自民圧勝の序盤・中盤情勢は野党の街頭演説等でのアベノミクス批判や主張が有権者に届いていないことを示す

2014-12-10 06:44:07 | Weblog


 題名は当たり前のことを言っていることになるが、このことの裏を返すと、安倍晋三の主張が有権者に確実に届いていて、確実に受け入れられているということになる。その結果の序盤・中盤情勢予想自民党300議席超えの勢いということであろう。

 いわば野党党首を筆頭にして全員が街頭演説や政見放送、テレビ出演でアベノミクスをどう批判しようが、大多数の有権者は聞く耳を持っていない。あるいは耳を傾けようともしていない。

 当然、「安倍首相は雇用が100万人増えたと言っているが、非正規が増えたのであって、正規社員は減っている」とか、「平均で賃金が2%上がったと言っているが、一部の限られた企業だけで、中小零細を含む大多数の企業で賃金は上がっていないし、統計上も実質賃金は減り続けている」と批判したとしても、その批判は通用していないことを示す。

 維新の党が「消費税増税よりも先ず身を切る改革だ、国会議員の定数3割カット」と声を張り上げて懸命に主張しているが、情勢世論調査では現有議席を割る可能性が伝えられている。

 要するに大多数の有権者は非正規が増え、正規が減っている雇用の現状、一部の企業の賃金のみがアップして、多くの企業の賃金が上がっていない賃上げの現状、消費増税の前提とした民主・自民・公明3党合意の国会議員定数削減の約束を反故にしている現状、あるいは消費税8%増税で多くの国民の生活が圧迫されている現状、正規と非正規の生活格差のみならず、株高によって富裕層に資産効果が生じてより豊かになっていくのに対してその恩恵に無縁な国民との格差拡大の現状、急激な円安を受けた物価高騰で消費行動の不自由を強いられている国民の現状、その他その他がアベノミクスのマイナス要因だと見ていたとしても、1票を拒絶しなければならない現象とは見ていない。

 逆にそれらの現象を受け入れようとしている。受け入れ、12月月14日の投票日にアベノミクスに1票を投じようとしている。

 現実問題として、野党はアベノミクスに対する今まで繰り広げてきた批判や自党政策の主張が通用していないのだから、戦術を変えなければならないことになる。

 どのような戦術に変えるべきなのだろうか。拒絶反応を示すことなく、安倍晋三に信頼を寄せている原因を探らなければならない。

 人間はパンのみにて生きる生きものではないが、やはりパンは一番重要な生活要素である。パンは賃金が保障する。多くの国民は現状の賃金に不満はあるが、アベノミクスに拒絶反応を示していないということはパンを保障してくれる将来的な賃金に期待を抱いているからではないだろうか。

 安倍晋三の賃金を保証する発言を拾ってみる。

 2014年11月21日安倍内閣総理大臣解散記者会見。

 安倍晋三「今週、経団連の会長が、経済界は来年も賃金を上げて、経済の好循環に貢献していきたいと宣言してくれました。さらには、再来年、その翌年と賃金を上げていく。アベノミクスを続けることができれば、必ずや実現できると確信しています」

 11月30日のNHK「日曜討論」

 安倍晋三「来年もアベノミクスが続いていくんであれば、賃上げを行なう。これは、経団連の会長ともう約束をしてます。 そしてその翌年、さらにその翌年もですね、しっかりと賃金を引き上げていけば、私は間違いなく消費税を引き上げていく状況ができる」

 2014年12月1日、日本記者クラブ8党8党首討論会。

 安倍晋三「来年、アベノミクスが続けば、経団連の会長はちゃんと賃金を引き上げていくという約束をしていただいておりますから、来年、上がっていきます。そしてまた再来年も上がっていきます。

 そして、さらにその翌年も賃上げを行えば、しっかりと実質賃金が消費税分も入れても追い越していくという状況を、間違いなく私はつくっていくことができる、そう思っています。」

