MATTのひとりごと

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6弦スチール・ギター 2台(2019年9月13日)

2019年09月13日 | スチールギター

最近6弦スチール・ギター関連の出来事が2件ありましたので記録しておきます。
写真からお分かりのように、この2台は外見がよく似ているだけでなく、弦長もまったく同じ578 mmです。
ということは間違いなく「お手本」が存在しますね。おそらくギブソンかマグナトーンなどの有名モデルではないでしょうか。

1.Maile SG のピックアップ交換

私がハワイ移住時に働いていたウクレレぷあぷあではストアブランド「Maile」を表示した6弦のスチール・ギターを発売していました。

中国のスチール・ギター・メーカーの作品で、店で扱っているウクレレの平均価格が200~300ドル程度に対し200ドル以下の価格でしたのでお買い得と思ったのですが、肝心のスチール・ギター演奏者の絶対数が極端に少ないためと思われますがほとんど売れませんでした。

それではなぜこのような低価格の楽器が作れたかと言いますと、フェンダーやギブソンなどのエレキ・ギター用の低価格互換ピックアップが中国で大量に出回っているため、これを使用したスチール・ギターをつくるメーカーが少なからず存在したことによるのです。

ただしこのMaileスチール・ギターに採用されているピックアップに問題がありました。
エレキ・ギターの指板として表面が平坦なモデルもありますが、押さえ易さを狙った「曲面指板:Radius Fingerboard」をもつモデルも数多く存在し、



機種によってその曲率半径 (radius:R)が異なります。


それに用いるピックアップも当然ヨーク:磁性体(またはポールピース:磁極片)が曲面になっているのです。
そしてMaileにはフェンダー互換用と思われるこのタイプのピックアップが採用されていました(下記カタログの製品かどうかは不明です。)

上記の解説文にもありますようにこのタイプのピックアップはそれぞれのヨークに巻いたコイルの接続を工夫することで外部からのノイズをキャンセルできる「ハムバッキング効果」を持つ、というメリットがあるのです。

しかしヨークの表面が平坦でないために、スチール・ギターにマウントした場合、1弦側のレベルを保つために6弦側の距離を大きくとる必要が生じ、その結果低音弦の出力が減ってしまうという大きな欠点を持つのです。


たまたま今回、愛用のMaile スチール・ギターのピックアップが接触不良になりました。ピックアップの巻腺をちょっとほどいてハンダ付けをやり直せば接触は戻る可能性があるのですが、この際思い切って「平坦型ピックアップ」に交換することにいたしました。

フェンダー用の純正ピックアップですと結構高価なのですが、上記のように中国製の互換ピックアップはそれの10分の1程度の価格で購入できるので気軽にポチいたしました。

この交換作業は30分程度で終わり、すぐに演奏が可能になりました。
もちろんそれぞれの弦との距離もほぼ等しくなったので低音側の弦の出力も十分に拾ってくれました。
さらにシングルコイル・ピックアップの特徴であるクリヤーな高音も得られたので、満足な結果となりました。


2種類のピックアップを並べるとその差がわかります。向こう側にある白いプラスチックはシングル・ピックアップ用のカバーです。


実は6弦用のピックアップのまま8弦スチールギターに変更できないかと試作したことがあります。(写真上と下)


詳細はここに紹介していますが、6弦用のピックアップをそのまま使うので弦の間隔が10.5 mmから7.5 mmと狭くなってしまうことと、前述のように低音側の弦の出力が少なくなるので実用にはなりませんでした。

ただ、今回のように平坦型のピックアップに交換すればたとえヨーク(ポールピース)が6個しかない6弦用ピックアップでも8つの弦が密集しているため出力のバラツキはほとんど無いと思われるので弦間隔問題以外は問題ナシと判断して2台ともこれに交換すべくピックアップの追加発注をいたしました。
ところが・・・・・・・・・・追加品は届く予定日から1週間経っても届きません。
安いとは言え、正規の価格を支払い済みなのでどーなっているのでしょうか。Amazonさん!


さらに業者からこんな連絡が!
再送か返金かを決めてほしいとのことですが、返金してもらっても意味がないので「再送」を要求しました。

果たして今度は届くのでしょうか?


