獣医学部新設は民主党政権時代に実現検討、安倍内閣が結果を出したは安倍晋三の新たな誤魔化しの一手

2017-06-01 12:46:13 | Weblog

 5月30日の参院法務委員会で民進党議員小川敏夫が安倍晋三相手に加計学園疑惑を追及したとき、安倍晋三は民主党政権を持ち出して、民主党政権も関わった獣医学部新設だといった趣旨の答弁をした。

 昨日のブログでは同委員会の小川敏夫と安倍晋三の質疑応答を動画から文字起こしして記事にしたが、小川敏夫のオフィシャルウエブサイトに記事として既に載っていたから、今回は「小川敏夫情報」(2017年5月30日参議院法務委員会)から関連する一部分を引用することにした。    

 安倍晋三「この獣医学部の新設については、民主党時代に、これはまさに民主党時代に平成22年度中を目途に速やかに検討と、前向きに格上げしたわけであります。検討を続けてきたわけであります。国家戦略特区についても、これはまさに岩盤規制に取り組んでいくために国家戦略特区という仕組みが大切だということで、衆議院段階においては民主党も賛成されたわけでございます。

 それを踏まえて私たちはまさに岩盤規制にドリルで穴を空けるためにこうした努力を行っているわけでございまして、これを政局のために言わば抵抗勢力と手を組むかのごとくは、やはりこれは政治家としてどうなんだろうと、私は率直にそう思っているわけでございます。

 これからもしっかりとやるべき改革を全力をもって進めていきたいと、こう申し上げているところでございます」

 この答弁に小川敏夫は最後に反論している。

 小川敏夫「もっともっと安倍総理と、私が敬愛すると先ほど私のことを褒めていただきましたので、私も返させていただきますけれども、もっと議論をしたかったんですが、残念ながら時間が来てしまいました。

 一つだけ指摘させていただきます。民主党政権時代に特区特区と、これは構造改革特区でありまして、地域の要望があればそれに応じていくということでございます。しかし、総理が行ったのは国家戦略特区、まさに国家戦略で国家が決めていくということでございまして、政権の関与が全く異なります。そうしたことを抜きにして、あたかも民主党政権が築いた上に乗っかっているかのような総理の御意見は余りにも恣意的であるということを指摘させていただきまして、時間が来ましたので、残念ですが、私の質問はこれで終わります」

 民主党政権時代の特区は「総合特区」という名称で、「地域活性化総合特区」(41地域)と国際的な競争力をもつ産業を育てる目的の「国際戦略総合特区」(7地域)があるとネットでは紹介されている。

 小川敏夫が言っていることは民主党政権時代に設けていた総合特区は各地域の要望に対応して地域ごとに特区を設けて改革を進めていく仕組みだが、安倍政権の国家戦略特区は国が特区を決めて、そこに制度改革すべき事業を認定していくという仕組みだから、「政権の関与が全く異なる」ということのなのだろう。

 自身は理解していて言っているだろうが、聞いている方は具体像が明確に浮かんでこない。今治市の国家戦略特区に加計学園岡山理科大学の獣医学部新設が認定された経緯を改めて振返ってみる。

 2007年から2014年(計15回)今治市と愛媛県は獣医師の定員増の規制の地域解除を提案。

 2015年6月4日、今治市と愛媛県は第2次安倍政権が進めたアベノミクスの成長戦略の柱「国家戦略特区」に「国際水準の獣医学教育特区」を提案。

 2015年6月30日、安倍政権は「獣医師養成系大学・学部の新設検討」を盛り込んだ「日本再興戦略」改定を閣議決定。

 2016年1月、国家戦略特区諮問会議で愛媛県今治市その他が国家戦略特区に決定。

 2016年11月9日、国家戦略特区諮問会議が「広域的に獣医師系養成大学等の存在しない地域に限り獣医学部の新設を可能とするための関係制度を直ちに行う」ことを決定。

 2017年1 月初め、内閣府と文科省は国家戦略特区諮問会議の決定を受けて、獣医学部設置の規定を一部改正、特区内で1校に限り獣医学部の設置申請を可能とする旨を告示。

 2017年1月11日までの応募受付けに対して加計学園岡山理科大学が応募。(この一校のみ)

 2017年1月20日、総理大臣より加計学園岡山理科大学獣医学部が正式に事業者に認定される。

 加計学園岡山理科大学獣医学部新設認定までの流れを見ると、初めから獣医学部新設に向けた安倍内閣の動きに見えてくる。

 安倍内閣の国家戦略特区ということについてはどの地域を特区に指定するか、指定した特区に於ける事業をどのようなものにするか、国が決める仕組みとなっているということなのだろうが、小川敏夫の発言は単に民主党政権と安倍政権の特区の性格の違いを示したに過ぎない。

 民主党政権の総合特区にしても、国の政治家の関与・口利きが入り込まない余地はないはずだ。勿論、同じことが安倍内閣の国家戦略特区についても言うことができる。

 また、安倍晋三が「民主党時代に平成22年度中を目途に速やかに検討と、前向きに格上げしたわけであります」云々と言っていることも、発言自体からは具体的に何を指しているのか、すぐには理解できない。

 加計学園の獣医学部国家戦略特区認定に関わった規制改革担当相の山本幸三が記者会見を開いて、安倍晋三が言っていることと同じことを喋っていることをマスコミが伝えていたが、2017年5月31日付「J-CASTニュース」が詳しく伝えているから、その模様をみてみる。
   
