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西東京市・北海道富良野の森林を舞台にした遺伝,育種,生態などに関する研究ノートの一部を紹介します

カエデの子ども

2008-12-16 | フィールドから
・今日も寒い。昨日同様、くるりと試験地を見回り。よく見ると、農場の方はさらに霜が降りている。カエデ林に入ってみると、稚樹たちが霜に震えている。



・気になっていた仕事をとりあえず片付け、ヤチダモ種子の画像解析用のシートの作成。パワーポイント上で1×1cmの正方形を発生させるには、グリッドをうまく使えばよいと分かった。これで準備は完璧(のはず)。

・Iさんに手伝ってもらって、カエデ見本林の面積を測ってみる。縦30m、横50mの調査地が何とか取れそう。10mごとに杭を打って、サブプロットの中心に調査枠を設定するという感じになるだろうか。

・査読を進める。大体言いたいことは決まっているのだが、これを英語にするのがいつも難関である。本当に言いたいことが伝わるのか心配・・・である。

霜柱

2008-12-15 | フィールドから
・今年一番の冷え込み。我が家の窓も結露がすごい。朝一番で試験地内を見回ると、苗畑では見事な霜柱。考えてみると、福岡でも富良野でも、霜柱なるものはあまり見ていなかった気がする。



・さらに奥へと進むと、レバノンシーダーの樹幹から、水蒸気がもうもうと立ち昇っているのに気がついた。当たり前の現象なのかもしれないが、ここまで幹から水蒸気が放出されているとは驚きだった。日当たりの状態や樹種によっても放出量が異なるように見える。ちなみに写真はポプラの1種。



・菊澤本で紹介されていたAntonovics & Ellstrand (1984) Experimental studies of the evolutionary significance of sexual reproduction. I: A test of the frequency-dependent selection hypothesis. Evolution 38(1):103-115を読む。頻度依存選択を実験的に証明したというものだが、実験のデザインが秀逸である。

・調査地は北カリフォルニアで、材料はイネ科の多年生草本ハルガヤAnthoxanthum odoratumのクローンである。2つの実験が行われており、一つは20個体を6角形になるように配置し、18/20のMajorityと2/20のMinorityで適応度を比較している。

・もう一つの実験では、○○○×○×××という8個体を列状に植えている(○と×はそれぞれ異なるクローン)。ここで、左から2番目と7番目は両脇が同じクローン、3番目と6番目は片方が同じで片方が異なる、4番目と5番目はどちらも異なるクローンとなっているが、この実験では隣接個体が同じクローンか否かによって適応度が異なるかを調べたという設計になっている。

・どちらの実験でも、適応度(3年間の生存率×個体当たりの花序数平均)はMinorityがMajorityの約2倍になっており、頻度依存選択を実証したということになっている。そのメカニズムは、他クローンだと競争が緩和される(用いる資源が異なる)ことと(しかし、著者らはこの説を強調していない)、Minorityの方が菌害などにかかりにくいことを挙げている。

・この論文では種子産地と植栽地の影響(HomeとAway効果)とMajorとMinorの効果を同時に調べているので、少々分かりにくい。結果的にはHome、Away効果はほとんど認められなかったようだ。しかし、MajorとMinorについて、ここまできれいな結果になるのは驚きである。クローンを用いているというのが大きいのかもしれないが、特に列の実験は”本当なのか!?”と思ってしまった。しかし、こういう古典論文は読んでいて面白く、案外とヒントになるアイデアが隠されている。

乗り合いバス

2008-12-09 | フィールドから
・朝も思ったほどは寒くない。が,昨日の雨ががちがちに凍っていて,“つるっつる”となっている。久しぶりの雪道でこけないように慎重に足を運ぶ。朝一番でOさんとトドマツ標高別論文の打合せ。こちらも記憶が曖昧になっていたのだが,途中までできている原稿を見ると,ある程度のストーリーはできているような・・・。後は「言いたいことを書く」ための下準備として,関連論文をもう一度確認しておく必要がありそう。



・その後は実験室片づけが続く。D論の実験を行ったときの余りのDNAなども飛び出てきて,ひたすら捨てる。お昼をはさんで2時過ぎまで作業をし,ようやくゴールらしきものが見えた(気がした)ところで時間切れ。こちらでは,実験室を含めて一時引越しの準備が大変である。

・富良野と旭川を結ぶバス“ラベンダー号”はそれなりの大型バスだったはずなのだが,富良野駅で待っていたら,普通の“乗り合いバス”が滑り込んできた。経費節減のため,であろうか。乗客たちが顔を見合わせていたところを見ると,今回限りのハプニングなのか,あるいは最近始まったことなのか。

