
世の中で販売されているスチールギターのほとんどが6弦なのです。しかし音域を上下に拡大するには8弦もしくはそれ以上の弦数があったほうが都合がよいと思っています。もちろんそれを弾きこなせるかどうかは別ですし、6弦だけで立派に弾いているプロも多いので贅沢な希望かもしれませんが・・・・汗。
特にAメイジャーやEメイジャーそしてAマイナーのような調弦でしたら6弦でも広い音域が得られますが、現在の主流?になっているC6調弦およびそれの派生調弦ですとどうしても弦の本数が多いほうに靡いてしまいます。
もちろん8弦のスチールギターは市場にたくさん存在するのでそれを入手すればよいのですが、基本的には「高価」なのです(涙)。一度、ネットで比較的安い8弦があったので購入したところフレット配置からピックアップの性能まで全てがいい加減で、がっかりしたことがありました。
なぜ6弦が圧倒的に多いかというと、ピックアップにエレキ・ギターの互換ピックアップがそのまま使えるからで、大量生産した場合のピックアップ原価は5ドルから10ドル程度だと思います。もちろんピックアップ単体としての販売価格はこれとは無関係に100ドルから200ドルもするようですが・・・・。
ところが8弦なり10弦用のピックアップとなると需要がほとんど無いために、たとえ手がける会社があっても量産は望めませんから「試作ライン」のようなところでの手作りになるでしょうからそれだけで原価が50ドルかそれ以上もすることになり、それを搭載したスチールの販売価格は1000ドル近いものになってしまうわけです。
どうせプロ活動をするわけではないのですし、だいいちそれだけのウデがありません(汗)から、あくまでも自分で楽しむ目的での手軽に入手できる8弦スチールが☆~!・・・・・という気持ちから昔の「工作少年」の自分がこれをなんとか実現させたいと考えました。
実は学生時代に同じ気持ちになったことがありました。
当時は8弦どころか6弦スチールでさえ貧乏学生には入手できませんでした。それもフェンダーだ、ギブソンだといった舶来物ではなくテスコやグヤトーンという国産物でも手がでなかったのです。(号泣)
さいわい、共鳴ボディーがあるわけではないので、加工の容易なラワン板を切り抜いてボディーをつくり、ピックアップには当時出始めたピックギター用外付けマグネチック・ピックアップを取り付け、チューナー(弦巻き)はギターの交換用の部品として売られていたものを取り付け、ブリッジとナットはプラスチック製のたんす用取っ手をヤスリで削り落として使うなどして無事完成したときには大感激でした。曲がりなりにも自分用のスチール・ギターが入手できたのですから。
今回も同じアプローチで作成すればこと足りるわけですが、もっと手抜きをして既成の6弦スチールが改造できないかと考えたのです。
6 弦を8弦に改造するには大きく分けて4つの関門があります。トップの写真の数字にしたがって紹介いたしますと。
その1:チューナーを6個から8個に変える必要がある。
その2:ナットの溝を8弦に対応させる必要がある。
その3:6弦用のピックアップがそのまま8弦用に使えるか?
その4:ブリッジをどうする?
この中で最大の問題点は「その3」です。普通の6弦用ピックアップの大半はそれぞれの弦の感度を上げる目的でヨークと呼ばれる磁性体(下の写真のそれぞれ6個の円形のもの)をそれぞれの弦に接近させているのです。
もちろん真ん中の写真のように弦とヨークの位置がズレていてもそこそこ振動は拾ってくれますが、できればしっかりと対向していて欲しいものです。
そしてこのピックアップを8弦に使おうとすると当然ながらヨークと弦の位置関係はメチャクチャになってしまうので使えません。
幸いにして今回改造する候補のスチールにはレール型のヨークが2本備えられたハムバッキング型ピックアップが搭載されていたので、8弦でも(10弦でも!)対応が可能です。
ただし、当然のことですが1弦から6弦までの幅に8本の弦を張るので、弦同士の間隔が10.4ミリある6弦に対して70%の7.5ミリ程度になってしまいます。これがネックとなるかどうかがこの改造における最大の課題ではないでしょうか。
実際に使ってみるとたしかにミスタッチが増えました。(もともと多いのですが・・・・汗)
でも10弦ペダルスチールの弦間隔がこれより1ミリ広い程度の8.4ミリですので慣れれば何とかなるかもしれません。(と楽観的過ぎる見通し!)
