横尾美穂の毒舌です。
横尾美穂のメソッド~ライオンとの出会い
つい最近、あるゴスペルの指導に行ったときに、ウォーミングアップの際に「ライオンlion」というアップをしていた。わぁ懐かしい!こんなところまで浸透している~とびっくり。
私がアメリカに留学していた際に演劇のクラスで習った「ライオン」というアップ方法を伝え始めたのは、98年、ゴスペルクワイア「ア ミラクル イン 札幌」を始めたとき。ミラクルのメンバーは、ライオンが上手だった!いかに激しくライオンをできるかを競うほどに(笑)、みんなで恥じらいもなく定着していたアップメソッドで、当時、新聞で練習風景の取材が入ったときも、その写真が掲載されるほど!今も記事を大事に保管している。懐かしい私のライオンとミラクルの思い出。
そう、「ライオン」や演劇のアップメソッドとの出会いは、私のその後の指導の方向性に大きな影響を与えたひとつ。
初対面の方がするのはちょっと恥ずかしいアップ方法だが、顔の筋肉を緊張させて緩めて・・・と説明するより、「ライオン」というネーミングでライオンの吠えるような顔をするというイメージをもたせたほうが体現しやすい。とくにグループ活動では一緒に歌うものどうしが心和ませるメソッドなのだ。
その「ライオン」が今や道内外のゴスペルグループに飛火している!?のかも(^^)。
ライオンの他にもいろいろなメソッドを実践してきた。アメリカで習ったものや自分の筋感覚の中で気づいた身体のアップや声帯のトレーニングや独自で考えたものまで。できるだけ、ネーミングをつけて分かりやすく、目の前にいる生徒さんのニーズに合わせて考えた表現である。そしていつも同じパターンで使うのではなく、そのときの生徒さんの様子を観ながら瞬時に変えていく。
そうやって、ゴスペルの指導を通してボイストレーニングを始めたのが98年。もう恐ろしいことに、16年になっている。はじめに試したのはミラクルという私のゴスペルクワイアだが、その後、高専のミュージカルの生徒に演劇ワークショップをした際にもライオンとかやったっけな~。ほか、旭川や札幌の元OViC、ほかにもたくさんのゴスペルクワイア、NHK文化講座、STV講座、教育文化会館の笑劇や専門学校・・・・様々な場所で、このライオンを紹介した。
最近は、ライオンくんの出番は少ない。やり方を間違えると、額関節症を悪化させるので、その後のフォローができないところでやるのはどうか・・・とかいろいろ試行錯誤している。常に、その目の前にいる方のニーズに合わせていけるようにと思っている。私のボイストレーニングメソッド開発はつづく。生徒さんがいる限り続くのだ。生徒さんひとりひとりの声や身体の状態がちがうので、そこから新たな発見があるからだ。
そのメソッド開発に一番貢献してくれているのは、生徒さんなのだ。
生徒さんたちとの出会いがなければ、横尾美穂のボイストレーニングの進展ななし?といっても過言ではない。わたしとはちがう生徒さんひとりひとりの声、体から聞こえてくるもので学ぶのだ。
続「オリジナルとオリジナリティのちがい」*************
最近、ある元生徒に言われたことで、オリジナルとか権利について考えていたからだ。
その生徒さんいわく、
「美穂さんのメソッドの権利、もう少し主張した方がいいですよ。美穂さん、自分のオリジナルのメソッドとかHPとか本に記していないじゃないですか。」と・・・・。
オリジナル?権利って?
