野田首相の外国人地方参政権慎重姿勢の根拠憲法第15条は憲法9条と同じ解釈でクリア可能

2011-09-27 10:48:35 | Weblog
 野田首相が昨日(2011年9月26日)の衆院予算委で稲田朋美議員の在日外国人への地方参政権付与についての質問に対して付与に慎重な姿勢を示した。私自身は賛成の立場で、賛成の立場からブログ等の記事を書いてきた。先ずNHKの国会中継からその質疑だけを取上げてみる。

 稲田議員「さて、外国人地方参政権についてお伺いいたします。

 たった2ヶ月前、財務金融委員会で、当時財務大臣の総理に、もし総理になられたらという前提で、外国人地方参政権について質問をいたしました。総理は、明確に反対ですとお答えになったんです。

 では、民主党の党是である、外国人地方参政権の早期実現という政策目標は撤回されますね」

 野田首相「永住外国人参政権について、民主党が党是にしているということはございません。あの、民主党内の中にも様々な議論がございます。あの、多様な議論があって、その議論をしているプロセスの中にあったというふうに、私は理解をしております。

 その中で、色んな意見のある中で、財務金融委員会で私の立場を申し上げさせていただきましたけども、あの、決して党是ではありません。各党でも色々なご意見があると思いますので、そういう各党・各会派のご議論というもの、その推移を見守っていきたいと思います」

 稲田議員「党是と言っていいんですよ。総理がですね、代表質問に対するお答えで、平成10年に結党時の基本政策、基本理念があると。それについて基本政策の中にですよ。結党時の基本政策の中に外国人の地方参政権の早期実現が書いてあるんです。

 まさしく自民党の憲法改正と同じように結党時の基本政策、これを党是と言って、どこがおかしいんですか。それをお変えになりますか。また総理は外国人地方参政権付与に反対ということでよろしいですね」

 野田首相「基本理念の中に項目として位置づけられていることは承知をしております。けれども、そのあとのマニフェストであるとか、あるいはインデックス、これは色々な意見の集約状況の中で、明確にその方向性を打ち出しているわけではございませんので、時代によって変化をしてきて、党内でも色んな意見が出てきているというのは率直な、あの、私の把え方、感触でございます。

 先程申し上げたとおり、私の立場としては慎重な立場であるということであります」

 稲田議員「結党時の基本理念に含まれていることを党是だと言うのだと思います。

 さて、総理は既に結論を出しておられます。2ヶ月前、重要閣僚として国会の場で外国人地方参政権付与に反対だと結論を出されております。しかもその理由として、憲法上の疑義があるとおっしゃいました。総理のおっしゃる憲法上の疑義とは具体的に何を指しますか」

 野田首相「憲法15条に則ると、そこに疑問があるのではないかというふうに思います」

 稲田議員「私も同感です。憲法15条に違反をする。日本は主権国家であることに違反をする違憲の政策なので、これは絶対にやっていただきたくないと思います」(以上)

 憲法論議は後にして、先ず野田首相は「基本理念の中に項目として位置づけられていることは承知をしております。けれども、そのあとのマニフェストであるとか、あるいはインデックス、これは色々な意見の集約状況の中で、明確にその方向性を打ち出しているわけではございませんので」と言っているが、マニフェストには一言も触れていないが、《民主党政策集INDEX2009》には次のように記載されている。

 〈政治改革

 永住外国人の地方選挙権

 民主党は結党時の「基本政策」に「定住外国人の地方参政権などを早期に実現する」と掲げており、この方針は今後とも引き続き維持していきます。〉――

 党として「この方針は今後とも引き続き維持していきます」と宣言しているのである。これを以て“早期実現”という明確な方向性の提示でなくて何と言ったらいいのだろうか。誤魔化しを言っているに過ぎない。

 憲法15条の条文。

 第3章 国民の権利及び義務

  第15条 公務員の選定及び罷免の権利、普通選挙と秘密選挙の保障

 (1)公務員を選定し、及びこれを罷免することは、国民固有の権利である。 
 (2)すべての公務員は、全体の奉仕者であって、一部の奉仕者ではない。 
 (3)公務員の選挙については、成年者による普通選挙を保障する。 
 (4)すべての選挙における投票の秘密は、これを侵してはならない。選挙人は、その選択に関し公的にも私的にも責任を問はれない。

