中国人の秘密裏の台湾上陸が報じられた。
台湾への偽装上陸は2件と報じられているが、いずれもネットで購入したと云う新品のゴムボートが使用されていること、航海に必要な水や食料を所持していないこと、発航地などの供述にあいまいな点が多いこと、何よりも、中国が脱出等に対して厳しい監視体制を敷いていることから、自発的な脱中ではなく中国当局が密航を偽装して台湾側の監視体制を探る意図のもとに行われたものと見られている。
これまでも、祖国の急激な体制変革に不満を持つ守旧人や新体制の圧迫・戦禍を逃れるため等の理由から海路脱出する事例があった。
古くはキューバ革命や南ベトナムの崩壊で、近年ではチュニジアやリビアから、いずれも装備が十分でない船に大勢の人が乗るもので、所謂ボートピープルと称されていた。また、ボートピープルの大半は本国の黙認(奨励)の下に行われるのが一般的で、国は海上監視を緩める期間を公表したり、中には海軍艦艇が難民船を沖合まで曳航して放逐したケースもある。
今回の台湾上陸に使用されたボートは、台湾近海まで大型船で運ばれた可能性が指摘されているので、台湾の海軍・公安関係者にとっては新たな監視対象や監視要領を余儀なくされることになる。
日本でも日本海側に漂着する木造漁船の一部は北朝鮮の工作船とされており、船内で発見される遺体が少ないことから工作員自体は日本潜入に成功したともされていることを考えれば、台湾が今回の密航偽装事案を日本以上に警戒するのは当然であろう。さらに、日本に潜入した北工作員には朝鮮総連や在日の支援があるとされるが、台湾に潜入する中国工作員には本省人のネットワークや国民党中国統一派による日本以上に強力な支援が予想されることから、台湾政府内には今回の偽装上陸を台湾着上陸の前哨戦と捉える向きもあるとも伝えられている。
自国の主張に沿って既成事実を積み上げるというのは中国の常套手段であり、尖閣に対しても①何らかの手段で中国人を上陸させる。→➁中国人の救助・保護として海警部員が上陸。→③海警部の活動のためにヘリポートや桟橋を仮設。→④仮設物を補強して恒常施設に強化。などは既に中国のシナリオ・作戦計画として習近平主席の机上に乗っているものと思える。
日本は、環境省の衛星画像による動植物の生態調査や沖合からの視認調査で、実効支配のお茶を濁しているが一日も早く、上陸調査するとともに観測拠点の仮小屋程度は設置して真の実効支配を形で示す時期にあるように思える。イイスラエル・ハマス・イランはバイデン大統領に中東政策の踏み絵を迫っているが、日米同盟の本気度を示す意味からも尖閣諸島問題に攻勢を仕掛ける絶好の時期ではないだろうか。