舛添の自民党の除名処分を受けて立つことができないご都合主義

2010-04-28 05:04:37 | Weblog

   

 自民党は27日の党紀委員会で離党し、それぞれに新党を立ち上げた与謝野馨と舛添要一の離党届を不受理、両者を除名処分とした。除名は党規上、最も重い処分だそうだ。

 マスコミ各社が“名誉ある”除名処分を受けることとなった二人の反応を伝えている。

 《「敵間違うな」「信念に従う」=自民除名の舛添、与謝野氏がコメント》時事ドットコム/2010/04/27-15:18)

 舛添要一「参院選に敗れたら自民党はなくなるという危機感を持って戦っており、自民党支持者も支援してくれていると思う。敵は小沢民主党独裁政権で、敵を間違ってはいけない」

 与謝野馨「(小選挙区で)13万人の支持(票)を受けたから最後まで信念に従って行動するのが有権者への責任だ。当選した後の政治行動を全部縛る(選挙)制度にはなってない」

 自民党を離党して、何となく疲れを感じさせる新党「どっこいしょ たちあがれ日本」の結成に共同代表として参加した与謝野の場合、今ある国会議員の地位が小選挙区で自らの名によって「13万票」獲得したとしても、「13万票」で当選して得た地位ではなく、自民党内で築いた本人の政治的地位に対応した措置であったとしても、所属政党である自民党の優遇があって当選優先順位が名簿に拘束され、政党の得票率に比例して議席配分を受けた、いわば他の党所属議員の得票も関わった比例区復活当選なのだから、総合的には党の恩恵を受けた地位ということになって、例え「当選した後の政治行動を全部縛る(選挙)制度にはなってない」としても、道義的にも名簿上もある意味党に縛られた(=拘束された)今ある地位であったはずだ。

 それを党に関係なく、さも自分一人で獲得した比例区復活当選の自由の身であるが如くに離党したのは後足で砂をかける行為に相当しないわけではなく、除名処分を当然な措置と見るべきを、当選という結果に関しては相当部分仮の事実でしかない「(小選挙区で)13万人の支持(票)」を見当違いにもなおのこと誇っている。

 合理的な客観性を欠いているからこそできる誇りであろう。当然、除名処分はふさわしいと引き受けて、比例区復活当選という党の恩恵を受けた名簿上の拘束を相殺すべきではなかったろうか。

 舛添要一のコメントは《除名処分の舛添氏「敵は小沢氏の民主党。敵を間違うな」》asahi.com/2010年4月27日17時37分)では次のようになっている。

 「我々の敵は小沢一郎幹事長のいる民主党だ。敵を間違ってはいけない。民主党政権を倒すことに成功すれば、自民党支持者にもきちんと評価して頂けると思っている」――

 「参院選に敗れたら自民党はなくなる」はテレビの報道番組でもバカの一つ覚えのように囀っていた。例え次の参院選で自民党がなおのこと議席を減らし、国会に占める勢力としては低迷を続けることはあっても、決してなくなることはない。もしなくなるとしたら、社民党も日本新党も国民新党も共産党もなくなっていたろう。社民党と国民新党の場合、民主党の連立相手として存在しない政党となっていたことも考えることができる。

 例え低迷を続けたとしても、政権復帰のチャンスを永遠に失うわけではない。失うとしたら、二大政党制の意味を失う。かつての自民党一党独裁体制が民主党一党独裁体制に取って代わられるだけのこととなる。

 舛添はテレビで、「政党をつくれば、例え小党であっても誰でも政権を目指す」といったようなことを発言していたが、政界再編等の好機を利用することも含めてのことだろうが、小党でも政権獲得のチャンスがあるとしたのである。例え自民党が参議院選挙で議席を減らして小党化したとしても条件は同じはずで、舛添はそのことを無視して「参院選に敗れたら自民党はなくなる」と客観性もない針小棒大なことを言って自民党を貶めている。

 大体が自民党に関しては無視できるところが素晴らしい。それだけの慧眼を持っているということなのだろう。

 また舛添は参院選で「政権与党の過半数獲得阻止」を勇ましく宣言しているが、例え実現できたとしても、衆議院での勢力は変わらず、政権を維持できるし、公明党を連立対象に加えることができれば、参議院での過半数復活も成し遂げることができないわけではない。

 公明党にしても参議院選挙で無党派層の票の多くが新党に流れた場合、危機感を抱いて生き残り策として連立与党に加わる計算を働かさないとも限らない。

 例え公明党が連立に加わらなくても、民主党政権を倒すには次の総選挙まで待たなければならない。総選挙を行うについては麻生政権のときは失敗したが、民主党に有利に働く状況まで持ちこたえようとするだろうから、衆参ねじれ現象を抱えたまま民主党政権が続くこととなって、簡単には倒すことはできない。

