科学者の行動規範を読む(3)
平成23 年3 月11 日に発生した東日本大震災及び東京電力福島第一原子力発電所事故は、科学者が真
に社会からの信頼と負託に応えてきたかについて反省を迫ると共に、被災地域の復興と日本の再生に向
けて科学者が総力をあげて取り組むべき課題を提示した。さらに、科学がその健全な発達・発展によっ
て、より豊かな人間社会の実現に寄与するためには、科学者が社会に対する説明責任を果たし、科学と
社会、そして政策立案・決定者との健全な関係の構築と維持に自覚的に参画すると同時に、その行動を自
ら厳正に律するための倫理規範を確立する必要がある。科学者の倫理は、社会が科学への理解を示し、
対話を求めるための基本的枠組みでもある。
「平成23 年3 月11 日に発生した東日本大震災及び東京電力福島第一原子力発電所事故は、科学者が真
に社会からの信頼と負託に応えてきたかについて反省を迫ると共に、被災地域の復興と日本の再生に向
けて科学者が総力をあげて取り組むべき課題を提示した。」
これは、科学者自身が「想定外」と発言したり、福島原発事故に絡む、SPEED問題、原発設計やそのあと始末を巡り、未だに不信を拭い去り切れていないことをいう。それでもそこから脱却するには科学の力、科学者の総力が求められているのもまた間違いない。
さらに、科学がその健全な発達・発展によって、より豊かな人間社会の実現に寄与するためには、科学者が社会に対する説明責任を果たし、科学と社会、そして政策立案・決定者との健全な関係の構築と維持に自覚的に参画すると同時に、その行動を自ら厳正に律するための倫理規範を確立する必要がある。
ここも区切ってみよう。
より豊かな人間社会の実現
「豊か」衣食住の充足、肉体的健康、精神的安心、安定ということだろう。
「科学がその健全な発達・発展によって---寄与する」
自然から切り取った知識の体系(=科学)が「健全な発展・発達」とは?
知識が拡大・深化するだけではいけないのか?自然科学が中立的だとすると、その広がりと深さはバランスよく発達。発展することが重要で、「健全」とはそのバランスのことを言う。それは一見、人間社会に役立たないことも含むだろう。なぜなら中立だから。役に立つ「科学」だけを「健全」と呼ぶとバランスが崩れ、結果として「科学の発展」を阻害するかもしれない。したがって、この「科学がその健全な発達・発展によって-」の部分の「健全」は不要かもしれない。
科学者が社会に対する説明責任を果たし、科学と社会、そして政策立案・決定者との健全な関係の構築と維持に自覚的に参画する
科学者(新たな知識とその体系を生み出すことを職業とする者」は、自覚的、積極的に社会とコミットせよということ。
現在、大学進学率は約50%。そのうち理系は20%(?)。そして職業として科学を担う者は更に少ない。それらが、新たに得た難解な知識を社会へ説明することは、欠かせない。なぜなら多くの科学者は税金によって研究活動をしているから。政策立案・決定者は特に大事。なぜなら、「豊かな人間社会の実現」には彼らが直接影響を持つから。
ともすると、知識拡大深化にのめり込み、「象牙の塔」に篭りがちな科学者への注意喚起だ。ここには同意。だから私もこのブログで思いの一端を記している。
「その行動を自ら厳正に律するための倫理規範を確立する必要がある」
ここも同意。組織はもちろんのこと、個人レベルまでこの規範を念頭におけるように常に心がけなければならない。すべての大学、機関、や学会などに行動規範や倫理規定はあるだろうか?