楽学天真のWrap Up


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知的遺産のピラミッド作り

ことば (6)純文章

2012-07-20 05:03:59 | 読書
自分づくりの文章術 (ちくま新書)
クリエーター情報なし
筑摩書房



純文章
 文芸評論家の清水良典氏「自分づくりの文章術」(ちくま新書)の中に純文章に注目せよと主張されている。清水氏は文芸評論家であり、私は小説等をほとんど読まない人間である。が、なぜか大変迫って来る。本棚にたくさん積んであった文章術本の中で斉藤孝氏に従い、線を引き付箋をつけて読んだ。


 そして、本書読書後、もはや人生に残された時間は少ないのであるが、このような視点でたくさんの文芸作品を読んでみたいと思うようになった。
 夜の地球を人工衛星から眺めた映像を見ると、人の住む街が光り、それがネットワークのように地球を覆う。それは清清水氏的視点、いやそこに引用されているSFの傑作「マトリックス」的視点からいうと言葉と文章の四次元空間といえる。清水氏が地球映像を引用していたわけではないが、その部分を読んだ時に私の中に浮かんだ映像だ。そこにはあらゆる情報が言葉として行き交って点滅している。そこには文章のジャンルわけもなければ、当然にも日本語だけではない。
 その言葉の構成要素が、単語の壁をちょっと超えた「純文章」。そこに注目せよというのが清水氏の主張である。文芸の世界は、小説、エッセイ、随筆、詩、紀行、ドキュメント・・などジャンヌ区分がややこしい。それを超えて「純文章」という視点から文芸全体の世界を再俯瞰、再構成したいというのが清水氏の野望だ。


そのエッセンスは、


自分にしか書けないことを、
だれが読んでもわかるように書く。
 それを発見すること、味わうこと、評価すること、そしてさらに自ら書くこと・・「純文章」による「自分づくり」(同書212頁)をしなさいと奨励している。徒然草のような断章の累積のすすめである。
 「文は人なり」ではなく「人は文なり」であり、「奴隷の作文」から解放されなさい、という主張。実に明快。この著者は時間を見つけてフォローしたいと思わせてくれた。

(つづく)
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