人のiPS細胞(人工多能性幹細胞)から肝臓を作製する宇宙実験を、国際宇宙ステーション(ISS)で2018年度にも始めるというニュースが報道されていました(YOMIURI ONLINE)。宇宙でiPS細胞由来の細胞を培養する実験は世界初で、重力の影響を受けない宇宙で臓器を作る技術を開発し、将来、地上で移植用臓器を作る研究に活かすそうです。iPS細胞を使った再生医療は、網膜や血液成分を作る研究が進んでいます。複雑な立体構造を持つ臓器は、細胞を装置内で増やしても重力などの影響で大型化しにくく、移植に使える大きさにするのは難しいそうです。計画では地上で約0・2ミリ・メートルの肝芽を作製してISSの実験棟「きぼう」に運び、培養液で満たした容器内で肝芽の結合を観察し、肝臓の働きを持つかを確かめるそうです。肝芽が大型化すれば、地上でマウスに移植する実験も検討するとのことです。
ハンセン病や結核の治療に使われる既存の薬に、認知症の予防効果があることがマウスの実験で確かめられたという研究成果が、「ブレーン」に発表されたそうです(YOMIURI ONLINE)。研究では、「リファンピシン」という薬を使うハンセン病患者は使わない患者に比べ、認知症になる割合が低いことに注目。認知症の状態にしたマウスに、この薬を1日1回、1か月間投与し、プールを泳がせて足場にたどり着くまでの時間を計る実験で記憶力を調べると、正常なマウスと同じ程度に改善したそうです。認知症の多くは、脳内に特定のたんぱく質がたまって、神経細胞の機能を妨げるのが原因と考えられています。この薬がたんぱく質の働きを抑えると考えられるそうです。リファンピシンは1960年代からある抗生物質で、結核治療にも使われているそうです。
経済産業省が、遺伝子を自由に切り貼りできる新技術「ゲノム編集」の研究開発の強化に乗り出すと報道されていました(YOMIURI ONLINE)。2016~20年度の5年間で計86億円の予算を投入し、日本独自のゲノム編集技術を開発するそうで、植物や微生物の遺伝子を改変して、医薬品や香料の原料などの効率的な大量生産を目指すそうです。ゲノム編集は従来の遺伝子組み換え技術よりも、確実に効率よく遺伝子を付け足したり、壊したりできるのが特徴で、血友病やエイズといった難病の治療や、作物や家畜を望み通りに品種改良することなどが期待されています。国産のゲノム編集技術開発に向け、経産省所管の新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)は、委託先の研究機関や大学、企業などの公募を開始したそうです。2016年度は計17億2000万円の助成を予定しているとのことです。
一般的な疾患である腰痛の治療法として従来用いられてこなかった瞑想と認知行動療法(CBT)に、痛みを緩和する効果がある可能性を示す研究結果がJAMAに発表されたそうです(AFPBB NEWS)。CBTとは、患者自身が悪い行動選択や否定的な考えを認識し、解決するように促す治療法のことだそうです。被験者となったのは平均7年に及ぶ腰痛の患者で、20~70歳の成人342人。無作為抽出で3分の1には「マインドフルネス・ストレス低減法(MSBR)」とヨガを組み合わせた治療法、3分の1にはCBT、残る3分の1には通常の治療法を26週間にわたって行ったそうです。その結果、MSBRとヨガを行った患者と、CBTによる治療を行った患者では、通常の治療を行った患者に比べ臨床学的に有意な改善がみられたそうです。従来の治療法で改善がみられた患者は44%だったのに対し、CBTでは58%、MSBRとヨガを行った患者では61%に改善がみられたそうです。
妊婦による喫煙は、発育中の胎児のDNAに科学的な変化を生じさせ、子どもを危険にさらす恐れがあるとの研究論文がAmerican Journal of Human Geneticsに発表されたそうです(AFPBB NEWS)。この結果は、6000組以上の母子を対象とする大規模調査に基づく結果だそうです。妊婦の喫煙をめぐっては、死産のほか、新生児に先天的な口蓋裂、肺病、神経行動学的な問題などの原因となる恐れがあるため、医師らは長年、妊娠中の喫煙を避けるよう警告されています。こうした警告にもかかわらず、米国では妊娠中の女性約12%が喫煙を続けるそうです。タバコの煙に含まれる化学物質は、子どもを守る胎盤を通過して胎児へと到達。研究チームは、喫煙による胎児のDNAの変化がどのような仕組みで起きるのかを調べるため、小規模な先行研究13件のメタ分析を実施。これらの先行研究の一部では、「メチル化」としても知られるDNAの化学的変化と喫煙との関連性が示唆されていたそうです。メタ分析で対象となった新生児6685人のうちの約13%は、妊娠中に日常的に喫煙していた母親から生まれた子どもだったそうで、妊娠中に時折喫煙していたか、妊娠初期に禁煙していた母親を持つ子どもは同25%だったそうです。研究チームは、日常的な喫煙者のグループでDNAが化学的に変化した箇所を6073箇所を特定。非喫煙者の母親を持つ新生児のものと異なっていることを確認したそうです。多くは肺や神経系の発達、喫煙に関連するがん、口唇裂や口蓋裂などの出生異常などに関連する遺伝子だったそうです。これらのDNAの変化は、出産後に採取された臍帯血のサンプルで確認。母親が妊娠中に喫煙した頻度が低いほど、この変化がより不明確だったそうです。また、妊娠中に喫煙していた母親を持つ、より年長の(平均年齢6歳の)子ども数百人のグループでも、一部のDNAの変化が依然として明確に残っていることが、別の分析で明らかになっているそうです。
