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西東京市・北海道富良野の森林を舞台にした遺伝,育種,生態などに関する研究ノートの一部を紹介します

メタリックフライ

2008-07-23 | フィールドから
・Y先生が土壌調査に来られるということので、現地立会い。炎天下の中、4-5名で1×1×1mをひたすらに掘り進んでいく。これは重労働である。立ち話の合間に、ふらふらと現場界隈を歩き回っていると、何か輝く虫が・・・。”ハエ”のようだが、こんなにメタリックなヤツは見たことがない。かっちょいい。



・講義用資料としてスキャナーで参考図書の画像を取り込んで保存する作業。最終的に使うかどうかはともかく、10数枚の写真を取り込む。こうした作業をしていると、少しは進んでいる気がして気持ちも安らぐというもの・・・。7月末〆切りの書類提出やら原稿などがあるのだが、明日から1泊で秩父出張。久しぶりのフィールド、楽しみである。

ニガナの気持ち

2008-06-25 | フィールドから
・本日、11時から小学校4年生の団体が来るので案内をしなくちゃということで、下見に行ったり、何をしゃべるかということを考えたりと準備をしていたが、先方は一向に来ない。なんでだろうと思って、Tさんに訪ねてみると、それは金曜日(27日)の話であった。当方のボケもここまで来たとは・・・。脱力。でも、とりあえず、こういう準備を一度しておくと、いざというときに慌てなくて済むかもしれない・・・と無理やりに気を取り直す。



・放心しているところ、偶然、ニガナのサンプリングに来ていたNさんと立ち話。この植物ニガナ(キク科)は、3倍体で受精しなくても新しい配偶体ができるしい!ちゃんとした黄色い可憐な花をつけており、一見、特別な繁殖様式を持っている植物には見えない。一体、ニガナは何を考えて、こんな繁殖様式を持っているのだろうか・・・。

・ニガナはいわゆる雑草だが、一方では、薬用にも使われているらしい。それにしても、路傍のさりげない植物にも、興味深いストーリーが隠されているものである。この植物は、花びらの数や葉の形態も変異に富むようなので、今度、気をつけてみることにしよう。

人工受粉の強み

2008-06-24 | フィールドから
・Yさん、Tさんとともに、アオキの人工授粉後の実の観察を行う。人工授粉した枝と花数をカウントした枝にはビニールテープが付いているので、実をカウントすることで結果率が出せる。ふと見上げると、付けたビニールテープがはげそうになっている。なんでだろうと思ったら、なんとビニールテープの下から発根し、根のせいでビニールテープがはげそうになっていた。いわゆる”空中取り木状態”になっていたのだろうか・・・。ううむ、たくましいぞ、アオキ。



・幸運なことに(?)試験地内で設定した母樹には自生タイプと非自生タイプがある(つまり、試験地内にも非自生タイプは既に定着している)ので、4種類の全ての組み合わせで結果率を比べることができる。問題はコントロール(すなわち、無受粉)の枝に実がついていなければ、受粉が成功したと見ることができるわけだが・・・。

・1個体目の無処理枝は、3花序(10-20花くらい)中、2花序でそれぞれ1個ずつの実が確認された。これはいわゆる受粉エラーであろう。しかし、2個体目、3個体目のコントロールは無受粉枝に実はない。一方、受粉した方の枝は、ある程度の結果率が認められそうだ(全体的に8割程度?)。オープンでもおそらく8割強なので、人工受粉自体は(奇跡的に)うまく行ったようである。結果をまとめて、交配タイプ(自生×自生、自生×非自生、非自生×自生、非自生×非自生)で結果率を比べると面白そうだ。



・それにしても、人工授粉はやはり強力なツールだ。なんと言っても、(うまく受粉が成功さえしていれば)結果がクリアーだし・・・。ところで、富良野にてKさんから「大きくならない実は全てタマバエに寄生されているのじゃない?」という恐ろしい指摘を頂いていたのだが、実を切ってみても昆虫の卵らしいものは見当たらない。やはり、受粉から結実までに時間がかかる(2年越し?)のだろうか・・・。

・と思って少し調べてみると、個体の配置などがアオキの受粉効率とタマバエの寄生率に及ぼす影響を調べた論文があることが分かった。この論文によれば、6月19日までの残存果実数/花数をステージ1の受粉成功率とし、これまでに落下した果実は花粉制限によるものとしている。これは、今回の人工授粉実験とも整合するので、非常によく理解できる。また、この時期からをステージ2として、12月までは果実数を定期的にカウントしている。本日は6月24日。偶然とはいえ、いい時期に調査できたみたい。しかし、特に、2年越しとは書いていない。ということは、これから実が大きくなっていくのだろうか・・・。



