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西東京市・北海道富良野の森林を舞台にした遺伝,育種,生態などに関する研究ノートの一部を紹介します

標高別試験地サンプリング

2008-10-21 | フィールドから
・朝一番で事務所に行き,メールを見ると,なんとヒノキ論文が審査完了(受理)したというお知らせ。多分に当方の不注意のせいもあるのだけれど,最初に投稿してから何度辛い目にあったことか・・・。長い道のりだったが,ようやく共著者の方々に嬉しい報告ができた。当方にとっても、筆頭著者となっている論文の受理は久しぶりである。うーむ,嬉しい!

・今日は、サンプリングチームとロガー・データ回収チームに分かれて行動。当方はロガーチーム。霧が晴れないのでまずは前山の下湿地から。いきなり湿地の中で迷う。後で確認したら,ほとんど問題ない地点に辿り着いていたのだが,なぜかGPSが機能せずにうろうろしてしまった。いきなりの時間ロスである。

・水位計ロガーのデータ回収ではいきなり「ポートが開けません」というエラーメッセージが出てきて焦る。しかも,”トラブル・シューティングは全くなし”というサポートの徹底ぶり。結局,パソコン上でポートをUSB接続に変更すれば解決することが分かった。しかし,昨日とは設定がいきなり変わってしまっているところが,まったくもって侮れない機器だ。

・前山2箇所のロガー・データ回収が完了したところで晴天となった。大麓山山頂にチャレンジ。最初の曲がり角でハイマツが出現する。ここでは当然ネマガリダケと思っていたら、Kさんから”クマイも混じっているね”とのコメント。なるほど、よくよく見れば、異なる2つの種類が混在している(裏側の毛の状態も明らかに異なる)。ううむ。さすがササは訳が分からん。



・山頂付近にもトドマツが分布している。やはり葉密度が高そう。ちなみに、シュートの先端がまるまっているのが気にかかる。必ずしも高標高だけで見られる現象ではないようだが、どういう意味があるのか・・・。



・山頂で昼食。見晴らしは最高だが,さすがに風は強い。




・アカエゾマツの針葉もいかにも寒さに耐えているといった風情だが、本当のところはどうなのだろう。よく調べて見る必要がある。



・その後,11林班も回収し,サンプリング班に合流。530mの1区のサンプリングを手伝う。アカエゾマツの林分はカラマツの落葉で実に林床が覆いつくされている。残照の効果もあいまって,オレンジ色が実に美しい。



・平沢を経由して帰還。美瑛にも負けないと当方が勝手に思っている丘の風景。本州から来ると、こういう景色にはぐっとくるんだよねえ。


どきどきロガー回収

2008-10-20 | フィールドから
・羽田空港でIくんと待ち合わせて,朝1番の飛行機で富良野に向かう。朝食を取りながら,指摘をもらったイヌブナ論文についての検討。旭川空港でレンタカーを借りて,富良野へ向かう。久しぶりの運転だが,この道はいつか来た道。あっという間になれる。山部でKさんたちと合流。残念ながらいつものうどん屋はお休みで,豚丼はおあずけ。向かいのドライブインで味噌ラーメンを久しぶりに頂く。



・富良野の混交林では紅葉が始まっているのだが、カラマツがオレンジになるのはもう少し先だろうか・・・。この日は,最も遠い90,13,25,27林班のサイトでのロガーのデータ回収。Hoboの温湿度ロガーについては問題なかったが,湿地の水位計はまたもやドキドキの展開。一瞬、また失敗したかと思ったが、何とかデータ回収に成功。



・全ての作業を完了し、平沢の湿地林を久しぶりに訪れる。いつ来ても、ヤチダモとハンノキが平らな場所にぼこぼこと生えている森林には感動する。湿地林でヤチダモの稚樹は明らかに集中分布しているのだが、その条件を探る(微妙な水位と地形だとにらんでいる)というテーマは面白そうだ。いつか取り組んでみたいテーマである。