・旭川空港でお土産に札幌クラシックを購入。着いてから後悔することになるんだけど(重いから・・・),今回の我が家へのお土産はビールと生チョコとなった。ところで,今回の出張直前に査読を1つ超特急で片付けたと思ったら,あっという間に2つも抱える羽目になってしまった(もう無理・・・)。機内で査読に目を通すが,なぜか頭に入らず,朦朧としてきたので終了。

後片付け

2008-12-08 | フィールドから
・富良野に行くために羽田へ。朝8時ごろの西武新宿線はひどい混雑である。山手線で浜松町まで行くと,混雑は加速し・・・世の中の人たちはこんなラッシュアワーを耐えているのかと思うと,職場まで自転車というのがいかに有難いことを実感した。

・富良野は雪が思った以上に少なく,雨交じりである。Tさんと久しぶりに再会。今日から岩魚沢のシードトラップの同定をお願いすることになった。シードトラップも,これで4年間のデータが得られるわけで,何とか結果をまとめたいところである。北海道では想像以上に冬期散布が重要であることは分かっているのだが,できればInverse Modelで種ごとの散布パターンを比較してみたい。

・山部の実験室の片付け。引っ越し前にも(それなりに)片付けていたつもりだったのだが,細かく見ていくと残されたものが結構ある。片付けの合間に,みんなと少し立ち話をしたところ,今回の森林学会の北海道支部大会では,ここのスタッフの発表をかなりの人たちが聞きにきてくれたらしい。これは嬉しいニュースである。天然林の取り扱いが注目されている,ということなのか・・・。

・宿にて来春の国際シンポに向けたヤチダモ種子の形の解析を行う。種子の形と成長の関係はやはりなさそう。親子解析結果と形の関係もなかなか難しそうである。予測されたことではあるが,果たしてどうするか・・・。

この木なんの木

2008-11-25 | フィールドから
・Tさんとヒノキ種子の計測。乾燥させた球果から種子を取り出して重さを測定する。ずっと前に終わっているはずだったのだが、数々のイベント(?)が舞い込んで、のびのびになっていたもの。

・しばらく2人で試行錯誤しながらふるいを活用すれば効率よく球果から種子を取り出せることに気がつき、サクサクと作業を進める。午前中に球果を含めた全体重量は測定終了。午後からはTさんに少ない球果の重量測定をお願いし、当方は講義とゼミ準備、ううっ、ゴールが見えない感じで・・・。



・突然、一般の方の来客があり、「公園で見つけたこの木(写真を持ってきていただいた)は何でしょう?」との質問。先方の「きっとこれではないだろうか?」、というお話の通り、”ナンキンハゼ”であった。



・どういう偶然か、当方も同じ公園で気になって、写真を撮影していたので、すぐに見当がついたわけだが、園芸種が多い都会ではこういう質問は難題だったりする。

・何はともあれ、このナンキンハゼは中国原産とのことだが、街路樹などにもよく使われている。この時期、紅葉が美しい上に、面白い実をつけているので目立つ。それにしても、広い公園の中で当方以外にも同じ木を眺めている人がいたとは、さすが東京は人口密度が高い!?

マクロな世界

2008-11-15 | フィールドから
・先日購入したマクロレンズをつけて子どもと久しぶりに虫捕り。もうバッタもいないのではないかと思われたが、日当たりのよい草原には、イナゴだけではなく、ツユムシ、クビキリギスなどもいた。過ぎ行く秋を謳歌しているのだろうか。



・マクロレンズをつけると、いままでには考えにくいような写真が撮れて面白い。これはいわゆる引っ付き虫(センダングサの仲間?)。人間による動物散布の影響も小さくない!?_



・今年のドングリは豊作である。スダジイ堅果が自然に落下しているのだが、これほどの密度になっているとは・・・。来年、これらは発芽するんだろうか。



・この辺ではどこにでもあるカラスウリさえも、素晴らしい被写体になってくれる。子どもの顔のアップもなかなかいい感じ。ふうむ、マクロレンズをつけて歩くと新しい発見がありそうだ。

キノコゼミ最終回@田無

2008-11-01 | フィールドから
・自由研究ゼミは無事(?)終了。しかし、前半を全てスライドにするのは学生にとっては集中力が持たないことが分かり、次回は配布資料に基づいた講義を半分くらいにしようかと思っている。ということで、相変わらず次の講義準備に追われている。自転車操業的だ。

