米国の推計で1400人超の死者が出たとしているシリア首都ダマスカス郊外での8月21日の化学兵器使用疑惑に関して国連調査団は9月16日、調査報告書を公表、猛毒神経ガス・サリン積載のロケット弾が使用されたと断定している。
但し化学兵器使用がアサド政権か反政府側かについての言及はないというから、肝心なところが抜けていると言わざるを得ない。
国連調査団は再度のシリア入りを検討しているというから、使用者の特定に動くに違いない。
米英仏はロケットの軌道や化学兵器の量、そしてロケット弾に「ソビエト製」との刻印があることから、アサド政権側の攻撃としているが、アサド政権側の反体制派が仕掛けた攻撃だとする真っ向からの否定は当然のこととして、独裁者アサド政権の守護神であるプーチン・ロシア大統領は「ソビエト製」を逆手に取って、政権側と思わせる挑発行為だとし、反体制側が使用との主張を譲らない姿勢を貫いている。
アメリカは直ちに軍事行動によるシリア懲罰の構えを見せたが、イギリスが議会の承認を得ることができずに軍事行動計画から撤退、アメリカの国内世論も反対が多数を占め、オバマ大統領は9月1日、議会の承認に軍事行動の拠り所を求めることにした。
オバマ大統領「アメリカがシリア政権に対して軍事行動を取るべきだと決断した。しかし、この政府は、人民の人民による人民のための政府なので、米国民の代表である議会の承認を求める」(テレビ朝日)
しかし議会の承認は難航した。
一方ロシアは9月9日、アメリカが化学兵器使用に対してシリア攻撃の構えを見せていることに対抗してシリア側に化学兵器を国際管理下に置き廃棄するよう提案。
シリア側は攻撃回避とシリア国民を守るという口実でロシアの提案を受け入れる考えを示し、9月12日になって、独裁者アサドがアメリカの軍事攻撃準備停止と反政府側への武器供与停止を条件に受け入れを表明し、尚且つご丁寧にも、そう、ご丁寧にも、同じロシア提案である化学兵器禁止条約加盟への手続きを開始することを明らかにしている。
この独裁者アサドのロシア提案受け入れ表明の9月12日以前にロシアはアメリカに対して提案を実行するための具体的な計画を提示、アサドの受け入れ表明と同じ9月12日に米ロ外相会談が行われ、9月14日、米露はロシア提案実行に合意している。
猛毒神経ガスを積載したロケット弾がダマスカス近郊に撃ち込まれたのは8月21日。
国連調査団が現地入りし、調査を開始したのが8月26日。その調査団が化学兵器の種類を特定して公表したのが9月16日。但し使用したのが政府側か反政府側か特定していない。
いくらアメリカが構えを見せていた軍事行動を回避するためであったとしても、9月16日の国連調査団の調査報告書公表前の9月12日にシリアはなぜロシア提案の受け入れを表明したのだろう。
考えられる理由は国連調査団が化学兵器使用者を特定した場合に備えてとしか思えない。特定に備えて、いわば国連調査団が報告書を公表する前にロシアの化学兵器国際管理移行への提案を受け入れ、ロシアはアメリカをも提案に巻き込んで、アメリカのシリアに対する攻撃を封ずる手に出たのではないだろうか。
シリアはそのようなシナリオを完成させるためにご丁寧にもこれまで拒否してきた化学兵器禁止条約にまで加盟する態度を見せた。
だが、調査団は特定していなかった。
シリアが自国の化学兵器を国際管理下に移し、廃棄するロシア提案に賛成し、アメリカがロシア提案で合意した以上、例え国連調査団が使用者を特定したとしても、アメリカはシリアに対する軍事行動はできなくなる。
もし独裁者アサド側が神かけて化学兵器を使用していないのなら、独裁国家の立場上、ロシア提案に賛成する必要もないし、ロシアも提案する必要もない。賛成する意味も、提案する意味も失う。
国連調査団が使用者を特定するまで全面的に協力するだけで済む。いずれ明らかになることである。胸を張って、正々堂々としていればいい。
使用していないければ、化学兵器を保持し続けることは可能なはずだ。ご丁寧に化学兵器禁止条約に加盟することもない。
いわば使用しない場合に限って、化学兵器所持を守ることができる。独裁者としてはそのような選択を望んでいたはずだ。
だが、そういった態度は取らなかった。
逆に国連調査団が報告書を公表する前に化学兵器の国際管理移行と廃棄のロシア提案に賛成し、化学兵器の放棄を選択した。
政権側が使用したと明らかになることに備えたと見なければならない。
――安倍晋三も、そのアホな自民党議員の一人ということでなければならない――
昨9月18日夜の十数人の女性国会議員や安倍晋ら党幹部も出席した都内開催自民党女性議員の集いでの脇雅史自民党参院幹事長の挨拶。《「選ぶ人がアホでも」 自民参院幹事長、有権者軽視?》(asahi.com/2013年9月18日21時33分)
脇雅史「選挙制度改革を行う際に女性議員を増やす観点が必要だ。
今の制度は政党の段階で候補者の選び方が未熟だ。政党が本当に正しい意味で国会議員を選べるか。これさえしっかりしていれば、あまり大きな声では言えないが、選ぶ人がアホでも、選ばれる人は立派だ。
国民のレベル以上の国会議員は出てこないというが、もっと国会議員の選び方を厳正にする仕掛けが必要だ」(下線個所は解説文を会話体に直した。)
記事解説。〈政党の候補者選びの重要性を指摘したものだが、有権者を軽視した発言とも受け止められそうだ。〉
発言後記者たちに。
脇雅史「発言を撤回するつもりはない」
記者に対する発言は、「MSN産経」記事だと次のようになっている。
脇雅史>「選挙民がアホだと言ったわけではないことは明白だ。政党の候補者選びがダメだと選挙民がいくら立派でも良い国会議員は生まれない。発言を撤回する必要はない」――
「選挙民がアホだと言ったわけではないことは明白だ」と言っているが、実際には「明白」に「選挙民がアホだと言った」のであり、「選ぶ人がアホ」であるために、選ばれた国会議員もアホだと言ったのである。
「テレビ朝日」記事によると、〈同席していた安倍総理大臣は、その場で注意を促した〉ことになっている。
だからと言って、安倍晋三がアホな選ぶ人から選ばれたアホな一人であることに変わりはない。
脇雅史は「今の制度は政党の段階で候補者の選び方が未熟だ」と言っている。
政党とは当選した国会議員の集合体である。その政党が候補者を選ぶ段階で未熟だと言う。
国会議員の多くが立派な大卒という肩書を持ち、大卒という立派な教育経験は勿論、何らかの立派な社会経験を積んでいる。そのような国会議員が「選ぶ人」の立場となっていざ候補者を選ぶ段階で未熟だと言うことは国民が国会議員を選ぶ段階と同じように、「アホ」ということになる。
「選ぶ人がアホ」と言うことは、選ぶことに未熟だということでもあるはずだからだ。
いわば脇雅史は「今の制度は政党の段階で候補者の選び方が未熟だ」と言うことによって、候補者を「選ぶ人がアホ」だと、国会議員をアホと見做したのである。
国会議員をアホと見做すことによって、「国民のレベル以上の国会議員は出てこないというが」と言っている、一種の経験則からの教訓と整合することになる。
問題は国会議員をアホと見做していながら、些か矛盾するが、政党が本当に正しい意味で国会議員を選ぶ選び方を厳正にする仕掛けさえしっかりと作りさえすれば、国民を指して「選ぶ人がアホでも、選ばれる人は立派だ」だと考えている点である。
この主張の基本にあるのは無誤謬思想である。一見、条件付き無誤謬思想のように見えるが、仕掛けさえしっかりできれば、立派な人が選ばれるとしている決めつけ以降は立派な無誤謬思想となる。
当然、選ばれた立派な人達が作るすべての政策、そこから導き出される法律・制度・体制・規則・規範等々、すべて瑕疵一つない、矛盾一つない完璧・万能――いわば無誤謬の機能を備えることになる。
このような無誤謬を成果としなければ、「選ぶ人がアホでも」、立派な人が選ばれた意味を失うし、「選ぶ人がアホでも」、立派な人を選ぶためにしっかりとこしらえた仕掛けそのものも意味を失う。
要するに選ぶ仕掛け次第で「選ぶ人がアホでも、選ばれる人は立派だ」とした時点で、既に無誤謬思想に侵されていたのである。
例えどのように優れた法律・制度・規則・規範であっても、矛盾や瑕疵や漏れ一つない完璧な内容・作りは存在しない。存在したなら、社会の矛盾や混乱はこの世のものではなくなる。
当然、そこには政党が国会議員を選ぶ仕掛けも入る。
つまり政党がどのように立派で完璧な国会議員を選ぶ仕掛けをしっかりと作ろうとも、「選ばれる人は立派だ」とは限らないということである。
人間は利害の生き物である。同じ一つの政党であっても、様々に利害を異にする。利害を異にする形の一つとして同一政党内に派閥とかグループとか、政策面や選挙面で意見や考えや主張を異にする集団が存在することになる。
利害を異にする以上、法律・制度・規則・規範等々、何を一つ作るにしても、それぞれが利害を異にする立場立場から利害を異にする自分たちの意見や考えや主張を反映させようと凌ぎ合い、勢い、勢力の強い利害集団の意見や考えや主張がより色濃く反映されることになって、結果、成立した法律・制度・規則・規範等々から受ける恩恵もより多くなり、逆に反映させることができなかった利害集団は受ける恩恵も少なくなる。
このような反映の多寡と、それに連動した恩恵の多寡の構造が経済的格差をつくり出したり、憲法9条に対するように思想上の争いを招いたりする。
選ぶ仕掛け次第で確実に立派な人が選ばれるというわけでは決してない。
立派な人が選ばれると考えて無誤謬思想に囚われることとなった脇雅史が一番の「アホ」ということになる。
アホなことは会合後の記者たちに対する「選挙民がアホだと言ったわけではないことは明白だ」とゴマ化している点にも現れている。
自分のアホを棚に上げて、選挙民をアホだと言い、自分では気づかなくても、選ばれた国会議員もアホだと言ったのである。
当然、脇雅史の“選ぶ人アホ論”からすると、2012年衆院選でアホな選挙民がアホな自民党議員を大量に当選させたことになる。
勿論、安倍晋三もその一人だということである。国民は大いに反省しなければならない。
「選挙民がいくら立派でも」などと心にもない持ち上げでゴマ化す言い逃れは薄汚い限りである。
一昨日9月16日(2013年)、翌9月17日が小泉元首相が訪朝してから11年目ということで、日比谷公会堂で、『すべての拉致被害者を救出するぞ!国民大集会』(首相官邸HP)が開かれ、安倍晋三も挨拶に立った。
その挨拶の最後の部分を見てみる。
安倍晋三「私達の使命はすべての拉致被害者のご家族の皆様が、自分のお子さん達を、そしてご親族を、自らの手で抱きしめる。その日を目指して、そしてそのことが可能になるまで、安倍政権の使命は終わらない。こう決意を致している次第です。
なんとしても安倍政権の間にこの問題はなんとか解決をしていく決意であります。安倍政権におきましてはこの問題に精通をしている古屋圭司議員に担当大臣を務めてもらっております。そして古屋大臣の下で、まさに今日も出席をしておられる松原仁さんや多くの各党の皆さんにも参加をしていただいて党派を超えて、オールジャパンでこの問題を何とか解決をしていきたいと思います。まさに知見を集めて、情報を集めていかなければこの問題は解決をしません。