・農場への通路にはアカメガシワが花を着けている。これは雄木と雌木があるようで、なかなかに派手な花である。なぜか雌雄異株が目に付くような気がするのだが、単に自分の好みのせいだろうか・・・。

ブナ晩霜害

2008-06-19 | フィールドから
・昨晩はレンタカーで到着したTさんと色々とお話ができた。Tさんも講義を担当されているとのことだが,いわゆる講義用のプレゼンのほかに板書用の資料もきちんと用意されているとのこと。そのほか,色々と使えるアイデアを頂いて,大変参考になった。Kさんの師匠であるK先生(ややこしい)は「教壇は俺の劇場だ」と語っていたそうで,なるほど,そう思えば,先生は俳優として完璧に演じなければならんということになる。身が引き締まる思いである。



・樹木園にてブナ産地試験の晩霜害をみんなでチェックする。とりあえず,全個体の被害度をざっと押さえておくということで,指数調査。北の産地のものが霜害に強いということはとりあえずなく,少なくとも東北は厳しい状況。一方,秩父産は割合と被害が少ない。結構産地間で差がありそうな予感を感じさせる結果。結局,5月9日時点で芽が出ていたものは軒並みやられてしまい,遅く芽を出す個体はほとんど被害がないものもあるということらしい。残念ながら,今年度の開芽フェノロジーの結果はないが,2年間で個体の開芽順位はかなり安定していたので,順位と被害度の関係をまずは見てみるのが面白そうである。

・苗畑に近い小さな方のブナ産地の調査はTさん一人に任せて,3名でトドマツ標高別の球果カウントの続き。410,340mの産地になると極端に球果数が減り,全く着いていないものもが大多数である。Reproductive scheduleの違いか・・・。ところが,230mになると逆にかなりの球果を着けているものが多い。今度はサイズが一定の閾値を越えたということなのだろうか・・・。おそらくは色々と含蓄のあるデータになっていると思われるが,まずは貴重なデータが取れたことに安心。

・早めのお昼を食べて,交雑試験地の球果カウントを行う。こちらは背が低いので見上げるだけで大丈夫。低標高×低標高は全く球果がついていないので,すいすいと完了。高標高×高標高でも雄花痕は見られるものの,球果はなかなか見つからず,これはまだ球果をつけていないのだろうかという気がしたところで,高標高×高標高の個体で球果を着けているものを発見!おおっ,やはりあったのか。その後,高標高×高標高で3個体,高標高×低標高でも1個体が球果を着けていることが分かった。



・全ての調査が無事完了し,Uくんの家系競争試験地をみんなで見に行く。これは実は学会でも評判が高かったらしく,2人とも面白いといってくれた。Kさんは根の競争が家系間と家系内で異なるのではという指摘をしてくれた。つまり,根が同じ家系だと避けあってしまうということである。実は、ススキで既に興味深い先行研究があり、タッパーウエアを利用した室内実験でそれを検証した例があるらしい。やっぱり、こういう人たちと現地で議論すると、色んな話が飛び出してきて実に良い刺激になった。駆け足の3泊4日は少々疲れたが、とても充実。ところで、天気は最後まで大丈夫であった。いやはや、珍しい!

大麓山山頂

2008-06-18 | フィールドから
・樹木園にてIくんをピックアップして大麓山登山。アウトランダーはパワーがないが,なんとか登山口まで到着。登り始めると,うっ,きつい。やはり運動不足のつけが。二日酔いの影響もあいまって・・・。傍らの高山植物が疲れを癒してくれる。それにしてもいい天気である。



・長めのいいカーブで写真を撮る。この広がりを切り取るのは難しい。と,後で写真を見ると何か不思議な影が映っている。このサイズでは見えないのだが、UFO疑惑?



