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西東京市・北海道富良野の森林を舞台にした遺伝,育種,生態などに関する研究ノートの一部を紹介します

UVデー

2008-09-03 | フィールドから
・天気が悪く、3時までは何とか持つか?・・・という天気予報。山頂の毎木調査はあきらめて、一日かけてUV測定をすることになる。低標高のUVとして27林班,25林班で測定し,事業区界を通って13林班湿地へ。ここでUVを測定した後,水位計ロガーのデータ回収も行うと,無事にデータが取れた。50cmくらいの水位の上下動が見られて興味深い。雪解け時期が一番水位が高いと想定していたが,8月中旬から再び水位が高くなっているようである。



・再び90林班のUV測定へ。途中で雨が降り出してきて,今日の調査はついに終わったか!?と思ったが,走っているうちに奇跡的に雨は止んだ。なんとか90林班でもUVを取れたので,ぐるっと回って25と27林班に戻って再測定。気がつくと2日間の走行距離が200kmを超えている。久しぶりの激走である(現在我が家には車がないので・・・)。



・前山の下湿地に水位計ロガーのデータ回収に行く。ここで,水位計ロガーからデータを回収しようとしたところ,反応がない。おかしいと思ってデータミニなるものを外すと,”コミュニケーションエラー”という標示。焦って”設定ボタン”を押したのが実は運の付きで、強制再スタートボタンを押していたことに気がついたのは,前山上湿地で同じ過ちを繰り返した後である。

・5秒間隔でロギングさせて,データ回収を手順どおりにやってみると今度は大丈夫。強制再スタートとデータ回収のボタンが同じ色で並んであるというところが,なんとも”あなどれない”機器である。そんなこんなで水位計ロガーについてはがっくしの結果だったが、UVが思った以上にデータが取れたのは運がよかった。

・夜はIくんのイヌブナ論文について二人から重要なコメントを頂いたり,KさんのIUFROプレゼンの練習を見せていただいて逆にコメントしたり,アカエゾプロジェクトの方向性についてさらに議論したり・・・と盛りだくさん。強化合宿みたいで楽しい!

富良野初日

2008-09-02 | フィールドから
・朝一番の飛行機で旭川へ。機内でIくんのイヌブナ実生定着論文の原稿を読む。時間が経過すると、色々と見えてくるものがあるもので・・・。いくつか検討事項を確認しているうちに旭川着。気温は27度程度だが湿度が低いせいか、体感気温は涼しい(といいつつ、富良野人にとっては暑いらしい)。



・富良野駅でKさんにピックアップしてもらって、山部へ。Iくんと合流して、久しぶりに揃ったチーム”アカエゾ”。車を乗り換えて、さっそく90林班へ。雨が降る前に土壌サンプルを採取しようという魂胆である。



・90林班はかなり砂質の強い土壌。10cmほど掘ってから土壌サンプルを採取。作業開始時点では、久しぶりの作業は段取りが悪いが、徐々にスムーズにいくようになる。前山2箇所からも土壌を採取、続いて、25林班へ。さくさく掘って、完了。温湿度ロガーも無事にデータ回収できた。




・25林班ではフキを何者かが食い荒らした跡が・・・。久しぶりに、「ほー、ほー」と叫んでみたり。食後に3人でディスカッション。やればやるほど、混迷の度合いが強まる本プロジェクトをどうするかについて、だいぶ整理されてきた。やっぱりディスカッションは大事だ。というか、こういうディスカッションにいかに飢えていたのか、よく分かった。

ハッカ油の効能

2008-08-31 | フィールドから
・森林教室では、5名の子ども達が参加してくれた。何とか雨は上ったものの、試験地名物、蚊がすごい。子ども達は森に入るというのに、なんと半そで半ズボンだったりするので、いきなりの猛攻を受けている。当方が持っているハッカ油を塗ってあげたところ、かなり虫除け効果が得られたようだ。やはり、市販のやわなヤツとは一線を画している。



・午前中に19種類の樹木をぐるりと回りながら説明。5名くらいだと、生き物や虫をのんびり観察することができる。なぜか、カナヘビの子どもをたくさんみることができた。クスノキのところでは、アオスジアゲハの幼虫を見てみんな感動していた。蚊も多かったが、バッタやコオロギ、カマキリなど、これでもかというくらい大量の虫を見ることができたようである。



