防衛省のオスプレイ事故率非開示は国民に対する説明責任不作為

2011-09-02 07:37:57 | Weblog

 《政府、オスプレイ事故率の開示拒否》沖縄タイムス/2011年9月1日 16時05分)

 防衛省が昨日(2011年9月1日)、垂直離着陸輸送機MV22オスプレイの沖縄配備に関し沖縄県と宜野湾市から出されていた29項目の質問状に対する回答を公表したと出ている。

 どのような内容の29項目の質問状なのか、それにどう答えた回答なのか、インターネットを調べたが、見つけ方が下手からなのか、見つけることができなかった。

 記事には、〈防衛省は・・・・29項目の質問状に対する回答を公表した。〉と、「公表」と出ている。公表したからには人目に触れなければならない。それとも沖縄県と宜野湾市のみに「公表」したということなのだろうか。記事最後の、〈同省の中江公人次官らは同日、県と宜野湾市を訪ねて回答書を手渡した。県庁で受け取った仲井真弘多知事は「現時点で反対」との考えを伝えた。〉との一文を見ると、どうも沖縄県と宜野湾市に回答書を手渡した類いの「公表」なのかもしれない。

 空軍仕様のCV22も含めた開発段階からの事故率開示要求を含めたオスプレイの安全性についての質問には「未完成の段階である開発段階の事故率を一概に比較したとしても、むしろ誤解を招く」、CV22に関しては、〈飛行時間が極めて少ない〉として開示を拒んだとしている。

 事故の程度、事故の回数、すべての情報を回答すると政府側に不都合、あるいは不利益が生じることからの開示拒否なのは間違いない。政府に好都合、利益をもたらす情報なら、進んで開示する。質問状を以ってして求められなくても、胸を堂々と張る様子で開示するはずだ。

 だが、この非開示は国民に対する説明責任の不作為に当る。防衛省、あるいは日本政府はオスプレイの沖縄配備に関して沖縄県と宜野湾市のみを相手にしているわけではあるまい。配備に賛成・反対はあっても、沖縄全県民を相手にした配備であって、その安全性に関わる情報の全面開示は国民の生命・財産を預かる政府の国民に対する説明責任の範囲事項に当るはずだ。

 回答書の「未完成の段階である開発段階の事故率を一概に比較したとしても、むしろ誤解を招く」は北沢防衛相も8月8日(2011年)衆院予算委で共産党の赤嶺政賢議員に対する答弁の中で同趣旨のことを発言している。8月10日当ブログ記事――《菅仮免は「国民の安心・安全」を問うオスプレイ国会質疑で居眠りをしていた - 『ニッポン情報解読』by手代木恕之》で取り扱った。

 北沢防衛相「エー、先ずですね、開発途中の事故を、おー、一般的な運用の中に入れて、事故率を計算するちゅうのは、これは、あのー、考え方かもしれませんが、私は正確なものではないと。

 開発途中のいくつかの試行錯誤の中で改良してきて、運用ができるようになって、あのー、大量生産を政府が許可したと。そういう経緯から見ても、それを開発途中、いわゆる研究段階を含めてのものを入れると、むしろ誤解を招くだろうというふうに思っております。

 そして今ご指摘のアフガンの問題は、あー、先程申し上げましたように、えー、特定されていない、原因がこういうことであります。それから、空軍のものを入れていないじゃないかと、こういう話ですが、あくまでも沖縄の海兵隊に配備されると、いう状況の中で、あのー、それを申し上げてきたはずです

 空軍のCV22は関係ないことだと言っている。だったら、公表すればいいと思うが、〈飛行時間が極めて少ない〉にも関わらず、北沢答弁が触れているように事故を起こしているから情報開示できないということなのだろう。

 「アフガンの問題」とはアフガニスタン戦闘地域で空軍のオスプレイが敵攻撃によるものではない、原因が特定できない墜落事故を起こして4人の犠牲者を出したことを指している。

 「未完成の段階である開発段階の事故率を一概に比較したとしても、むしろ誤解を招く」と回答しているが、一般的には開発段階での事故率を全面解消した段階で正式配備の局面を迎えるはずだから、当然両段階の事故率の比較なくして安全性は証明不可能となる。最善は配備段階での、少なくとも重大事故の事故率ゼロでなければならない。配備段階で一度でも重大事故を起こしていたなら、例えば開発段階で百度事故を起こしていたとしても、事故率は最小値に向かうことになったとしても、百度の事故の解消とは言えない。

 真に必要な情報は開発段階での事故率や事故の程度、事故の種類であることよりも、正式配備後の事故率ばかりか、事故の程度、事故の種類であって、空軍とか海兵隊とかの区別に関係なく事故が生じている状態にあるなら、配備は問題外となる。

 アフガニスタン戦闘地域での墜落事故は正式配備後の重大な事故がゼロと言うわけではないことの証明となる。

 正式配備以後、重大な事故も重大な事故につながる危険性のある事故も発生させていなかったなら、開発段階と正式配備段階の比較は「むしろ」有意義となる。

 それを「むしろ誤解を招く」として比較を無意味とする態度は裏にやはり不都合・不利益を抱えていることからの情報開示拒否であり、国民に対する説明責任の不作為そのものである。

 事故率の比較の情報開示が招くとする「誤解」が真に誤解の種類であるなら、招いた場合の誤解を解くのも政府の説明責任の範囲事項となる。こういった場合の誤解は避けるものではなく、解くものであろう。解くことによって国民に対する説明責任をより十全に果すことが可能となる。

 誤解を理由とした情報非開示は国民に対する説明責任上、許されないと言うことである。

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 このオスプレイの安全性の問題、本土の新聞は扱っていないようだが、一地方の小さな問題と看做しているのか、それとも沖縄基地問題は遠い話となってしまったのだろうか。


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