テロ等準備罪:個人として行動する一般人は○ 反政府活動等の集団の一員として行動する一般人は監視対象

2017-06-22 11:17:27 | 政治

 「テロ等準備罪」について今までブログに書いてきたことと同じ趣旨、ほぼ同じ内容となり、過去に書いたことを再引用する個所もあるが、題名を変えることで、「テロ等準備罪」の本質がより理解しやすくなるのではないかと思って、改めて書いてみることにした。

 「テロ等準備罪」は先ず組織的犯罪集団であること、その集団が特定の犯罪計画と合意を経て犯罪実行の準備行為を行った場合、処罰対象とする。

 いわば犯罪実行前の逮捕を可能とする処罰法である。
 
 この組織的犯罪集団、犯罪計画と合意、準備行為を「テロ等準備罪」の3構成要件としている。

 また、組織的犯罪集団とは「一定期間に存続する3人以上の者からなる系統的集団」としている。

 組織的犯罪集団を対象にしているから、政府は一般人は処罰対象になることはないと説明している。

 政府はまた、捜査機関が目をつけた組織的犯罪集団を捜査対象と説明している。監視対象とは言ってない。だが、その集団が組織的犯罪集団かどうかを特定するためにはそのメンバーの誰かに接触する、あるいは会合場所のドアをドンドンと叩いて尋ねたりしたら、犯罪の計画を中止してしまうから、盗聴・盗撮・尾行等の監視以外に内部を覗く方法はないはずだ。

 2017年6月11日放送のNHK「日曜討論」でも政府側出席者として前文科相、安倍晋三の金魚のフン、下村博文と公明党の斉藤鉄夫が出演して、一般人は捜査対象とはなり得ないということを尤もらしい顔をして力説していた。

 ここでは下村博文の一般人無関係説を取り上げる。

 玉木雄一郎「普通の組織であっても、途中から一変した場合、(テロ等準備罪の処罰)対象になると。一変したかどうか調べないと分かりませんから、当然一般人も含めて捜査・調査の対象にするということです」

 下村博文「先ずこれは一般の人は関係ないですね。なぜかと言うと、構成要員として、この構成要員、組織的犯罪集団、テロ組織とか暴力団とか、薬物密売組織ですね、このところに対象があって、なおかつ計画をし、それから実行準備行為があるということが対象なんですね。

 その中に組織に入っていないけども、組織の周辺の人たちが、つまり一般の人達が、関わることがあるのではないかという危惧で話がありましたが、関わるか関わらないかっていうのは、実行準備があるかないか。

 一般の人にとってそもそも実行準備行為はありませんから、それは実行準備行為に入ればですね、それは対象に入ることはありますが、それは一般の人ではないです。

 そういう意味で厳密に三っつ(3構成要件)のきちっとした枠の中で決められているわけですから、そもそも一般の人は対象になることをあり得ないわけです」

     ・・・・・・・・・

 小池晃「(組織的犯罪集団の)周辺の人かどうかを監視(判断)するためには一般人が対象になる。それから(テロ集団が)人権団体等を隠れ蓑にしている場合、日常的に人権団体を監視しなければ、隠れ蓑かどうかは分からないわけですよ」

    ・・・・・・・・・

 維新馬場伸幸「一般人が(テロ等準備罪の)3要素を構成するわけはない」

    ・・・・・・・・・

 下村博文「先ずこれは一般の人は関係ないですね。なぜかと言うと、構成要員として、この構成要員、組織的犯罪集団、テロ組織とか暴力団とか、薬物密売組織ですね、このところに対象があって、なおかつ計画をし、それから実行準備行為があるということが対象なんですね。

 その中に組織に入っていないけども、組織の周辺の人たちが、つまり一般の人達が、関わることがあるのではないかという危惧で話がありましたが、関わるか関わらないかっていうのは、実行準備があるかないか。

 一般の人にとってそもそも実行準備行為はありませんから、それは実行準備行為に入ればですね、それは対象に入ることはありますが、それは一般の人ではないです。

 そういう意味で厳密に三っつのきちっとした枠の中で決められているわけですから、そもそも一般の人は対象になることをあり得ないわけです」

    ・・・・・・・・・

 下村博文「今回の法案と言うのは実行準備段階で逮捕して、そして犯罪を防止することにあるわけですね。ですから、犯罪を犯したあとの話なんです。

 ですから先程のような話(監視されるという発言)がありましたが、それはテロ等準備罪の中で整理していますから、そして組織的犯罪集団、あるいはそこに関わっている、そういう人しかそもそも対象になりませんから、国民全てが監視される何てことはあり得ない。 

