仙谷国家戦略担当相の衆参同日選挙発言

2010-04-17 07:19:02 | Weblog

   

 仙谷国家戦略担当大臣が、〈民放の番組収録で、鳩山内閣が退陣する事態となった場合は、新しい総理大臣が衆議院を解散し、夏に衆参同日選挙が行われる可能性もあるという見方を示し〉たと、「NHK」記事――《仙谷大臣“退陣なら衆参同日選挙も”》(10年4月16日 20時56分)が書いている。
 
 仙谷国家戦略担当相(普天間基地移設問題で)「何とかこの問題をしのいで、日本が直面している課題を解決することで、政権に対する信頼を取り戻さなければならない」

 内閣支持率の下落傾向に歯止めがかかっていないことに関連して、鳩山内閣が退陣する事態となった場合――

 仙谷「歴史的な連立政権として、日本がどう生き抜いていくかという大命題を提起し、『1年で申し訳ないけども』ということで、衆参同日選挙によって信を問う可能性はあるし、論理的にはそうなる」――

 「NHK」記事は〈新しい総理大臣が衆議院を解散し、夏に衆参同日選挙が行われる可能性もあるという見方を示しました〉と解説しているのみで、発言の狙いを取り立てて詮索してはいない。

 《衆参同日選「論理的にある」 仙谷戦略相》日本経済新聞電子版/2010/4/16 23:44)が次のように狙いを書いている。

 〈5月末までに米軍普天間基地の移設問題が決着しなかった場合、首相は退陣すべきだという議論が広がることをけん制する狙いがあるとみられる。〉――

 《仙谷戦略相「首相退陣なら衆参同日選になる」》YOMIURI ONLINE(2010年4月16日21時45分)は次のようになっている。

 〈戦略相の発言は、鳩山首相が参院選前に辞任した場合は、衆院を解散して国民に信を問うべきだとの考えを示したものだ。民主党は、自民党が衆院選を伴わずに首相交代を繰り返してきたことを批判してきた経緯があるためだ。〉――

 前者は首相辞任回避の狙いからの発言、後者は辞任の可能性を前提とした「論理的」な原則論からの衆参同日選挙容認の発言と見ている。

 「NHK」記事が仙谷国家戦略担当相の「何とかこの問題をしのいで、日本が直面している課題を解決することで、政権に対する信頼を取り戻さなければならない」と、内閣が鳩山首班で維持されることを願う言葉を伝えているように他の記事も同様の構図を取っている。

 〈普天間問題については「首相は頑張ってしのいでもらいたい」と語り、あくまで首相を支える姿勢を示した。「(自公政権のように)1年ごとに首相が代わると、政党政治そのものへの絶望感が国民に生まれる」との認識も示した。〉(上記日経新聞電子版

 〈国家戦略相は、衆院解散にあたっては財政再建を選挙戦の争点にすべきだとの考えを表明した。同時に「1年ごとに首相が代わるのは甚だ具合が悪い。政党政治に対する不信感と絶望感が国民に生まれてくる」と述べ、当面は鳩山首相の続投を支持する考えを強調した。〉(上記YOMIURI ONLINE

 「日経新聞電子版」は国民新党の下地幹郎国会対策委員長の仙谷発言批判の言葉を伝えている。

 下地「普天間問題でみんな頑張っている最中だ。そういうことを言う閣僚は辞めた方がいい」

 《国民新党・下地氏、仙谷氏の同日選発言に批判「大臣を辞めた方がいい」》msn産経/2010.4.16 23:28 )は下地国対委員長の批判をもう少し詳しく載せている。

 下地「米軍普天間飛行場の移設問題でがんばっている最中に、退陣という言葉が出てくること自体がおかしい。そういうことを言う大臣が辞めた方がいい。不規則発言といわれても仕方がない」

 要するに下地議員は現時点で辞任や衆参同日選挙を判断することに反対の姿勢を示している。

 何しろ国外・県外移設を煽り立てて沖縄県民をその気にさせた張本人たる鳩山首相が国外・県外移設の成算ある青写真を描くことができないままに「5月末決着」をムキになって言い張って自分で自分の首を絞めているような滑稽な場面を演じているのである。「5月末決着」ができなかった場合、責任を取る形の辞任に追い込まれる可能性は十分にあり得る。

