場末の雑文置き場

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「RIDER TIME 仮面ライダー龍騎」全体を通しての感想

2019年04月21日 | 特撮
手塚の変貌

キャラクターに関してだと、手塚の変貌に驚いた人は多かっただろうと思う。初期設定では手塚がそういうキャラだったことは聞いていたので私はあっさり受け入れられた。記憶を取り戻す描写が来るまでは。あれはファンへの配慮かな。手塚が元に戻って良かった、と喜んでいる人も多かったようだし。私はなかったほうが良かったと思ってるけど。そうしたら完全にパラレルとして見られたから。

本編ではずっといい人だった手塚が人を裏切ったり殺したりするような人間になったのは、絶対的な善人なんていない。それが人間だって言いたいのかもな。あの手塚だって環境が変わればそうなり得るんだって。
手塚は他人に影響されやすい人間で芝浦が近くにいたからああなった、みたいな考察も見た気がするけどそれは違うのでは。手塚をああさせたのは極限状況でなおかつ記憶を失ってしまったことによるものじゃないかと。シザース刺殺も芝浦が唆したとかじゃなく手塚の自由意志でやったんだと私は思ってる。

考えてみたらあの状況で悪もクソもないんだよね。自分だってああいう状況下に追い込まれたらどんな卑怯な手を使っても生き残ろうとするかもしれないし殺さなきゃ自分が生きられないならそうするしかないよな。
ただ私はそれでも手塚の善性を信じてるし、記憶を失ってもああはならないと思う。手塚のことを聖人とまでは思っていないけど。だからやっぱりあれは井上敏樹の独自解釈による手塚であって本編の手塚とは別人だと思うことにする。

今回の手塚、裏切り以前にみんなをまとめるリーダーになってる時点でもう大分おかしいんだよね。いつの間にそんなコミュ力を獲得したんだよ。


その他のキャラクター

手塚だけじゃなくて芝浦だって本編とはかなり違うと私は思ってる。ヤンデレ化は言うまでもないとして、本編芝浦はあそこまで残虐ではなかった。詰めの甘いガキンチョだったのに、躊躇なく人を殺せる本物の悪党に立派(?)に成長したんだな。昔の芝浦のほうが幼くて喋り方も可愛くて好きだけど、まあこれはこれで……。
手塚に関してはファンのイメージがアレで上書きされたらかわいそうだな、と思うけど芝浦は別にいいや。あれはあれでおいしかった、と思えるようになった。でも変なあだ名をつけるのはやめてほしい。

吾郎ちゃんもちょっとアレだったし(でも結構好き)、リュウガが真司の一面であって全くの別人というわけじゃないんだとしたら真司だって実は結構な闇を抱えていることになるよな。

そんななか、蓮は綺麗なままだった。むしろ本編より綺麗なくらい。あれは真司の記憶があったからからなのかな。手塚が大切な親友である雄一のために戦いを止めようとしたように、今回の蓮も大切な親友である真司のために戦いを止めようとした。真司の存在がなかったら蓮だってもっと積極的に戦っていたかもしれない。
真司と蓮の関係はあくまでも友情だけど、蓮にとっては真司も恋人の恵里も同じように大切だったんだと思う。そうでなかったら、蓮はなんとしてでも生き残って恵里に会いに行ったんじゃないかな。真司を殺してでも。今回の蓮のデレっぷりはすごかった。過去最大かもしれない。
手塚がああなったのって、蓮が戦いを止めたいキャラになったせいもありそう。本編と同じだと蓮とキャラが被ってしまう。だから手塚にもちゃんと見せ場を作るためにああやって変えてきたのでは。それにこういうシチュエーションでは悪役のほうが動かしやすいんだろう。善人は何人もいらない。

手塚の代わりのポジションに収まったと言われている木村。人気あるようだし私もまあまあ結構好きだけど、出番はあれで十分だと思う。むしろ優遇されすぎだったくらい。木村をあれ以上掘り下げたら詰め込み過ぎで話がパンクするし、元の龍騎が好きだった人間としてはオリキャスを優先してほしいので。
ちょっと気になったのは、木村はそこそこ常識人っぽいし礼儀もわきまえていそうなのに、かなり年上の真司に対してタメ口&呼び捨てだったこと。あまりにもナチュラルにタメ口だしなんか大人っぽいから35歳くらいかと思ってたら、役者さん案外若いのな。いや、設定上はそのくらいの年齢だったりするのか?

ついでに書くと、新キャラの中だったら自分はより木村よりメガネくん(石田?)派。序盤でサクッと殺されたけどもうちょい見たかった。芝浦とのことがあったせいで手塚とメガネくんとの間にも肉体関係があったと邪推する人もいるようだけど、さすがにそれはないだろう。普通に頼れる兄貴として慕っていただけなんじゃないかな。


例のシーン

多分物議を醸したであろう例のシーン。最初は不要なシーンだと思っていたけど、いろいろ考えているうちに「まああってもいいかな」くらいの気持ちに変わってきた。
あれは視聴者をエロい気分にさせたりサービスのつもりで入れているわけではないと思う。人間の汚い部分を生々しく描きたかったとか、そんな理由で入れたんじゃないかな。知らんけど。プラス二人の関係性を短時間で明確に印象づけるためかな。インパクトすごかったけど尺自体は長くなかったし。だから「誰得」とかいう評価はそもそも筋違いな気がする。

あの二人がああなったことに関しては、極限状況下に置かれた人間の表現としてはアリなんじゃないかと思う。あれは実際のところ恋愛じゃなくて共依存なんではないかな。だから二人の本来の性指向もあの描写だけではわからない。特殊な状況で成り立った関係だから。

龍騎は仮面ライダーの中では異色作で、これまでの常識を覆すような試みをいろいろしてきた。だからあのシーンもある意味龍騎らしいと言えるのでは。

あのカップルは本編に関係なく唐突に作られたという印象が視聴者にはあるだろうけど、井上敏樹にとっては全然唐突じゃなくてずっとやりたかったことがやっとできたって感じなのかもしれない。本編が放送されていた当時、井上敏樹が手塚と芝浦のBL話を書いてボツにされたって噂を聞いたような気もするし。悪役手塚もそうだし、昔やりたかったのにやれなかったことをやっただけなんだろうな。


世界観とか

世界観については謎や矛盾していると思われる点も多い。ミラーワールドの中で生身では生きられないはずなのになんでみんな生きていられたのかも結局わからなかった。

今回の話はパラレルと捉えることもできるかな。TVスペシャルも映画も繰り返しの一つじゃなくてパラレルだと私は思ってるし、今回もそうかも。神崎士郎がまだ諦めていなかったら、のif。正史ではやっぱり本編ラストのまま。それにあれはジオウ世界の話だし、龍騎世界の龍騎は違うはず。

まあ深く考えないほうがいいのかな。龍騎ライドウォッチが作られたからみんなどこかで平穏に暮らしていると思うことにする。真司も戦いの記憶は失って編集長と楽しくやっているだろう。ラストの真司と蓮の会話は実は平和な未来を暗示している、とも考えられなくもない。悲しい余韻を作るために敢えてみんなが生きている描写をしなかっただけかもしれない。


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