・今日は、田無にてきのこゼミの最終回。Sさんと11時に田無駅で待ち合わせ、アスタでキノコやサーモンを買出し。ベルクと比べると若干の品薄感があるが、”こだわりの原木栽培しいたけ”などもある。シメジ、マッシュルーム、まいたけ、エノキなどなど、キノコに関してはかなり充実した買出しとなった。



・本日は、まずNさんによる菌根菌の講義。「菌根菌がいなければ、樹木は生きられないし、森もできず、生態系の隠れた主役なのだ」、というメッセージ。高度かつ分かりやすい内容で、これまた学生たちにはかなり印象に残ったのではないだろうか?最近の研究成果がうまく織り交ぜられており、我々にとっても想像以上に面白かった。



・講義後に外に出て、きのこを探す。が、晴天続きでまたもや乾燥しており、前回の田無のようにはいかない。苗畑で多少の菌根菌が見られたが、ほかではほとんどキノコ自体が発見できない。スダジイ林のところではドングリがたくさん落ちている。生で食べてもほのかに甘くて美味しい(ちょっと粉っぽい)。シイの実が食べれるというのは、知らない学生も多かったようである。



・何とかキノコを発見し、キノコと菌根菌を室内に持ち帰り、顕微鏡で観察。盲点だったのは、キノコに捉われすぎて、樹木ではなく草本の根っこを持って帰った人が多かったこと。



・後半はSさんによるキノコの食し方の講義と実習。スーパーで購入してきたキノコを使った西洋料理。Sさんに用意していただいたレシピに基づいて、学生達が調理(調理実習??)。料理に慣れている人もいない人も協力しあったお陰で、いいにおいが昇ってくる。



・最後の晩餐。一人ずつ感想を述べてもらう。キノコを探して食べるという体験が思いのほか楽しかったようで何よりである。また、秩父の3名の人物との遭遇が印象に残ったという意見も多かった。キノコに親しむだけでなく、色んな世界を広げることができたようだ。学生のみんなが各プログラムに真面目にかつ積極的に参加してくれたこともあり、我々にとっても新鮮な経験ができた。お世話になった皆さんに感謝!である。



キノコゼミ@秩父2日目

2008-10-26 | フィールドから
・早起きして渓谷を散策。紅葉と沢の組合せが美しい。マイナスイオンを浴びてリフレッシュ。



・本日はキノコを通じて人や社会をみるというのがテーマ。まずはナメコ生産者のYさんを訪ねる。ナメコの生産は現在、80日間が1サイクルになっている。培養するにつれて、最初は粒にしか見えないナメコが徐々におなじみのナメコへと変貌していく様が興味深い。ナメコの菌床栽培を見るのは、みんな初めての経験だったようだ。



・次に、スーパーベルク影森店でNさんと待ち合わせる。この店舗は店内が明るく、品物もいかにも新鮮そうで、買い物をしたくなる雰囲気に溢れている(自宅近所にも欲しい!)。従業員の食堂にて、Nさんのお話を伺ったのだが、秩父産のキノコの話から食品業界が抱える問題点まで、ワールドワイドに語っていただき、その迫力に圧倒された。野菜やキノコの産地について、”キャベツはここがうまい!”と断言する強さに感服。本当に食べることが好きで、(おそらく)買い付けをする際に自分で食べまくり、いいものを売るというのを徹底してきた「達人」の言葉である。

・最後は、廃ほだ木、原木からキノコ菌床栽培用のおがくずを生産しているA商店を訪問。ここでは、樹種(広葉樹、針葉樹ともに扱っている)や目の粗さによって、20種類もの”おがくず”を生産している。興味深かったのは、クワガタ生産用のおがくず(クヌギ100%!)も、それなりの規模で生産していたこと。オオクワガタの飼育本にもそういえば、菌床で育てるテクニックが書かれていたのを思い出した。



・社長に言われるまま、おがくずを少し掘って触ってみると、想像以上に熱を持っている。見た目とはまた違った面が見えてくる。ここA商店では、廃ほだ木や原木から色んなキノコが豊富に発生している。社長の「採っていいよ」、という一声で急遽、キノコ探しが始まる。シイタケ、ヤマブシタケ、キクラゲ、ヒラタケなど食用キノコが面白いくらい採れた(初日を圧倒してしまった!)。



