千曲市御柱死者事故に見る人災

2010-04-14 06:26:33 | Weblog

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 3月11日午後7時頃に千曲市土口の古大穴(ふるおおあな)神社の境内で、御柱祭の参加者が地面に掘った穴に垂直に建てる予定の御柱が突然倒れ、男性4人が下敷きとなって、1人が死亡、1人が腰の骨を折る重傷、他の2人が打撲を負った。

 《千曲の御柱祭で男性1死亡3人けが 柱倒れ下敷きに》信濃WEB/10年4月12日(月) )

 倒れたのはこの日建てる予定だった2本のうちの2本目。

 御柱は長さ10メートル、直径約30センチ。御柱を建てる穴は深さ1・2メートル、直径80センチ程。建てる手順は穴の中に立て掛けた長さ約3メートルの板2枚に横たわった状態の御柱の根元をあてがい、その板をロープを引いてもそれ以上手前に逃がさずに支える支点としてロープを引きながら柱を建てかけていくと同時に根元を板に滑らせていき、穴の底にスッポと落として建てた状態にする。

 穴の深さ1・2メートルは柱が穴の底に立った場合、誰が支えなくても穴の口が支えて倒れるのを防いでくれる十分な深さということであろう。

 いわば柱の根元を穴の底にうまく誘導しさえすれば倒れることはない。

 原理は単純だが、単純どおりにはいかなかった。記事は原因を、〈参加者によると、事故があった御柱は板がずれて穴に落ちなかったとみられ、不安定な状態のまま、綱を引いていた氏子らに倒れてきたという。〉と書いている。

 「板がずれて」と言うことは、板をしっかりと固定してなかったということである。いわばロープを引いてもそれ以上手前に逃がさずに支える支点の役目を負わせていた板がその役目が果たすことができるように手筈を整えておかなかった人間の手落ちがあったということになる。

 そのために穴に立てかけた板にあてがった柱の根元を板に沿って下方に滑らせていって穴の底にスムーズに誘導させることができなかった。

 「NHK」記事も同じ原因を伝えている。《穴に入らぬまま立ち上げたか》(10年4月13日 7時27分)

 〈穴の内側には板が立てかけてあり、柱を板に当てて、板に沿って立ち上げる予定でしたが、引っ張った際に柱が板から外れて穴ではない地上部分に着地したのにそのまま立ち上げようとしてバランスが崩れ、倒れた疑いが強いことが警察への取材でわか〉ったと伝えている。

 要するにロープを引いて人間の力で御柱を立てる際の最も重要な役目をロープを引く人間ではなく、板こそが担っていた。

 ところが人間は往々にして自分たちこそが最も重要な役目を担っていると思い上がってしまう。自分たちが主役だといった高揚感が先走って、柱を建てることだけを考え、そこに視線を集中させて我武者羅に一気呵成にロープを引いていく。最も重要な役目を担っている板がその役目を果たしているか監視することさえしなかった。

 当たり前のことだが、穴に立てかけた板にまだ横たわった状態の柱の根元をあてがうと、地面と同じ高さから上の位置――穴から出た位置に柱が当たることになる。板をしっかりと固定していない場合、ロープを引くことで柱の根元がそこに力が加わると、板の根元は穴の底で逆方向に逃げて、穴の底を塞ぐ形で板が斜めになる。当然、斜めになった板は柱の根元を滑らせにくくするから、滑らせるまでの時間が余分にかかることになって、柱が不安定な状態を保つこととなる。

 これはしっかりと固定していなかった板の不安定な状態に応じた柱の不安定な状態であり、板は一枚板ではなく、二枚板だから、双方の不安定さが相乗的に呼応してなお不安定な状態を招いて中間からくの字に折れ曲がり柱の根元ががそこに間隙をつくる形で突き破って、穴の底に向かって滑っていかずに穴の外の地面に立ててしまうといったことも起き得る。

 板は根元を土中に打ち込んで固定するか、あるいは穴の逆の壁と板の間に穴の底の位置で何本か突っかい棒を水平にあてがって固定し、尚且つ二枚板だから、板の頭の部分をくの字にも一枚一枚離れることもないように細い板を当てて釘打ちするかして固定することと、柱を立てかけるためにロープを最初に引き始めたとき、板が柱の根元を手前に逃がさずに支える支点の役目を果たしているか監視し、ロープを引く周囲に適宜合図を送る監視者を画像から見ても置いなかったようだが、置いていさえすれば、万が一柱の根元が板からずれたとしても、その時点で素早く中止の合図さえ送れば、柱を穴とは別の地面に建てかけてしまうといったことまでは起きなかったはずだ。

 あるいは板の根元は動かないように固定してあったかもしれないが、「引っ張った際に柱が板から外れ」たということは板2枚の幅は少なくとも柱の直径30センチの倍以上の長さがあったろうから、板に柱の根元をあてがった状態で画像に描いてあるように斜め左右からロープを引けば、左右の引きが少しぐらい違っても、板から外れることはなく、それが外れたと言うことは板の頭のみ固定してなかったことになる。  

 まさしく人間の油断が招いた人災事故ということではないだろうか。

 それが自然災害であっても、初期活動の遅れから多くの死者を出すことになった阪神大震災が証明しているように被害を大きくする多くのことは人災だったり、あるいは救える命を徒に死なせてしまうのも人災だったりする。警報遅れ、連絡間違い、あるいは鹿児島県霧島市で小学3年生の男子児童が天窓から落下して大怪我をした事故のように再発防止の学習とする記憶しておくべき注意事項を風化させてしまう等々、枚挙に暇のない人災が繰り広げられている。

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