・午後から樹木図鑑作成開始。拓本という木の肌を写し取る作業が木の幹が濡れていたためか、思いのほか苦労する。しかし、2時間ほどかけて、子ども達は一生懸命図鑑を作成。夏の終わりに学校の宿題でもないのに夢中になってやってくれているのを見ていると、こちらも嬉しくなる。



・帰りがけに晴天を眺めていると、積乱雲がもこもこと。家に帰って、夏休み最後ということで駅のそばのイタリアンレストランで食事をしたまではよかったが、帰りは豪雨となってしまい、全員ずぶぬれで自転車で帰った。ゲリラ豪雨、まだ続くのだろうか・・・。

タマバエ幼虫

2008-08-13 | フィールドから
・昨日は何年かぶりの夏風邪。珍しく胃にきてしまい、まるで立ち上がれなかった。夏風邪はきつい。皆さんもご自愛ください。



・久しぶりに田無に来たYさんとともにアオキ人工授粉後の結実調査。ほとんどは1個か2個が脱落しているだけだったのだが、No6だけはごっそりと脱落している。母樹の開花ステージの違いだろうか・・・。田無ではまともなアオキの実がほとんど見られないという話だったのだが、既に変形している実が多いように思える。タマバエに寄生された数をカウントするよりも、寄生されていない実をカウントした方が早い。



・変形した実をつぎつぎと割ってみるが、なかなか虫らしい痕跡が見えない。あきらめかけたところで、変色した部分を実態顕微鏡で見ると、なにやらうごめく透明の物体が・・・。おおっ、これこそタマバエの幼虫ではないだろうか・・・。何だか、”千と千尋の神隠し”でコハクリュウから出てきた虫みたいである。


標高とネズミ

2008-08-06 | フィールドから
・早いもので富良野最終日である。相変わらずの晴天。午前中に3区(930m)に行き,初日の残り分を調査。こちらの反復は生存数が多く,グイマツF1でも120本を越えている。しかし,ネズミの食害は相変わらず多い。本日は5人体制で調査することになったのだが,胸高位置を木材チョークでつける役目がどんどん進み,しばらく一人余ることになった。当方はいったん調査から離れて,写真撮影などをやらせてもらう。



・せっかくなので,この試験地の外観を撮影しようと思い立つ。しかし,いくつかの樹種が植栽されている様子を撮影するには,試験地から離れるために無立木地帯をしばらくさまようしかない。4区に比べればたいしたことはないが,3区周辺のネマガリもなかなかのものである。少々離れてもネマガリの中に隠れてしまって,一向に全体像が把握できない。ということで周りのネマガリを踏みつけて視界を確保。なんとなくではあるが,いくつかの樹種が植栽されている様子が撮影できた。学会などでタイトルバックとして使える絵になるか・・・。




・3区には,標高別のトドマツ相互移植試験地も併設されている。よく考えてみると,この区はじっくりと観察していなかったので,しげしげと眺めてみる。高標高産の針葉をみると,たしかに自己被陰の度合いが高いような・・・。標高に対する適応のプロセスを調べるには,やはり,葉密度やSLAなどのパラメータを取る必要がある。しかし,この区では球果がなるにはかなりの時間がかかりそうである。



・この標高になると,トドマツの生存率も成長も全体的に悪いわけだが,ふと見てみるとネズミにかじられた痕がある。今まで、3区と4区のトドマツの生存率の低さに目を奪われてきたわけだが、これは寒さの耐性の問題だけではなく、実はネズミによる食害が大きく関与しているような気がしてきた。つまり、いくらなんでも死亡率が高すぎるのではないかと思う。実は、高標高のネマガリの中でネズミの生息密度が極端に高く,ネズミの食害によってトドマツが大部分枯れた,というのが真相ではないかと思えてきた。一方,エゾマツやアカエゾマツはネズミにかじられる確率が低いらしく,それでこれほどまでに生存しているのかも。



・もしかすると自然状態で,トドマツが標高の比較的低いところに多く,エゾマツが高いところに多いのは,ネズミが標高の高いところに多く,トドマツの方がネズミにかじられやすいということだけで説明できちゃったり・・・はしないだろうが,カラマツの交雑育種で行われたような摂食実験などをやってみるのも面白いような気もする。