・チシマザサの開花幹。昨年もごく近い場所で開花していたので,もしかするとあるクローンの咲き残りかも。とにかく,ササは何があるかまるで分からない。「ササだけに・・・」というKさんの言葉は重い。



・高山ロガーからのデータ回収。あれれ,どうにも値がおかしい。高すぎるのでは・・・。直射日光の影響を受けてしまったのか,あるいは雪に埋もれたのか・・・。はたまたロガーの故障か・・・。ロガーを設置しなおしなどをしていたら,あっという間に時間が経ってしまった。高山の1350m付近のロガーは大丈夫のようである。と,車に戻ると早くも11時すぎ。午前中で終わるという見込みは甘すぎた。

・11林班はアカエゾマツの集団でTくんも気に入った様子。サイトとしてもいいところに位置している。ロガーデータも無事に回収。4林班のハクサンシャクナゲが発見されたというところにいく。この付近の林は岩ががらがらしており,かつてはナキウサギもいたという・・・。「ちょっと歩くんすよ・・・」という言葉に「ほいほい」とついていくと,いきなりの直登で息が切れる。へとへとになりながら,ようやく現地到着。

・森林としてはフツーのところで,ちょっと不思議な感じである。確かに付近にはアカエゾマツがあるものの,優占するというほどでは到底ない。シャクナゲは5-6株といいたいところだが,全てがつながっている1クローンでは?という疑惑が・・・。皆で何か面白い題材がないか,現地で頭をひねる。いかにしてサイズを測るかという議論で盛り上がる。確かに,胸高直径というのも変な値となりそうである。Tくんのアイデア,葉の枚数を数える,というのは面白い。少し根を見てみると,かなりつながっていそうな予感・・・。実生か伏条更新かというのは案外と簡単に判別できそう。まずはクローンかどうかを調べてみることに・・・。

・27林班もアカエゾマツの着花はパラリ・パラリ。今のところ,最初にみた90林班が最も良かったような気がする。前山の湿地林は上下ともにまるでダメ(一昨年開花)。高山帯もほぼなし(昨年開花)。11,26,27林班はパラパラとというところ。全体としては,“並みの下”というところか。興味深いのは,個体群間で豊凶が同調しないところだ。もし,気温などがトリガーになっているとすれば,そんなに地域内で変化があるとは思えないのだけれど・・・。今のところ,仮説するないけど,少し気になるお話である。



・だいぶ予定より遅れて樹木園到着。カウンターを借りて,トドマツ標高別試験地の見本林の雌花をカウント。実は5月9日の霜で,雌花のかなりの数が障害を受けている。これもせっかくなので記録できる限りしてみようということで,カウンターを持っておのおのがカチカチと・・・。数え残しや測定ミスというのはありそうで,最終的には50以上は50区切り位でカテゴライズするのがよいかもしれない。それでも実数があるとやっぱりイメージが湧く。雌花の数は個体差が非常に大きいのだが,標高間でどういう関係になっているのか・・・。明日の調査でデータが出揃う予定である。

水位計

2008-06-17 | フィールドから
・Kさんと合流。アカエゾマツの調査へ。今回の主目的は、新たな4サイトへの温湿度ロガーの設置と湿地3サイトへの水位計の設置である。なぜか,UくんとTくんも一緒に行くことになり,5人でわいわいと調査。その前に、樹木園のOさんをトラップし,水位計を設置するための道具の製作をお願いすることに・・・。頼ってしまうのだが,今回は注文している当方にもイメージが湧かないという無理難題。しかし,そこは職人魂とでもいうべきか。見事なエンビパイプの工作物を作っていただいた。感謝。



・まずは90林班の調査地へ。と,その前に北海道らしいランドスケープを写真に収める。農地・カラマツ林・天然林と移行する景観。スイスの牧草地から天然林に移行するランドスケープにも通じる景色。これは講義で使えそう。林内に入ると、いきなりエゾシカに遭遇。まるで、逃げない。ここまでくるとかわいいというよりも、ふてぶてしくも見えてくる。



・水場を過ぎたところで,クマイザサの一斉開花に遭遇。これは立ち止まらないわけにはいかない(というのも,Kさんはササ愛好家&専門家だからだ!)。黄色と紫色の二型が確認できる。小規模の開花はあちこちで毎年見られるが、これだけの規模は初めてだ。これなら種子が取れそうという,Kさんのお墨付き。



・すんなりと90林班調査地へと行き着けるかどうかが問題だったわけだが,まっすぐに90林班到着。おやおや,アカエゾマツは,結構,球果がなっている。ロガーを設置して,13林班湿地林へ。問題の水位計設置である。泥を抜くという作業が手間取っているのだが,実は抜く必要もなかったことが後で判明。うまく押し込んで地表からロガーまでの長さを測る。73cm(コケ3cm含む)。なんとも奇怪なロガーとなったが,これでネズミ対策も万全のはず。温湿度ロガーからのデータ回収は無事終了。



・5月10日朝の霜についてデータを眺めてみると,午後10時過ぎから-2.7℃の温度になっている。最低気温は10日の午前3時ごろで-3.7℃にも達している(ここの標高は700m程度と高いせいもあるが・・・)。午前8時40分まで-2.4℃が続き,9時以降にはプラスに転じている。これは樹木には厳しかったわけである。K林長の解説(つぶやき?)はなるほど納得である!