 真っ当な生活をしていて、重大な犯罪を計画するとか、準備行為をするなど、あり得ない話ですから」

 下村はテロ組織とか暴力団とか、薬物密売組織等の組織的犯罪集団との関係に於いて一般人を解釈している。そのような組織的犯罪集団に所属していたなら一般人であるはずはないとする性悪説を前提にしている。

 だから、「真っ当な生活をしていて、重大な犯罪を計画するとか、準備行為をするなど、あり得ない話ですから」ということにすることができる。

 性悪説を前提にすることができるのは相手がテロ組織とか暴力団とか、薬物密売組織など、既に組織的犯罪集団だと断定できるからである。下村はこのことに気づいていない。

 暴力団の場合は組織的犯罪集団の看板を掲げて何らかの犯罪で組織を成り立たせている。薬物密売組織の場合は暴力団が兼業しているか、兼業していなくても、薬物密売に暴力団の協力を得なければ困難であるゆえに、組織的犯罪集団の看板をほぼ掲げていると見ていいから、性悪説を前提に容易に監視対象とすることができる。

 但しテロ組織は「テロ組織でございます」と看板を掲げてはいない。テロ組織の誰が「テロ組織でございます」の看板を掲げるだろうか。

 掲げずに一般の集団、もしくは一般の団体を装うはずである。当然、その集団や団体に出入りする一般人は政府が言う捜査対象、捜査するにはそれしかない監視対象とする以外に、その集団や団体が一般的な団体であるか、テロ組織であるかの判別はつかない。

 テロ組織がテロを実行しない前に、いわばテロの計画を立て、メンバーが犯行の合意をし武器等を準備した段階で取り締まるためには一般の集団、もしくは団体を装って「3人以上の者からなる集団」を形成した時点から監視対象としなければ、それが組織的犯罪集団か否かは特定できない。

 テロ組織の場合は“一般の団体、もしくは集団を装う”ことになるが、最初から最後まで一般の集団・団体である場合は装うも何もなく、一般の集団・団体として行動する。

 前者後者いずれの集団・団体であるかはいずれの集団・団体も監視対象(政府が言う捜査対象)としなければならない。監視対象とせずにどちらなのかを区別することができるとしたら、イギリスでもフランスでも、テロは起きはしない。
 
 要するに「一定期間に存続する3人以上の者からなる系統的集団」の多くを監視対象としなければ、その中からテロ組織を炙り出すことはできない。

 このことを要約すると、当記事の題名通りとなる。個人として行動している場合は監視対象とはならないが、何らかの集団や団体の一員となった一般人は監視対象となると言うことになる。

 監視対象となれば、プライバシーは裸にされる。テロ集団なら、それは許されるかもしれないが、最初から最後まで一般の集団や団体の一般人である場合、果たして許されるだろうか。

 安倍政権の戦前回帰の国家主義的体質を考えると、その団体が一般的な集団であったとしても、反政府活動を目的とした集団であった場合、特に要注意の監視対象となる可能性は否定できない。

 例え国会周辺等で繰り広げられる反政府活動に個人で参加したとしても、そのことを知り得ない捜査当局は「3人以上の者からなる集団」を形成しているかどうかを区別するために少なくとも暫くの間は尾行等の監視対象としなければ、区別することはできない。

 2017年4月21日の衆議院法務委員会で法務省刑事局長林眞琴と法務副大臣の東大法学部卒盛山正仁(63)が一般の団体に所属する一般人は監視対象となり得ると発言をしている。

 林眞琴「要すれば、共同の目的というものが犯罪の実行の目的であるということ、さらには、その中にそうした強固な組織性を擁している、こういった場合に初めて組織的犯罪集団と認められるわけでございまして、一般のサークル等でありますれば、まず、目的として、それが犯罪を実行するために結合しているのかどうかということが対象となると思いますし、さらに、実際にそのサークル等がその中に、団体の目的を実行するための組織というものを備えているのかどうか、そういった組織構造を持っているのかどうか、こういったことが問題になろうかと思います」

