方自体は決して間違ってはいないようである。

択伐林と保存林の樹木位置

2007-08-07 | フィールドから
・北海道とは思えないほど蒸し暑い日だ。今日は学生8名を引き連れて実習。前山の保存林と択伐林に設定されたプロットを利用して、樹木配置図を作成。学生達は最初は慣れない操作に戸惑っていたが、さすが大学院生ともなると徐々に段取りがよくなってくる。保存林内には90cmのアカエゾマツの立枯があり、大きなギャップを提供している。



・引率教員として来演された長池卓男さんから、生態系管理を重視した林業が最近注目されている、というような文脈で使える本”Maintaining Biodiversity in Forest Ecosystems”を紹介していただく。この本は、論文のイントロで使うには便利そうなので、早速注文することにする。そのほか、標高傾度と種多様性の関係についての論文など、色々と役に立つ情報を頂いた。

・さて、択伐林と保存林だが、一見して施業林では本数(副木)が少なく、ササの密度が高い、という印象である。また、樹種構成も同じようでいて微妙に異なるようだが、これは単に場所の違いということかもしれない。学生達には9日午前にプレゼンをしてもらう予定になっているのだが、どういう切り口で見てくるか楽しみである。



・保存林内には(あまり多くないものの)倒木があり、トドマツとエゾマツが倒木更新している。しかし、相変わらず倒木更新の写真というのはうまく撮れない。おっと、このブログを書いている最中に、ダニが歩行しているのを発見。恥ずかしい記憶が蘇る。さっきもちゃんとチェックしたのに、どこに隠れていたんだろうか。”お持ち帰り”しないように、皆さんもご注意を。