現在、世界の成人のうちおよそ8人に1人は肥満であるとの調査結果がThe Lancetに発表されたそうです(AFPBB NEWS)。この割合は1975年の2倍以上で、2025年までには5人に1人になる見通しだそうです。論文によると2014年に存命していた成人約50億人のうち約6億4100万人が肥満。また今後9年でその数は11億人を超えると推定。BMI(体格指数)は、18.5~24.9が正常値とされ、25以上は過体重、30以上は肥満。30以上では、糖尿病や脳卒中、心疾患、一部のがんのリスクが大幅に高くなるとされ、BMIが35以上の場合は高度の肥満、40以上の場合は病的な肥満に。調査結果によると、世界全体の男性のうち肥満の人が占める割合は1975年に3.2%だったのが2014年には10.8%(約2億6600万人)と約3倍に増え、また女性では、同6.4%から14.9%(約3億7500万人)に増加。男女合わせた割合は12.9%に。論文によると、もし肥満の人の割合がこのペースで増えるならば、2025年までにはおよそ男性の5人に1人(18%)、女性の21%が肥満になると見込まれるそうです。高度の肥満患者については、男性の6%以上、女性の9%以上となる見込みとも。また世界の肥満の成人のうち米国、英国、アイルランド、オーストラリア、カナダ、ニュージーランドの6か国の居住者が全体の5分の1近く(約1億1800万人)を占めたそうです。世界全体の高度肥満症患者のうち男性の4人に1人、女性の5人に1人近くが米国の居住者だったとも。データは1698件の研究から得たもので、世界人口の99%が居住する186か国の成人1920万人が対象だったそうです。
初期の乳がんと診断された女性は、毎晩13時間以上食事を控えれば、腫瘍が再発するリスクを下げられる可能性があるとする研究論文がJAMA腫瘍学に掲載されたそうです(AFPBB NEWS)。夜間に絶食すると、がんの症状を悪化させる可能性がある高血糖や炎症、体重増加などを避けることができるとするこれまでの研究が基礎になっているそうです。今回の研究は、1995~2007年に収集された、糖尿病を患っていない初期の乳がんと診断された27~70歳の女性2413人の調査データに基づいたものだそうです。対象者に新たな腫瘍が確認された場合は平均7年間の追跡調査を、乳がんやその他の原因で死亡した場合には過去11年間にさかのぼって調査。その結果、絶食時間が一晩に13時間未満だった女性は、同13時間以上だった女性に比べて、乳がんの再発リスクが36%高いことが明らかになったそうです。
膵がんの進行を遅らせるのに、皮膚がんの治療で使われる分子標的薬が有効であるとの動物実験結果が、Cancer Research電子版に掲載されたそうです(YOMIURI ONLINE)。膵がんは、がんの中でも最も治療が難しいと言われ、多くが進行した状態で発見されるそうです。研究では膵がんの進行メカニズムの解明に取り組み、今回、早期の上皮内のがんが浸潤がんに移行する際、がんを進行させる酵素を抑制する遺伝子がなくなることが明らかになったそうです。そこで、この遺伝子に代わって、酵素の働きを抑えることが有効な治療法と考え、動物実験で、膵がん細胞を移植したマウスに皮膚がんの治療で使用される分子標的薬を投与した結果、がんの増殖や転移を抑えられることが分かったというもの。分子標的薬を与えたマウスと薬を与えなかったマウスを比較すると、分子標的薬を与えたマウスが平均して約30日の延命効果も認められたそうです。
抗菌薬(抗生物質)が効かない薬剤耐性菌に対し、政府が初めて策定する行動計画案がわかったそうです(YOMIURI ONLINE)。抗菌薬は、大量に使うことで耐性菌を増やすことにつながるため、使用量を2020年までに3分の2に減らす数値目標を盛り込んだのが特徴。耐性菌にも効果がある新薬の開発も政府として後押しするそうです。政府は、4月に関係閣僚会議を開いて行動計画を決定するとのこと。大腸菌や黄色ブドウ球菌といった一般的には危険性が少ない細菌でも薬剤耐性を持つと、感染した人は最悪の場合、死に至ることも。厚生労働省によると、耐性菌による13年の死者は全世界で70万人ですが、50年にはがんを上回る1000万人に達するとの試算もあるそうです。行動計画が掲げた数値目標としては、国内での抗菌薬の使用量を3分の2に抑制するほか、肺炎球菌や大腸菌、黄色ブドウ球菌などの耐性菌の割合を、大幅に引き下げることも盛り込んだそうです。
人工知能(AI)やロボットを使って、医師の診療をサポートする仕組みが開発されたそうです(YOMIURI ONLINE)。患者の症状や過去の受診状況などをもとに、診断候補を絞り込み、適切な検査や治療法を提案するそうです。自治医科大学は、来年度にも実際の診療現場での試験運用を始め、全国に広げていきたい考えだそうです。このAIは「ホワイト・ジャック」と名付けられ、市販のロボットなどと組み合わせて使うそうです。過去の膨大な診療データなどから、患者の症状に合致する病名と、その確率を示すそうです。確定診断に必要な検査や、薬の処方などもアドバイスするそうです。将来は、ロボットが診察室で医師と患者の会話を聞き取り、医師の代わりにカルテに記入する仕組みも導入するそうです。