2012年5月の大統領選で当選したプーチンの任期は6年、2018年4月までである。だが、2012年の大統領選では政党登録の不許可や立候補条件の不備等で有力な野党指導者の立候補を排除、泡沫候補者のみを対立候補者に仕立てて大量得票し、見事に当選を果たしたプーチン・ロシアは民主主義国家を装った独裁国家である。
このような自分を当選させるための大統領選挙そのものの仕掛けだけではなく、大統領選挙に出馬を表明した有力な候補者を横領罪や詐欺罪、脱税等で被告の身に仕立てて刑務所送りをして立候補の芽を潰すことまでしている。
しかもそういった裁判を報道を規制することで国民には知らせない。
2004年9月1日から9月3日にかけてチェチェン人を首謀者とするチェチェン共和国の独立を唱える武装グループによってロシアの北オセチア共和国ベスラン市のベスラン第一中等学校が占拠され、7歳から18歳の少年少女とその保護者1181人が人質となり、2日後に治安部隊が突入、386人以上が死亡(うち186人が子供)、負傷者700人以上という犠牲を出した。(Wikipedia)
この学校占拠事件以降、州知事選挙が廃止されて大統領が直接任命する制度となり、プーチン支配の中央集権化が進められた。
プーチンの報道規制はマスコミ報道の規制だけではなく、反プーチンのジャーナリストの口を直接封じる強権手法まで広範囲に亘っている。激しい反プーチンで知られた女性ジャーナリストアンナ・ポリトコフスカヤはプーチンが最初の大統領の任期中の2006年10月、自宅アパートのエレベーター内で射殺されている。
プーチンが大統領になってから殺害されたジャーナリストは10人以上にのぼると言われている。
反プーチンのジャーナリストを下手に刑務所送りして、刑務所内からシャバに向けてプーチン批判の発信をされたら面倒だからと、直接口を塞ぐことで刑務所送りの手間を省いているのかもしれない。
プーチンはプーチンの息の掛かった官憲の手を逃れて外国に亡命した政敵等をその地で暗殺し、自身の地位を脅かしかねない存在を前以て潰しておくといった手まで使っている。
テロとは民主主義国家に於いて民主主義の制度を暴力的に破壊しようと試みる行為をいう。
プーチン・ロシアのような民主主義が機能していないがために民主主義の手段に訴えて民主主義を国の制度とする試みを行い得ない独裁国家に於いてその独裁政治にストップを掛けるための唯一残されている緊急避難的な暴力的破壊行為は正当な戦いであって、テロとは言わない。
民主主義を許さない独裁政治がそのように仕向けることになっている正当な戦いである暴力的破壊行為に過ぎない。
だが、そのような暴力的破壊行為が罪のない多くの一般市民を巻き添えにして、その命を奪うことは如何なる理由があろうと正当な戦いとすることはできないテロ行為そのものだと言うなら、テロ集団の「イスラム国」殲滅を理由にその占領地に空爆を行っているアメリカやロシアが罪のない一般市民を誤爆し、多くの死者を出している現状は如何なる理由がろうとも正当化できないテロそのものの暴力的破壊行為となる。
民主主義国家に於いても独裁国家い於いても暴力的な破壊行為はテロであって、いずれもテロに変わりはないと言うなら、一般市民を巻き添えにしてその命を奪う誤爆を無くしてから言うべき主張であろう。
安倍晋三は4月4日夜にプーチンと電話会談を行い、「テロは断じて許すことはできない、テロ根絶を約束する」と述べたそうだが、独裁国家に対する暴力的破壊行為をテロと貶め、その根絶を約束するということは独裁政治に打撃を与えて民主主義を獲得するための暴力的破壊行為を邪魔立てし、逆にプーチンの独裁政治を助長する試みとなる。
戦前の天皇独裁の大日本帝国を理想の国家像とする安倍晋三である。精神の奥底では独裁政治に親近感を抱き、独裁政治体制確立への衝動を抱えていないことはないだろうから、プーチンの独裁政治をに救いの手を差し伸べたとしても不思議はない。