・最後に再び5名体制で数本が残存しているグイマツ調査を行い,3区は完了。3区全体では1000本に少し満たない本数だったが,全個体にNoテープが打たれているのを見ると,ついにやったかという実感がある。まだまだゴールは先だが,やっぱりフィールドは充実感が違う。

4区

2008-08-05 | フィールドから
・今日は朝から最も高い標高である4区に入る。ここは1100mを越える高標高域で今となってはネマガリダケがすごくて大変だという噂。本数は何本も残っていない樹種が多いのだが、逆に個体から個体までのアプローチが大変ということで覚悟せざるを得ない。車からはしばらく登山道のように整備された道をあるく。ここは樹木園スタッフが整備してくれていたそうで、試験地まで藪漕ぎをしなくてすんだだけでも助かった。途中、シダ植物?に遭遇。奇妙な繁殖体を持っている。



・4区到着。アカエゾマツはしっかりと成林している!ということで、下側のプロットのアカエゾから測定開始。昨日からの続きなので、お互いに要領が分かっている。このため、調査はさくさくと進んだ。ケヤマハンノキ、シラカバなどは20本程度が残っている。これらについては、ネマガリダケの海に島のように浮かぶ個体を見つけては、そこまで到達して測定、といった感じ。上から下に進む場合にはネマガリを踏むようにふわふわと歩けばいいのだが、逆目(下から上)の場合、ネマガリは人を押し戻すように行く手を阻む。



・4区ではグイマツF1も40本程度、エゾマツも同様で、トドマツは完全消滅である。とにもかくにも、ここはアカエゾマツの天下だ。考えてみれば、アカエゾマツは大麓山の山頂にもあるので、結果は至ってリーズナブルなのだが、こうして結果をつきつけられると素直に関心してしまう。それにしても、これほどの大規模な試験地を設定し、ここまで苗木を運んで植えた先輩たちの苦労を思うと、とにかくこの試験地を世に出さないわけにはいきませんなあ・・・。冬に気合を入れて、書かねば・・・。

・午前中に、プロットの一番奥のグイマツ5個体をなんとか終えて昼食。その後も順調に調査は進み、ついに3時半ごろに4区全ての測定を終了。2区(730m)まで降りていくと、1班も作業を完了しようとしているところ。こちらは樹高の高さと本数の多さに改めて驚かされる。それにしても、730(2区)と930m(3区)や1100m(4区)の顕著な違いはなんなのだろうか・・・。気温なのか、積雪なのか・・・とにかく樹木の生残に関わる極めて重要な要因がドラスチックに変化しているはずである。

・だからこそ、トドマツも連続分布していながら分化するのだろうけれど、これほどまでの変化を内包している大麓山を演習林内に持っているというのは大変な強みである。標高による変異は決して新しいテーマではないが、地球温暖化が急速に問題になっている今日、脆弱な亜高山帯の生態を考える上では重要な研究テーマになりうると思う今日この頃である。

標高別試験地

2008-08-04 | フィールドから
・昨晩から富良野入りしている。昨日までの豪雨がウソのように朝から快晴。北演は先客万来といった感じで,皆さんバタバタと忙しそうである(それをさらに加速させているのは当方のせい・・・)。今日から、2班に分かれて、標高別試験地の測定。これは1960年ごろに10数種(自生種と導入種)を4標高域(530,730,930,1100m)に植栽した大規模な試験地である。

・この試験地については、当然、富良野にいるときから気にはなっていたのだが、基本の植栽本数が7行×32列×2反復×4標高域×10数種という膨大なのものなので、どうにも手を出せずにいたものである。今回、技術スタッフの全面的な協力を得て、今回の測定の運びとなった。

・トドマツは想像以上に生存率が低い。これは種子産地のせいだろうか・・・。これらの標高別試験地の種子産地は各種1箇所となっているので、低標高から高標高に移植すると枯れるというトドマツの標高別相互移植試験地の結果を追認することになっているのかもしれない(設定はこちらが先だけど・・・)。

・一方,隣のクロエゾは120本近くが生存し、930mでもなんら問題なく生存している。自生標高域を考えれば当たり前かもしれないが,実にきれいな結果である。シラカバ,ケヤマハンノキなどは30本程度しか生存しておらず,ストローブなどに至っては完全に消滅している。当初の目的である高標高や寒冷地に適する樹種を選ぶという目的は見事に達成できている、といえそうだ。それはいいのだが,120本もあると,DBHだけといっても測定には意外なほどに時間がかかる。