 5月30日の記者会見。

 山本幸三は「民主党政権も含めたこれまでの『獣医学部の新設』への対応」と題した文書を配布。

 山本幸三「平成19年(2007年)から8年近く、今治市が唯一の提案者として、提案を続けている。これに応えた(編注:民主党の)鳩山政権が、平成22年(2010年)3月の『対応方針』を『対応不可』から『実現に向け検討』に格上げする政府決定を行った。

 (今治市の提案には)大学設置母体は『学校法人加計学園』と明記されている。

 (また、民主党政権下の11年2月25日の衆院予算委員会で民主党議員の質問に当時の文部科学副大臣が)獣医師の確保について懸念があると認識し、特区実現に極めて前向きな答弁を行った」

 要するに民主党政権時代も今治市を総合特区に指定して、そこに獣医学部を新設することに前向きであったことを示すことで安倍晋三の国家戦略特区獣医学部新設決定は何の問題はないとの論理の展開となっている。

 この論理の展開はこの記事が紹介している5月30日午後の官房長官菅義偉の発言からも窺うことができる。

菅義偉「民主党政権の間『実現に向けて検討』ということでずっと来て、棚晒しになっていたものを、安倍内閣で今回結果が出た。それが客観的な事実で、何も、今、安倍政権になって、急に出てきたわけじゃない」

 山本幸三も菅義偉も、獣医学部新設に関係した政権それぞれの動きを述べたに過ぎない。但しこの両政権の動きを以って安倍政権の獣医学部新設認定に何の不正もないとするなら、安倍政権の今治市国家戦略特区加計学園獣医学部新設認定に安倍晋三が加計学園理事長の加計孝太郎と30年来の腹心の友であったとしても、そのことで加計学園から何らかの便宜要請もなく、安倍晋三側からも「総理のご意向」とばかりにその要請に応えて便宜供与を謀った事実もないことを証明しなければならない。

 その証明がなければ、民主党政権と安倍政権の獣医学部新設に関係した動きを同列だとすることはできないし、安倍晋三の便宜供与の疑惑を晴らすことのできる根拠とすることもできない。

 だが、安倍晋三、山本幸三、菅義偉三者が民主党政権を持ち出したことは同列だとすることで、指摘されている疑惑は何も存在しないとする意図をそこに込めているはずで、このような根拠とすることができないことを根拠とする無理なこじつけを必要とすること自体、疑惑が事実として存在しているからに他ならない。

 山本幸三が「平成19年(2007年)から8年近く、今治市が唯一の提案者として、提案を続けている」と発言していることは上記獣医学部新設認定の経緯で書き記した、2007年から2014年(計15回)に亘って今治市と愛媛県が獣医師の定員増の規制の地域解除を提案したことを指しているが、2013年(平成25年)時点で文科省が獣医学部の新設は困難だとしていたpdf記事がある。

 今月の視点 岡山理科大が52年ぶりの「獣医学部」新設目指す!旺文社教育情報センター平成29年2月)  

 <10年前から要望されていた四国地域の獣医師養成大学(学部)の設置>

 〇構造改革特区による規制緩和の提案

 獣医学部(学科等)の新設や収容定員増については、文科省告示に基づき抑制されている(後述)。そのため、愛媛県と今治市は、獣医師養成機関の空白地域であり、獣医師不足が指摘されている四国地域に獣医学部の設置が認められるよう「構造改革特区」(14年度創設)による規制緩和の提案(獣医師の定員増の規制の地域解除)を19年度から何度も行ってきた。

 しかし、例えば25年の特区提案に対し、文科省は次のように回答し、特区制度を利用した獣医学部新設は困難であるとした。

 〈獣医関係学部・学科の入学定員については、獣医師養成が6年間を必要とする高度専門職業人養成であるとともに、卒後取得する獣医師資格は全国どこででも活動可能な国家資格であるため、他の高度専門職と同様に、獣医師養成機能をもつ大学全体の課題として、全国的見地から対応することが適切。

 このため、これまで重ねて回答してきたとおり、特区制度を活用して実現することは困難と考える。文科省は、24年3月に「獣医学教育の改善・充実に関する調査研究協力者会議」(後述)を立ち上げ、獣医学教育改革の進捗状況の検証及び今後の推進方策の検討を進めるとともに、産業動物獣医師・公務員獣医師の育成に向けた今後の獣医師養成の在り方ついて、入学定員の在り方を含め、検討を行っている。提案内容については、今後も引き続き、全国的な見地から議論を進めていく。〉

 平成25年(2013年)は既に第2次安倍政権に入っていた。今治市と愛媛県の平成25年(2013年)の「四国地域の獣医師養成大学(学部)の設置」の要望に対して、「これまで重ねて回答してきたとおり」との文言で以前と同じ回答だと断って、「特区制度を活用して実現することは困難と考える」と文科省としての態度を示していた。

 にも関わらず、民主党政権時代に加計学園獣医学部新設の総合特区での新設に前向きだったことを根拠に恰も安倍政権の新設認定に何の疑惑もない根拠にしようと無理にこじつけている。

 どこから、どう考えても、疑惑隠しの苦肉の策として編み出した新たな誤魔化しの一手にしか見えない。

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