 また、参院選で新党効果が力となって政権与党を現議席以下に押さえたとしても、新党効果が自民党にも影響して自民党の議席を減らすことの可能性も無視できない。

 そうなることは予測できないことではなく、当然、「自民党支持者も支援してくれ」るといった期待は自民党支持から舛添新党支持に乗り換える有権者には可能であっても、乗り換えない「自民党支持者」には有効とは決して言えない合理性を欠いた期待値としか言いようがない。

 さらに参議院選で連立与党の過半数獲得を阻止できたとしても民主党政権を倒すには時間がかかる、自民党の議席をも減らしたということであるなら、舛添が言っているように「自民党支持者にもきちんと評価して頂ける」ということは起こらないだろうし、この発言も見当違いの合理的な状況判断の甘い、客観性を欠いた発言としか言いようがない。

 勿論、政権を取ってからの話だとすることもできるが、政界再編で獲得した政権は現在の連立与党のように理念や政策の異なる政党が組むことになる可能性が高く、思い通りの政策を実施できるかは別問題となって、国民の信頼に応え得るかは状況次第の不確定要素とならない保証はない。

 大体が、「自民党が国民の信頼を失い、政権を失ったのは当然だ」、「自民党の歴史的使命は終わった」、「国民はかつての自民党政権の復活は望んでいない」、「自民党の体制、体質は旧態依然だ」、「自民党は古い体質を抱えたままだ」、「古くなって国民から見捨てられた政党を再生しても駄目だ」、「官僚主導体制でやってきた」、「派閥が党を支配した派閥主導政治だ」、「自民党は参議院選で負けたら、なくなる」等々とそれらの多くのことが事実であったとしても、散々に自民党を貶めてきた上に離党して新党を結成したのである。

 いわば自民党のすべて、自民党の党としての存在自体を全否定したことを意味し、全否定の具体化が離党となって現れ、新党結成となって現れたはずだ。全否定された上に離党され、新党を結成された側にとっては全否定した側を敵と看做すのは少なくとも心情的には当然の対抗策であろう。

 それとも舛添は自民党を全否定しておきながら、離党・新党結成に喜んでエールを送ってくれるとでも思っていたのだろうか。そうとでも解釈しなければ、全否定した自民党から当然の措置でもある除名処分を受けると、「敵は小沢民主党独裁政権で、敵を間違ってはいけない」などと発言したことが理解できなくなる。

 除名処分を名誉あることだと受けて立ってこそ、自民党全否定に整合性を与え得るばかりか、自身の正々堂々を証明できたはずである。

 それを除名処分に対して「敵は小沢民主党独裁政権で、敵を間違ってはいけない」などとある意味仲間だと看做す温情を求めたということは自民党全否定の意味を自ら失わせるご都合主義な行為に当たるばかりか、自身の正々堂々を紛い物(まがいもの)とする逆の態度を取ったことになる。

 実際はそれが舛添の正体ということなのだろう。舛添の正体であるご都合主義は自民党の官僚主導体制、族議員政治、派閥主導政治を批判していながら、先の自民党総裁選に出馬を意図したとき、自民党派閥政治の最大の大御所、派閥体制のトップに君臨していた森喜朗に相談していることにも現れている。当てが外れ、本人の希望通りには行かなかったものの、派閥体制守護神の森喜朗自民党天皇の力を借り、派閥体制に乗って総裁を目指そうとした。そのご都合主義。

 あるいは、「今、自民党に一番 必要なものは民主党の小沢幹事長よりもっと独裁的な指導者だ」と言っておきながら、「政治とカネ」の問題や党運営で小沢幹事長の評判が悪くなると、鳩山政権は「小沢民主党独裁政権」だと露骨な批判に転ずるご都合主義にも舛添の正体は現れている。 

 【追記】(8:55)

 4月23日の夕方、フジテレビの「スーパーニュース」に生出演したときの発言だそうだ。(一部抜粋引用)

 《「新党改革」舛添代表生出演 「腐りきった政党の総裁になったって話にならない」》FNN/04/23 18:15)

 (本当は自民党の組織をそのまま使って、総裁になりたかったと繰り返し言われているが?)

 1つの政党の総裁になるために、わたしは政治をやっていません。厚生労働大臣の時に、自民党のためにやった気持ちはまったくありません。C型肝炎でもハンセンでも、原爆症でも新型インフルでも、国民全体のために働いたわけですから、そんなけちくさい考え方を持っていない。ですから、日本の政治を変えたいということなんで、その腐りきった政党の総裁になったって、話にならないじゃないですか。そういうのを「鶏口となるとも牛後となるなかれ」というわけです。

 「鶏口となるとも牛後(ぎゅうご)となるなかれ」(「大きな集団の尻についているよりは、小さな集団でもよいから、そのかしらとなれ」(『大辞林』三省堂)

 自民党を「腐りきった政党」だと全否定・全面対決しておきながら、その自民党から除名処分を受けると、「敵は小沢民主党独裁政権で、敵を間違ってはいけない」などと“敵は自分にあらず”の全否定の回避・全面対決の回避のご都合主義に動く。

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