・午後からは多少はペースが上り、600本程度を完了。しかし、先は長い。今回の測定で分かったことがもう一つ。カラマツ(ニホンカラマツ)はほとんど消滅しているのだが、グイマツ×カラマツのF1雑種は高い生存率を示している。一方、グイマツ自体は、その中間の生存率である。雑種がネズミに強いというのは話には聞いていたものの、こうしてみると交雑育種とは大したもんだという実感がある。



・ところで、グイマツF1はネズミにかじられていないのかというとそうでもなく、古い食害はかなり激しいものもある。しかし、食われても死んでいない!ところがすごい。ある程度食べてから、”やっぱりまずい”という感じで、全周を食われなかったのが生存している原因なのだろうか。

萌芽枝

2008-07-29 | フィールドから
・午前中、ウダイカンバ繁殖成功論文のRevision letterの修正。修正原稿と見比べつつ、送ってもらった"指摘に対するコメント"を練り直す。審査者の指摘も再検討しながらの作業なので、それなりに重労働(?)だ。審査者からの指摘で、Bacles et al. (2005) Evolutionでは、全種個体密度が花粉散布パターンに影響していたと書かれていたので、改めて読んでみることに・・・。

・この論文は既に読んでいたが、”全種個体密度が花粉散布に及ぼす影響を調べていた”という記憶が全くない。よく読んでみると、論文中に直接検討しているわけではなく、連続林内で行われたジーンフローの研究(Heurtz et al. 2003)と比べると、断片林ではヨーロッパトネリコの花粉散布距離が明らかに長い(Bacles et al. 2005)ということから、森林やランドスケープの構造が花粉散布に影響を与えることが推測できる・・・ということのようだ。



・11時前に完了。さすがに神経を使ったので、屋外に出る。ミスト室の灌水状態がどうにも悪いのでノズルの掃除などを行う。後で技術スタッフに清掃と修繕をお願いしたところ、見事にミストが出るようになった(さすが!)。チューブ内部でかなりアオミドロみたいなものが溜まっていたようである。

・ふらふらと苗畑に出ると、七夕(7月7日)に剪定したクロマツから既に不定芽が出ている!剪定から1ヶ月もしないで不定芽が発生するというのは驚きだ。ただ、全ての個体に出ているわけではなく、茎の径と関係がありそう(太いものがよく発生している?)。

・午後からヒノキ論文の最終チェック。指摘に対するコメントのページや行がずれていないかを調べる。ひととおり作業して一段落。忘れていた8月末〆の原稿に手をつける。本当は講義準備もしたかったのだが、さすがに手が回らなかった。

・富良野のIさんから、いよいよ再生林で地がき作業に入ったという連絡を頂く。焼松峠でちまちまと実生をカウントしていたのが、このように事業的な規模になると感慨深い(というか責任重大だ!)。今回の試験では、今まで感覚的には想定されていた”ちょうどよい地がき面積”を検証できる(はず!)。とりあえず、今年度中に、プロット設定まではきっちりとやっておきたいところである。

地下の世界

2008-07-25 | フィールドから
・栃本宿舎は造りも新しく,実に快適。Oさん手作りという"栃餅汁”も香ばしくて美味であった。山里に抱かれていて縁側に座っていると、何ともいえず、落ち着いてくる。秩父版”三丁目の夕焼け”といったところか・・・。アブが多いのには閉口したが,たまにはこんな夜があってもよい。10時までここで待機ということもあって,のんびりと仕事。宿にこもって原稿を書く作家にでもなった気分。



・論文チェック2本を立て続けに行う。Hさんから頂いたシャクナゲ論文にコメントを書いて送信。他人の論文は不思議と見えるのだが,自分の論文になると,どうしてこう“見えなく”なるのだろうか・・・。ヒノキ論文の改訂作業で、ちょうど血縁度の話や二親性近交弱勢の議論もしていたので,タイムリーな論文チェックとなり,こちらも勉強になった。全体の文章の体裁,解析などがしっかりされていると,論文チェックも実に楽である。

・もう一つ,Uくんのウダイカンバ繁殖成功論文の改訂。審査者の指摘に答える形にで、同種個体密度だけでなく,全種個体密度が林分の繁殖成功度に及ぼす影響も調べてみようということになったわけだが,全種個体密度の影響についてはクリアーな関係が見つからないことを定量的に示すことができそうだ。

