鳩山首相の“腹案”を“腹案”足らしめるには

2010-04-24 06:24:26 | Weblog

   ――民主党に衆・参両院過半数のチャンスを――

 勿論、事は簡単ではない。

 在沖縄海兵隊グアム移転約8000人のうちの普天間基地からの移転分を除いた残りのすべての兵力・設備を徳之島に移転させる。普天間基地の丸ごと移転と言ってもいい。

 普天間の残り丸ごと徳之島移転である。

 そして同時併行的に地元の合意をクリアする。

 勿論、一番の難関は地元合意の取り付けなのは火を見るよりも明らかであるが、当初の普天間からの一部移設の障害となっているヘリ部隊と地上部隊の一体的運用可能120キロ以内距離を遥かに超える沖縄本島と徳之島の距離約200キロをクリアする方法は他にはないはずだ。

 普天間の残り丸ごと徳之島移設によって距離の障害をゼロとすることができる。

 徳之島から鹿児島県まで約400キロ、九州の自衛隊基地一部移転はヘリ部隊と地上部隊の一体的運用可能120キロ以内距離をクリア不可能である。鳩山首相の“腹案”を“腹案”足らしめるには、この普天間の残り丸ごと徳之島移設しかないのではないのか。

 これが「腹案だ」と言うには、これくらいの思い切った案でなければならないはずだ。

 尤も鳩山首相がこのような思い切った“腹案”を最初から腹に抱えていたなら、そしてこの普天間丸ごと徳之島移設案を米側に伝えていたなら、米側からヘリ部隊と地上部隊の一体的運用可能距離は120キロ以内だと、普天間の一部を沖縄に残す政府案を踏まえた伝達を受け取ることはなかったろう。

 もしこのような思い切った腹案を抱えていたなら、地元の合意が得られずに断念せざるを得なかったとしても、そのことを理由に現行案に戻ることができる。

 その場合は勿論、名護住民・沖縄県民の合意という新たな難関が待ち構えることになるが、政府の努力不足によって生じた現行案回帰と言うよりも徳之島の民意が向かわせた現行案回帰とすることができ、合意を訴える材料に止むを得なさを付け加えて、成功するか否かは別問題として、方法論としては拝み倒す遣り方も許されることになる。

 このような手続きを踏んでいたなら、21日の党首討論で、「昨年の12月において、もし、『エイヤ』と、辺野古という場所に新たな普天間の移設先を決めていれば、どんなに楽であったか、はかりしれません」などと後悔するようなことを言わずに済んだろう。自分から「国外、できなければせめて県外」と言い出した手前、普天間丸ごと徳之島移設案によって断念することになったとしても、少なくとも「県外」を案としては全面的に実行したことになるからだ。

 バンクーバー冬季五輪と冬季パラリンピック・バンクーバー大会の入賞者が昨23日に首相官邸を訪れて鳩山首相から記念品を贈られたと、《「あきらめないで頑張って」五輪選手、首相に逆エール?》asahi.com/2010年4月23日21時11分)が書いている。

 題名自体は、〈首相との懇談後、カーリング女子の本橋麻里選手は記者団に「私も明確な目標をもって競技に取り組んでいる。プレッシャーのなかでも、あきらめないで頑張ってほしい」と首相にエールを送っていた。〉ということが由来となっているが、問題は入賞者に語った首相の言葉である。

 首相「あなた方が活躍している時は日本が一つになっている」――

 何と客観的認識力のない、甘いことを言っている。

 どんなときでも、「日本が一つになっている」はずはない。人間は利害の生き物で、それぞれに利害を異にし、異なった立場を演じる。就職活動で説明会の予約も取れないまま卒業が間近に迫り、焦っている学生、就職できないまま就職浪人を余儀なくされ、年を越してもなお就職の機会に恵まれない卒業生、不況で派遣を切られて、再就職もできないでホームレスやネットカフェ難民となって、そこから抜け出れないでいる失業者。あるいはその日暮らしもままならない生活困窮者等々にとっては、自分の生活のことで精一杯で、オリンピックどころではないに違いない。存在の不在――彼らの中にはバンクーバーオリンピックは存在しないも同然だった者が多くいたはずだ。

 「国民のみなさんのため」と常々言いながら、そういった存在を一切合財頭から捨象できて、「あなた方が活躍している時は日本が一つになっている」などと、常に欠いてはならない社会に対する厳しい視線を欠いた甘いことを言うことができる。

 「あなた方の活躍が日本を少しでも元気にしてくれることを願っています」と謙虚に言うべきだったろう。もし付け加えるとした、「日本を元気にするにはあなた方の活躍は勿論、何より政治が大切です。政治がしっかりとしていなければならない。まだまだ努力が足りないから、あなた方の活躍を参考にしなければならない」

 認識の甘さがすべてに現れている。

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