ケヤキむさしの

2008-10-19 | フィールドから
・バスケットの試合を見に行く。第1Qは動きが固かったが、それ以降は徐々に調子が出てきたのか、大差で勝利。今回は割と落ち着いて見ていられた。試合終了後、公園でおにぎりを食べる。ふと見ると、ケヤキ「むさしの1号」が植栽されている。改めてみると、枝の角度が極端である。接ぎ木個体だと思うが、ラメートによって角度が微妙に違うような・・・。



・よく見ると、接ぎ木個体のいくつかでタネが着いている。接ぎ木個体間と実生間の枝の角度を調べれば、どの程度遺伝するかどうかが分かりそうである。また新しいアイデアが閃きそうな感じ・・・。



・公園前の小さな寿司屋が繁盛しているのを発見し、カンパチの握りとえび巻きを購入。家に持ち帰って食べたら、これが実にうまかった。注文しなかったけど、アジとアナゴも惹かれるものがあった。小さい店でも侮れないものである。

100人

2008-10-16 | フィールドから
・最近、小学校の団体利用が多い(生活科の学習らしい)。本日も近くの小学校の1年生3クラス総勢100名ほどが来演することに・・・。着任したばかりのKさんにも手伝ってもらい、説明と案内。広場に集合してもらって、簡単に樹木とそのタネの説明をした後、試験地内を小さく1周。途中、クヌギのドングリ探しのために野に放つと、子ども達は大喜びである。

・アカマツ、クヌギ、コナラ、モミジ、スギ、カツラなどの樹種を説明して、最後はもう一度広場に戻って虫探し。虫の名前を調べて確認しては逃がす。相変わらず、試験地にはツユムシ、ササキリなど色々なバッタの仲間がいる。種の同定には、学研図鑑のカラーコピーが大活躍。



・1年生だけに子ども達は素直だ。それはいいのだが、何でも持ってきては「先生、なんですかー?」と聞かれるのには弱った。樹木の枝なら何とかなるが(周りに植栽されている樹木は限定されるため)、そのへんの草をむしって届けられても・・・。結果、”ここには「ナゾの草」がたくさんある”ことになってしまった。反省。とにもかくにも怪我なく終了し、喜んでくれたのは何よりだった。

・午後からようやく落ち着いて講義準備にかかる。いよいよ28日に迫った駒場での自由ゼミナール。15分間のビデオを見せることは決まったので、後は残りの時間の流れをどう作るかが問題。スライドを修正していく。必ずしも得意分野ではないところの話になるので、本を揃えつつまとめていく。

・夕方からは12月4日の集中講義の準備。今年も懲りずに投稿論文執筆講座パート2をやることにした。今回は投稿プロセスと審査者から見た視点というお話。Texで読本を作成する作業は楽しい。去年はこの講義をした途端にスランプになったわけだが、”論文を書くことの楽しさ”を伝えるのはやっぱり自分にとって大切なこと、という気がする。今回もスライドと読本の二本仕立てである。

ヒノキ球果の変異

2008-10-15 | フィールドから
・天気予報が変わり、朝から晴天となった。16日になるかと思われたヒノキ球果採取の続きが急遽できることになった。10時半ごろから3人で採取開始。ちょうどお昼前に採取完了。2005年から球果採取を行っているが、総球果数は2005年が4712個、2006年が61個、2007年が59個、2008年が1631個である。個体が成長しているのを考慮すれば、むしろ並の下といったところであろう。



・午後から球果の計量。今回は1個体で256球果が最大。個体によって球果の色や形は相変わらず異なっており、その変異はいつも面白と思う。ガラス室で球果を乾燥させるために皿に並べて一連の作業は完了。今週一杯かかると思っていたのだが、やはり3人でやると早い。

・肝心の標高と球果数の関係だが、230数個体のうちこれを検討できるのが50数個体しかないことが発覚。IDのない個体のデータが使えないのが残念であるが、4年間の球果数のデータは貴重なので何かしらは結果が得られるはず。もう少し検討してみるとしよう。