・10時過ぎにIくんとSさんと合流。と,ここで昼食を頼み忘れたことに気がつく。まだまだ秩父初心者の当方は、栃本から山に入る手前で,弁当が購入できるだろうとタカをくくっていたわけだが、それはとんでもない間違いであったことが発覚。慌てて宿舎に戻り,Oさんお手製の栃本の保存食“つとっこ”を分けていただく。昼食時にIくんとともに頂いたのだが、飽きのこない、いい味であった。



・久しぶりにフィールドに入る。相変わらずの急傾斜だが,林床にササがないので気持ちがいい。今日は蚊も少なく,天気も良好だったので,実に爽快である。Iくんの実生調査に付き合いつつ,森林浴。それにしても,なかなかイヌブナの実生が目に入ってこない。やはりフィールドボケしているな。むしろ,ヤチダモにそっくりな実生がやたらと出現している。カエデとは異なるようだが,尋常ではない密度である。後でSさんに聞くと,アオハダではないかという。やはりこうした実生を探す作業は楽しい!



・一通り,イヌブナ実生にタグを付け替える作業が終わり,移植実験の掘り取りを行う前の予備実験。林内(暗条件)と林外(明条件)からそれぞれ6個体ずつ実生を掘り取り、地上部、地下部の表面積と乾燥重量を測定しようという試み。林内では案外と根が小さく、こんなにも貧弱なものかという感じ。それに対して,林外では根がしっかりと張り、白い菌根も見られる。地上部以上に地下部の印象が違うことに驚かされた。



キノコの世界

2008-07-24 | フィールドから
・秩父のSさんと西武秩父駅で待合せ,キノコ関連の流通・生産の現場を回る。50分ほどかけて、秩父では有名なスーパー・ベルク本部へ。近代化された設備とその規模大きさに度肝を抜かれる。Nさんはベルクのバイヤーだが,地元が秩父ということもあって,Nさんは地元の農家林家のキノコ生産者にもきちんと目を配り,品質のよいキノコについては地元生産者からの仕入れも積極的に行っている。

・素晴らしいことに、それは単なる慈善事業ではなく,「品質がよいものを選んで適正価格で売れば,お客さんが絶対分かってくれる」という信念を持って,仕事に取り組んでおられるのである!。薄利多売で効率ばかりを考えていると勝手に考えていた企業(スーパー)の中に,このように、”地元産業を育成しよう”という気概を持った人物がいることに感銘を受けた。巨大な倉庫には次から次へと青果品が集まり,ベルクの各店舗に配送される。その一つ一つの商品にNさんたちバイヤーの方たちの熱い想いがこもっているのが衝撃的であった。

・次に,エノキやマイタケを生産されているアグリカルチャー・センターのIさんを訪問。こちらは石川電気株式会社という異業種からの参入だそうで,その意外さにこれまたびっくり。エノキの生産現場では,オートメーション化された工程に驚かされる。エノキやマイタケが栽培されている現場をはじめてみたが、おなじみのキノコたちがわんさと生産されているのは感動的であった。オートメーション化されているとはいっても,細かい環境管理や工程の調整には,肌理の細かい“人”による作業が不可欠であることがよく分かった。

・ここでは,秩父にスギのおがくずをキノコ生産者に生産している専門業者さんもいることが分かった。意外なところにビジネスチャンスがあるものである。ところで、栽培に利用した廃培地も最近は捨てられずに、農家では再利用できるということであった。そこには、理想的な地域循環社会の姿が垣間見える。

・続いて,今度はナメコを生産されている角仲林業のYさんを訪ねる。沢沿いに設置された工房の前で,沢に渡る風を感じながらお話を伺う。ここでは,キノコ(ヒラタケ)を始めようとされたときや,ヒラタケからナメコへと転進されたときの社長さんの鮮やかな決断っぷりに感動。そして,こうした地元生産者の”頑張り”を支えているのは結局は、人と人のつながりだったり、信頼だったり、に尽きることに感じ入らざるを得ない。

・それにしても,“野に賢あり”である。今回の訪問では、”教えられてばかり”だったが,こうした賢人とのふれあいは学生にとっても貴重な経験になってくれると期待したい。