2017年6月15日の文科相松野博一の安倍晋三政治的関与疑惑加計学園関係文書の追加調査報告の記者会見で安倍晋三の腰巾着内閣官房副長官の萩生田光一が内閣府に対して獣医学部新設の応募を加計学園1校に絞るよう仕向けるメールと文書を公表した。
このメールと文書を民進党サイトの「福山哲郎議員配布資料」記事が紹介していたから、ちょいと拝借、横長方形の囲み線を入れた「文科省修正案」なる題の文書には、〈現在、獣医師系養成大学等のない地域において獣医学部の新設を可能とする〉云々の個所を、〈現在、広域的に獣医師系養成大学等の存在しない地域に限り獣医学部の新設を可能とする〉云々と、太字にして置いた文字が手書きで修正が加えられている。
メール文には、〈修正案(添付の手書き前の状態)について、日本語の観点の修正や、冒頭の「既存の~」については文科省の方で根拠を立証できないと、記載するのは難しいのではないか、と指摘あり。〉と記載してあるから、上記「文科省修正案」なる文書に関連して送信されたメールだということが分かる。
更にメール文には、「指示は藤原審議官曰く、官邸の萩生田副長官からあったようです」と書いてあるから「文科省修正案」の作者は萩生田光一の指示を伝え聞いた内閣府の職員ということになる。
内閣府から文科省に送信されたメールの日付は2016年11月1日となっている。8日後の2016年11月9日に国家戦略特区諮問会議が「広域的に獣医師系養成大学等の存在しない地域に限り獣医学部の新設を可能とするための関係制度の改正を直ちに行う」と決定したことを指すが、もしこの文書とメールが実存していたとなると、国家戦略特区諮問会議の決定ではなく、萩生田光一が先頭に立って文科省や農水省に根回しして原案を完成させ、国家戦略特区諮問会議が追認した加計学園獣医学部新設に向けた地域制限ということになる。
民進党の福山哲郎が6月16日の参院予算委でこのことを追及している。不必要なところを省略しながら、簡単に質疑応答を追ってみる。
福山哲郎「次のメールは11月日となっていて、(内閣府の)藤原審議官が文科省から打合せ依頼があって、添付PGFの文案を直すように指示がありました。『指示は藤原審議官曰く、官邸の萩生田副長官からあり』。次のページを見て頂くと、問題の京都産業大学が排除され、加計学園一本に絞られた。『広域的に』という文字がここに入っています。
これは内閣府から文科省への報告のメールです。藤原審議官、この文案に『広域的に』という手を加えてくれというのは萩生田副長官から指示をして、文科省にお願いをしたことがありますか」
藤原審議官「これは昨年の10月28日に獣医師養成系大学のない地域に於いてという原案を文科省に提示したのが10月28日でございます。31日に文科省から意見の提出があり、11月1日にはワーキンググループと文科省との折衝を行いました。
その際山本大臣が文科省意見で指摘された日本獣医師会等の理解を得る観点から対象地域をより限定するご判断をされまして、広域的に限るとという区域にするようにとのご指摘を受けまして、私が文案に手書きで修正を加えた次第であります。
こうした一連の情報は直属の部下である担当者にしか与えておりません。今回のメールの作成者・送信者は私の直接の部下ではございませんが、一切伝えないという状況でございます」
最後に直接の部下以外は情報は一切伝えないと言っていることは、直接外の部下が勝手にメールを作成して送信したことになる。だとしても、「広域的に獣医師系養成大学等の存在しない地域限定の獣医学部新設」という正式な提案なのか、正式な手続きを踏まない陰謀なのか、そういった形式は踏んだ内容のメールとなっている。
福山哲郎「萩生田副長官、内閣府のメールでは藤原審議官が萩生田副長官から指示が出て、これを修正しろと言われたとここに書かれていますが、萩生田副長官はこのように指示を出されたことはありますか」
萩生田光一「昨年11月9日の特区諮問会議で取り纏めた原案に私が修正の指示を出したことは一切ありません。昨日文科省が公表したメールにはですね、大変戸惑いを感じています。
今朝公表された内閣府の調査に於いても当該メールを発信した職員は本件(国家戦略特区)の担当ではなく、関係する文書の手書き申請の打合せにも参加していない方が、メールに記載があるコメントについても担当者から伝え聞いた曖昧な内容であって、事実関係を確認していないままメールを発信してしまったと、報告があったと承知をしております」
「関係する文書の手書き申請の打合せにも参加していない」担当者でない職員が「担当者から伝え聞いた曖昧な内容」を「事実関係を確認していないま」発信した文書やメールであったとしても、文書の手書きの修正箇所は2016年11月19日に国家戦略特区諮問会議決定の「広域的に獣医師系養成大学等の存在しない地域限定」という制限の変更に忠実に反映されている。
当然、打ち合わせに不参加で、直接の担当者ではないからと言って、あるいは「事実関係を確認していな」くても、「曖昧な内容」という批判は当たらない。
福山哲郎「と言うことは、担当者でない職員が曖昧なことを書いたということでいいんですか。と言うことは、間違っているということでいいんですか。間違っているということでいいんですね』
萩生田光一「今朝の内閣府の報告を私が伝え聞いたのを今私が加えただけで、私が修正を指示したことはありません」