私は総理に就任をいたしまして、すでに20カ国訪問をしているわけですが、必ず拉致問題について説明をし、各国首脳の理解と支持を訴えているところです。幸い、国連にも新たな調査委員会ができて、カービーさんがこの前、日本へやって来られました。
しかしまだまだ、世界各国のこの問題に対する理解は十分と言えないわけですから、我々もさらに、しっかりと、国際社会と私達の認識を、共通の認識を持てるように努力を重ねながら、北朝鮮に対する圧力を強めていかなければならないと思います。
この問題を解決をするためには、なんといっても北朝鮮側にこの問題を解決をしなければならないと、この問題を解決をしなければ国家として今後繁栄をしていくことはできない、と認識させなければならない。まさに圧力をかけながらなんとか対話に持ち込みたいと思っている次第です。
我々は、拉致被害者、そしてご家族の皆様と常に共にある。
この思いで、この問題の解決に全力を尽くしていくことをお誓いを申し上げまして、私のごあいさつとさせていただきたいと思います。皆様、共に頑張りましょう。」――
拉致被害者のすべての帰国の日まで「安倍政権の使命は終わらない」、「この問題を解決をするためには、なんといっても北朝鮮側にこの問題を解決をしなければならないと、この問題を解決をしなければ国家として今後繁栄をしていくことはできない、と認識させなければならない」云々は何度も聞いている決意表明に過ぎない。
決意表明で終わっているから、何度も言うことになるし、何度も聞くことになる。
特に後者の発言は金正恩に対して「認識」させるに至っていない決意表明であって、逆に安倍晋三及び安倍政権の力不足を露呈していることになる。
普通、決意表明は決意した目標の実現可能性への契約であり、契約である以上、その実現可能性は具体化へ向かっていかなければならないが、具体化へ向かっていかない実現可能性は単なる決意表明で終わっている証拠としかならない。
いわば勇ましいことを言っているに過ぎない。
大体が拉致解決を目的として飯島勲内閣官房参与を5月半ばに訪朝させておきながら、それから4カ月経過しているにも関わらず、その成果・未成果を国民に何ら説明もせずに決意表明だけを続けているのだから、その認識にしても責任にしても、いい加減と言わざるを得ない。
この認識・責任は拉致「問題に精通をしている古屋圭司議員に担当大臣を務めてもらっております」と言っていることの認識と責任に通じている。
古屋圭司は9月14日、拉致事件を取り上げた演劇「めぐみへの誓い」を鑑賞後、記者団に次のように発言している。《「金正恩は日本人を帰さなければ」 古屋拉致問題相》(asahi.com/2013年9月14日19時17分)
古屋圭司「何の罪もない幸せな暮らしをしている人を拉致することは、国家テロに等しい。北朝鮮の故金正日(総書記)がやった犯罪は許しがたい。金正恩(第1書記)はお父さんのやった犯罪をわびて、日本人を帰さなければいけない。そうしなければ、日本から支援を得ることはできないし、世界からの厳しい制裁を解くこともできない」――
何を今更、「国家テロに等しい」などと言っているのだろう。北朝鮮を支配していた独裁者金正日を首謀者とした国家テロだからこそ、解決を難しくしているという認識がない。
そして現在北朝鮮を支配している独裁者金正恩が独裁者金正日の息子であり、権力父子継承の正統性を金正日とその父親の金日成の正義と絶対性に置いているからこそ、金正恩は拉致問題で簡単には日本と妥協できない立場に立たされているという認識もない。
その認識のなさは「金正恩(第1書記)はお父さんのやった犯罪をわびて、日本人を帰さなければいけない」という発言に如実に現れている。
権力父子継承の正統性の手前、金正日を正義と絶対性の象徴と位置づけていなければならない金正恩なのだから、「お父さんのやった犯罪をわびて、日本人を帰さなければいけない」などということは、「めぐみへの誓い」という演劇を見た後で涙もろくなっていたのか、甘っちょろい情緒的な期待でしかない。
だが、いくら涙もろくなっていたとしても、政治家である以上、政治が持つ冷徹な側面を忘れてはならないはずだ。
その認識と責任の程度を疑うが、各都道府県の拉致問題啓発の取り組みに点数をつけて上下の評価をつけるに至っては、最悪である。
《拉致問題啓発に「通信簿」 古屋担当相、都道府県別に》(asahi.com/2013年9月14日7時51分)
〈古屋圭司拉致問題相は9月13日の記者会見で、北朝鮮による日本人拉致問題の啓発活動への各都道府県の取り組み状況を初めて公表〉、〈「通信簿」を示して動きの鈍い自治体の尻をたたく狙いもあり、ホームページ上での公表も検討している。
都道府県の申告に基づいて政府の拉致問題対策本部が取り組みの一覧表をまとめた。署名活動やパネル展示のほか、拉致問題解決を願うブルーリボンの着用呼びかけといった9項目について、2012年度に実施した項目を記している。実施が二つ以下だったのは秋田、山形、福島、山梨、愛知、三重、奈良、和歌山、長崎の9県。拉致被害と関わりが薄い地方で動きの鈍さが目立つという。〉――
核となる肝心な必要事項は拉致解決に向けた議論のテーブルに如何に北朝鮮を引き出すかであって、そのことにかかっている拉致解決に各都道府県の啓発活動の熱心度がどう関わってくるというのだろうか。
IOCがオリピック開催立候補国の国民がどれくらい開催を希望しているのかの世論調査で、その開催期待の熱心度を見て、開催国決定の参考にすることはあっても、金正恩が日本の自治体の拉致問題啓発活動の熱心度に心打たされるとでも思っているのだろうか。
この程度の認識と責任しか持たない古屋圭司を拉致「問題に精通をしている古屋圭司議員に担当大臣を務めてもらっております」と言うことのできる安倍晋三の認識と責任も、拉致問題が決意表明で終わっていることと併せて、同程度としか言い様がない。
いや、拉致解決の最終責任者であると同時に閣僚任命の最終責任者である安倍晋三が閣僚と同程度のお粗末な認識と責任しか持たないということは大問題である。
古屋圭司が「金正恩(第1書記)はお父さんのやった犯罪をわびて、日本人を帰さなければいけない」と言っていることは安倍晋三のかつての発言の焼き直しであって、似たような発言しかできない点からも両者の認識と責任の程度の一致を見ることができる。
以前ブログで取り上げた安倍晋三の発言だが、古屋圭司発言が如何に焼き直しか理解して貰うために再度引用してみる。
2012年8月30日、フジテレビ「知りたがり」から。
安倍晋三「ご両親が自身の手でめぐみさんを抱きしめるまで、私達の使命は終わらない。だが、10年経ってしまった。その使命を果たしていないというのは、申し訳ないと思う。
(拉致解決対策として)金正恩氏にリーダーが代わりましたね。ですから、一つの可能性は生まれてきたと思います」
伊藤利尋メインキャスター「体制が変わった。やはり圧力というのがキーワードになるでしょうか」
安倍晋三「金正恩氏はですね、金正日と何が違うか。それは5人生存、8人死亡と、こういう判断ですね、こういう判断をしたのは金正日ですが、金正恩氏の判断ではないですね。
あれは間違いです、ウソをついていましたと言っても、その判断をしたのは本人ではない。あるいは拉致作戦には金正恩氏は関わっていませんでした。
しかしそうは言っても、お父さんがやっていたことを否定しなければいけない。普通であればですね、(日朝が)普通に対話していたって、これは(父親の拉致犯罪を)否定しない。
ですから、今の現状を守ることはできません。こうやって日本が要求している拉致の問題について答を出さなければ、あなたの政権、あなたの国は崩壊しますよ。
そこで思い切って大きな決断をしようという方向に促していく必要がありますね。そのためにはやっぱり圧力しかないんですね」――
父親金正日の拉致犯罪を否定する答を出さなければ北朝鮮は崩壊するからと圧力をかけて、答を出す方向に促していくと言っているが、その否定が同時に権力父子継承の正統性の否定となる危険性を金正恩は抱えることになり、そう簡単にはできないという認識がない。
だからこそ、拉致解決が何ら進展しない状況に陥っている。
《【再び、拉致を追う】小泉訪朝10年、停滞する交渉 安倍元首相に聞く 正恩氏に決断迫ること必要》(MSN産経/2012.9.17 10:36)から。
安倍晋三「金総書記は『5人生存』と共に『8人死亡』という判断も同時にした。この決定を覆すには相当の決断が必要となる。日本側の要求を受け入れなければ、やっていけないとの判断をするように持っていかなければいけない。だから、圧力以外にとる道はない。
金正恩第1書記はこの問題に関わっていない。そこは前政権とは違う。自分の父親がやったことを覆さないとならないので、簡単ではないが、現状維持はできないというメッセージを発し圧力をかけ、彼に思い切った判断をさせることだ。
つまり、北朝鮮を崩壊に導くリーダーになるのか。それとも北朝鮮を救う偉大な指導者になるのか。彼に迫っていくことが求められている。前政権よりハードルは低くなっている。チャンスが回ってくる可能性はあると思っている」――
要するに金正恩は父親の金正日の拉致に関わる情報操作・情報隠蔽を白日のもとに曝さなければならないと言っているが、前の発言と同様にそれをすることは権力父子継承の正統性の根拠としている父親金正日の正義と絶対性を崩せと言っていることと同じで、出来ない相談だという認識がない。
認識と責任の程度に関して安倍晋三も古屋圭司も似た者同士であることが分かる。
何れにしても両発言は安倍晋三の拉致解決の方法論であることに変わりはない。拉致解決の方法論である以上、今年5月半ばの飯島勲訪朝はこの方法論の具体化であったはずだ。
だが、今以て何の発表も説明もない。具体化の失敗は方法論の間違いを示す。
だからこそ、ここでは「そのためにはやっぱり圧力しかないんですね」と言い、「圧力以外にとる道はない」、あるいは「圧力をかけ、彼に思い切った判断をさせることだ」と圧力一辺倒だった姿勢が、「国民大集会」では、「圧力をかけながらなんとか対話に持ち込みたいと思っている次第です」と圧力一辺倒から少し後退することになったのだろう。
飯島勲自身が7月14日の日本テレビ「たかじんのそこまで言って委員会」で直接的に圧力一辺倒を否定している。
飯島勲「安倍総理は自分の内閣で拉致問題を解決するといった。ところが実態は、圧力、圧力、圧力、制裁。叩き潰せば解決みたいな気持しかなかった。なぜかって言ったら、10年間も閉ざされた扉、ミサイル、核、拉致ですから、そういう状態の中で行ったら(北朝鮮へ行ったとしても)、ただ圧力だけでは無理でしょうと」――
