もうチョットで日曜画家 (元海上自衛官の独白)

技量上がらぬ故の腹いせにせず。更にヘイトに堕せずをモットーに。

飛鳥Ⅱ・タラップ・ギャングウェイー2

2021年05月06日 | 自衛隊

 今回は、タラップの位置や乗・下船に関するあれこれである。

 明治以降の洋式海軍創設と共に取り入れられた風習と思うが、船(軍艦)では指揮官や乗客の乗・下船は右舷から、左舷は貨物や死者のために使用するとされている。正確な観察によるものでは無いが、帆船映画「マスター・アンド・コマンダー」のラッセル・クローや、「パイレーツ・オブ・カリビアン」のジョニー・デップは右舷から颯爽と乗り込み、水葬のシーンでは左舷から遺体を海中に投下する場面が多いように思う。
 近年の海上自衛隊ではその風習も半ば廃れており、自分も知識としては知っていたものの、40代で初めて向き合わされた経験がある。
 ある年の練習艦隊の内地巡航行における某基地の入港歓迎行事計画に参画することになり、練習艦隊旗艦の左舷横付けをベースに諸行事を立案した。幕僚間の擦り合わせや5・6人の上位・上級者の合議印を貰って決裁を仰ぐこととなったが、説明を聞いた決裁者の「(練習艦隊)司令官に左舷を使用させるのか?」の一言で、計画は一からの遣り直しとなった。自己弁護ではないが、調整した幕僚や合議印を押した上位者も、横付け舷の意味するところを知識としては持っていただろうが、自衛隊の係留岸壁の遣り繰りを肌身で感じていた経験から、何時しか横付け舷について注意を払わ無くなっていたものと思われる。以来30年、海上自衛隊における横付け舷に関する慣習はどう変化したのだろうか。

 軍艦に乗艦(訪問)する場合の作法にも知っておいて欲しいことがある。舷門と呼ぶ艦の玄関は舷梯の先に設けられ、舷門には当・副直士官、当直海曹、当直海士が立直していることは知られている。舷門の立直者に挨拶し来意を告げることは当然として、艦に足を下ろす前に、旗国への好悪感情は別として艦尾に掲げられている国旗若しくは軍艦旗に対して敬意を示す必要がある。敬意を示す方法については、軍人は挙手の礼で、民間人は頭を下げる又は胸に手を当てることが一般的である。訪問者を迎える艦にあってもイギリス海軍(オーストラリアやカナダのような女王陛下の海軍を含む)では、「長一声」の号笛を吹いて歓迎や敬意の念を示す。また、下船(退艦)する場合には、逆の順序で謝意を表すことになる。

 過去、何人もの民間人を送迎したが、OBやOB同伴者以外で、艦尾に向かって敬意を示す人に対しては、訪問の目的は何であれ、それのみで親近感と敬意を抱いたものである。
 軍艦に対する商船の敬礼(2019.6.16)で書いた慣例や、軍艦への乗・下艦の慣例という麗しい慣例・慣習、軍艦に課せられて旗の明示という国際法を無視してでも、自衛艦旗の掲揚に難癖をつけた韓国政府と韓国人の国際感覚の欠如や無礼が際立って見える。