ピックアップを交換したMaile SGの全体です。


ブリッジ付近の写真です。セットバックはこんなものでしょう。


弦の間隔が10.5 mmなのに対してピックアップのポールピース間隔が9.6 mmのため1弦と6弦はポールピースより離れているのですが、実用上問題ありません。


本来でしたら弦間隔が10.5 mmに対応したポールピース間隔を持つピックアップを選ぶべきですが、実用上問題ないこととピックアップの価格が極めて安いので我慢しました。

2.SX LG2 スチール・ギターの問題点

知人から「スチール・ギターの練習をあきらめた人の楽器を引き取って」と依頼され、その楽器を引き取ることにいたしました。


米国の「SX」というブランドで中国で製造されたモデルで2012年に購入した製品のようでした。

カタログによるとLG2/ASH/3TSというモデルのようで、ボディーはアッシュ、塗装は3トーンのサンバースト、メーカーの希望価格は$339.99ですが米国Amazonでは$159.95、日本のAmazonでは23,424円で売られていました。なぜかいずれもスタンド付ということは、スタンドのない今回の製品はその旧機種(もしかするとLG1 ?)かもしれません。

かなり凝った設計のブリッジを持った楽器なのですが、そのブリッジのブロックが極端にヘッド方向に傾いていて、とても演奏できそうにもない状態でした。
特に高音側のセットバック微調整用部品は本来弦が触れるべき頂点部ではなくそれを逃げた側のエッジに弦が触れているのでせっかくの設計が役に立っていません。


弦をすべて緩めてからブリッジを押し下げると見かけ上はブリッジが下がるのですが


実際に演奏するために弦を張ると上の写真のように再び大きく傾いてしまいます。

ブリッジを構成する部品はこのようなものです。


中央にある亜鉛合金ダイカスト製のブリッジ・ユニットの中に弦ごとのセットバックが調節できる部品と調節ネジをもち、そのユニットを左右で支える鉄の挽きものでできた2本のサポートネジがあり、そしてそのネジをネジ込むための雌ネジがボディーに深く叩き込まれています。

このブリッジを横から眺めるとこのようになっています。(上記の写真とは反対側から見たものです)


左の写真は実際に傾いているブリッジユニットで、右はサポートネジで正しく保持されたブリッジユニットです。
この状態で弦を正規の張力で張ると、ブリッジ・ブロックが後述する「凹み」に飛び込んで左の写真の状態に戻ってしまうのです。

2枚の写真でわかることはいずれの場合もサポートネジ自体がヘッド方向に傾いていることです。
これはサポートネジをネジ込むための雌ネジが長期間にわたって張りっぱなしであった弦の張力のためにジワジワと抜け始め、ヘッドと反対方向が浮き上がってしまったことに起因します。
念のためこの部品をハンマーで打ち込んでみたのですが、弦を張るとすぐに元通りに浮き上がって止まりました。
この現象からわかるように本来これだけの張力のある楽器の場合、単なる「叩き込み」でブリッジを保持するという設計は不適切だと思います。

写真左ではサポートネジとブリッジ・ブロックとの間に大きな隙間がありますが、これはなんと

サポートネジの頭とフランジによる凹みがこの写真のようにブリッジ・ブロックの表裏両面に刻まれていて、これにサポートネジが飛び込むことにより発生するのです。

素材が「亜鉛合金」という比較的硬いものにもかかわらずこれだけの凹みができるのはやはり不適切な設計によるものでしょう。

せっかく複雑な構造設計

をしながら、強度計算や素材の硬さを見誤った結果このような異常に見舞われたので、このまま長期間使用するには適さないことがわかりました。

「練習をあきらめた」かたがもしもこのような異常のために思ったような演奏ができなくなってギブアップされたのでしたら、この楽器の犯した罪は大きいですね。

このスチール・ギターを使えるようにするには、差しあたってはブリッジのブロック部品を新品に交換することです。この場合はサポートネジの傾きを戻すことができないので、毎回演奏の都度弦を張ったり戻したりすることで、演奏寿命を延ばすことが考えられます。