この発言からすると、圧力一辺倒否定は訪朝前に判断していた認識となるが、安倍晋三の拉致解決方法論が圧力一辺倒を取っていたことから判断して、この男の胡散臭ささも加味すると、訪朝して気づいた認識の疑いが濃い。
例え訪朝前の認識であったとしても、飯島勲が安倍晋三が拉致解決の方法論の一つの手段としていた圧力一辺倒を否定していること自体が安倍晋三の拉致解決の方法論そのものの間違いの指摘となるし、飯島訪朝の失敗をも意味することになる。
成功なら、成功に導いた方法論だけを宣伝すれば済むからだ。
以上見てきたことからすると、金正恩に対しては権力父子継承の正統性の根拠としている父親金正日の正義と絶対性を傷つける如何なる拉致解決の有効な方法論は存在しないということである。
矛盾し、民主義国家の正義に反するが、拉致を解決したいなら、独裁者金正日の正義と絶対性を金正恩と共に守る方法を創造しなければならないだろう。
そういった認識と責任を持つことができるかにかかっているはずだ。
持つことができなければ、いつまで経っても決意表明で終わる。
《9月13日午後4時12分》発信――《平成25年 台風第18号に関する情報 第2号》(気象庁予報部発表)
《台風18号が発生》(NHK NEWS WEB/2013年9月13日 4時46分)
《9月13日(2013年)午前3時》――小笠原諸島の近海で台風18号が発生。
中心気圧――1000ヘクトパスカル
最大風速――18メートル
最大瞬間風速――25メートル
中心から半径280キロ以内――風速15メートル以上の強風
時速――15キロ/時
進路――小笠原諸島に近づき、その後、日本の南の海上に進むと予想。
記事添付の画像は「16日3時」の時点で中部から関東を暴風圏に入れ、そのままの進路を取れば東北・北海道を巻き込んでいくことを予想している。
(見出し)
台風第18号は15日にかけて日本の南を北上し、16日にかけて東日本太平洋側にかなり接近するおそれがあります。西日本から東北地方にかけての広い範囲で太平洋側を中心に、16日にかけて大雨のおそれがあります。近畿地方から東北地方にかけては暴風が吹き、海は大しけとなるところがあるでしょう。
(本文)
[台風の現況と予想]
台風第18号は、13日15時には小笠原近海にあって、1時間におよそ30キロの速さで西北西へ進んでいます。中心の気圧は994ヘクトパスカル、最大風速は18メートル、最大瞬間風速は25メートルで、中心から半径330キロ以内では風速15メートル以上の強い風が吹いています。
台風第18号は今後次第に勢力を強め、15日にかけて暴風域を伴いながら日本の南を北上し、16日にかけて東日本太平洋側にかなり接近するおそれがあります。
[防災事項]
近畿地方から東北地方にかけての太平洋側では、暖かく湿った空気が流れ込むため、台風接近に先行し15日には局地的に非常に激しい雨が降るでしょう。その後、16日にかけて雨は降り続き、西日本から東北地方の広い範囲で大雨となるおそれがあります。
近畿地方から東北地方では、台風の接近に伴い次第に風が強まり、16日は非常に強い風が吹き、暴風となるところがあるでしょう。太平洋側を中心に、海上では、15日はうねりを伴いしけとなり、16日にかけて大しけとなるところがあるでしょう。
[補足事項]
今後の台風情報や、地元気象台が発表する警報、注意報、気象情報に十分留意してください。次の「台風第18号に関する情報(総合情報)」は14日5時頃に発表する予定です。
「大雨のおそれ」、「暴風」、「勢力を強め」とその発達、局地的な激しい雨、広範囲な大雨等々を予報している。
近年異常気象続きである。当然、土砂災害や洪水、河川決壊・堤防決壊等の万が一を想定し、その備えをしなければならない。自衛隊は要請があればいつでも出動できる態勢に入り、各地の消防にしても、準備体制に入ったはずだ。
《9月13日午後8時43分》――安倍晋三、首相官邸発(時事ドットコム/「首相動静(9月13日)」より)
《9月13日 午後10時2分》発信――《台風18号 本州の太平洋側に接近か》(NHK NEWS WEB)
〈台風は15日から16日にかけて、次第に勢力を強めながら東海や関東など、本州の太平洋側に近づくおそれがあります。
また、15日は近畿から東北にかけての太平洋側を中心に暖かく湿った空気が流れ込んで大気の状態が不安定になる見込みで、局地的に非常に激しい雨が降るおそれがあります。
さらに、16日にかけては西日本と東日本、それに東北の広い範囲で雨量が多くなり、各地で大雨になるおそれがあります。
太平洋沿岸では15日にかけて波やうねりが高くなるほか、16日には近畿から東北の各地で非常に強い風が吹いてところによって大しけとなる見込みです。〉――
気象庁発表の台風情報を記事にしているのだから、内容は同じになるが、記事添付の画像は18号の進路が最初よりも少し西側に傾いて四国方面に向かう形を一旦取った上で、暴風域の左側を列島に差し掛けながら、列島に添うように北東に進んでいる。
安倍晋三は国民の生命・財産を預かる最終責任者として、被害の程度を予想しながら、台風18号の情報に接していたはずだ。接していなければならない。
《9月13日午後10時20分》――安倍晋三、山梨県鳴沢村の別荘着。(時事ドットコム/「首相動静(9月13日)」より)
《9月14日午前8時5分》――安倍晋三、別荘発。
《9月14日午前8時11分》――安倍晋三、同村の鳴沢ゴルフ倶楽部着。
《9月14日午後4時43分》――安倍晋三、同所発。
9月14日午前8時11分から9月14日午後4時43分まで、途中で昼食に1時間取ったと仮定して、約7時間30分近くゴルフを愉しんだことになる。
《「ちょっと右だねえ」首相がゴルフでリラックス》(MSN産経/2013.9.14 22:51)
〈この日は小雨模様で肌寒かったが、紺のシャツ、白いズボン姿の首相は、ショットした後に「ちょっと右だねぇ」と言って周囲の笑いを誘うなど、終始リラックスした様子だった。〉――
《2013年9月14日 18:13》発信――《台風18号、日本の南を北上 東海や近畿を中心に猛烈な雨の予想》(FNN)
9月14日午後の気象庁記者会見。
徳田留美日本気象協会気象予報士「この台風18号なんですが、ここ最近では、2012年9月に発生した台風17号に進路が似ています。共通する特徴として、台風の接近前から、広い範囲で、大雨になるおそれが考えられます。今近づいている18号の進路図と比べてみますと、進路が似ていることがわかります。
2012年の17号では、山梨や静岡、鹿児島などで記録的な大雨となりました。鹿児島では、降り始めからの雨量が400mmを超えて、沖縄や三重では、川に流されるなどして、2人の死者が出ました。関東を通過した際には、交通機関に大きな影響が出ました。
今回もこのコースを通れば、台風の接近前の15日から四国から東北にかけての広い範囲で、大雨に警戒が必要で、局地的に強まるおそれがあります。風も、15日から次第に強まります。関東でも影響がありそうです。台風の最も接近する16日には、立っていられないくらいの暴風が吹き荒れて、交通機関が大きく乱れる可能性があります。3連休のお出かけを予定されている方は、十分にご注意ください」――
「ここ最近では、2012年9月に発生した台風17号に進路が似ています」と言うことなら、2012年9月発生台風17号の情報を把握しておかなければならない。「Wikipedia」から見てみる。
〈9月17日にグアムの東側で形成が始まり、21日3時にフィリピン東方の北緯13度30分、東経131度40分のフィリピン海で熱帯低気圧から台風になった。当初は南西に進んだのちに停滞する動きを見せたが、台風となってからは急速に発達。その後、北に向かって進路を変えた。
24日21時には中心気圧が910hPaまで低下、中心付近の最大風速は55メートル、最大瞬間風速75メートルの大型で猛烈な台風となってフィリピンの東をゆっくりと北上、25日6時には中心気圧905hPa、中心付近の最大風速55メートル、最大瞬間風速80メートルまで成長した。
台風は28日に中心気圧920hPa、中心付近の最大風速50メートル、最大瞬間風速70メートルの勢力を保ったまま先島諸島に接近し、石垣島では午後4時49分に最大瞬間風速50.6メートルを観測した。台風は進路を北東寄りに変えて29日には沖縄本島を通過、那覇市で午後1時23分に最大瞬間風速61.2メートルを観測するなど猛威を奮い、30日には速度を早めながら本州の南の太平洋上を北東に進んで紀伊半島の潮岬をかすめた後、午後7時頃に愛知県豊橋市へ上陸した。上陸時の勢力は中心の気圧975hPa、中心付近の最大風速35メートル、最大瞬間風速は50メートルで、時速50km。
その後、さらに速度を早めた台風は午後9時に山梨県甲府市近郊、10月1日午前0時には福島県会津若松市に達し、午前5時頃には青森県八戸市の東の海上へ抜けた。〉――
今回の18号も愛知県豊橋市付近に上陸となっている。9月16日の午前8時前だそうだ。
台風17号愛知県豊橋市上陸時の勢力。
中心気圧975hPa
中心付近最大風速35メートル
最大瞬間風速は50メートル
時速50km
台風18号愛知県豊橋市付近上陸時の勢力。(「NHK NEWS WEB」から)
中心気圧は965ヘクトパスカル
中心付近最大風速30メートル
最大瞬間風速45メートル
中心南東側110キロ以内と北西側70キロ以内風速25メートル以上の暴風
時間45キロ
17号よりもやや弱めだが、それでも最大限の警戒で備えなければならない大型の台風であることに変わりはないはずだ。
上記「FNN」記事は気象庁記者会見が9月14日午後となっていて、正確な時間は分からないが、記事の発信は午後6時13分。午後5時前後であったとしても、安倍晋三がゴルフ場を離れたのは午後4時43分で、それ程の差はない。
しかし、こういった情報は首相官邸危機管理センターが気象庁の記者会見前に2012年9月発生台風17号の情報と共に気象庁から報告を受けているはずで、もし気象庁の方で17号分は用意していなかったなら、危機管理センターの方から要求して出させて、双方の情報を併せて首相に報告していなければならないはずだ。
首相官邸危機管理センターとは、〈政府の危機管理活動の中枢となる施設。首相官邸の地下1階にあり、平時から24時間体制で情報を収集。緊急事態発生時には、内閣危機管理監・内閣官房副長官補(安全保障・危機管理担当)の指揮下、官邸連絡室・官邸対策室が設置される。災害が極めて激甚な場合は、内閣総理大臣によって緊急災害対策本部が設置される。〉とインターネットで紹介している。
緊急事態の種類は、〈地震災害、風水害、火山災害等の大規模な自然災害、航空・鉄道・原子力事故等の重大事故、ハイジャック、NBC・爆弾テロ、重要施設テロ、サイバーテロ、武装不審船や弾道ミサイル等の重大事件、新型インフルエンザの発生等、国民生活を脅かす様々な事態〉まで含んでいると「内閣官房」のHPに記してある。