 では、辞任後の衆参同日選挙の可能性は「YOMIURI ONLINE」記事が書いているように「論理的にはそうなる」が〈自民党が衆院選を伴わずに首相交代を繰り返してきたことを批判してきた経緯〉を踏まえた民主党の原則論からの発言であるとするなら、閣僚の一人がそのように口にしたことによって、特に国民の信を問わずに首相の首を挿げ替えてきた自民党を除いた野党に衆参同日選挙を迫られる可能性は生じる。

 自民党は仲間の中堅議員から顔が怖過ぎる、時代がかった物言いだ、直して欲しいと言われた大島幹事長が4月13日の党役員連絡会後の記者会見で、〈鳩山首相が米軍普天間飛行場移設問題に5月中に結論を出せなかった場合、「鳩山内閣は追い込まれた状況を打開するために何をするか分からない。(衆院選の公認候補となる)選挙区支部長選任に全力を挙げなければならない」〉(「毎日jp」/2010年4月14日)と7月の衆参同日選挙も想定して準備するよう既に指示を出しているし、今日17日付の「日刊スポーツ」記事――《閣僚や自民幹部から衆参同日選発言相次ぐ》が、「小沢民主党幹事長が起死回生で、若い首相を担いで衆院を解散し、衆参同日選を狙うという話も流れ始めた」(2010年4月17日0時6分)と川崎二郎自民党・国対委員長の発言を紹介して、同日選挙の動きに警戒感を示している様子を伝えているが、参議院選の人材不足から衆議院落選組みの参議院立候補者へと鞍替えを図っているさ中に同日選挙となった場合、衆議院への出戻りに色気を示す議員の出現による混乱や、あるいは鞍替えによって衆議院選挙区に不在が生じたことによる混乱が、それが少人数の混乱であってもマスコミを通じて全国に報じられることによって混乱が拡大されかねない影響、例え前々からの立候補者がいても、準備不足からの混乱も予想され、そういった影響を考えると、実際には好まない同日選挙ではないだろうか。

 民主党にしても、内閣支持率から言って議席を減らす可能性が高く、減らした場合国民新党と民社民党との連立を維持したまま公明党とも連立を組んで絶対多数の維持を図る手もあるが、単独での衆議院307議席の虎の子を1年も経たないうちに減らすのは忍び難いだろうし、4年間は内閣の陣容を変えないと当初言っていたことを楯に、例え普天間移設「5月末決着」が6月にずれ込んだとしても、内閣を維持し、参議院選挙の結果を待って、第一党を維持した場合、国民の審判を得たこととして鳩山内閣の延命を図るという手もある。

 いわば余程の突発事態が生じない限り、衆参同日選挙の可能性は低いように思える。

 川崎二郎自民党・国対委員長が言った、「小沢民主党幹事長が起死回生で、若い首相を担いで衆院を解散し、衆参同日選を狙うという話も流れ始めた」は野党となってただでさえ資金不足に陥っている自民党の(昨年の総選挙で議席を減らして、政党交付金も年初の見込み額から5億1600万円減らして165億9500万円だと「Wikipedia」が書いている。一方の民主党は5億7000万円増の110億6300万円。自民党の借金は100億円超。)選挙エネルギー・資金エネルギーを衆参に分散させ、混乱を生じさせることを狙って「流し」た「話」ということもあり得る。

 このような混乱も自民党からしたら好まない場面であって、衆参同日選挙拒否理由に挙げることができる。

 民主党側が衆参同日選挙を見せかけることで自民党が体力的に十分に選挙を戦えない状況にあると暴露させることができたなら、そのことによって鳩山首相の退陣を求める声が低くなる。

 仙谷国家戦略担当相の「衆参同日選挙によって信を問う可能性はあるし、論理的にはそうなる」の発言も結果的に功を奏することになる。

 あるいは最初から小沢幹事長と意を通じてではなく、暗黙の一致で「衆参同日選挙」で自民党を撹乱しようという意図からの確信犯的な発言である可能性も考えることができる。 
 
 民主党にとって第一義的問題は鳩山内閣の維持であり、鳩山内閣の元、参議院選挙に勝利することだろうからだ。退陣・国民の信を問う総選挙は他に打つ手がなくなった場合のあくまでも最後手段に過ぎないはずだ。

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