 いわば日本国民固有の権利だと規定している。

 日本国民とは断るまでもなく、日本国籍を有した者を言う。だから、外国人地方参政権付与に反対する勢力は参政権が欲しければ日本国籍を取れと言う。

 確かに『日本国憲法 第3章 国民の権利及び義務 第15条 公務員の選定及び罷免の権利、普通選挙と秘密選挙の保障』を厳格に解釈するなら、日本国籍を有していない外国籍者に例え地方に限ったとしても参政権を付与することは疑問や疑義を超えて、まさしく憲法違反と言える。

 しかし憲法とて絶対ではない。憲法は改正できるし、例え憲法を改正しなくても、一般法の改正によって憲法をクリアできる場合もある。

 『日本国憲法 第3章 国民の権利及び義務 第10条 国民の要件』「日本国民たる要件は、法律でこれを定める。」 と規定している。

 この規定を受けて、一般法としての『国籍法』が制定された。日本国民の国籍の取得及び喪失に関して血統主義なのか出生地主義なのか、あるいは帰化による国籍取得要件等を定めた法律だが、ご承知のように帰化以外は父または母の国籍が自動的に与えられる血統主義に基づいた国籍法となっている。

 この国籍法を改正して、帰化以外に日本に定住何年以上は日本国籍を獲得しなくても準日本国民と看做すとして、地方参政権を与えてもいいわけである。

 要は長年日本に暮らした外国人を日本人同様に受け入れることができるかどうかの感覚が問題であろう。あるいはできるかどうかを思想・信条とすることができるかどうかにかかっている。同じように暮らし、同じように日本の社会をつくり上げていく共生の意思を持てるかどうかということである。

 さらに言うなら、国籍法を改正しなくても、先に挙げた『日本国憲法 第3章 国民の権利及び義務 第15条 公務員の選定及び罷免の権利、普通選挙と秘密選挙の保障』が規定している「(1)公務員を選定し、及びこれを罷免することは、国民固有の権利である。 を解釈によって「国民」の中に外国人永年定住者を紛れ込ますことも不可能ではないはずだ。

 例え『国籍法』が外国人永年定住者について何も触れていなくても、既に第15条の中に含まれているとの解釈を施すことによってクリアできないわけではない。

 もし憲法は常に厳格な解釈に従って運用されるべきだとするなら、憲法9条に関しては厳格な解釈に反した柔軟な解釈に基づいて武器を装備した軍隊組織が運営されている事実はまさしく憲法違反としてその事実を抹消しなければならなくなる。

 また憲法第9条は柔軟な解釈が許されて、憲法第15条は柔軟な解釈が許されないとするなら、二重基準を犯すことになるばかりか、憲法に対するご都合主義の蔓延(はびこ)りの証明としかならない。

 『日本国憲法 第2章 戦争放棄 9条 戦争放棄、軍備及び交戦権否認』は次ぎのように規定している。

(1)日本国民は、正義と秩序を基調とする国際平和を誠実に希求し、国権の発動たる戦争と、武力による威嚇叉は武力の行使は、国際紛争を解決する手段としては、永久にこれを放棄する。 

(2)前項の目的を達するため、陸海空軍その他の戦力は、これを保持しない。国の交戦権は、これを認めない。

 多分、「国権の発動たる戦争と、武力による威嚇叉は武力の行使」を伴わない、あるいは「国の交戦権」認めない戦力は保持できるとの解釈に立って、あるいは自衛権まで否定しているのではないといった解釈に立って陸海空の自衛隊に各種兵器等の戦力を保持させているのだろうが、そこに殊更な解釈が存在する事実は誰も否定できない。

 現在は第9条の交戦権を認めないことと戦争放棄の規定に従っているが、憲法第9条改正論者は、私自身もその一人だが、戦力を保持した自衛隊自体を集団的自衛権という名の「国の交戦権」を認めよとする主張の前提として存在させ、そこにつなげている以上、解釈の介在そのものを証明している。

 外国人に地方参政権を付与すると、小さな町に外国人が退去して住民票を移し、選挙という正当な方法でその町を支配する恐れが生じるといった懸念が喧伝されているが、どのような法律・制度もプラスとマイナスがある。マイナスが生じた場合、それを防御する改正案を講じることでプラスに転じることは可能であるし、可能とする知恵は備えているはずである。

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