もし首相は別荘に休養に行ったのだからとか、ゴルフを愉しんでいるのだからと、あるいは被害が出るにしても出るのは15日午後から16日の1日だと予想して情報伝達を遠慮したとしたら、国民の生命・財産を守る最終責任の機能を周囲の方から一時的に停止させたことになり、重大問題となる。
《9月15日午後1時48分》――安倍晋三、東京・富ケ谷の私邸着。(時事ドットコム/「首相動静(9月15日)」より)
確かに台風が日本列島上で勢力を振るう時間帯には東京にいたことになる。だが、ギリギリまでゴルフを愉しむ、あるいは別荘で休養を取り、被害が出る頃には東京に戻っていれば問題はないという姿勢は許されるだろうか。
この姿勢は危機管理の姿勢だけではなく、国民に対する姿勢ともなるからだ。
このことは次のことについても言うことができる。
《9月16日午前11時》――安倍晋三、文書で指示。
《安倍首相、台風被害対応を関係省庁に指示》(時事ドットコム/2013年9月16日14時44分)
安倍晋三が〈台風18号の接近による被害状況を把握し、関係省庁が一体となって対応するよう米村敏朗内閣危機管理監に文書で指示〉、〈あわせて被災者の救命・救助や住民の避難に万全を期し、国民への情報提供に努めるよう求めた。〉
《9月16日午後1時過ぎ》――安倍晋三、米村氏を首相公邸に呼び、被害状況や対応について説明を受ける。(同記事)――
事後対応の指示を出し、説明を受けることで首相としての役割は滞りなくこなしていくことができるだろう。だが、被害状況の把握、事後対応の指示内容、被災者の救命・救助、住民の避難、国民への情報提供は各司々(つかさつかさ・各省庁)が刻々と万全を尽くしていく当たり前のことであって、首相が指示を出して把握を開始することでもなく、関係省庁が一体となって対応を開始することでもない。
それを安倍晋三が指示を出して、そのリーダーシップのもと、関係部署が動くかのように装う。
ここにも国民に対する姿勢がどのようなものか、誠実なものか、不誠実なものか窺うことができる。
2013年8月14日の当ブログ記事――《安倍晋三の8月4日豪雨被害山口・島根視察は8月10日夏休みゴルフのための通過儀礼だったのか - 『ニッポン情報解読』by手代木恕之》に書いたが、安倍晋三は8月9日(2013年)、秋田、青森、山形、福島が豪雨に見舞われて、大きな被害を出した翌日の8月10日から夏休みを取り、その8月10日の初日早々に東北地方の被害を他処に同じ山梨県鳴沢村の別荘近くのゴルフ場でゴルフに打ち興じて、民主党幹部から批判を受けている。
これも、至って誠実な国民に対する姿勢として問われなければならない問題であるはずだ。
シリア・アサド政権が8月21日(2013年)、首都ダマスカス近郊で化学兵器を使って一般市民を攻撃、数百人が死亡したとされていることを受けてアメリカが軍事攻撃による報復の構えを見せたことに我が日本維新の会共同代表の橋下徹が疑義を示した。
《「懲罰的介入では解決しない」橋下氏、米のシリア軍事介入に否定的発言》(MSN産経/2013.9.5 20:58)
9月5日、大阪市役所で記者団に対する発言。
橋下徹「国内の紛争などに懲罰的に介入しても解決しない。
(アサド政権側の化学兵器の使用について)僕は確信を持っていない。米政府の安全保障の専門家らが総力を挙げて確認しなければいけない。(軍事介入で)今のシリア情勢を解決できるのか。もうちょっと冷静に議論した方がいい」
断っておくが、アサド政権の化学兵器の使用・不使用の確認と対処はアメリカや国連の任であって、「僕」の「確信」は基準とはならない。つまり、「僕」の「確信」は二の次である。
橋下徹が「国内の紛争などに懲罰的に介入しても解決しない」と言っていることは、アメリカを主体とした多国籍軍が、不保持を義務づけられていた大量破壊兵器を隠し持っているとの理由で2003年3月20日から独裁者サダム・フセインのイラク攻撃を開始したイラク戦争や9・11(2001年9月11日)アメリカ同時多発テロ事件の首謀者として指定されたアルカイダのオサマ・ビン・ラディンの引き渡しに応じなかったタリバン・アフガニスタン政権に対してアメリカ、その他が2001年10月7日に報復攻撃を開始したアフガニスタン紛争、最近では2011年1月の民衆による大規模デモによって23年間の独裁政権に終止符を打ったチュニジアのジャスミン革命に触発されてエジプトでも、2011年1月25日より民主化を求める一般民衆の大規模な反政府デモが発生、2月11日に独裁者ムバラク大統領を退陣に追い込み、30年に及ぶムバラクの独裁政権に終止符を打ったエジプトの民衆革命などのその後の民主化とは程遠い混乱が頭にあったはずだ。
そのような民主化とは程遠い混乱を以って、「国内の紛争などに懲罰的に介入しても解決しない」と。
イラク戦争ではサダム・フセインを独裁者の地位から放逐、イラクに民主化が訪れると多くの人間が確信したはずだが、それも束の間の希望で終わり、宗派間闘争テロやイスラム過激派の武力テロで市民の間でも多くの死者を出すようになって治安は最悪の状態と化し、現在に於いてもテロに終止符を打てないでいる。
しかしイラク戦争では24年に亘るサダム・フセインの独裁政権に終わりを告げることができたことは一つの画期的な歴史的事実である。
アフガニスタン紛争では女性の就労も教育の機会も禁止し、音楽その他の娯楽を禁止していた悪名高かったタリバン独裁政権を政権の座から放逐し、女性に就労の機会と教育の機会への道を開いた。
エジプトでは独裁者ムバラクが大統領就任当初からエジプト全土に非常事態宣言を発令し続け、強権的な統治体制を敷いていたというが、政治的意図からの非常事態宣言は憲法の停止や国民の政治活動の制限等のケースを伴わせる。政治活動の制限だけでも、思想・言論の自由の制限、集会の制限等を意味する。
そのようなムバラクの独裁に終止符を打つことができた歴史的事実は消すことはできない。
だが、各国に於ける独裁という矛盾と混乱の外国からの軍事攻撃による、あるいはその国の民衆自身による民主化要求の大規模デモによる終止符に替わる新たな矛盾と混乱の発生という経緯は、一見、特にイスラム世界に於いては欧米風の民主化を望むことは絶望的であるように思わせ、そのことがオバマ・アメリカ大統領がシリア・アサド独裁政権による化学兵器使用に対して、「何もしなければ独裁者に誤ったメッセージを与えることになる」と軍事攻撃の構えを見せたものの、そのことへの国民の反応が、化学兵器使用が確認できたことを前提としても、軍事攻撃に賛成25%に対して反対46%といった世論調査の数値となって現れているはずだ。
キャメロン英国首相がアサド政権への武力行使に道を開く政府提出の動議を緊急招集した英国議会で反対多数で否決され、世論調査でも軍事行動に反対が半数を占め、賛成が反対の半数といった傾向も、イラクやアフガン、エジプト等の前例を学習して得た知識が判断させた賛否の傾向でもあるはずだ。
橋下徹の「国内の紛争などに懲罰的に介入しても解決しない」という懐疑と重なる態度表明と言うことができる。
アメリカが一旦は意図した軍事行動はロシア提案の化学兵器国際管理をアメリカが受け入れることによって、遠のく結果となっている。
後はシリア・アサド政権の誠実な実行にかかっているが、化学兵器を各地に分散して隠していて、すべてを国際管理に移すか疑わしいとする見方や、シリアの研究者の頭の中にある化学兵器製造のノウハウは国際管理ということはできない。
研究を続け、いつでも製造できる設備建設の準備にかかっていることはできる。あるいはホトボリが冷めてから密かに隠れて製造することもできる。
だが、何よりも問題なのはアメリカの軍事攻撃回避で政権側が反政府勢力の支配地域奪還等の攻勢を強めているといることから、反政府勢力が鎮圧されてアサド独裁政権が延命した場合のシリア国民の人権状況の矛盾と混乱は、あるいはシリア社会の矛盾と混乱は最初から変わらないことになるか、あるいは再度の反政府勢力蜂起を前以て抑えるために徹底的に政治活動を制限した場合、シリア国民のそれらの矛盾と混乱は却って悪化の一途を辿ることになる。
ということなら、各国に於ける独裁という矛盾と混乱の外国からの軍事攻撃による、あるいはその国の民衆自身による民主化要求の大規模デモによる終止符が例え新たな矛盾と混乱を生み出すことになったとしても、後者の矛盾と混乱を前者の矛盾と混乱よりもマシな状況として受け入れて、前者の矛盾と混乱を一旦は断ち切ることを優先させて反政府勢力に軍事援助を与えたり、直接的な軍事行動に出る道を選択するか、あるいは例えその国の国民自身による独裁政権に対する反政府大規模デモが発生しても、あるいはデモ隊が武器を取って政府に軍事的に対抗する戦いに出ても、前者の矛盾と混乱が引き続くか、悪化の一途を辿ることになったとしても、独裁政治が国民にもたらす矛盾と混乱に目をつぶって如何なる軍事援助も与えず、如何なる軍事行動にも出ずに政府とその対抗勢力との闘争の成り行きに任せる傍観の道を選択するのか、二者択一いずれかということになる。
前者の選択ということなら、軍事行動に出る理由の、あるいは軍事援助を与える理由の一つの基準となり得る。
橋下徹が「国内の紛争などに懲罰的に介入しても解決しない」と言っていることに対して矛盾と混乱の漸進的解決を意味する選択だと言うこともできる。
安倍晋三は9月12日、首相官邸で日本の外交・安全保障政策の中長期的な指針となる「国家安全保障戦略」の策定に向けて有識者会議初会合を開き、安保戦略の柱に「積極的平和主義」を据える方針で一致したとマスコミが伝えている。
そこで首相官邸HPにアクセスして、その時の安倍晋三の発言が詳しく出ていないか調べてみたところ、しっかりと載っていた。いつも言うことに関しては素晴らしいことを言っているから、載せないではいられないのかもしれない。
安倍晋三「大変御多忙のところ、『安全保障と防衛力に関する懇談会』への参加をお引き受けいただき、心から御礼申し上げます。
国家安全保障は政府の最も重要な責務です。我が国の安全保障をめぐる環境が一層厳しさを増しています。こうした中で、国家安全保障を十全なものとするためには、外交政策と防衛政策を、より一体的に推進していかなければなりません。良好な国際関係を維持しつつ、豊かで平和な社会を引き続き発展させていくためには、我が国の国益を長期的視点から見定めた上で、国家安全保障政策をより一層戦略的かつ体系的なものとする必要があります。
現在の国際社会ではどの国も一国で自らの平和と安全を維持することはできません。安倍内閣では、国際協調主義に基づく積極的平和主義の立場から、世界の平和と安定、そして繁栄の確保に、これまで以上に積極的に寄与していく所存です。こうした考えの下、我が国で初めて、国家安全保障に関する基本方針として、外交政策及び防衛政策を中心とした『国家安全保障戦略』を策定することといたしました。この国家安全保障戦略は、安全保障に関連する政策への指針を与えるものとする考えです。