ヒノキ採種園の球果採取

2008-10-14 | フィールドから
・先週で研修も終了したということで、秩父の天然性ヒノキの挿し木個体による採種園の球果採取。Sさんからの引継ぎである。3人で一列に並んで、球果を残さず採取しては紙袋に入れる。採種園は合計230個体ほどであるが、球果を1つ残らず採取するので慎重に調査する。



・今年は豊作だと思って覚悟していたのだが、実際に採取を始めてみるとそうでもなさそう。ただし、個体によっては”かなり”よくなっているものもある。午前中に3分の2が終了。午後から残りを採取しようとしたところ、予報よりも3時間ほど早く雨が落ちてきた。



・雨には勝てないので、作業室で球果をカウントしつつ、球果生重の測定。地道な作業だが、種子生産量を推定するためにも重要なステップである。



・ところで、本採種園構成個体の種子産地標高は、900、1300、1600、1800mと4標高域からなっている。ここでふと思いついたのだが、900mもの標高差があるということは、ちょうどトドマツの相互移植と同じ標高レンジである。そう考えると、この採種園も産地試験とみなせるわけだ。

・植栽してから毎年種子生産の状況を調査してきたということは、「高標高ほど結実が早くなるか?」という針葉樹の”Reproductive schedule”を探るには格好の材料になるのではないか?というアイデアがひらめいた。今まで測定してきた種子採取データも活きるわけだし、今回はこうした視点で解析を試みることにしよう。そんなこんなで、急に楽しみが増えた種子採取作業。それにしても、こうした球果採取の作業をやっていると、育種家になった気がして何だかちょっと嬉しい。

きのこゼミ初日

2008-10-11 | フィールドから
・この1週間、実に慌しかった。とにもかくにも、技術職員研修(樹木医学関係)が何とか終了。当方にとって初めてだっただけに、色々と分かっていないことが多くて戸惑った。ずっと自転車操業的だったが(途中で小学生1・2年生の200名が突如来るというハプニングもあり・・・)、最後は終了証が届かないという大トラブル。最後までのドタバタ劇であった。受講者の皆さんから、内容的にほぼ満足していただいたということで、それだけが励みである。

・今日はキノコゼミ初日。珍しく(?)ドタキャンもなく、10名が参加。当方は所用により今日は担当を外れていたのだが、3時から1時間ほど様子を見に行った。先日、Sさんと見回ったときにはまるでキノコが出ていなかったのだが、ここ何日かの雨で一気にキノコが出現!やっぱりキノコが見つかると盛り上がる。



・苗畑ではキツネタケ、ヌメリイグチなどがびっしり生えていた。写真はヌメリイグチでこれは美味しいキノコだそう。



・学生達を林地に放ち、キノコを探させると、案外と色々なキノコが発見される。収穫の本能が騒ぐのか、みんな夢中になっていた。伐採木が積み上げられているところでは、オオゴムタケというキノコが見つかった。指で押してみると、なるほどゴムのようにブニョンとした感触。不思議なもので、学生達は指で押しては一様に”オオーッ”という声を挙げていた。



・最終的には食べられるものから、到底、食べられなさそうなものまで色々なキノコが採れた。名前が分かると、キノコ探しも楽しくなりそうである。

高所作業車

2008-09-24 | フィールドから
・午前中はYさんのアオキ調査&打合せ。今回はあまり脱落している種子はなかったが、No.6だけはなぜか半分近く脱落しているものもあった。タマバエにやられていない実はだいぶ大きくなっていたが、タマバエにやられているものは大きくなっているものとなっていないものがあるのだが、その違いは何に起因するのかナゾである。



・午後からT教授が高所作業車を利用した研究をされるというので、せっかくだからと乗せていただいた。かごに乗っていると高所とはいえ、非常に安心感がある。試験地を上から眺める写真を撮りたいと思ってカメラを持っていったのだが、なかなか雰囲気が伝わらない。