 一般のサークル(一般の団体)であっても、「犯罪を実行するために結合しているのかどうか」を問題にしなければならないと言っている。

 要するに監視対象として、組織的犯罪集団なのか一般の団体なのかを特定しなければならないとしている。

 「我々は一般の団体です。テロ集団ではありません」などといった看板を掲げたとしても却って疑われて、監視を強化されるのがオチだろう。

 盛山正仁「要は、何らかの情報その他が来て、ここが危ないんじゃないか、そういうふうな情報が捜査機関に入ったとします。そうすると、その段階で、その人たちが、あるいはそのグループが、本当に捜査をしないといけない、つまり刑事訴訟法上の手続をしないといけない、そういうことになるのかどうかを、まず情報収集を行うだろうということを私は申し上げたかったわけでございます。

 そして、情報収集をして、ある程度これは危ないなということになれば、それは刑事訴訟法上の捜査、令状をとっての捜査ということになるんでしょうか、そういうことになるというふうなつもりで私は先日お答えしたつもりでございます」

 盛山が「何らかの情報その他が来て、ここが危ないんじゃないか、そういうふうな情報が捜査機関に入ったとします」と言っていることは、団体の区別なしに監視することによって、「ここが危ないんじゃないか」と危険性の差別化が可能となると言うことを意味させている。

 ときには一般生活者の疑いの目がある意味での監視を誘って警察に通報し、警察が実質的な監視を開始するという場合もあるだろうが、それが全てテロ集団だと当たりが出るわけではないと分かっていても、監視という要件は外すことはできないことになる。

  このことについて盛山正仁が同じ法務委員会で答弁している。

 逢坂政治民進党議員「盛山副大臣、それでは、その一般の方々と言われる人々が捜査の対象になる、あるいは調査の対象になるでもいいでしょう、限られているということは、皆無ではないということでよろしいですね。うなずいて頂いて。皆無ではないと」

 盛山正仁「それは、何でもそうでございますけれども、対象にならないということにはなりません。ただ、性質として対象にならないかもしれませんが、ボリュームとしては大変限られたものになると私たちは考えているということでございます」

 ここで言っている「対象」とは政府側は捜査対象と言うだろうが、実質的には監視対象である。その数は「ボリュームとしては大変限られたものになる」、少ないと言っているが、数ある「3人以上の者からなる集団」を形成した団体の中からテロ集団等の組織的犯罪集団を炙り出すためには多くの団体を監視しなければ炙り出すことはできない。

 そしてその団体は特に反政府活動を専らとする団体が対象になる可能性が高いということである。

 2017年4月28日の衆議院法務委員会。

 盛山正仁「そこは午前中にも御答弁したかと思うんですけれども、何らかの嫌疑がなければ捜索はないわけですから、その段階で、やはり一般の人ではないんじゃないかなと我々は思います。

 つまり、組織に属さない、あるいは、何らかの嫌疑がかからないような行動をしている方あるいはそういうグループであれば、全く嫌疑がかからない真っ白な状態なわけですから、何らかあったその段階で、そういうグループあるいはそういう人たちは一般の方ではない。また、そういう方は、いつだったかも申し上げましたけれども、ボリュームとしては大変少ないものではないかと我々は考えております」

 「テロ等準備罪」はあくまでも組織的犯罪集団を対象としている。ゆえに個人ではなく、集団、あるいは団体を前提にし、そのような組織の犯罪を対象にして発言している。盛山正仁は組織的犯罪集団として何らかの嫌疑がかかった場合は「一般の方ではない」と言っているに過ぎない。

 確かに組織的犯罪集団だと特定できる段階に至ったときは、そのメンバーは「一般の方ではない」と言うことは可能だが、組織的犯罪集団だと特定できる段階に至るまでには多くの集団・団体の所属員を監視対象として組織的犯罪集団か否かの選別していかなければ、一般人であるか一般人でなくなるかの判別はつかない。

 要するに下村や公明党の斉藤鉄夫は国会の政府側答弁を無視して、あるいは合理的な解釈を施すことができないままに一般人は捜査対象(実質的には監視対象)にならないと言っているに過ぎない。

 安倍晋三のことだから、新安保法制やテロ等準備罪のときのように反政府活動が盛り上がったとき、その活動に圧力をかけるために「テロ等準備罪」を却って意識させた、誰の目にもつく監視を捜査当局に命じる可能性無きにしも非ずである。

 住いや会社の近くで相手に監視していますと分かる監視を行い、相手に尾行していますと分かる尾行を行い、相手を気味悪がらせて反政府活動から手を引かせる圧力方法である。

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