あとはこのサポートネジの雌ネジを一旦ボディーから抜き、接着剤を流し込んでから再度叩き込むことも考えられますが、何らかの専門工具が必要になるでしょう。

サポートネジを当てにせず、ブリッジブロックのU字型のアーム4箇所に穴を窄けてボディーに木ネジで止めればもう少し寿命が延びるかもしれませんが、弦の交換が難しくなるのであまり良い方法ではないですね。

いずれにしてもブリッジと弦止めが一体になっているブリッジ構造はウクレレやギターでも「トップ落ち」を必ず起こしますので、特に高い張力のエレキギターやスチールギターの場合はこのような構造は避けたほうが良いと思います。

営業妨害になるかもしれませんが、これから購入を考える方はSX LG2 の採用を避けたほうがよさそうです。

ちなみに米国のAmazonのページにはユーザーの評価が43件も掲載されていましたが、☆2個が僅か1件でそれも「弦が切れていた」というもの、残りの42件は☆が4個か5個という「好評」で、この種の評価が購入者の判断の参考としてはいかに無意味なものかがわかりました。

なお、米国AmazonのサイトにはLG2よりも$50安いLAP 3というモデルが載っています。(SX社のカタログではLG3/BKとなっています)

写真でお分かりのように単純な「弦留めと一体化したブリッジ」を採用しているため、LG 2のような問題は発生しません。
もちろんセットバック調節のできない一直線のブリッジですので厳密にはゲージの太い弦の場合トーンバーをフレットから僅かにズラす必要が生じますが、初心者の場合それを考慮するような演奏までは必要ないですし、何よりも弦の交換が容易である、というメリットもある低価格の楽器ですのでこのSX LAP 3は「初心者向き」としてお勧めです。

ただ、このSX LAP 3よりもお勧めの製品があります。
それは私が6年間ハワイ在住時にロイヤル・グロ-ブ・ホテル(RHG)のカニカピラで愛用していた


ROGUE RLS-1なのです。
米国Amazonでの現在の価格はスタンド付きで$119.99ですが、私が購入した10年前には$99.99という安さで、その後$159.99まで値上がりしたのですが現在はこの価格になっています。

弦長がちょっと短い製品ですが、セットバック調整機構もしっかりと付いている本格的なものです。
日本でも異なるブランド(たぶん同じメーカーのOEM製品)を扱う店がありますが3万円前後もしますので、日本までの送料を加えてもこのモデルを米国Amazonから購入したほうが遥かに安い(おそらく送料込みで2万円前後)と思います。

新規に購入するのでしたこの製品がお勧めです。結構使えますし・・・・

3.SX LG2 の改造

せっかく楽器を引き取ったので、別のアプローチで改造することとしました。

いままで取り付けられていたブリッジを完全に放棄して、上記のRogue RLS-1に使われているようなブリッジを取り付けることにいたしました。
さいわいこれと類似したブリッジも販売されていたのでその部品を注文いたしました。

親切に寸法図が添付してあったので入手前に取り付けの可能性が検討できました。

ユニットの幅が65 mm に対して、サポートねじ用の雌ネジのフランジ間隔はそれ以上あるので大丈夫とわかりました。
一方、「高さ13 mm」というのが問題でした。もともと取り付けられていたピックアップのボディー上面からの高さが13 mm程度なので、このままでは弦を張ってもピックアップに接触してしまうのです。

対策としてはピックアップの収まっている凹みを少し掘り込んでピックアップの高さを下げるか、ブリッジのブロックに下駄を履かせて弦を高く張るかしかないので、後者を採ることにいたしました。

この対策のために厚さ0.5 mmの平ワッシャーをユニット取り付けネジの下に置くことにしました。枚数としては3枚あれば十分なのですが、一応4枚としたことが結果的には好判断だったようです。


ピックアップの位置なのか、ブリッジブロックの位置なのか不明ですが、結果としてすべての弦がピックアップのポールピースの位置から2 mm程度ズレ手しまいました。

このため弦とピックアップの距離が近いと弦の振動を非対称に拾うことになるのでおそらく音質にも影響すると思われます。一方、これが離れることでその非対称が緩和されるので出力が多少減りますが実用上問題ないと思っています。

