氷河期の「発見」―地球の歴史を解明した詩人・教師・政治家扶桑社このアイテムの詳細を見る |
昨年、この分野で評判になっていたこのドキュメント翻訳本を読んだ。
これはすごい本である。地球科学を学ぶ学生諸君や研究者必読の書である。私は強く薦めたい。
なぜなら重要な3つのことが実にうまく描き出されている。それもあたかもサスペンスドラマを見るように。
すばらしいー!
研究したくなるこころをくすぐってくれるぞー!
その1。全ての人間が信じている常識を科学はどうやって打ち破っていくのか、とくに証明不能といわれる地球の歴史において「証明される」とはどのような方法をとるのかということを体感できるからである。そのキーワードはこの本にも登場するライエルの強調した現在主義。それも斉一主義と未分離な19世紀的現在主義である(これを展開するのは別の場にしよう)。
(科学論的キーワードは現在主義、斉一主義、カラストロフィズム、ネオカタストロフズムなどを知っていると、本当 にこのドキュメントは深く興奮できる。)
その2。科学の世界における発見をめぐる人間関係を学べるからである。科学者における友情と敵対は、信頼と裏切りは、発見やアイディアをどのように相互に尊重するかによる。それは世紀の発見であればあるほどより深刻である。それを見事に描き出したドキュメントであるからである。(だれだって「俺が俺が」があり、知的先取を競う科学では、それがほとんどの人間関係を決めてしまう。この本は、そのように極めて醜く世俗的である科学者というものを描くことに成功しており、ドキドキしながら読める。だってこの私のブログでも明らかなように、皆、その人間だからね。世間的にはここが一番おもしろいかも)
その3。この本だけからはわからないことがらであるが、当時の時代背景(日本で言えばまさに幕末、明治維新前夜であり、日本にはこの熱い科学の論争がほぼ終えた後に輸入された。そして欧州では産業革命によって国の間で激烈な競争が進行していた)を考えると、科学における「知りたい!」という思いがいかに社会の中で夢を与えていたかが伝わってくる。
(歴史大好き人間にはたまらない)
てな、わけで、この本のネタは来年度の文系向け大講義「科学と人間」の一部に採用すること決定。