 12月2日、TBS「NEWS23」での与野党党首討論。

 安倍晋三「企業は高収益をあげているが、消費税を3%引き上げたから賃金が追いついていない。(賃金を)来年も再来年も上げていけば実感していただける」

 12月4日JR新大阪駅前で街頭演説。

 安倍晋三「今年4月に賃金が上がった。来年も、再来年もさらにその翌年も上がっていく。そうすれば必要な社会保障の財源を確保するための消費税を引き上げる環境が整っていく。野党は、先延ばしは主張しても、いつ(消費税を)上げるという約束はしていない。無責任じゃないか。わたしたちはしっかりとその責任を果たしていく」(時事ドットコム

 山口公明党代表も同じ内容の街頭演説を行っている。12月2日公示第一声。

 山口公明党代表「確かに賃金は上がったが、消費税率を上げ、円安が進んで物価も上がっている。賃上げが物価の上昇に追い付いていないので、来年も再来年も賃金を上げ、それで物価に追い付き、追い越すことで、皆さんが安心して景気回復の実感を持てるようになる。そういう経済の進め方を我々に任せていただきたい」(公明新聞

 有権者の多くは直近のところで来春の春闘での賃上げに期待し、食いついたのではないだろうか。消費税増税が1年半先送りされた、来春賃金が上がれば、物価上昇に追いつき、消費に向ける余裕が出てくる。非正規雇用が増えているといった雇用の矛盾よりも、生活格差の問題よりも、集団的自衛権の行使よりも、原発再稼働の問題よりも、憲法改正の問題よりも、先ずはパンを保障する賃金だということで。

 だとしたら、野党も賃金を保障しなければならない。

 但し目に見える賃上げは安倍晋三にしても至難の技であるはずだ。実体経済の活発化に基づいた賃上げではない。このことは内閣府12月8日発表の7〜9月期国内総生産(GDP、季節調整済み)改定値の物価変動の影響除外の実質前期比0.5%減、年率換算で1.9%減という統計に表れている。

 消費税増税駆け込み需要の反動減に備えて安倍晋三は安倍政権2年で15兆円近くもの公共事業を含む大々的な経済対策を打ちながら、GDPがこの結果なのだから、全体的には安倍政権の経済政策は殆ど機能しなかったことになる。

 その原因は旧来型の公共事業に頼った経済政策であり、方法論自体に過ちがあるからだろう。

 そうであるなら、安倍晋三経済政策のこの機能不全が来年の春闘時にまで機能回復することができるとは誰も思わないだろう。当然、経団連の所属企業が賃上げに応じるとしても、実体経済に基づかない賃上げとなって、出し渋った、経団連内部でも裾野の広がならない、今年の春闘同様に一部の企業に限った賃上げとなる確率は高い。

 中小企業にしても実体経済が伴わなければ、事業年度終了後に纏めて納付しなければならない消費税の支払いが来年の4月末に待ち構えていることと併せて、自分の首を絞めることにもなりかねない賃上げに応じることはできなくなる。
 
 大企業の従業員は1229万人。中小企業の従業員は2倍以上の2785万人。大企業数1万2000社に対して中小企業は約419万8000社。全企業の99.7%を占める。賃上げの恩恵は国民広くに波及しない恐れを抱えることになる。

 安倍晋三が実体経済を活発化させずに賃金アップを保証すること自体に無理がある。その保証に応じるにしても一部の企業に限られることになるだろう。

 野党は従来のアベノミクス批判を封じて、大企業に限らず、中小企業にしても賃金アップをスムーズに行うことができる実体経済の活発化を可能とする政策の主張へと戦術転換を図らなければならない。そのような政策を展開する中で、アベノミクスのマイナス点を挙げて、このようにはなりませんという文脈で批判しなければならない。

 もし戦術転換を図らずに街頭演説やテレビ出演、あるいは政見放送で従来どおりの批判や主張を繰り広げるようなら、自民党圧勝に手をこまねくことになるはずだ。

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