さて次は問題点その1の「チューナー」です。
6弦用として使われているチューナーはご覧の通り取り付けネジ穴がこれ以上接近できないものが使われています。
そこでこの寸法内に8個が納まるチューナーを探して見つけました。何故4袋も買ったかというと、1袋に6個入っているので最低4袋買わないと必ずハンパができる、という貧乏人根性からで、8弦スチール3台分のチューナーが有っても2台しか作成する予定がないので1台分は「余ってしまう」のですが・・・・
これを使うことで6弦の時のシャフト間隔34ミリより小さい28ミリが余裕で実現できました。
次は「問題点その2」のナットです。
この問題点の解決法は4つの中では最も容易で、現在刻まれている溝がなくなるまで削り落としてから新しい溝を刻めば良いわけですが、その方法を敢えて採用せず、この際いろいろと実験をするためにあえて新規に作成することといたしました。
それは取り付けるナットの幅を今までどおりの48ミリ、指板よりははみ出すがボディー幅以内に納まる54ミリ、そしてブリッジ側と同じ弦間隔になる58ミリの3種類を作成することとしたのです。
本来でしたらステンレスか真鍮のLアングルがほしかったのですが、東急ハンズのように多彩なサイズの素材が得られないので、やむなくアルミのLアングル素材を加工することとしました。
左が素材で右の上から「オリジナル」「58ミリ幅」「54ミリ幅」「48ミリ幅」のナットです。
実際に取り付けてみると58ミリ幅は不恰好!なのでボツといたしました。
これらのナットに専用の溝切りヤスリで溝を刻んでいきます。当然ながら使用する弦が定まらないと溝幅はともかくとして溝の深さを決めることができませんので、しばらくは弦の選択と合わせて何度か溝切りを実施する予定です。
さて「問題点その4」のブリッジです。
現在はソリッドギター用として標準的に採用されている「ハードテイル・ブリッジ」が取り付けられています。
当然ながらこれは6弦用ですので使えません。そうかといって8弦用のハードテイル・ブリッジなどというものは世の中に存在しないので、対策を考えました。
そして結論としてこのハードテイル・ブリッジのベース(L字形の取り付け台)部分だけを活用し、取り付け方向を180度変えることでベース部分の立ち上がった辺を固定ブリッジとして使うことにいたしました。
この写真は第一作のため見るからに不恰好ですが、一応機能は果たしたのでギリギリ及第点といたしました。(お手盛りですからどうにでもなります・・・・汗)
本来でしたら低音弦がわに多少のセットバックを与えなければいけないのですが、そこはフレットレス楽器であるスチールギターの強み(欠点?)を生かして耳で修正が可能と判断してセットバックは一切つけないことにしました。・・・・というか付けられませんでした。
このブリッジの穴あけ加工には難渋しました。ナットと違って鉄材のため、穴あけ、ヤスリ掛けいずれにも時間がかかりました。
それより以前にまず穴あけ位置をセンター・パンチで正しく(!)決めたはずが、電気ドリル作業をを手持ちで行ったためにドリルが勝手に走り回ってしまい、見るも無残な外見となりました。
第一この部品をしっかりと保持する大きな万力を持ち合わせていないため(上の写真の万力はナット加工専用の小さいものです)、楽器に取り付けたまま加工する、というウルトラC(ウルトラNG?)まで繰り出しました。
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オリジナルの6弦スチールギターからチューナーとブリッジをはずしました。
6個のチューナーをはずすと6個のシャフト穴がぽっかりと開いています。この状態でわずかにずれた位置に8個の穴あけを行うとそれぞれの穴が崩れてしまい、正しい位置に新しい穴が開けられなくなるので、まずはこれら6個の穴を埋める作業を行いました。
これらの穴を単にエポキシ接着剤で埋めても良いのですが、元の穴が崩れにくくなるようにと考え、ボールペンの軸を短く切断してまずここに入れ、その内部にエポキシ接着剤を詰めることといたしました。
ボールペンの軸はあっけなく切断できましたので
それらを6個の穴に挿入しました。
次はこの軸の内部にエポキシ接着剤を埋めるのですが、ボディーの色とあわせる目的で、似たような材料を使ったお土産品を削ってこの色の粉末を作成しました。
その粉末をエポキシ接着剤に混ぜることで特製のボディー色接着剤が完成、
これを6個の軸内部に次々と埋めていき
完成しました。
これの表面を平らに削った上で、新規に8個の穴あけを実施しました。
これで無事に8個のチューナーが付き、
更にブリッジの位置を変えたことで穴が丸見えになるところも埋めたのですが・・・・・・・・大問題が発生しました!
