天気次第・降雨量次第の被害任せとなっている危機管理を改めるときがきていないか

2011-09-23 10:38:02 | Weblog

 台風が持ってくる長時間の大雨や突発的な集中豪雨による河川の洪水・氾濫、このような水害を受けた土地の冠水、家屋の浸水は止めることはできないかもしれない。だが、止めることはできないからと言って、天気次第・降雨量次第の被害任せでは技術の生きものたる人間である手前、芸がなさ過ぎるように思える。被害を可能な限り抑えるチエを働かすべきではないだろうか。

 少なくともこれまで長時間降雨、集中豪雨がもたらす水の攻撃になす術もなく手をこまねいているといったところが実情となっている。

 民主党は《民主党政策集INDEX2009》で次のように公約している。

 《国土交通》

〈治水政策の転換(みどりのダム構想)

「ダムは、河川の流れを寸断して自然生態系に大きな悪影響をもたらすとともに、堆砂(砂が溜まること)により数十年間から百年間で利用不可能になります。環境負荷の大きいダム建設を続けることは将来に大きな禍根を残すものです。自然の防災力を活かした流域治水・流域管理の考え方に基づき、森林の再生、自然護岸の整備を通じ、森林の持つ保水機能や土砂流出防止機能を高める『みどりのダム構想』を推進します。

なお、現在計画中または建設中のダムについては、これをいったんすべて凍結し、一定期間を設けて、地域自治体住民とともにその必要性を再検討するなど、治水政策の転換を図ります。」――

 政権担当2年、「みどりのダム構想」はどれ程推進できていて、推進によって「森林の持つ保水機能や土砂流出防止機能」をどれ程に高めることができたのだろうか。「みどりのダム構想」の具体化の程度に応じて「自然の防災力を活かした流域治水・流域管理」の応用性が決まってくる。

 だが、今回の台風12号に対しても15号に対しても「自然の防災力を活かした流域治水・流域管理」は無力で、水が暴れるに任せたといったところではなかったろうか。東日本大震災で被災した住民が仮初めの安住の地とした仮設住宅でも床上浸水が見舞い、二度の苦難を味わわせることになったが、「流域治水・流域管理」は体をなしていなかったはずだ。

 以前HPに書き、2007年7月18日当ブログ記事――《地震のたびに繰返される断水と給水車からの補給 - 『ニッポン情報解読』by手代木恕之》の文中に取上げた『ダムに代る治水としての井戸』の一文を、専門家から見た場合、役に立つかどうか分からないが、天気次第・降雨量次第の水害任せとなっている状況が少しでもおかしいのではないかと気づいて貰うために再度ここに取上げ、井戸掘削よりもより簡単で、コストも済むのではないかと考えた方法を提案したいと思う。

 先ず『ダムに代る治水としての井戸』をそのまま書き写してみる。 

 『ダムに代る治水としての井戸』

 ダム見直し論への言及が目立つ。その皮切りは長野県の田中康夫新知事で、ダム建設推進派が占める議会と敵対関係を生じせしめている。公共事業を利権としている業界、その業界を重要な支持母体としている議員としてはダム廃止は死活問題であろう。国政の場では民主党が自党の政策として、『ダム見直し論』を掲げた。

 だが、ダム見直し派はダムに代る有効で具体的な治水対策法を提示しているわけではない。頭の中で考えたことで、役に立つかどうかは分からないが、井戸がダムに代る治水対策の方法とはなり得ないだろうか。従来の井戸は地下水を汲み上げ、それを飲料・その他に供する目的のものである。だが、「ダム代用の井戸」は雨水や川の水を地下に導水して地下水に戻す機能を付加した役目を持たせることとする。