また、防衛力は、国の平和と独立を守り抜く意思と能力を具体的な形として表すものです。国家安全保障を確保するために、安全保障環境の変化に応じて防衛態勢を強化していくとの観点から、「防衛大綱」を見直し、自衛隊が求められる役割に十分対応できる防衛力を着実に整備していく必要があります。
この懇談会において、国家安全保障戦略と防衛大綱を併せて御議論いただくことによって、より総合的な国家安全保障政策の展開につなげていくことができると考えます。
有識者の皆様方におかれましては、外交・防衛政策に関する多大な御知見、これまでの御経験を結集して、集中的に御議論いただき、忌憚のない御意見を頂ければと思います。
どうぞよろしくお願いいたします」――
「国家安全保障政策をより一層戦略的かつ体系的なものと」して 「外交政策と防衛政策を、より一体的に推進してい」く。
その中身たるや、「国際協調主義に基づく積極的平和主義」を柱として、「世界の平和と安定、そして繁栄の確保に、これまで以上に積極的に寄与していく」目標に立ち、外交に関しては安倍晋三が常々言っている、「自由、民主主義、基本的人権、法の支配といった基本的な価値に立脚した戦略的な外交」――いわゆる価値観外交をベースとして、それを防衛政策にも反映させて、戦略的且つ体系的に両者の一体化を図るということなのだろう。
問題はその有言実行性である。「外交政策と防衛政策を、より一体的に推進してい」く「より一層戦略的かつ体系的な」「国家安全保障政策」を物の見事に構築できたとしても、その政策の実現は指導的立場で自らが実際の外交の形としていく安倍晋三の政治的創造性にすべてがかかってくることになる。
2013年2月1日の参議院本会議での代表質問
水野賢一・みんなの党「総理は外交方針として自由・民主主義・法の支配などの価値感を共有する国々との連携を模索しているようです。
そういう意味では、それらの価値感が一致するとは言い難い状況の中国とは共産党一党独裁の元、様々な人権侵害が続いています。3年前、民主化運動をしている劉暁波(リュウ・ギョウハ)氏がノーベル平和賞を受賞しましたが、政治犯として服役中のため、授賞式に出席することさえできませんでした。
そのとき自民党議員は総理の菅首相に、釈放を求めるべきだと、随分詰め寄っていました。みんなの党も劉暁波氏の釈放を求める決議案を国会に提出致しました。
安倍総理は劉暁波氏を含む中国の民主化活動家やチベットの独立運動家に対する中国政府の弾圧に対して、どのような姿勢で臨むのですか。具体的には劉暁波氏の釈放を求めますか」
安倍晋三「中国の民主化活動家を巡る人権状況や国際社会に於ける普遍的価値である人権及び基本的自由が中国に於いても保障されることが重要であります。
劉暁波氏についても、そうした人権及び基本的自由は認められるべきであり、釈放されることは望ましいと、考えられます。
このような観点から、これまでも政府間の対話などの機会を捉えて、民主化活動家についての我が国の懸念を中国側に伝えてきております」――
「中国の民主化活動家を巡る人権状況や国際社会に於ける普遍的価値である人権及び基本的自由が中国に於いても保障されることが重要であります」と言っている。
当然、安倍晋三は中国に対して「自由、民主主義、基本的人権、法の支配といった基本的な価値」の保障を求め、その保障を実現させるべく働きかける外交責任を負っていることになる。
外交責任を負わない如何なる働きかけも口先だけと化す。
だからこそ、「これまでも政府間の対話などの機会を捉えて、民主化活動家についての我が国の懸念を中国側に伝えてきております」と言ったはずだ。
だが、安倍晋三本人による日本の外交に於ける最も懸案事項となっている中国に対する直接的な働きかけはどれ程に行い得ていたのだろうか。「劉暁波氏についても、そうした人権及び基本的自由は認められるべきであり、釈放されることは望ましいと、考えられます」と言いながら、自分自身は中国に対して直接的に懸念を伝えたり、声明を出すといったことはしていない。
一国家のリーダーである本人が自らのリーダーシップを以てして直接声を出さずに外交当局に日本の懸念を伝えさせるだけでは、「国際協調主義に基づく積極的平和主義の立場から」の「世界の平和と安定、そして繁栄の確保」に対する積極的な寄与を目標としたより戦略的且つ体系的な外交政策と防衛政策の一体的推進も絵に描いた餅となりかねない。
安倍晋三が対中国外交として行ってきたことは中国を遠くから眺める形で中国以外の「自由、民主主義、基本的人権、法の支配といった基本的な価値」を共有できる国々を訪問、そのような価値観の共有を訴える形で共有できない中国を牽制してきたに過ぎない。
2013年7月7日のTBSテレビ「NEWS23 参院選党首討論」――
安倍晋三「中国は東シナ海だけではなく、南シナ海に於いても、例えばフィリピンもそうですが、力で以って、現状を変えようとしています。
で、私は間違っている思っています。その中で、アジアの国々を私はずうっと訪問して、えー、来ました。そしてまたヨーロッパにも行って来ましたし、中東にも行ってます。
そういう多くの国々とですね、やはり力による現状変更はダメですよ、ルールによる支配、その中に於いて秩序をつくっていきましょう。そういう志を同じくする国々とですね、えー、そういう方向に向かって行こうということをですね、気持と未来に向けるビジョンを併せて、そういう中に於いて、中国の今の姿勢をですね、変えさせていく必要があるんです」――
「中国の今の姿勢」を変えさせるに中国に対して働きかける直接指向ではなく、中国以外の国々に同意を求めて、その同意によって変えさせようとする間接指向となっている。
前者は反発と摩擦を伴うが、より強力なインパクトを相手に与えて、変化への圧力を、少なくとも自意識させる可能性は否定し難いのに対して後者は反発と摩擦を回避できるが、インパクトは弱く、当然、変化への圧力を自意識させる可能性にしても小さくなる。
間接指向を基本的な外交姿勢としているからこそ、今年7月、上海に入ったあと消息を絶っていた日本在住中国籍朱建栄教授が消息を絶っていたことについても、捜査当局が拘束し、取り調べていることを事実上認めたことに関しても、いくら中国籍だとしても、例え安倍晋三と主義・主張を異にしていたとしても、日本で長年活動し、公の場でも発言してきた人物でありながら、何ら懸念も伝えず、安倍晋三自身も、どのような法に触れた拘束と取り調べなのか、その透明性を求めることもしなかった。
日本の外交当局を通して懸念を伝えてあるとする口実は成り立たない。そのような懸念の伝達は慣例化と形式化を招きやすく、当然、中国当局に与えるインパクトも小さなものとなるのに対して中国当局による中国国内の人権抑圧や司法その他の非透明性の機会を把えた安倍晋三自身のリーダーシップに基づいた直接的な批判の声を駆使した「中国の今の姿勢」を変えさせる直接指向でなければ、相手に伝わるインパクト、相手に与える民主化という制度に対する自意識にも違いが出てくるはずだ。
もし朱建栄教授が中国籍だという理由で何らの対応も取らないとしたなら、劉暁波氏の拘束に関しても何の反応も示さずとも許されることになる。
国家安全保障政策のなお一層の戦略化・体系化とか、外交政策と防衛政策の一体化の推進とか、「国際協調主義に基づく積極的平和主義の立場から、世界の平和と安定、そして繁栄の確保」への積極的寄与とか立派な言葉を並べる前に今まで言ってきたことを言ってきたとおりに外交の形で示すことができなければ、それを価値観外交と言おうが何と言おうが、見掛け倒しで終わることになるし、当然、今後国家安全保障政策をどのように創造し、構築しようとも、安倍晋三のリーダーシップのもとでは見掛け倒しを引きずることになるはずだ。
「拉致問題は安倍内閣で解決する」
だが、解決に向けた動きは何も見えてこない。
立派な言葉の並べ立てに反する見掛け倒ししか見えてこない安倍外交の実態といったところか。
北海道恵庭市内の温泉施設が顔に入墨のあるニュージーランドの先住民マオリの女性の入浴を断ってことが分かり、その是か否にちょっとした波紋を広げているようだ。
《先住民族の女性 入れ墨理由に入浴拒否》(NHK NEWS WEB/2013年9月13日 17時15分)
〈今月8日、ニュージーランドの先住民族マオリの60歳の女性が女性を招いたアイヌ語の復興を目指す団体の関係者とともに、北海道内の温泉施設を訪れた際、顔にある入れ墨を理由に入浴を拒否された〉。
〈女性は、あごと唇に家系や社会的地位を表す「モコ」と呼ばれる入れ墨をしてい〉た。
女性側「現地の民族の伝統的な文化に基づいたもので反社会的な入れ墨ではなく、差別にあたるのではないか」(と抗議)
温泉施設側(入り口に「入れ墨・泥酔の方お断り」と明示している。)「入れ墨には威圧感を感じるお客さんも多く、入れ墨を確認したら一律にお断りをしている」
公衆浴場法では入墨の有無に関しての規定はないという。
全国浴場組合「東京オリンピックに向けて多くの外国人が日本を訪れるので、入れ墨などに関してルール作りができないか、政府や自治体などと共に検討したい」
マオリ女性「私にとってモコという入れ墨は、日本の皆さんにとっての着物の家紋のようなものかもしれません。世界には私のように入れ墨をする習慣がたくさんありますから、世界にはいろんな人がいるんだということを理解することが大事だと思います」――
例えそれが反社会的世界の入墨であっても、反社会的世界なりの一つの文化ではあるが、当然、それが反社会的世界を象徴する文化であるゆえに一般社会側から拒絶の対象足り得て許容はできないとしても、一般社会に於いても入墨は文化として存在し、その文化は他の文化と同様、多様性を持つ。
温泉施設側はそのことの理解がなく、「入れ墨には威圧感を感じるお客さんも多」いと、入墨を反社会的世界の文化だとのみ固定観念としていることによって結果的に気づかないままに入墨文化の多様性を排除してしまった。
昨年2月に市職員が児童福祉施設で児童に入墨を見せていたことが発覚したことを受けて橋下徹大阪市長が5月1日に全職員約3万8000人を対象に入れ墨の有無を調べる書面調査を始めた動機に似ている。
橋下市長名通達「入墨が見えるような服装で業務を行うことは不適切で、市民の目に触れれば不安感や威圧感を持ち、市の信用失墜につながる」――
橋下徹も入墨を反社会的世界の文化だとのみ把握している。
この温泉施設側の入墨反社会的世界単一文化論ともいうべき入墨観は次の記事での施設側の言い分に象徴的に現れている。
《顔に入れ墨、マオリ女性の入浴断る 北海道の温泉施設》(MSN産経/2013.9.12 13:31)
温泉施設側(取材に対して)「伝統文化であっても、一般の方からすれば入れ墨の背景は判断できない」――
確かに「一般の方からすれば入れ墨の背景は判断できない」という正当化理由は一見一理あるように見えるが、温泉施設側は単に入墨反社会的世界単一文化論に立って、自らの入墨文化論を一般社会の一般人の入墨観に機械的・一律的に網をかけたに過ぎない。
入墨を彫っている人間を見たなら、それがどんな入墨でも、反社会的世界の人間に決まっているというわけである。