・昼食後,前山下で再びロガー設置。ここではアカエゾの豊作を期待していたのだが,実はまるで球果が見られない。上湿地はさらに衰退していることが確認され、ここも同様に不作。3箇所の水位計設置はめでたく完了。25林班に向かう。25林班では多少の開花が見られる。

・4時過ぎに樹木園到着。みんなの目を総動員して,苗畑のエゾマツ実生調査をやってしまう。新しい発芽は少なく,立ち枯れで消えていくのがちらほらと。1箇所だけは,前の数値とどうにも合わないプロットがあった。が,Uくんがサブプロットの順番の謎解きをしてくれてめでたく完了。



・5時半ごろから皆さんと焼肉飲み。Uくんがダニにかまれるが,Kさんの”ダニ専用ファジーな毛抜き”によって見事に完全に抜き去ったという快挙もあった。そんなこんなで,実に楽しく夜は更けいき・・・。合宿での二次会にて、HBCが撮影した演習林のビデオを皆で見てみると,これは実によくできている。前半27分は講義で見せても良さそうである。

エゾマツ播種試験

2008-06-16 | フィールドから
・5時起床。気がつけば7時前に空港に着いている。ラウンジでトマトジュースを飲むと,早くも搭乗の時間となっている。少し遅れたものの,11時には富良野に到着。久しぶりにTさんと再会。麓郷集合になっているため,途中のコンビニに立ち寄って弁当を調達。レジでふと見上げると,なじみのある顔である。バスケットで一緒に応援していたIちゃんのお母さん。さすがに驚きつつも,レジを完璧にこなすあたりはさすが・・・。Iちゃんも中学でバスケットをやっているそうで,頑張っているとのこと。



・麓郷にて皆さんと集合。麓郷には穴あきの丸太が並べてあり、嫁入り先がいよいよ決まったらしい。昼食後、標高別の試験地を見に行く。自生と外来を含めた13種が4標高に植栽され,現地適応を調べているという試験地。気になりながらも,手をつけられなかった試験地の一つである。海外では例があるが、日本ではこれだけの規模は他に類を見ない。



・930mの試験地でもアカエゾマツはかなりの生存率で全個体の樹高を調べるのは大変そうである。730m,530mでも然り。530mでは隣がシラカバだと既に成長に影響を受けており,これらを外す必要がある。全個体をやらないとすれば,いかにして適切に個体を選ぶかが課題になりそう。



・Iさん,第二掛の皆さんに手伝ってもらい,エゾマツの天然林播種試験の現場へ。いきなり道に迷ってしまった。高標高では、新たな発芽がかなり見られる。相変わらず,ピートブロックは平均的にいい成績を残している。当方の提案のピート板はぱらぱらと発芽が見られるものの,今ひとつ伸び悩み。かえって,保水力が高すぎるのが悪いのか・・・。これからの推移に注目、である。

バードウォッチング事始

2008-06-07 | フィールドから
・教養学部の学生を迎えての実習。午前中は「都市の鳥」と題して、I先生による講義と実習。スズメ、ハシブトガラス、キジバトという最も基準となるところから始めていただいたので、当方にとっては分かりやすかった。試験地内にはシジュウカラが雛とともに忙しくさえずっている。双眼鏡を使うのは、皆さん初めてだったようだが、使用方法を丁寧に教えてくれたので、徐々にみんな使いこなせるようになった。

・当方にとっては、オニグルミの開花調査で使っていたので、多少は慣れている。開花調査では、眼鏡を外してみていたのだが、今回、眼鏡をかけたまま双眼鏡を使う方法を会得した。シジュウカラはなるほど黒いネクタイをしているような姿。小さい上にあまりにも忙しく動き回るので、双眼鏡に入れるのは大変である。