ブリッジのブロックの下に平ワッシャーを4枚入れて持ち上げた様子を横からと


後ろから見たところです。4枚合わせると2 mmになり、添付されていた長さ10 mmの木ネジの保持力が不足する惧れがありますのでいずれ機会を見て長さ12 mm以上の木ネジに取り替える必要があると思っています。


改造後のブリッジ付近の写真です。


もともと張られていた弦をそのまま張ってみましたが、何分にも上記のように弦の交換は極めて厄介なため、おそらく7年間張りっぱなしだったと思われますので、音質は期待できません。1弦と2弦のプレイン弦は黒く変色しているほどでしたし。
実際に使用する段になったら新品の弦に交換すべきと思います。

オクターブ・ピッチを確認しながらセットバックを調節すると5弦の位置だけが異常でした。これも古い弦をそのまま使ったことの弊害だと思います。


もともと付いていたサポートネジは取り外してもよいのですが、演奏に支障がないことと、雌ネジごと引っこ抜いてもその跡地の処理が必要になるのでそのまま残すことにしました。

改造後の外見です。


とりあえず、これでこの楽器も一応演奏が可能となりました。

使えるようになったことを喜んでおります。

------ 追記 ------

このSXスチールの価格をアマゾンで調べたことでアマゾンから「おすすめ」が届きました。
欲しくて調べたわけじゃないんですが・・・・(涙)

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6 コメント

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Unknown (阿羅漢)
2019-09-17 12:22:36
自分も、同様の機種の改善を依頼されたことがありました。
自分は弦高が高く感じられたので、ブリッジ・サポートネジと同じ径のネジを購入し、ブリッジをボディー側の雌ネジに締め上げました。当然弦高が低くなりますので、さらにピックアップの下に張り付けてあるスポンジ・スペーサを剥ぎ取り、低くセットして仕上げました。ネジの購入だけでしたので2~300円程度で仕上がりましたよ。
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さすが! (MATT)
2019-09-18 10:57:17
プロの阿羅漢さんには脱帽です。

あ、私は帽子を脱いでもまったく問題ありませんので・・・
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自分も問題ありませんよ。 (阿羅漢)
2019-09-23 05:56:02
自分も帽子は脱げますよ、毛は抜けてますが問題ありません(かなり強がり!!、)
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阿羅漢さん (MATT)
2019-09-24 09:43:59
せっかくプロの腕前をお持ちでも商売にはならないでしょうね。
だって「もうけが少ない」でしょうから。
返信する
ブリッジ (平田 誠)
2020-04-11 14:22:20
初めまして京都の山奥でカラオケ相手にS/Gで遊んでいます現在はあこがれのフエンダー6弦ですがアリアとグヤがありアリアのブリッジの位置がおかしく音が伸びないところがあり12フレットが中央に来ていないようです、ほかにピックアップをこうかんしたいのですがフエンダー制は手に入るでしょうかお教え願えませんかお忙しいところ申し訳ありません宜しくお願い致します。
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平田さん (MATT)
2020-04-11 17:14:51
お問い合わせありがとうございます。

おそらく「音が伸びない」ことと「12フレットが中央に来ていない」ことは別の現象と思われます。
前者の「音が伸びないところ」というのは「特定の弦全体でしょうかそれとも特定の弦の特定のフレットでしょうか、それによっても原因は異なりと思います。
後者の「12フレットが中央に来ていない」のはブリッジ側の調節機構があるようでしたらそれの調節で解決すると思うのですが。
フェンダー純正のピックアップを探して見たのですが見つかりませんでした。
ただ、セイモア・ダンカンという米国のピックアップ専業メーカーからフェンダー用のピックアップが85どるで売られていましたが、どうやって購入できるかがわかりません。
https://www.bluestarmusic.com/Seymour-Duncan-Antiquity-Pickup-for-1950-Fender-Lap-Steel-Guitar-Hand-Aged_p_1154.html

ほかに私の記事中にあるような中国製のエレキギター用ピックアップも問題なく使えます。
これはアマゾンで購入できますがエレキ用の場合1弦と6弦の距離が48mm、50mm、52mmと3種類ありますのでスチールギターに使う場合は52mmを選んでください。
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