5月1日の外国駐部隊(米軍)の撤退期限を目前にしているアフガニスタンでの戦闘が拡大しているらしい。
アフガンの停戦と駐留軍の撤退はアメリカ政府とタリバンの間で合意されたもので、アフガニスタン政府が参加していないこともあって当初から実効性は危ぶまれていたが、危惧されたような経過を辿っているように思える。さらにはトランプ政権が昨年末に行った一部撤退をタリバンは勝利と捉えていることに加え、アルカイダ勢力の回復やシリア・トルコを追われたイスラム国(IS)勢力も浸透しており、アフガンの混迷は一層深まった感が強い。
イスラム(シーア派)原理主義者の活動を長期的に見ると、1960年代以降に石油資源が世界経済の死命を握っていることに気付いた中東産油国が競ってイスラム色を薄めた急激な近代化政策を採ったことが出発点であると考えている。富の集積は必然的には格差を生むとともに、近代化=欧風化はイスラム回帰の念を一層掻き立てる結果となり、イスラム勢力は1980年代には資本主義(自由主義)と共産主義の2極に次ぐ第3極の勢力となった。言い換えれば、資本主義(キリスト教)、共産主義(無宗教)、イスラム教の宗教対立であり、近代まであらゆる紛争解決の有効な武器であった経済や大砲では根本的な解決は不可能であるように思っている。また、イスラム勢力が世界を混乱させる原因は、教義解釈に起因する宗派対立が顕著であり、もしアフガニスタンがイスラム教国となっても宗派対立はより尖鋭化して内戦状態となることは確実で、その様相はキリスト教徒とイスラム教徒の主導権争いに端を発したレバノン内戦など足元にも及ばない凄惨な様相を見せるであろうことは確実であるように思える。
多神教の日本で、更には無宗教の自分には想像できないものであるが、他の宗教を悪とする唯一神への強固な信仰は、国家、政体、国民の全てを破壊しても守り抜かなければならないものであるのだろう。
米軍の撤退に合わせて完全撤退するとしていたNATOも「適当な時期までアフガンを離れない」としているために、アメリカ軍の撤退も先送りされ、短期間にアフガンが安定するのは絶望的であるように思えるが、気がかりはウイグル自治区でアフガンと国境を接している中国が表立って活動していないことである。国内への飛び火防止を考えれば、中国はアフガンの完全イスラム化は絶対に阻止したいことのようにも思えるが、アメリカとタリバンが共倒れして漁夫の利を得ることを期待しての沈黙であるかも知れない。
日本にもタリバンやアルカイダを支援する組織や個人がいるともされるが、日本には他国のテロ活動を支援した際に処罰される「共謀罪」がないことから、テロ組織の頭脳や後方支援担当者にとっては将に天国であるともされている。
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