場末の雑文置き場

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映画「新聞記者」感想

2019年07月06日 | 映画・ドラマ

先月観た「主戦場」の上映前に流れたCMでこの映画の存在を知り、面白そうだと思って観に行った。「主戦場」を観るような層ならこれも観たがると思ってCMを流したんだろう。多分それ、大正解。実際私も両方観てるし、セットでおすすめされているのを結構見るような気がする。

内容について。フィクションではあるけど、どう見ても実際の事件をモデルにしているとしか思えない出来事が次々と起こる。
特に伊藤詩織さんの話なんかはほとんどそのまま。現実と違ったのは、記者会見が普通にテレビで放送されていたこと。現実では黙殺されてたから、この映画より現実のほうがひどいのかもしれない。

終始暗くて重苦しい雰囲気の映画で、見終わったあとの爽快感はあまりない。でもこれがこの国の現実。悪い奴を倒してスカッとするような映画だったら嘘くさすぎるからな。

最近の出来事を扱い、安倍政権への批判をこめつつも、もっと普遍的なことも言っているように感じる。権力のチェック機関としての矜持、公僕としての矜持。それを失わないようにしたいという。たとえ上から理不尽に潰されそうになっても。
私だって安倍政権は終わらせるべきだと思うけど、安倍だけが問題なんだとも、安倍政権でなくなればすぐに物事が好転するとも思わない。お上に逆らうな、という意識の人間が多ければ、誰がトップに立っても多分すぐに同じようなことになる。

見る人が見ればいろいろと足りない部分があったとしても、今の日本でこういう映画が作られたことはとても意味のあることだと思う。だからヒットしてほしいしこれに続く映画がたくさん出てほしい。

キャストの豪華さの割にテレビなどでは宣伝がほとんどされていない感じなのは、大人の事情が絡んでいそう。直接的な圧力があったかどうかはわからんが、勝手にビビって宣伝に協力してくれないみたいなことは普通にありそう。

新聞記者役を韓国の俳優が演じることになったのは、オファーした日本の俳優にことごとく断られたから、という噂も聞いた。真偽のほどはわからないけど、さもありなんって感じ。ただ、誰が断ったとか具体名を出して記事にするのはあまり好かん。
シム・ウンギョンは最初はあまりピンとこなかったんだけど、表情がとても良くてだんだん引き込まれていった。特に神崎さんの机の前のシーンで杉原を見つめたあの表情。
松坂桃李も良かったし、俳優陣みんな良かった。他の俳優やスタッフもそうだけど、特に松坂桃李はよくオファーを受けてくれたよな。リスクありそうだし、いくらでも仕事を選べる立場だっただろうに。

最後に、いわゆる「ネトウヨ」の描写について。映画の中では内調の人間が国士様になりすまして政府に都合の良い情報をばらまいていた。これを見て、ネット国士様は全員あるいは大半が内調関係の人間であるという描写がなされている、みたいに受け取っている人がそれなりにいたが、それは違うのでは。「ネトウヨ」の全部じゃなくてごくごく一部の(多分影響力のある)アカウントがそうだということしかこの映画の中でも言っていないと思う。少なくとも私はそう解釈した。

でもね、ネット国士様の全部がそういうのだったらどんだけマシかと思うよ。ごく普通の、上からの圧力もしがらみも何もない市民がなぜか与党の熱烈なファンだったりヘイトをばらまいていたりするのが多分現実なんだから。そのほうがもっと怖くないか?
まあ、そのへんの有象無象じゃなくて影響力のある一部のアカウントは「お仕事」としてやっている可能性が高いかもね。


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