上記「NHK NEWS WEB」記事の〈あごと唇に家系や社会的地位を表す「モコ」と呼ばれる入れ墨をしてい〉たという説明の参考に下記「MSN産経」記事に載せた無断引用写真からも分かるように、反社会的世界の入墨文化とは明らかに異なる入墨文化だと簡単に理解できるはずだ。
当然、「入墨の背景」も異なり、そこに多様性を見なければならないことになる。
例え一部のアフリカの原住民が慣習として全身に入墨を入れていたとしても、その入墨は日本の反社会的世界の入墨とは明らかに異なる。日本の反社会的世界の入墨は自分自身の勲章としていると同時に一般社会の一般人に対する威嚇としての文化をも担わせている。
そのような文化であるからこそ、「入れ墨には威圧感を感じるお客さんも多く」ということになるが、入墨の排除・拒否はあくまでも反社会的世界の入墨に限ってという限定つきでなければならない。
要するに温泉施設側は視野が狭く、哀しいことに狭い視野で入墨文化の多様性を排除したに過ぎない。
この件で菅官房長官が9月13日午前記者会見で発言している。《マオリ女性入浴拒否、東京五輪控え「多用な文化への敬意、対応策必要」菅長官》(MSN産経/2013.9.13 12:43)
菅義官房長官「施設の判断で断ったのだと思うが、2020年の東京五輪開催にあたり、さまざまな国の方がわが国に来てくれることが予測される。
外国の様々な文化に対して敬意を払い理解を進めていくことが大事だ。外国人を迎えるため、しっかりと対応策を考える必要がある」――
こういった場合に用意されているような、ありきたりの発言となっている。「外国の様々な文化に対して敬意を払い理解を進めていくことが大事だ」と当たり前のことを当たり前のように言ってはいるが、日本人の多くが単一民族論・単一文化論に侵されていて、このことを背景とした、その延長線上にある日本人の多様性の排除傾向が誘発した温泉側の入墨反社会的世界単一文化論でもあり、単一民族論・単一文化論から脱することを前提としなければ、容易には解決できない外国の様々な文化に対する敬意と理解ということになる。
菅義官房長官にはその認識がないから、ありきたりの発言で済ますことができる。
日本国内に限っても律令社会以前から中国・朝鮮半島からヒト・モノ、文化・制度を受け入れて日本という国を成り立たせてきたのだから、単一民族・単一文化であろうはずはない上にグローバル社会の一員となった以上、多民族・多文化の多様な世界を日々刻々と生きなければならないはずだが、今更ながらに「外国の様々な文化に対して敬意を払い理解を進めていくことが大事だ」などと言っている。
日本の政治家の情けない姿でもある。
――アイヌは「民族共生」はその施設内にとどまりかねないハコモノ建設よりも民族固有の領土として北方四島返還を求めよ――
9月11日午前、菅官房長官を座長とする政府の「アイヌ政策推進会議」を、北海道アイヌ協会関係者や高橋北海道知事らの出席のもと札幌市の北海道庁で初めて開催、北海道白老町に建設予定のアイヌ民族に関する博物館や公園について意見を交わしたと次の記事が伝えているが、その前に、インターネットで調べた「政府アイヌ政策推進会議」設置経緯を、《アイヌ民族と人権 ~法制度と行政の対応を中心に~》(久禮義一)という記事から引用してみる。
〈1.はじめに
日本政府は国際社会からのアイヌ民族を先住民族と認めるべきであるという考えに消極的であった。「侵略者が来る以前の民族の後継者。不法に奪われた土地を取り戻し、自らの社会制度や文化、言語を将来の世代に伝えようとしている人々」と先住民族を定義し、アイヌ民族が、それに該当するとなると、先住民族は、当然「先住権」をもち、「先住権」は民族や文化の独自性を維持、発展させること、言語を発展・使用すること、伝統的に専有・利用してきた土地や資源を承認すること、自治を保障することなどを、先住者(アイヌ民族)の集団に認める権利を政府が保障することになるからである。
政府のそのような態度に国会は2007年9月、国連総会で日本政府が、「先住民族の権利宣言」条約に調印したこと、また、2008年6月の北海道洞爺湖サミットの開催で、同地域には道内のアイヌ民族の約3割が住み、今サミットの主要なテーマ「環境」「自然」を敬い、感謝し、共生を実践してきたアイヌの人々の名誉と尊厳を回復する絶好の機会として、「アイヌ民族を先住民族とすることを求める決議」を(2008年6月)衆参両院で採択した。
その主たる内容は我が国が近代化する過程において、多数のアイヌの人々が、法的には等しく国民でありながら差別され、貧窮を余儀なくされたという歴史的事実を、私たちは厳粛に受け止めなければならない。
政府はこれを機に次の施策を早急に講ずるべきである。
(1)政府は、「先住民族の権利に関する国際連合宣言」を踏まえ、アイヌの人々を日本列島北部周辺、とりわけ北海道に先住し、独自の言語、宗教や文化の独自性を有する先住民族として認めること。
(2)政府は「先住民族の権利に関する国際連合宣言」が採択されたことを機に、同宣言における関連条項を参照しつつ、高いレベルで有識者の意見を聴きながら、これまでのアイヌ政策を更に推進し、総合的な施策の確立に取り組むこと。
この決議に対して政府は国会決議を尊重し、官邸に、有識者の意見を伺う「有識者懇談会」を設置し、アイヌの人々の話を具体的に伺いつつ、我が国の実情を踏まえながら、検討を進めて参る。という官房長官談話を発表した
アイヌの人々はいまも厳しい差別に直面している。〉――
「有識者懇談会」の正式名は「アイヌ政策のあり方に関する有識者懇談会」で、平成20年(2008年)7月設置。
この報告を受けて、翌年の平成21年(2009年)12月に「アイヌ政策推進会議」(座長:官房長官)を発足させている。
以上の経緯を見てみると、ごく最近の動きであって、しかも初期的には国際社会からの圧力を受けた受動的動きであって、主体的・自発的なアイヌという先住民族問題への関わりではなかったことが分かる。
当然、初期的な受動的動きを如何に排し、主体的・自発的な関与へと転換し得るかが重要となる。
《アイヌ関連施設「五輪前に完成」》(NHK NEWS WEB/2013年9月11日 11時54分)
菅官房長官「2020年に日本でオリンピックが開かれることが決定した。アイヌ民族との共生を象徴するための空間は、7月24日からオリンピックが始まるので、その前に完成させたい。
海外の皆さんに、日本がアイヌという先住民をしっかり守っている姿を見てもらえるいい機会になる。国際理解が進むことも極めて大事だ」――
「アイヌ民族との共生を象徴するための空間」は、「アイヌ政策推進会議」2009年12月発足の翌年2010年3月設置の作業部会名である。そこで練り上げた政策が公園付きのアイヌ民族博物館なるハコモノ建設であって、そのハコモノに「アイヌ民族との共生を象徴」させるということなのだろう。
だがである、日本の社会の中でこそ、あるいは一般的な社会的人間関係の中でこそ実現させなければならない日本人とアイヌ民族との共生であって、実現させないままにハコモノを造って、そのハコモノに「アイヌ民族との共生を象徴」させたとしても、日本人の中に巣食っているアイヌ差別の解消に直接つながっていくと言うのだろうか。
ハコモノの中だけにとどまりかねない「アイヌ民族との共生」の疑いが限りなく濃い。当然、差別問題の主体的・自発的な関与への転換とはなり難い。
また、ハコモノ建設を以って、「海外の皆さんに、日本がアイヌという先住民をしっかり守っている姿を見てもらえるいい機会になる」と言っているのだから、日本の社会の中や一般的な社会的人間関係の中でこそ実現させなければならない日本人とアイヌ民族との共生という意識はなく、オリンピック開催に合わせた日本という国の宣伝以外の何ものでもないようだ。
この程度の男が政府の官房長官を務め、「アイヌ民族との共生」を図る「アイヌ政策推進会議」の座長を仰せつかっている倒錯は如何ともし難い。
2009年9月20日当ブログ記事―― 《北方四島返還の新しいアプローチ/先住アイヌ民族と現住ロシア人との共同独立国家とする案 - 『ニッポン情報解読』by手代木恕之》に、北方4島をアイヌ固有の領土としてアイヌに帰属させ、現住ロシア人との共同独立国家とすべきといったことを書いたが、ハコモノ建設で大きな満足を得るよりも、より積極的に北方四島の返還をロシアと日本に対してアイヌに求め、日本及び日本人に対して対等者の地位を獲得すべきではないだろうか。
日本国憲法は「第1章天皇」、「第3条 天皇の国事行為に対する責任」で、「天皇の国事に関するすべての行為には、内閣の助言と承認を必要とし、内閣が、その責任を負ふ」と規定し、「第4条 天皇の機能」で、「天皇は、この憲法の定める国事に関する行為のみを行ひ、国政に関する権能を有しない」と規定している。
この二つの規定自体によって、既に天皇を形式的存在化させている。天皇は国政に関する権能を持たず、国事行為に関してのみ内閣の承認と助言と責任で動き、自身は責任を持たない存在だとしているのだから、形式的存在以外の何ものでもないことになる。
天皇は「国政に関する権能を有しない」にも関わらず、戦前の戦争や歴史認識に関して日本国を代表する形で外国に対して日本の立場を述べる国政に関わる「天皇のお言葉」を情報発信してきた。
このことが許されているのは「天皇のお言葉」発信が天皇自身のお言葉ではなく、「天皇の国事に関するすべての行為には、内閣の助言と承認を必要とし、内閣が、その責任を負ふ」との規定を換骨奪胎して時の内閣の助言という規定を超えて内閣自身の作成にかかり、内閣自身の承認を得て発信という構造を取っていることから、内閣による「国政で」であって、天皇自身の「国政」とは見做してはいないからであろう。
要するに「天皇のお言葉」作成の主役は内閣であって、天皇は日本国代表の形式を取りながら、内閣作成の「お言葉」をアナウンスする役目を担っているに過ぎない。これを以て、天皇の政治的利用でも何でもない国事行為としている。
当然、内閣の実質性に対して天皇は形式的存在であることを物語ることになる。
この実態を知らないと、李明博韓国大統領のように勘違いすることになる。2012年8月10日竹島(韓国名・独島=トクト)訪問後の日本の植民地支配からの韓国独立記念日の8月15日の前日8月14日、忠清北道(チュンチョンブクト)の大学で天皇の訪韓に関して次のように発言している。
李明博韓国大統領「私は、日本には(国賓としては)行っていない。シャトル外交はするが。日本の国会で私の思うままにしたい話をさせてくれるなら、(話を)しよう。(天皇も)韓国を訪問したいならば、独立運動をして亡くなられた方々のもとを訪ね、心から謝罪すればいい。何か月も悩んで『痛惜の念』などという言葉一つを見つけて来るくらいなら、来る必要はない」>(YOMIURI ONLINE)
