アルピニスト野口健の日本と日本人を政治的判断基準に置いた視点からの右翼思想・左翼思想

2014-12-26 07:43:28 | Weblog
 


アルピニストの野口健が自身のツイッターに次のような言葉を投稿していることを私自身のツイッターにリツイートの形で紛れ込んでいて知った。

 「日本って国は、“日本が大事”、“領土を守りたい”、“日本人のために政治をやって欲しい”って言うと、右翼扱いされる。いかに中心が左翼思想になっているかがわかります」

 調べたところ、2014年12月9日8時50分の投稿となっている。

 安倍晋三に対する国民の支持、支持を得た安倍晋三の鼻息から見ると、とても「中心が左翼思想になっている」とは思えない。

 野口健は政治制度の集合体としての国家とそのような制度下の国民を論ずるとき、国家を「日本」という文脈で常に把え、自国民を常に「日本人」と把えて、その視点から物事の判断をしているようだ。

 勿論、私自身も一般的な意味に於いて「日本人」という言葉は使う。例へば「基本のところで日本人は権威主義を思考様式とし、行動様式としている」といった具合に。但し政治制度の集合体としての国家及び国民を言うとき、野口健とは逆で、「日本」を国家という概念で把え、「日本人」を国民という概念で考える。

 そして国民は常に国家に優先さるる存在だと位置づけている。だから、日本国憲法は国民に主権を与えている。日本国家に対して与えているのではない。

 「日本人を」ではなく、「国民を」主体に位置づけて考えているから、野口健のように“日本が大事”という思想に立つことはなく、あくまでも「国民が大事」という思想を優先させることになる。 

 “日本人のために政治をやって欲しい”ではなく、「国民のために政治をやってほしい」と求めることになる。

 “領土を守りたい”にしても、国を守るために領土を守るのではなく、国民を守るために領土を守るでなければならない。国を守るとしたとき、どのような政治制度の国家であったとしても守らなければならなくなる。

 このことは戦前の天皇絶対主義・軍国主義の日本を国家権力によって無理やり守らせられ、結果として国民を守ることができなかった悲惨な結末が証明している。
 
 国民を守るとは国民の基本的人権を守ることであって、基本的人権を保障する政治制度でなければならない。

 断るまでもなく、基本的人権とは思想・信教の自由や言論の自由、表現の自由等の社会を生きていく上で人間が人間らしく生存するための権利ばかりではなく、生存権、教育を受ける権利、労働基本権、社会保障の権利等の社会権も同じく社会を生きていく上で人間が人間らしく生存するための権利として基本的人権の一つに数えられている。

 いわば基本的人権の保障との兼ね合いで国民と国家の関係を考えなければならない。

 “日本が大事”とか、“日本人のために”と言うとき、“日本”“日本人”のみを限定することになって、そこに否応もなしに日本民族優先の思いが入り込んでいることになる。

 多くが野口健の以上の言葉に民族優先の臭い嗅ぎ取って、右翼扱いするのではないだろうか。

 日本という国を国家と国民の関係で認識した場合、日本限定ではないために、この認識は他国の国家と国民との関係にも視野が及ぶことになる。その国が国民を主体とし、国民の基本的人権を保障している政治制度の国家となっているかを問うことになる。

 アメリカが常に中国に対して中国国内の人権問題に物申し、ノーベル賞作家劉暁波氏が共産党1党支配を批判して民主化を求める文章をインターネット上で発表したことで国家転覆扇動罪で懲役刑を受けていることに対して釈放を当初から求め、12月24日、判決後5年を受けてケリー長官がその釈放を改めて求める声明を出したのも、主体とした国民との関係で国家を把えているからだろう。

 だが、日本では前民主党政権にしても安倍政権にしても、直接的には釈放を求める声明や発言を発したことはない。

 如何なる外国に関しても常に国民との関係でその国家を把えた場合、基本的人権に国境は存在しないことになるが、少なくとも日本政府に関して言うと、そのように把える状況になっていないばかりか、日本という国で基本的人権が保障されていればいいと考えているから、他国の人権状況に鈍感でいられるのだろうとしか解釈できない。

 経済だけではなく、文化の面でも、人間の往来に関してもグローバルな時代となった今日、民族のレベルで国家と国民の関係に言及するのは既に時代遅れとなっているはずだ。世界に共通させることができる国民という概念、基本的人権を軸として同じ線上に置いた国家という概念で把えるべきではないだろうか。

コメント (2)
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