へなちょこの私が、東名高速道路を何とか走ってたどり着いたのは、深い緑に囲まれた美術館。
明日から開かれる写真展の搬入にお邪魔した。
箱から写真を出して、壁にかけていく。
(私も少し手伝った)
最後に照明の角度を直し、照度を下げると、ぐっと写真が生きてくる。
ちょうど一年前、ハンガリー中部のソルノクという街で行われたオペラセミナーに同行した写真家の写真展だ。
建物の間の小屋のような本屋の一枚。
レッスンを受けていた建物を休憩時間に抜け出し、この本屋の前を通って、ステージで使う小物を買うために雑貨屋さんに何度も通った。
その一枚だ。
これはホテル近くの河岸の小径。
私も早朝、ここまで散歩して、発声練習したり、イメージ出しをしたりしていた。
何気ない街のスナップ。
ハンガリーでも首都ブダペストへ観光で訪れる人は多いだろうが、こんな地方都市へは用事がなければ行かないだろう。
しかしこんな街にも、市民に愛されている立派なオーケストラがあり、大きなホールがあり、気軽に楽しめるコンサートがたびたび開かれている。
大きなホールだけでなく、
街の公園の夜間コンサートにも市民が気楽に出かけて、並べられた椅子に座って、音楽を楽しむ。
なんて素敵なことだろう。
昨年のちょうど今頃、その街でレッスンを受けて、オーケストラのコンサートに出演した。
「思い出ではなく、自分の実績としてください」と指揮者は言ってくれた。
この写真の中に私もいる。
オーケストラの音に包まれ、激しいリズムに背中を押されて、音楽を演奏する喜びを実感した。
思い出ではなく実績とするには、その後どんな努力をするかだよね。
それをこの写真展は思い出させてくれた。
岡本修治 写真展
豊橋市美術博物館
20240826〜0901