・試験地をぐるっと回った後、今度は試験地の外に出て市街地で観察。試験地の外に出るという行為は、当方にとっては意外と新鮮であった。実習中に見れたのは、スズメ、ハシブトガラス、キジバト、ドバト、ツバメ、ムクドリ、ヒヨドリ、ハクセキレイ、エナガ、コゲラ、メジロである。

・当方が一番感動したのは、コゲラを初めて見ることができたことである。ごく小さなキツツキなのだが、試験地内には30年くらい前から生息しているそうだ。実に愛らしい姿をしている。観察後、鳥とはどういう生物かという講義をしていただいたのだが、これもまた、非常に面白かった。

・午後からは植物ということで、武蔵野を代表する樹木種と実をつける植物を中心に解説。なぜか、「食べると美味しいか否か」という基準で解説すると不思議と理解できるらしい。食欲はやはり、根源的な欲求だからだろうか。ちなみにまだ青いけれど、熟したヤマモモは食べると美味。屋久島ではヤクザルが食べて、種子散布する話をTさんが学会でしていたのを思い出した。



・最後は標本の作りかたを伝授して、実習終了。今回の実習では、当方も少しずつ、樹木が同定できるようになった。一つ一つの樹種についてのこぼれ話も少しずつ覚えていきたいところである。

富良野トンボ

2008-06-02 | フィールドから
・惜しいところで芦別岳の山頂は雲に隠れているが,朝から晴天である。今回はエゾマツ播種実験の実生発生調査の第一回目ということで,当方を含めた教員4名,久しぶりに再会したTさん,樹木園のOさんにも同行してもらって,12林班の試験地へ行く。富良野の新緑の清清しさは例えようがないほどである。そういえば,本州から来た人達を案内するたびにみんなが感動していたのを思い出した。この時期ならではの醍醐味である。

・現地到着。まだ虫も少なく,快適である。最初のプロット高標高の地がき地(HS-1)を調べる。いきなり鹿がピート板に足跡をつけている。ふーむ,まるで実生らしきものは見えず,草本の芽生えがちらほらとあるだけである。こいつは試験そのものが成り立っていないのでは,という恐ろしい疑念が生じてくる。



・次のプロットに行くと,今度はピートブロックを見ていたSさんが何やら忙しそうにしている。もしかしてと思ったら,なるほど数本のエゾマツ実生が頭をもたげている。などといっていたら,本当は出てこないはずの直播で実生がぞくぞくと発見されたり・・・。やはり実生が見つかると騒がしくなってくる。どのように記録するかについて,作業を続けつつあーでもないこーでもないと議論。結局,発見された実生の全数をカウントし,そのうちの被害を内数としてカウントすることに決定。

・被害は,上部を切り取られるもの(虫・鳥・動物??),根ごと浮き上がるもの(抜け),立枯れ病,くらいに分類されそうである。とりあえず,なるべく詳細に記載することに決定。全体として,直播(秋)が結構発芽している。また,見てくれは決して良くない(失礼・・・)ピートブロックが意外と健闘している。凹凸のある形状が発芽実生まわりの超微気象をマイルドにしているのであろうか・・・。

・天然林になると,日当たりが悪いせいか,実生の発生数がさらに少なくなり,調査も淡々と進む・・・。といいたいところだが,面子が面子だけに終始にぎやかである。当方提案のピート板は、地がき地よりも天然林内の方が成績がよい(フラットな地形が影響しているのか??)。地がき地では、枠のすぐそばの端っこでしか発芽しなかったのだが,天然林では真ん中付近からも発芽している。林内では、ササはかなり丁寧に刈っているのだが,直播はかなり厳しそうである。

・低標高は実生数がさらに多くなり,中には200種子中80種子も発芽している処理区もあった。多くなるとカウントするのも大変であるが,その分,充実感はある。処理による違いも明瞭になりそうな予感で,何となく研究として成り立ちそうな気がしてきた,といったところ。



・Kさんが昆虫のトラップを見たいというので立ち止まったところで、オオカメノキの花が満開である。ちょっとのぞくと、花に見せられた昆虫達が乱舞している。甲虫類も多く、やはり生物相が多様であることを実感させられる。これを子どもに見せると喜ぶんだがなあと思いつつ、デジカメで撮影。この写真をよく見ると、ハナグモらしきものがアブ?を捕食している。