・しかし、少し視点が高くなると、改めて都会の中の樹林地だなあと思う。こうした立地を生かした研究を形にできればいいのだが、ひらめきが必要である。それにしても、高所作業車って交配作業などで使うにはすごく便利だろう。いつか資格を取って自分で操作できるようにしたいものである。

埋土種子調査

2008-09-10 | フィールドから
・当試験地内の埋土種子調査ということで、久しぶりにみんなと一緒に共同作業。4つの林分から土壌を採取し,試験地内の埋土種子相を調べる。試験地内の埋土種子については,一度調べてみたかったのだが,来年の研修のテーマとしてもいけるだろうということで,みんなでやってみることになった。



・各林分から20×20cm×6cmの土壌を6箇所から採取。まっすぐに土壌を掘り取るのは案外難しい。当方がやるよりも、むしろ技術スタッフに任せた方がきれいにできるということが分かり、こちらはGPSの位置測定と写真撮影、植生調査に専念。



・2箇所からは2つの土壌サンプルを採取し、一つはハンドソーティング、もう一つは発芽調査を行う。それにしても、林内で採取していると、量がちょっと少なすぎるかと心配になる。果たして、この中に種子は含まれているのだろうか・・・。



・ヒノキ林分では,想像以上にシラカシ,アオキ,シュロなどの実生が定着している。ヒノキ林というと下層の木本はほとんどない印象なのだが,林分が小さいためだろうか。それにしても,常緑広葉樹の実生を見分けるのは難しい。その後,シラカシモデル林分,スギ人工林からそれぞれ土壌を採取したところで昼食となった。



・2mmのふるいで根やごみなどを取り除く。卒論のころが思い起こされる。2mmでも平べったい種子がやたらと発見される。これだけメジャーな種子だと同定しないわけにはいかないのだが、全く想像もつかない。LTERプロット内の一部ではかなりの種子が既に発見された。思ったよりも埋土種子相は豊かなのかも・・・。今後が楽しみである。

「ふーん」と「へえ!」

2008-09-04 | フィールドから
・朝から晴天。生産掛に手伝ってもらって,90林班の樹幹幅,樹高の測定。大変な測定だったのだが、若者たちが軽々と動いてくれてサクサク進んだ。毎木プロットを2箇所設定し,こちらは測量から調査までをスタッフにお願いし,我々は大麓山頂へと行く。12時すぎに山頂到着。やはり周囲の山々がきれいに見える。KさんのEOS kissを借りてファインダーをのぞいてみると,思いのほか軽くて実にきれいだ。デジカメ一眼も一台欲しいところである。



・山頂のアカエゾマツは既に来るべき冬の準備をしている。改めてみると、針葉の形態の違いは顕著である。山頂では温湿度ロガーをもう一台設置。今度こそ厳冬期のデータを取りたいのだが,雪に埋もれるかどうかは微妙な高さかも。Oくんが追いかけている”ナキウサギ”を思われる鳴き声を聞いたように思ったが,残念ながら鳥の声だったようだ。登山道には既に真っ赤になったナナカマドの実生も見られて,もうすぐ紅葉シーズンであることを思い起こさせてくれる。



・今回のディスカッションで,急に実施することになった標高別試験地のアカエゾマツの調査。まずは4区に行って,20個体を選ぶ。ここは日当たりのよい個体を選ぶには苦労しない。ピンクテープとNoテープをつけて,後は10月にサンプリングを行う予定。次いで3区,ここは林道からのアクセスが楽勝ですいすいと終了。ところが2区,1区になると周囲の個体が死亡していないので,被圧されていない個体を20個体選ぶのが大変。1区はついに17個体であきらめることに。

・こうして標高別試験地がさっそく活かされるというのは嬉しい話だ。Kさんから指摘されるまで気がつかなかったのだが,標高に対するクラインを軸にすると,この試験地のデータを入れると急にアトラクティブになることが想定できる。論文を読んだとき,「ふーん」という感想で終わるか,「へえー!」という感動があるかの違いに相当するのだろうと思うけれど、この違いは大きい。