そもそも、今ある芸術活動や教授法など、すべてが完全なオリジナルなんてあるのだろうか。誰が描いた絵とか作った歌にしても、どっかで何かの影響を受けているもので、ほんまもんのオリジナルってあるのかな?って思うことがある。ただ、もちろん、私が作った歌は私のオリジナルっていってるんだけど、私という人間がたくさんの音楽から影響受けたエッセンスが入っているという点において、本当の意味でのオリジナルではないのかもしれない。私が考えたボイストレーニングのネーミングはオリジナルな部分もあるけど、その中身はどっかでもやっているだろうし、私もいろいろな学びの中から考えたことなので、まったくのオリジナルではないだろう。
みんな何かが土台になっている。ボイストレーニングに関しては、自分も教えをいただいた恩師がいる。大学時代のミュージカルでお世話になった声楽の先生、英語の発音では大学の先生やネイティブの先生、アメリカの演劇やゴスペルの先生、そして桜田菊代先生からはボイストレナーという存在やアメリカのブロードウェイからの発声術をたくさん学ばしていただいた師匠だ。
同時に、歌ったり指導したりしながら、すべての五感をつかった経験から、書籍から、インターネットの情報も含めて、切ったり貼ったり、試行錯誤して試してきた。その切り貼りが、自分の中で理論の元に成り立ち、自分の経験や体における裏づけができて、自分の中で咀嚼して、吟味して、まとまったところで、人に教える(吐き出してみる)。教えるという言葉もおこがましいかもしれない。今の自分の研究をシェアしているに過ぎない。
なので、オリジナルだ!と主張することは、真実なとき以外使ってはいけないのだろうと思うのだ。
しかし、上記の一連の作業を通して確立されているもの(教え方)は、その講師の「オリジナリティー」といえるのではないかと思う。
そのオリジナリティはひとりひとりの講師によりちがっているし、真似できるものではない。オリジナリティー(創造性)とオリジナル(はじめの、起源の)は意味がちがう。なので、私のボイストレーニングにも、「横尾美穂のオリジナリティー」があるのだ。
具体的なメソッドを「私のオリジナル」としてHPや本に書いてはいない。ライオンはそもそも演劇のアップのメソッドのひとつ。でも、そのライオンの目的を学び、そしてそれを目の前にいたミラクルというメンバーでやったらいいかも!と思って、取り入れ、実践し、またそれを他のグループの方々やレッスンの場所で体現し伝えてきたことは、私のボイストレーニングのオリジナリティなんだと思う。
元生徒が言うように、レッスンメニューを「これは私のオリジナル」とHPとかで主張したとしても、教え方とか教えている内容について、知的財産を守ることは難しいだろう。そもそもHPに公開する時点でそれは守るというより、PRとか情報を提供したいという目的で守るのとは反対に情報を流すことなので、逆のことのように思う。ただ、私個人の本当の気持ちとしては、オリジナリティは尊重されたい。いろいろな学びを自分で構成しなおし、体現し、他の方へ提供できるものにする労力は誰でもができるものではないのだから。
続「ボイストレーナーとしてやってきたことの証は・・・」********
発声レッスンに関しては、本やHPでの情報で独学もできないことはないが、直接その本を書いた方を目の前にして教えてもらった方がいい。情報だけ見ても、それらを咀嚼する能力と実践力がないとそれだけでは習得は無理でしょう。体のことは体に聞かねばならないし、発声については体を動かしながらやってみなければできない。やってみて、そしてまた考えながら本を読んで、またレッスンをうけてみたり、いろいろなものを観て聴いて、自分の中で悩み考えて、そしてまたやってみていくしかない。その繰り返しなのだ。なので、ただ本を読んだり、うわべだけ真似しても、やり方を誤っていると結果はうまくいかない。レッスンでは、教える(伝える)側の伝える能力と絶え間ない研究と情熱、そして受け取る側の理解度や想像力、受け取る力や体の状態などが相互に作用して、よいレッスン、習得するレッスンの実現に近づくのではないか。
私は目の前に出会う生徒さんひとりとりの声、身体、心と対話しながら、丁寧に伝えたいし、生身の相手に向かっていつも伝え続けたい。
習っている生徒さんために参考資料としてという位置づけで、いつか本を書くことになるかもしれないけど、自分の権利や名誉のために本を書くっていう思考回路は逆で、「教える人」という言ってはいけないのではないかと私は思う。いいものをやっていれば、結果としてそういった類のものがついてくるかもしれないが、それをほしくてやるのはちがう。重要なのは中身である。
「権利を訴えておかないと私が教えた証拠がなくなりますよ」と、その元生徒が言うもんで、自分の考えを書いてみることにした。今日のこのブログ、あくまでも私そのものの歩みを綴っただけで、証拠を残したかったわけでない。HPに書いたくらいで証拠になるって言うなら、なんでも書いておけばそれは本当に真実なのかい!?って疑問になったので、そういう疑問も含めて記録しておきたかった。
私はこう思う。ブログだのHPで、私がやっていることを書いたり、経歴を書いていること以上に、私が直接伝えた生徒さん一人一人そのものが、この16年間の教える仕事をしてきた、何ものにもかわらない生きた証、信憑性ある証拠なのだ。
その方々の人生において私のレッスンの時間が何かの役に立ったり、有意義な時間であってくれたら感謝なことで、それでいい。
だから、ただただ出会いに感謝。これからも生徒さんたちとの出会いを楽しみにしている。またお仕事や自分の毎日の営みの中で、私はただ坦々と上を見上げてながら、そのときを精一杯歩むしかない。
私たちは、今この世でもっているものを持ったままの状態ではいられない。最後には何一つ手に携えずに天国にいく。
最後に聖書のことば
天に宝を積みなさい。