・しかし、なんと言っても面白かったのは社長のお話。ほとんど漫談のようで、面白い話がどんどん飛び出してくる。社長は生き物も好きで、伝書鳩から”とんび”まで実にいろんな生き物を飼ったらしい。しかし、最初と最後にしきりにおっしゃっていたのは、「若ぇもんが山で木を伐ってくれなきゃ、俺りゃほんとに困るんだよ・・・」という言葉。自然環境ブームや就職難とリンクしない山仕事の実態を突きつけられる。

・本日は3名の人に会い、地域キノコから世界的な食糧問題、山村の問題まで考えさせられた。それにしても、秩父には「人物」がいるものだと改めて実感。学生達の目にはどのように映っただろうか。少し時間が経ってから聞いてみたい。

きのこゼミ@秩父初日

2008-10-25 | フィールドから
・キノコゼミの秩父1日目である。学生11名は時間通りに、西武秩父駅に集合(素晴らしい!)。まずは川又学生宿舎まで移動して昼食。初めて訪れたのだが、なかなかいいところである。昼食後、まずは天然林(ブナ林)へ。安全なところまで異動してから学生達を野に放ち、最も楽しみにしていたであろうキノコ狩り。ところが、不思議なくらいキノコが生えていない。



・こりゃダメだというムードのなか、そこはS先生が見事に紫シメジを見つける。落ち葉から発生する割には大きいという色鮮やかなシメジである。これは一度湯がいて汁をこぼしてから調理する必要があるのだが、翌朝の味噌汁は実にうまかった。



・散々探したが今ひとつ見つからないままに下山。下山途中には猛毒コレラタケ。確かに食べたくなるような見た目だ。



・人工林(カラマツ)に入った途端、ハナイグチなど食用キノコがあちこちで発見される。天然林の方が人工林よりも多いという当方たちの予想に反し、実に豊かなキノコ相であった。やっぱりキノコ狩りは見つからないと盛り上がらない。



・夕食では山採りキノコ、S先生ご自宅の缶詰キノコを加えた秩父名物”おっきりこみ”。”ほうとう”が山を越えると”おっきりこみ”になるらしい。うどんの太さが特徴だが、キノコ風味も加わってさらにうまい。



・夕食後、S先生による毒キノコ講義。毒と一口に言っても、神経性毒、食中毒、細胞を壊死させる毒など、色んな種類の毒があることに感心?。迷信が多いのも毒キノコの特徴のようで、確かに子ども達は派手なものが毒キノコだと思っている。事故例が多いのはツキヨタケ。このキノコの名前の由来は、暗闇で光ることだということで、さっそく2階にみんなで行って、真っ暗闇で目を凝らす。最初は何も見えなかったのだが、ツキヨタケの裏側がうすぼんやりと白っぽく輝くのに感動。しかし都会では、これだけの暗闇を見つけることの方が難しいだろう。

・酒とマージャンもないということで、なぜかトランプすることに。大富豪に混ぜてもらったのだが、八切り(8が出ると強制的に流れる)、縛り(同じマークが出た途端、次からはそのマークで切らなければならない)など、色んなルールが加わっていることに愕然。それにしても、大富豪をやると、個人の性格が分かってなかなか面白い。

75林班再生林地はぎ試験地

2008-10-22 | フィールドから
・昨日でサンプリングが終わったので、Mくんとともに標高別試験地に設定したネズミトラップの回収にくっついていく。”高標高のネマガリダケの中ではネズミの密度が高いのでは?”という当方の予測は見事に外れたようで、どこでも満遍なくという感じであった。



・一通り終わったところで、75林班の再生林の地はぎ試験地を見に行く。今年はウダイカンバも豊作のようで、実にたくさんの種子が降り積もっていた。これは期待できそう。



・ここでは、50×40m、50×20mが2箇所ずつ皆伐され、地はぎが行われている。この試験を通じて、地はぎの適正面積が分かるはず、なのだが・・・。



・東山作業所の裏から降りてくると、そこはカラマツ雑種F1の試験地である。久しぶりにみると、ものすごい成長である。植えた当初の曲がりも気にならなくなった。生存率も非常に高そうで、これなら儲かる林業ができそうな気になってくる。育種の力は偉大である。



・最後に、樹木園で標高別の試験地やブナの産地試験地などを見る。Oさんの頑張りで看板が整備されている。いざ自分が見学者になってみると、これらの情報は実に嬉しい(Kさんたちも看板の写真を撮っていた)。苗畑も床替え年が分かるようになっていた(進化しているねえ・・・)。ちなみに、K林長のブナ産地試験地では結局霜害で枯死した個体はいなかったらしい。6月時点では絶対何個体かは枯れると思ったんだけど・・・。