・午後から苗畑での播種試験の実生調査枠の設置と試験区の確認。秋に議論して計画したはずの試験設計をみんなが忘れていたりして・・・。いやはや,人の記憶とはいい加減なもので・・・。当方作成の野帳のメモを見ながらようやく理解でき,10×80cmの特注枠を設定してみる。この枠は重いのでそのまま置きっぱなしにできるところがいいところ。しかも,真ん中が2つに分かれているため,結局,1つの処理について6の反復を取ることができる。

・苗畑での実生の数は想像以上に集中分布で,これだけ近い6個の枠間でも相当のバラツキがあり,データ的にもなかなか楽しい。こちらの試験はむしろこれからが本番といったところ。



・Tさんにお願いしていた標高別トドマツのフェノロジー・データは想像以上に精密で、十分論文に耐えうるものである。相互移植の方はかなりの個体が着花していることが分かる。Tさんは接木個体の方も調べてくれていて、さらには晩霜害のデータも取ってくれていた(すごい!)。



・5月10日に富良野地方を襲った低温(霜)は、この地域に甚大な影響を及ぼしている。K林長が収集した小さな方のブナ産地試験もご覧の通りの有様である。しかし、これは、逆に、自然選択に対する応答反応をみる格好の機会と捉えることもできそうだ。被害のデータはK林長が取ってくれているとのことだが、開葉フェノロジーデータとあわせると、また面白い知見が見えてくるかもしれない。



・ブナの方はまだいいとしても、苗畑の被害(特に床替え苗)は厳しい。開芽の遅いアカエゾマツは大丈夫だが、トドマツとエゾマツは痛々しい状況である。新しい葉が展開し始めてはいるものの、最終的にどのようになるのか注意深く見守る必要がありそうだ。色々と気になること、面白いことばかりで、目がようやく開かれたところだったのだが、当方の都合で今日の最終便にとんぼ返り。すごい充実した出張であった。

イイギリの花

2008-05-25 | フィールドから
・本日は、当機関の子ども対象公開イベント「樹木博士」の日である。昨晩からの予報では、午前中はかなり崩れる模様。朝9時半にいよいよ出発という段になって、雨足が強まって本降り。当方にはありがちな天気だが、子どもたちには、いかにも気の毒。さすがに、このまま強行するのは厳しいということで、急きょ、講義室に移動。

・応援に駆けつけてくれたAさんが用意してくれたネイチャーゲームは、かなり素朴なクイズだったのだが、何故か(?)子ども達には大人気。ひとしきり盛り上がったところで、ちょうど雨も小降りとなり、樹木の名前を覚えつつ、くるりと試験地内を回っていく。

・当方も子どもと一緒に樹木の名前を覚えるべく、生徒として頑張った。改めて覚えようとすると、やっぱり照葉樹が問題である。どうにもみんな同じに見えてしまう。裏返したときの色が見分け方のポイントになることなどが分かった。



・雨が降っていたせいか、カエル、カタツムリ、昆虫たちも元気である。メタリックな輝きを持つ「アカスジキンカメムシ」も初めて見ることができた。聞く所によると、当試験地では結構たくさんいるらしい。

・今回は普段から当試験地で定期観察会を行われている市民の方々もスタッフとしてたくさん参加してくださり、一緒に回ることができた。やはり、常に見ている方々のお話は参考になる。当方にとっても、ずいぶんと勉強になった。

・イイギリはちょうど花が咲いている。この樹種は、秋にはオレンジ色の実が目立つのだが、仙台の青葉山で「埋土種子(土に埋まっている種子)」として結構出現していたタイプの樹種である。初めてイイギリの花というものをしげしげと眺めることができたのだが、結構、派手な花である。現地では、この木が雌雄異株かどうかということが話題になった。

・一般にイイギリ科は雌雄異株が多いようで、イイギリ自体も雌雄異株とするものも多いのだが(同株としているものもある・・・)、どうやら「雑居性」のようでもあり、かなり複雑な性表現をしているようだ。この樹種については、もう少し真面目に性表現について調べてみても面白そうである。



・いつの間にか、雨も上がり、お昼は外で食べることができた。昼食後、少しゲームの続き。いつの間にか、子ども達のオリジナル・ゲームに変わっている。初めて出会ったはずの子ども達が同じチームとして協力しており、いい雰囲気であった。その後、いよいよ樹木博士の問題に挑戦し、それぞれに博士の称号を付与してイベント終了。これを機に、参加してくれた子ども達が樹木や森・自然が好きになってくれれば嬉しい限りである。