 具体的には、直径1メートルか2メートルの井戸を、家庭排水や工場排水を流さない雨水専用の側溝脇に必要本数だけ地下水脈に届く深さで掘り、それまで河川や海に流しっぱなしにしていた雨水を側溝から、それと接続させた井戸を経由させて地下水として戻す。掘削場所としては、雨水専用の側溝を公園内や河川沿い、低地帯に設けて、それに附属させる。河川が汚染されている場合は、中間に浄化装置を設け、水位が一定の高さに達したなら、井戸に誘導される構造のものとする。ただでさえ工場などで地下水を利用するために、全国的に地盤沈下傾向にあり、そのような状態を食い止める役目も果たせる。

 井戸は常に水質検査して、飲用に供することが可能なら、上水道を川の水としないで、井戸から取水することも可能となる。少しぐらいの汚れなら、浄化装置によって濾過・消毒してから、飲料水とすればいい。あるいは消火用の水、農業用水にも利用可能となるだろう。その他公園の散水、ガソリンスタンドの洗車、プールの水にも利用できる。

 (下線部分は割愛。飲料水用は飲料水用の井戸と別にする。)

 河川流域のすべての市町村にそのような井戸を可能な限り掘削 させたなら、大雨が降っても、あるいは短時間の降水量が急激だった場合、従来の側溝が許容量を超えて雨水を道路に溢れさせてしまうといった現象を抑えて、雨水は井戸に貯水される分、河川への垂れ流しが防止可能となり、それに比例して水位の上昇も低く抑えることが可能となるはずである。このような方法が可能だったとしても、予算の問題が残る。但し、「井戸方式」はダム建設に伴う自然破壊を免れることは確実である。

 広い敷地を持つ会社や工場に、その敷地面積と年間雨量を掛けた体積の雨水を自らの地下に収納できる本数だけの直径1メートル程度の井戸を掘るよう法律で義務付けたなら、自治体がカネをかけずに井戸の本数を増やすことができる。

 この掘削方法はキャタピラ付のオーガ掘削機という重機を使うのだが、直径1メートル程の螺旋状の大型の長い錐を回転させて土を上に吐き出しながら掘っていき、ある程度掘ったら、錐の外形よりもほんの少し大きな鋼管を穴に吊り下ろして、再びオーガを降ろして土を掘りながら、その掘削に合わせて鋼管を必要な長さに溶接等で継ぎ足しながら降ろしていき、目標の深さまで掘っていく。

 鋼管の下部先端から長さ2メートル程上部まで直径2センチ程の穴を可能な限り前以て開けておけば、導入された雨水は鋼管底部に溜まり、その重量で次第に穴から地下に滲み出していく。

 クレーンとオーガ掘削機の2台があれば、他は必要な人員のみで、それ程大掛かりな工事とはならない。

 いわば雨水を地下に導入する井戸を用意し、一方で地下水を汲み上げて、その水を生活用水とする井戸を設けることで、地下水をバランスよく維持して、その減少を防ぐ方法である。

 この方法なら、一本ごとの井戸掘削が短期間の工事で済み、さしてカネもかからない。その分工事主体にかかる財政的負担が少なくて済むが、読み直して果たしてこの方法でうまくいくのだろうかと疑問を抱いた。
 
 今回オーガ掘削機の写真を添付したが、螺旋状の刃を回転させて掘削していきながら、掘った土は螺旋状の刃の上に載せられて回転しながら上に押し上げられていき、地表に吐き出す。

 電動ドリルで木工用錐を先端に取り付けて木材に穴を開けると、螺旋状の切り屑が穴から外に向かって押し出されてくるようにである。

 但し、地下水脈に到達させるためには一本の錐では長さが不足する場合、つないでいく方法を採らなければならないが、錐が長くなると、それに応じてより大きな回転力を必要とする。写真の重機では力不足が生じたからといって、より大型の重機に変更した場合、カネがかかることになるばかりか、工期も長期間化することになる。水を注入して土を液状化しつつ掘削していけば、より少ない回転力で掘削可能となるはずである。