天皇が日本国を代表して韓国に対する植民地支配を心から謝罪したいと思っても、「お言葉」に表れている謝罪の言葉は内閣作成による謝罪であって、日本国代表も形式に過ぎないことになって、聞く方の国としたら、心からの謝罪は望みようがなく、結局のところ、「痛惜の念」といった、何度も使われて形式化した堅苦しい言葉を聞くことになり、「何か月も悩んで『痛惜の念』などという言葉一つを見つけて来るくらいなら、来る必要はない」といった勘違いを犯すことになる。
天皇が持つ形式的存在性は当然、他の皇族にも反映されることになる。このことは高円宮妃久子さまに関して言うと、各種スポーツ団体、その他の名誉総裁、あるいは名誉副総裁という形で現れている。
「Wikipedia」によると、以下の名誉総裁を引き受けている。
日本赤十字社名誉副総裁
日本水難救済会名誉総裁
日本海洋少年団連盟名誉総裁
日本サッカー協会名誉総裁
日本ホッケー協会名誉総裁
日本フェンシング協会名誉総裁
いけばなインターナショナル名誉総裁
他多数
「他多数」と書いてあるから、驚きである。
異なる種目や異なる分野の団体の名誉職を一手に引き受けていること自体が種目ごと、分野ごとに専門的ではなく、既に役割の形式性を表していることになる。
実質的な「総裁」であったなら、人事や文科省の外郭団体を通した助成金の交渉、あるいは国のスポーツ政策等に関わらない保証はなく、当然、政治行為に発展して、国政に関係しないとも限らなくなる。
要するに名誉総裁や名誉副総裁等に皇族を据えるということはその名前だけを求めて、役割に関しては団体の実質的統治者としてではなく、形式性を求めていることになる。
役割が形式的であっても、皇族側からしたら、天皇や皇族が持つ元々からの形式的存在性にマッチする形で抵抗もなく受け入れられている側面も有するはずだ。
でなければ、「他多数」と書かれる程にたくさんの名誉総裁、名誉副総裁を一手に引き受けることはできない。
下村博文が高円宮妃久子さまが9月7日にブエノスアイレスで開かれたIOC総会で行ったIOCによる東日本大震災の復興支援に感謝するスピーチの出来栄えを褒め、「数多くのスポーツ団体の名誉総裁を務められて、スポーツ界との関わりも深い」とか、「スポーツに造詣が深い」とか発言していたのをテレビで放送していたが、暗にオリンピックというスポーツの祭典に関わる場でスピーチするのは皇室の政治利用でも何でもないかのような態度を取っていたが、高円宮妃久子さま自身が作ったスピーチであったとしても、またスピーチの内容がいくら素晴らしく、感動的であったとしても、皇族としての役割の形式性とスポーツ団体に於ける役割の形式性から発した、言葉によってつくり出した素晴らしさ、感動であって、そのことへの視点を欠いている。
このことは地球温暖化の環境問題やマラリヤ等の難病問題、アフリカその他の地域の貧困問題、さらにはイギリスのチャールズ皇太子のように反中国の立場からチベット問題に深く関わって政治的発言を繰返す欧州の王室に於ける実質的な政治的活動との違いに現れている。
欧州の王室の実質性に対して日本の皇室の形式性というふうに対置させることができる。
当然、社会的・国際的諸問題に関わっている欧州の王族の発するスピーチと実質性に於いて違いが出てくることになる。
日本の皇室が形式性を役割としているからこそ、そこに政治権力者によって皇室の政治的利用が入り込みやすくなる。
皇族を名誉総裁に据えること自体が、皇族というブランドによって何らかの利益を得ようとする皇室の政治的利用を意味するのかもしれない。
例えば高円宮妃久子さまは日本サッカー協会名誉総裁を務めているが、そういった形式性に価値を見い出すのではなく、日本のサッカーの技術向上という実質性にこそ、価値を置くべきだろう。
後者を成し遂げることができなければ、前者は意味を失う。大した仕事ができないにも関わらず、名刺だけ立派なものを作るようなものである。
東電福島第1原発事故を巡って業務上過失致死傷などの罪で告訴・告発された菅無能元首相を始め東電旧経営陣、班目原子力安全委員会委員長等が不起訴となった。
政府の原発事故危機管理対応の面から菅無能不起訴の公平性を考えてみる。
《原発事故の責任問わず 菅元首相ら全員不起訴》(NHK NEWS WEB/2013年9月9日 13時53分)
〈検察は福島第一原発事故について、福島県の住民グループなどの告訴・告発を受け、刑事責任を問えるかどうか1年にわたって捜査を続けてき〉たと言う。
東電の問題で、菅無能には関係しないが、事前の津波対策不備に関して。
検察判断「専門家の間でも今回の規模の地震や津波は全く想定されておらず、具体的に津波の発生を予測するのは困難だった。東京電力は平成20年に高さ15メートルを超える津波の試算もしていたが、巨大津波の発生は1万年から10万年に1回程度と考えていて、直ちに津波の対策工事を実施しなかったことが社会的に許されない対応とまでは言えない」――
東日本大震災発生2011年3月11日14時46分発生翌日3月12日福島第1原発視察が現地作業を遅らせたとの指摘に対して。
検察判断「作業の遅れは準備に時間がかかったためで、視察は何ら影響を与えなかった」――
果たしてそうだろうか。
不起訴を受けて、告訴・告発したグループは納得できないとして、検察審査会に申し立てる方針だという。
当時の海江田経産相(当時)の東電に対するベント指示に始まる一連の動きを時系列で見てみる。
3月12日午前1時30分頃――海江田経産省、東電に対してベント指示。
3月12日午前6時14分――菅無能、官邸からヘリで視察に出発
3月12日午前6時50分――海江田経産相、東電に対してベント命令
3月12日午前7時11分。――菅無能、福島第一原発に到着
3月12日午前8時04分――菅無能、第一原発を離れる
3月12日午前9時04分――1号機でベント準備着手
3月12日午前10時17分――1号機でベント開始
3月12日午前10時47分――菅仮免、首相官邸に戻る
海江田経産相(当時)の東電に対するベント指示は、3月12日午前1時30分頃。
だが、東電は海江田経産相の指示に対して直ちに実行しなかったばかりか、経産相のその後の再三の開始要請にも関わらず実行に移さなかった。2011年5月16日の衆院予算委員会。
海江田「なかなか私共が指示を出しましたけども、なかなか実行されなかったものですから、止むに止まれずに命令という形で出したということに――」
菅仮免「何度もお答えいたしております。つまり格納容器の圧力が高くなっていると。だからこそベントが必要だということで、格納容器が(圧力が)高くなっているということはそのまま放置すれば、格納容器が何らかのですね、ひび割れ等が、あー、起き得ることがあり得る。そういうことを含めて、なぜベントを早く行わなきゃ、いけないと言っているにも関わらず、現地でやってくれないのかという思いがありました」
海江田経産相はベント指示から約5時間20分後の3月12日午前6時50分に法的拘束力のあるベント命令に切り替えている。
と言うことは、東電は直ちにベント指示に従わなかった理由を述べていないことになる。理由を述べて、それが首相官邸に対して納得させ得る正当な理由であったなら、止むを得ないこととして政府は待たざるを得なかったはずだ。
海江田経産相がベント指示からベント命令に切り替える間、菅無能が第1原発視察のために3月12日午前6時14分、官邸からヘリで出発している。
そして菅無能が視察を終えて、第1原発を3月12日午前8時04分にヘリで離れてから、きっかり1時間後の3月12日午前9時04分に1号機でベント準備着手にかかっている。
そしてベント準備着手から3月12日午前10時17分のベント開始まで1時間3分も時間がかかった理由を東電は放射能濃度の高さと自動開閉が故障していて手動開閉に切り替えたものの思うようにいかなかったからとしているが、海江田経産相のベント指示の3月12日午前1時30分頃時点で放射能濃度が高くて防護服を着用していても近づくことができなかったということなら、なぜその理由を伝えなかったのだろうか。
だが、理由を伝えなかった。
ベントを行うと、原子炉から放射能が放出される。現地視察にきた一国の総理に放射能を被曝させるわけにはいかないから、東電はベント控えたと疑われているが、「政府事故調」の報告では、〈この現地視察の実施は、菅総理が官邸を出発する直前の同日6時頃に最終決定された。〉となっていて、東電に視察を伝えたのはほぼその時点となるが、海江田経産相のベント指示の3月12日午前1時30分頃からの4時間30分の間は東電は首相視察を知らないことになり、視察がベントを控えた理由とはならないことになる。
但し、視察最終決定が出発直前の同日6時頃が事実かどうかである。と言うのも、菅無能は色々とウソをついているからである。
色々なウソについては後で述べるが、「政府事故調」はベントについての東電側対応を、〈同日9時43分頃、1号機及び2号機の当直長は、運転管理部長の指示を受け、1/2号中央制御室において、1号機のS/Cベントラインを構成する作業を開始した。その後、同日10時21分頃1号機について、格納容器SGTS側ベント弁の駆動源である空気を送るための電磁弁が、電源喪失により開操作できない状況であることが判明した。そこで、当直長は、同日10時32 分頃、S/C ベントラインの構成作業を中断し、第二発電所対策本部復旧班に対し、この電磁弁の電源復旧を依頼した。〉云々と技術的なことのみの報告となっていて、官邸側の対応は、〈1号機及び2号機におけるベントが実施できていないことが判明したため、12日5時半頃、官邸地下中2階において、平岡保安院次長、班目委員長らが同席する中、菅総理、枝野官房長官以下関係閣僚らにより、避難範囲に関する再検討が行われ、その場において、管理された状況下でベントを実施するのであれば避難範囲を拡大する必要はないが、いまだベントが実施できていないこと、その場合でもEPZの半径10kmに避難範囲を拡大すれば相当な事態にも対応できるとの意見が出されたことを踏まえ、避難範囲を半径10kmに拡大することが決められた。〉とベントが実施された場合の避難範囲の確認にとどまっているのみで、ベント指示に直ちに従わなかった理由、ベント準備着手が菅無能の視察終了後となった理由の追及はない。
そして、「政府事故調」は。〈この現地視察は、事故もなく無事終了し、また、結果的には福島第一原発におけるベント実施への影響もなかったと認められる。〉と結論づけている。
2012年5月28日の「菅無能国会事故調参考人証言」では、現場視察時に吉田所長に向かってベント実施を催促している。
菅無能「私の方から、ベントについて、我々としたら、もう了解をしているのでベントを行わないと圧力が上がって、格納容器が破壊されると、そういう危険があると聞いているので、何とか早くベントをやって欲しいと申し上げましたら、『分かりました』と。『決死隊をつくってでもやります』と、そういう返事をいただきました。
それで私も、この所長なら、しっかりやってくれるという印象を持ちまして、確か免震棟におりましたのは40分程度でありますが、それでそこを後にしました」――