福山哲郎「とすると、このメールは完全に真っ向対立します」
福山哲郎はメールは事実で萩生田がウソをついているか、逆に萩生田が事実を言っていて、文書やメールが事実でないか、確率としては諮問会議の決定とその決定に従った加計学園獣医学部新設認定が文書の修正を受けた個所の手順を踏んでいることを考えると、萩生田がウソをついていると可能性が高いと見るべきだが、そうは見ずに文科省の松野に「文科省に間違ったメールが来ていると言われてるんですが、文科大臣、どう見ます」と尋ねている。
松野はメールの作成自体は内閣府となっているから、「内閣府にご確認頂きたい」と巧みに逃げてしまう。そこで藤原審議官を捕まえて問い質す。
藤原審議官は、「メールの作成者は私の直接の部下ではない、私は萩生田副長官からの指示だと申し上げたことはない」と萩生田同様に巧みに逃げた。
福山哲郎「1枚先程の文書に戻って頂きますか。『平成30年4月開学を前提、大前提に逆算して最短のスケジュール』、いわゆる加計学園を30年4月に開学したいということですが、先程藤原審議官、この紙(文書)については紙は残っていない、よく分からないと言われていますが、実は前川前事務次官はこれによって今後のスケジュールが覆されたと言われております。
そこにはもう今治と書いてあるんですね。完全に今治を想定したスケジュールがあって、前川前事務次官は内閣府にこれを書かされたと今あっちこっちで証言されております。藤原さん、この最短のスケジュールを作成して頂きたいというのは文科省から言われました?」
藤原審議官に尋ねたが特区担当の山本幸三が答弁に立つ。
山本幸三「あのですね、こういうことは私が決めているのです。私に聞いて頂きたいと思います。この内閣府から文科省に出たメールでありますが、作った方がですね、うちの担当者じゃありません。
ただ文科省から出向してきた方でありまして、これはまあ、不適切なことでありますが、陰で隠れて本省(文科省)にご注進したというメールであります。そういう意味で文書を随時確認して、そいう中ですね、作成したものではものではありません。
平成30年4月ということについてはこれは明確に出したのは11月18日のパブリックコメント以降のことであります。それまで最大限早くとは常々言っておりますが、それまで決めたと言っていることはありません」
福山哲郎「ねえー、自らの職員に向かって『影に隠れて』、ねえー、安倍政権は何か問題が起こると、必ず役人のせいにする。役人に責任を押し付ける。本当に森友学園のときの財務省も気の毒だった。今回の文科省も気の毒。でも、内閣府も皆さん、本当に気の毒だと思います」
質問時間が終わりに近づいて安倍晋三に自身は関係を否定しているが、どう見ても総理の意向が働いた動きをそれぞれの文書は記しているののではないかといった趣旨の質問をすると、安倍晋三は岩盤規制を打ち破るだとか何だとか、逃げるための最良の手としている得意の話を原稿を読みながら、力強い声で朗々とぶち上げる局面に福山哲郎も聞いている者もぶち当たることとなった。
山本幸三は「文科省から内閣府に出向してきた職員が陰で隠れて本省にご注進したというメール」だと言った。と言うことは、スパイしていたことになる。
「陰で隠れて本省にご注進したということなら、スパイしていたことになります。何のためにスパイしていたのですか」となぜ問い返さなかったのだろう。山本は「そんなことは本人に聞いてくれと」答弁するかもしれない。福山は「常識的に考えると、文科省の利益に反することを内閣府が画策している。そこで内閣府の動きを『陰で隠れて』刻々とメールで『ご注進』に及んでいたということことになる。そして『ご注進』通りのメール内容で加計学園獣医学部認定に向かっていったということではないのか。と言うことは、スパイされた内閣府の動きは現実に存在した動きということになるが」と追及すべきだった。
スパイとは自身、あるいは自らが所属するグループ、自陣営に不利益な動きをする他者、あるいはグループ、相手陣営の不利益な動きを密かに探って、その動きを自らの仲間に知らせる役目を負っている者で、動きを知らされた者たちは相手側に対抗するために不利益を利益に変える、ときには手段を選ばない方策を立てるための材料とする。
実際にスパイだったとしたら、当初は獣医学部新設に反対していた文科省にとって内閣府の新設の方向に向けた動きは不利益そのもので、山本幸三が言うことと合致しないわけではない。だから、スパイを放った。
だが、最終的には「総理のご意向」ということで、萩生田らに押し切られてしまったということなのだろうか。
福山哲郎は山本幸三の発言を把えて、いつスパイだと分かったのか、スパイを放ったのは松野文科相か、文書の修正個所どおりに2016年11月19日に国家戦略特区諮問会議で決定がなされたのだから、なかなか腕の立つスパイだ、担当者から伝え聞いた曖昧な内容どころではない、事実関係を確認しなくても、内閣府内でメールどおりに実際の動きがあったからこそ、スパイはあの内容でメールが書けたのではないかと大事(おおごと)にすべきだった。
何か道が開けたかもしれない。
いずれにしても国家戦略特区諮問会議決定が文書の修正箇所の文言に添って動いていったことを押さえて置かなければならない。当然、「指示は藤原審議官曰く、官邸の萩生田副長官からあったようです」は限りなく事実に近づいていると見做さないわけにはいかない。