朝霞公務員宿舎建設再凍結に公務員宿舎部屋代値上げに優る合理的理由は存在するのか

2011-10-04 10:03:48 | Weblog

 2009年11月に行政刷新会議の事業仕分けで建設凍結とした朝霞公務員宿舎を2010年12月に当時の野田財務大臣が凍結解除の判を押し、先月(2011年9月)1日建設着工。と言っても、テレビニュースの画面から窺った限りでは樹木の撤去や土台穴の掘削程度の進行で済んでいるようだ。

 震災復興にカネがかかる今この時期に一旦凍結した工事を再開するのかと国会で追及を受け、元々豪華・贅沢公務員宿舎格安家賃に批判が多かっただけにマスコミも大々的に取上げ、形勢不利と見たのか、支持率低下に影響することを恐れたのか、10月3日に現地を視察、野田首相は5年間の建設凍結を安住財務大臣に指示した。

 10月3日午前、15分間の視察のあと、記者団に次ぎの発言を行っている。《朝霞公務員宿舎 計画凍結指示へ》NHK NEWS WEB/2011年10月3日 11時59分)

 野田首相「去年12月に街づくりにも資するという総合判断で着工を判断したが、3月11日の東日本大震災からの復旧・復興に向けて、今、予算案を作り、財源確保をしようというなかで、いろいろとご批判がある。とにかく、きょうは現場の進捗状況を自分の目で見たいということで来た。

 私なりには、今、説明を聞いて、現場を見て、自分のなかの腹は固めたつもりなので、戻ったら安住財務大臣を呼んで指示したい」

 その答が向こう5年間の建設再凍結というわけである。

 首相のこの意向に関しての官房長官の発言。

 藤村官房長官「先週月曜日からの予算委員会で、野党を中心に、大変いろいろな意見が出されたことが一つある。3月11日以降をどう考えるかというところで、再考するということになったのではないか」

 事業仕分けで建設凍結と決めた朝霞公務員宿舎を当時の野田財務大臣が「去年12月に街づくりにも資するという総合判断で着工を判断した」と凍結解除の理由を述べている。

 「街づくりにも資する」ということは国益にも適う正当な理由づけに基づいた凍結解除だとの言明となる。当然、完成後の850戸という部屋数に応じた人口増加が朝霞市に与える市民税等の歳入、消費活動が貢献することになる経済効果等の経済活性化と将来的継続性をも含めてどの程度の相乗効果を見込むことができるか数値化していたはずで、それをゼロにして、いわば犠牲にして建設費の105億円を復興財源に回すということなら、差引き復興にどの程度の貢献となるか、やはり数値で示して、復興の国益が格段上回ることの証明の説明が必要となるのではないだろうか。

 復興を優先させるあまり、他都市の「街づくり」を阻害してもいいという理由はないはずだ。少なくとも一旦は「街づくり」(=市の活性化)を計算して工事凍結解除の判を押した。また、建設費の105億円を復興にまわさなくても、新たに生み出すことができない金額と言うわけではあるまい。

 野田首相は9月15日の衆院代表質問で渡辺喜美みんなの党代表と次のような質疑応答を行っている。

 渡辺喜美みんなの党代表「復興財源を捻出するためにも、朝霞住宅の工事を中止してもらいたい」

 野田首相「真に必要な宿舎として朝霞住宅の事業再開を決定している」(MSN産経

 「真に必要」と政策決定するためには合理的な理由がなけれならない。だが、他都市の「街づくり」を犠牲にして復興を優先させる納得させる合理的な理由の提示、具体的な説明が何らないままに建設費の105億円を復興に回すために向こう5年間の凍結解除となっている。

 「真に必要」だと合理的に理由づけした政策を合理的理由を提示しないままに変更する。

 政府はさらに東京都心の港区、中央区、千代田区の3区にある国家公務員宿舎を危機管理用のものを除いて廃止・売却することを決めたそうだ。これらもゆくゆくは復興財源にまわされることになるのだろう。

 どうも公務員は公務員宿舎で特別待遇を受けている、役人天国となっている、建設は税金のムダ遣いだ、被災地では被災者が困窮しているのだからといった情緒的な理由からのみ建設の是非が論じられているように見える。

 勿論、税金のムダ遣いだという批判は十分に理解できる。だが、「税金のムダ遣いだ」と言うなら、北朝鮮の高給軍人最優遇に通じる日本の国家公務員の報酬面の最優遇に加えた住居面に於ける最優遇、役人天国こそを税金のムダ遣いの対象とすべきであろう。

 民間相場では入居費が20万から30万するマンションの部屋と同等の宿舎の入居費が3万から5万、6万といった格安値段の提供、特別扱いこそが役人天国の一端をなしているはずである。

 なぜ豪華・豪勢な巨大タワーマンションを100億以上のカネをかけて建設して、5万円前後の安い部屋代で住まわせる特別扱いを国家公務員に提供しなければならないのか。多くの国民が生活苦に喘いでいるというのに役人天国という名の天国に住まわせなければならないのか。

 民主党は2009年マニフェストで国家公務員総人件費2割削減を謳い、現在、人件費8%を減額する法案を国会に提出している。「2割削減」を謳ったということは民間人件費よりも少なくとも「2割」優遇を受けていることを意味する。いわば「2割削減」を実現させて初めて、民間とほぼ同等となる。

 マニフェストは4年間を期限とした実現となっている。「国家公務員総人件費2割削減」の民主党公約は2009年9月から計算して4年以内の実現を待つしかないが、人件費のみの削減を以ってして、公務員宿舎の格安家賃の特別待遇を剥ぎ取らないことには一般国民との公平化が実現できるわけではない。

 民間マンション部屋代20万~30万と国家公務員宿舎部屋代の平均3万~6万の格差を可能な限り埋めて初めて、国家公務員の特別待遇・最優遇が剥奪可能となり、役人天国から国民感覚への引き摺り降ろしが実現することになる。

 現在、公務員宿舎は全国に約21万8000戸存在するそうだが、5万円ずつ値上しても、約22万戸として、22万戸×5万円=110億/1カ月。年にして1320億円の国の歳入となる。

 民間との公平化を可能な限り図るとすると、15万~20万円は値上が必要となる。15万円と見ても、22万戸×15万円=330億円/1カ月。年にして3960億円。すべて復興財源にまわすことができる。

 朝霞公務員宿舎に限って計算しても、建設の上住まわせて周囲の同等の部屋の相場に合わせた家賃を取るとこととして、例えば15万円~20万円の部屋代に設定して計算すると、部屋数は850戸ということだから、850戸×15万円~20万円=1億2750万円~1億7千万円/1カ月。年にして15億から16億のカネを復興財源として生み出すことができる。10年で建設105億円を上回る150億から160億の復興財源とすることも可能である。

 しかも地域の消費拡大や市の歳入増収まで担う街づくりに貢献したとしたら、建設を再凍結して建設費105億円を復興財源にまわすこととどちらに合理的理由があるか、一目瞭然である。

 ただ単に税金のムダ遣いだ、役人天国だの批判のみで建設の有無のみを論じるのではなく、役人天国という特別待遇を払拭する手立てを部屋代の民間相場までの値上に持ってきて、そことで生じたカネを復興財源にするなり、有効活用すべきだろう。

 部屋代が15万~20万では入り手がないというなら、宿舎自体の建設は中止すべきだろう。既設宿舎は民間に払い下げて、公務員は出て行って貰うしか、約人天国を排する手立てはない。

 いずれにしても、野田首相は建設再凍結して復興財源とすることの、「街づくり」に優先させる合理的理由の説明責任を果たさなければならないはずだ。


コメント (1)
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