もうチョットで日曜画家 (元海上自衛官の独白)

技量上がらぬ故の腹いせにせず。更にヘイトに堕せずをモットーに。

駆逐艦「菊月」、菊月会、護衛艦きくづき

2021年05月23日 | 自衛隊

 帝国海軍の1等駆逐艦「菊月」と「菊月会」について報じられた。

 「菊月」は、横須賀港に保存・係留されている記念艦「三笠」と並んで目にすることができる帝国海軍艦艇として有名であるが、残念なことには海に浮かぶ雄姿ではなく、ガダルカナル諸島のガブツ島近海に着底し僅かに上部構造物が露出した状態である。
 菊月の艦名は3代にわたって継承されている。
 初代菊月は1907(明治40)年に就役、1930(昭和5)年に除籍した神風型駆逐艦(2代菊月就役後に艦名を譲り第12号掃海艇)で、主要要目は
  排水量/450t、全長/69.2m、全幅/6.6m、主機/レシプロ機関6,000hp、速力/29kt
 2代菊月は、一等駆逐艦睦月型の9番艦で1926(大正15)年11月に「第31号駆逐艦」として就役、1928(昭和3)年8月1日附で「菊月」と改名された。主要要目は
  排水量/1,445t、全長/103m、全幅/9.2m、主機/艦本式タービン38,500Ps、速力/37.25kt
  2代菊月は、開戦劈頭のグアム島攻略作戦に参加の後、1942(昭和17)年4月30日、ツラギ攻略部隊の一艦としてツラギ泊地で旗艦「沖島」に横付けして燃料搭載中に空襲を受け、魚雷1本が「菊月」機関室右舷に命中、12名戦死・22名負傷の被害を受けた。菊月は特設駆潜艇(通称:駆特)「第三利丸」に曳航されてガブツ島の海岸に擱座したとされている。
 3代「きくづき」は1968(昭和43)年3月27日に「たかつき型」2番艦として就役、2003(平成15)年11月除籍、海上自衛隊で初めてのFRAM(艦艇近代化工事)を受けたために除籍時の艦齢は当時では稀有の35年であった。主要要目は
 基準排水量/3,250t(FRAM改装後)、全長/135.5m、最大幅/13.4m、主機/三菱EW型衝動式蒸気タービン60,000PS、最大速力31kt(FRAM改装後)である。
同艦は3度の遠洋航海(うち2回は世界一周)、派米訓練等に従事し、総航海時数は67,678時間、総航程は79万1,213.4浬(地球36.5周)に達したとされていた。

 私事で恐縮であるが、入隊後8年間は1940年代に建造された米軍貸与のフリゲート艦とフレッチャー型駆逐艦に乗艦していたために、最新鋭国産艦「きくづき」への転属・・乗艦は30年間の技術進歩を一足飛びに体感した出来事であった。夏季には室温が50℃を超えることもある艦から全艦冷暖房艦への転属は、将に別世界への移住であった。
 「菊月」を語り継ぐために「菊月会」が結成され、2017年から第四砲身の揚収や修復整備を行い、2020年6月27日に第四砲身は舞鶴市の大森神社に奉納されたことを知った。
 菊月乗員の奮闘と菊月会の活動に敬意を表するとともに、自分に浦島太郎の高揚感を与えてくれた「きくづき」に感謝の念を込めて。合掌。

2代「菊月」

3代「きくづき」