 とは言っても、液状化した土は螺旋状の刃に乗せて地上に吐き出しにくくなるゆえ、錐を一旦取り出してポンプで泥状の水を吸い出す必要が生じる。当然時間が余計にかかることになり、工期が長くなり、人件費その他のカネも余分にかかることになる。

 そこで思いついた方法が家庭や自治体が放射能の除染に使っているう高圧洗浄機である。コンプレッサーで水を圧縮して、ノズル先端から勢いのある水を噴き出させる。この工業用の高圧噴射水を利用して掘削していく方法である。

 ビルの土台杭(コンクリート製)を打ち込むとき、オーガ重機で掘削していくのではなく、杭の先端部から高圧水(ウォータージェット)を噴射して土を液状化して杭を上から押さえつけることで土中に収めていく工事方法もあるそうである。

 インターネットを調べたところ、岩盤掘削にも利用できる「超高圧水ジェット」というものもあるらしい。

 先ずオーガ掘削機で直径1メートル~2メートル、深さ2メートル程度穴を掘削し、そこに4メートルの鋼管を突き刺す。鋼管の中に高圧噴射水のホースと高圧噴射水が液状化(泥状化)した土を吸引するバキュームホースを入れ、高圧噴射水が土を液状化しつつ、バキュームホースが液状化した土を吸引していく。

 高圧噴射水による土の液状化に応じて、鋼管は自重で下に下がっていくが、高圧噴射水が鋼管の内径の範囲内の掘削に収まるよう、ある程度の圧力を上からかける必要があるかもしれない。

 鋼管の長さまで掘削が進んだら、次ぎの鋼管を、太さ3センチ程、長さ1メートル程の鉄筋を周囲に何本か沿わせて鋼管と鋼管をつなぐ形で溶接していく。

 鋼管同士を溶接するよりも、引き離すときより簡単に引き離すことができるからだ。

 地下水脈に到達したなら、ホースを引き上げ、鋼管の内側にすっぽりと入る直径のコンクリート製のヒューム管を最初のヒューム管には直径5センチ程度の穴をそこから水を押し出していけるように無数に開けておき、地表に到達するまで次々と押し込んでいく。

 高圧噴射に使う水はバキュームで吸引した水を循環させ、不足分は水道水、工業用水等で補って使えば、水道代は少なくて済む。東電福島第一原発で原子炉の冷却に放射能汚染水を浄化しながら循環させて使っているようにである。

 コンパートメント(部屋)がいくつかある横長の水槽を上段、中段、下段と高さを違えて何個も並べて泥状の水を通すことで土はコンパートメントごとに下に落ちていき、段階的に澄んだ状態となり、最終的にはかなり澄んだ水とすることができる。

 最初に書いたように長時間の降雨や突発的な集中豪雨による河川の洪水・氾濫は完全には防ぐことはできないかもしれない。当然、土地の冠水、家屋の浸水は覚悟しなければならない。

 だが、何らかの方法で被害を最小限に抑える工夫、チエを働かせなければならないはずだ。民主党のマニフェストが「自然の防災力を活かした流域治水・流域管理の考え方に基づき、森林の再生、自然護岸の整備を通じ、森林の持つ保水機能や土砂流出防止機能を高める『みどりのダム構想』を推進します」と言っていることの、あるいはその他の方法による具体化である。

 この「ダムに代る治水としての井戸」がどれ程役に立つ方法かどうかは分からないが、今回の台風12号の農林水産関連の被害額が現時点で600億円近くにも達するそうである。

 橋梁や道路の公共物、住民の住宅や家財を含めたなら、相当な被害額に達するはずである。すべてムダになるカネであって、ムダにするぐらいなら、ムダをなるべく抑える治水の方法、雨管理の何らかの方法を構築しなければならないはずだ。

 年々大雨化し、氾濫・洪水の回数が多くなり、その規模も大きくなっている。当然、被害の規模も拡大化している。

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