もう一台を加工しようとしたところ、日本から持参したエポキシ接着剤がなくなってしまったので、地元の素材店に行って購入しようと思ったのですが、なんと日本のような透明のエポキシが(その店には)なかったのです。
そのかわり、黒色の主剤と白色の硬化剤のチューブからの2剤を混合することで灰色になり、混合が十分に行われたことが確認できるスグレモノではあるのですが、今回の目的のように素材の色とあわせようという目的には全く合致しないのです。
やむなくこれまでの努力を放棄して加工した2台の8弦を着色することとしました。(中央はオリジナルの6弦です)
上の白色が第一作で54ミリ幅のナットを取り付けたもので、現在は1弦からG-E-C-A-G-E-C-A弦を張っています。そして下の青色が第二作で48ミリ幅のナットを取り付けてあります。調弦は現在のところE-C-A-G-E-C-G-Cとしてあります。いずれも下のほうの弦をB♭にすることも想定していますし、B11やD9調弦にもこのまま対応可能です。
それぞれの裏面はこのようになっています。
チューナー付近のアップです。
ナット付近はこんな具合。
そしてピックアップ付近はこうなっています。
使用した弦です。上の段はSITのC6調弦10弦ペダルスチール用のセットで
G:012、 E:014, C:017, A:020, G:024W, E:030W, C:036W, A:042W, F:054w, C:068WとなっているのでGトップのC6調弦でもEトップのC6調弦でも使用可能です。おまけにセット弦ですので個別に購入するより安く、多少のゲージ違いがあっても我慢できます。
下の段で赤枠で囲った部分がエルダリーが選定したGHSのC6調弦8弦セットものです。これから分かるようにこのセットはGトップの8弦セットになっていますのでもしEトップのC6調弦にしたい場合にはこれに第8弦として使う弦をバラ売りから購入する必要があり、G弦とかC弦など、必要なゲージを選んでバラで購入します。
それらを含めたゲージはG:012, E:016, C:018, A:022W, G:028W, E:032W, C:038W, A:050W,・・・・ここまでがエルダリーの8弦C8調弦セットでその右がバラ売りから購入したG:060WとC:074です。
さすがにローC用の074は太い!という印象です。
現在の商品は29フレットまであるので実用上問題ないのですが、初期の製品が24フレットまでだったことやハーモニクス演奏のために36フレット付近まで欲しい場合に備えてフレットパターンも作成しましたが使わずに済みそうです。
あとはこの弦間隔の狭い8弦を使いこなせるかどうかが勝負(笑)でしょう。
・・・・「負け」かも・・・・・
最後にトップGを1/1000インチ刻みで設定したときのほかの弦のゲージの計算値を示します。(単位はミル:1/1000インチ)
G 10 11 12 13 14 15 16 17 18 19 20
E 12 13 14 15 17 18 19 20 21 23 24
C 15 16 18 19 21 22 24 25 27 28 30
A 18 20 21 23 25 27 29 30 32 34 36
G 20 22 24 26 28 30 32 34 36 38 40
E 24 26 29 31 33 36 38 40 43 45 48
C 30 33 36 39 42 45 48 51 54 57 60
A 36 39 43 46 50 53 57 61 64 68 71
F 45 49 54 58 63 67 72 76 81 85 90
C 60 66 72 78 84 90 96 102 108 114 120
私には絶対にできない作業です!
テスコ8弦からフェンダー8弦に変えた時でさえ、すごく狭いと思ったものです。
しかし、ハイテクニックを誇るMATTさんなら、問題ないでしょう。
日本で2台も持っている電気ドリルを購入し、慣れないインチサイズのビット(刃)をいろいろと購入するなどの無駄遣い。
さらには万力も日本で使っていた大きなものは買えないのでナット加工用のものにしたり、ドリルスタンドかボール盤も欲しいところですがあきらめたり、と手抜きの工作になってしまいました。
ホントに作っちゃったんですね。指の短い私のような
(元)レディにピッタリじゃないですか・・。
(弾けるかどうかはまったく別の話として)
せっかくですから・・他のカラーのも作って下さい
何か、適当でも結構ですので、ボロロロロロ・・って♪
部品はあと1台分ありますが今は力尽きて放心状態ですのでいずれ作成することとします。
ところで「他のカラー」って何色がよろしいのでしょうか?
なんでしたら現在の2色のどちらかを塗り直してもできますが、全部の部品をはずさないと塗りなおせないのでこれまた「いずれ」ということで・・・・
とりあえず張り切ってみますけど・・・・
スチールギターが入ればどんなにかもっと
ハワイアンになるか・と。私もヤブヘビコメントですが、
スチールギターは潜在ニーズは必ずあるはず!!
色はピンクがいいです。いずれ・・・・