血液・免疫細胞を生み出す造血幹細胞において核クロマチン構造を調節する蛋白質Satb1が加齢とともに低下することが発見されたそうです(QLife Pro)。また老化した造血幹細胞を骨髄から分離してSatb1を発現させると、リンパ球を産生する能力が部分的に回復することも明らかになったそうです。リンパ球造血の初期過程は老化に伴い衰えるそうです。その原因は造血幹細胞の質的変化と考えられるそうですが、免疫系の老化に関係する遺伝子は不明だったそうです。造血・免疫系の加齢による変化は、高齢で発症する白血病・リンパ腫の病型、血液系の悪性腫瘍にも影響を及ぼすため解明が待たれていました。研究では造血幹細胞と目される細胞集団から早期のリンパ球前駆細胞を分離・培養する方法を開発。細胞集団は高いリンパ球産生能力をもつ多能性前駆細胞だったそうですが、すでに長期造血再構築能を失っていたそうです。リンパ球への分化を誘導する遺伝子を精査した結果、Satb1の発現量が免疫系の老化に関係するとわかったというのです。造血幹細胞は骨髄球、赤芽球、リンパ球へ分化するが、老化するとSatb1が低下してリンパ球に分化できず、免疫系で中心的な役割を担う白血球が作られないそうです。免疫系が調節できれば高齢者のワクチン接種の有効率が高まり、感染症、がんの罹病率が減少する可能性があります。個人の生活の質が向上するばかりではなく、これからの高齢化社会にとっての福音となるとも。今回の研究ではSatb1の発現を誘導しES細胞からリンパ球を効率よく産生できることも確認でしたそうです。今後、Satb1の発現を調節しES細胞やiPS細胞から大量の免疫細胞を誘導する技術ができれば、免疫機能が低下する疾患に誘導細胞を用いた治療法が開発されることが期待できるそうです。
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