「決死隊をつくってでもやります」という言葉は放射能濃度が高くて近づくことができない状況を予想させるが、だったら、なぜその理由を伝えなかったのだろうか。
菅無能は色々とウソをついていることについてだが、ウソは菅無能の証言の信用のなさを証明することになる。
2012年5月28日の菅無能に対する「国会事故調」参考人聴取。
桜井委員「総理になられてから平成22年に総合防災訓練というものが行われていると思いますが、それに総理は何らかの関わりを持っておられたのでしょうか」
菅無能「国会でもそのことを聞かれたことがありまして、そういう機会があったということは覚えておりますけども、深くその時に特に原子力の本部長としての権限などを、その時に深く認識をしたかと言えば、必ずしもそういう形には私自身、残念ながら、なっておりませんでした」――
菅無能は平成22年の総合防災訓練を「国会でもそのことを聞かれたことがありまして、そういう機会があったということは覚えておりますけども」と言っている。
2011年)4月18日の参院予算委員会。
脇雅史自民党議員「えー、去年の、10月20日(はつか)でございますが、(平成)22年の10月20日(はつか)、21日非常に大事な催しがあったわけですが、そのことはご記憶ですか、総理」
菅仮免「ま、突然のご質問ですので、えー、何を指されているのか、あー、分かりません」
脇雅史議員「実はこの日はですね、えー、原子力総合防災訓練、というものをやってらっしゃるんですね。
で、これは本部長として菅直人内閣総理大臣、私がいただいたものには、紙には書いてあります。20日(はつか)、21日と総合防災訓練をされたと。そのときに、どういうテーマで訓練されたか、覚えてらっしゃいますか」
菅仮免「詳しい、イ、内容については記憶しておりませんが、やはりこうした、あー…、色んな、あー、地震等を想定した、あー……、ことではなかったかと思っております」
脇雅史議員 「また呆れちゃうんですけどね(失笑)、これ大変なことですよ。私は日本の国はたいしたもんだと思うんですが、ちゃーんと訓練してるんですね。
その訓練はですね、事故の想定という項目があるんですが、原子炉給水系の故障により、原子炉水位が低下し、原子炉が自動停止、その後の非常用炉心冷却装置と複数の設備故障により、万一放射性物資が放出された場合、その影響が発電所周辺地域に及ぶ恐れがある、と想定。
まさに今回と同じことを想定しているんじゃないですか。そのことについてなんにも記憶はないんですか。何のための訓練だったんですか。あなたが本部長として、参加されてるんですよ。本当の覚えていない?どうぞ」
菅仮免「シー、少なくともですね、あのー、おー、おー…、私にとって、えー、そうした原子力の、おー、いろいろな、あー、事故は、過去に於いても、オ、多くありましたし、日本では、あー、臨界事故、というものが最も大きかったわけでありますから、えー、そういった意味で、えー、一般的な認識を持っておりましたし、えー、そういう想定に、立っての、おー……そうした、あー、訓練が、行われたということは、ア、ご指摘のとおりだと思っております」――
しどろもどろで過去の原子力の事故や臨界事故等、関係のないことを持ち出して、記憶していない原子力防災訓練を記憶しているかのようにウソをつき、誤魔化そうとしている。
だが、「国会事故調」の聴取では、記憶しているかのように証言している。二重のウソである。
記憶していなかったからこそ、静岡県の浜岡原子力発電所第3号機が原子炉給水系の故障により原子炉の冷却機能が喪失、放射性物質が外部に放出される事態を想定して行われた2010年10月20、21日の原子力総合防災訓練でSPEEDIを使って出源情報、気象条件および地形データを基に周辺環境に放出される放射性物質の大気中濃度や被曝線量などを予測する模擬訓練を行いながら、福島原発事故後に文科省の放出放射性物質の仮定値を用いたSPEEDIを使った予測の発表が遅れると、SPEEDIの存在を知らなかったと言って、発表遅れの責任を逃れている。
少なくとも発表遅れが住民の避難に悪影響を与えて、最小限に留めるべき放射能の影響をいたずらに与えているのである。
菅仮免「所管する文部科学省などから説明がなく、事故から数日たってもその存在すら知らなかった」(民間事故調参考人証言/NHK NEWS WEB記事)
2010年10月20、21日の原子力総合防災訓練ではテレビ会議システムを利用してオフサイトセンターを中継地点として総理官邸、浜岡原発、中部電力本店等を結んで情報の共有を行っている。
だが、菅無能は首相官邸のテレビ会議システムを一度も利用していないし、このシステムについてもウソをついている。
「政府事故調」
〈ERC(経済産業省緊急時対応センター)の中に、東京電力本店やオフサイトセンターが東京電力のテレビ会議システムを通じて現場の情報を得ていることを把握している者はほとんどおらず、東京電力のテレビ会議システムをERCにも設置するということに思いが至らなかった。また、情報収集のために、保安院職員を東京電力本店へ派遣するといった積極的な行動も起こさなかった。
官邸5階のメンバーの中で、東京電力本店が福島第一原発とテレビ会議システムでつながっていることを知っていた者はおらず、統合本部は同システムを活用するとの意図で提案されたものではなかった。これらのメンバーは、3月15 日早朝、東京電力本店に出向いて初めてテレビ会議システムの存在を知ったのであり、統合本部の設置は、結果的に予想以上の情報格差の改善効果をもたらしたと認められる。〉――
情報管理の不備・怠慢を指摘している。この不備・怠慢は最終的には原子力災害対策本部会議本部長の菅無能が負わなければならない不備・怠慢であろう。
要するに菅無能は危機管理対応を組織的に機能させることができなかった。
菅無能は「政府事故調」が〈東京電力本店に出向いて初めてテレビ会議システムの存在を知った〉としていることについて、「国会事故調」で次のように証言している。
野村委員「総理は(2011年3月)15日の朝に東電本店に行かれて、それで多くの方々の証言では、まあ、叱責をされたということなんですけども、このご様子が今ご発言された相手の福島原発の現場におられた作業員の方々にも届いていたことは、そのときお考えになってご発言されていたんでしょうか」
菅仮免「(東電本店のその部屋に)入ってみると、大きなテレビ会議のスクリーンが各サイトとつながっていて、24時間、例えば第2サイトとの状況もが分かるようになっていました。
ですから、あとになって、私があそこで話したことはそこにおられた200名余りの皆さんだけではなくて、各サイトで聞かれた方もあったんだろうと。私はそれを公開するとかしないとかの話がありましたけどけれども、私自身は公開して頂いても全く構わないというか、私は決して止めるわけではありません」
(中略)
菅仮免「で、私は本店に入りましたので、そこには上層部の幹部の人達が基本的にはおられたわけです。もちろん今仰ったように現場のところにもテレビ電話でつながっていたかもしれませんが、私自身はそのことは後で気が・・・・、あの、テレビは分かりましたけども、そこにおられる東電の幹部の皆さんに、撤退ということをもし考えてもいられたとしてもですね、それは考え直して、何としても命がけで頑張ってもらいたいと」――
「政府事故調」が〈東京電力本店に出向いて初めてテレビ会議システムの存在を知った〉としていながら、「(東電本店のその部屋に)入ってみると、大きなテレビ会議のスクリーンが各サイトとつながっていて、24時間、例えば第2サイトとの状況もが分かるようになっていました」と、さもテレビ会議システムの存在を承知していたかのように言っている。
でありながら、「あとになって、私があそこで話したことはそこにおられた200名余りの皆さんだけではなくて、各サイトで聞かれた方もあったんだろうと」と、本店と各サイト現場とのリアルタイムの情報共有を、「あとになって」知ったかのように矛盾した発言となっている。
「あとになって」知ったということは、「現場のところにもテレビ電話でつながっていたかもしれませんが、私自身はそのことは後で気が・・・・」という言葉が証明しているが、語尾を飲み込んだのは「(東電本店のその部屋に)入ってみると、大きなテレビ会議のスクリーンが各サイトとつながっていて、24時間、例えば第2サイトとの状況もが分かるようになっていました」がウソの証言となることに気づいたからだろう。
首相官邸5階に据え付けてあるのと同じ大型のTVモニターは目に入ったかもしれないが、それが各サイトとリアルタイムで情報共有を行うテレビ会議システムだとは気づかなかった。だから、撤退なんて飛んでもないことだと怒鳴ることだけに目が行っていたから、部屋に入る、テレビ会議システムで東電本店が各サイトとリアルタイムで情報共有しているなどと気づかずにいきなり怒鳴り出したといったところが真相ではないのか。
いずれにしても2010年10月20、21日の原子力総合防災訓練でテレビ会議システムとSPEEDIを利用した訓練を行っていながら、それらの存在だけではなく、訓練自体を忘れていて、実際の原発事故に応用できなかったことと、色々とウソをついて責任回避を謀っているということは危機管理対応を首相として機能させることができなかったことの自分自身からの証明でしかなく、当然、それらの不始末が原発事故処理に影響を与えもしない、事故拡大ももたらさなかったとは断言できないはずだ。
不起訴処分を受けて菅無能はコメントを発表している。
菅無能コメント、「私は首相として、事故の拡大を防止し、住民の被害軽減のために陣頭指揮を執ってきた。不起訴処分はこの事実を踏まえて下されたもので、当然の結果と受け止めている。
首相が行政府の一員である検察官から取り調べや事情聴取を受けることは相当でない。この観点から、私は検察官と会うことはしなかった」(MSN産経)
このコメントを額面通りに受け止めることができるかどうかである。
菅無能は検察の事情聴取の要請を断り、意見書の提出で済ませている。ウソを平気でつく菅の意見書がウソなしの保証はない。
意見書提出の理由を、「首相が行政府の一員である検察官から取り調べや事情聴取を受けることは相当でない(ふさわしくない)」からだとしているが、検察の聴取を通した国民に対する説明である。それを一方的に自分が言いたいことだけを書いた意見書で済ませる。あるいは自分に都合のいいことだけを書いた意見書で済ます。心得違いも甚だしく、この心得違いを以てしても、色々とウソをついていることと合わせて、危機管理対応能力やリーダーシップを発揮できたかどうか疑わしくなる。
当然、そこに拡大させずに済んだ事故を拡大させる要素とならなかった危機管理対応能力やリーダーシップだったとは決して断言できない。裁判に出廷させて、証言台に立たせ、意見書では済ますことができない証言を求めるべきで、不起訴は不公平そのものであろう。