福島原発事故メディア・ウォッチ

福島原発事故のメディアによる報道を検証します。

[速報] 学校の放射線基準見直しのごまかし:『20分の1』は『3.8分の1』と同じのわけがない!

2011-08-24 23:39:31 | 新聞
読売新聞によれば、文科省は『学校での屋外活動を制限する放射線量としてきた毎時3・8マイクロ・シーベルトの基準を廃止し、今後は同1マイクロ・シーベルトを目安』とするとしたそうだ。NHKは同じ事象を『文部科学省は年間の積算で20ミリシーベルト未満とする数値を廃止することを決め、新たな目安を年間1ミリシーベルト以下とすることを福島県に通知すること』としたそうだ。いったいどうなっているのだ。毎時1マイクロは、毎時3.8マイクロの3.8分の1、そして年間1ミリは年間20ミリの20分の1、同じ基準見直し『目安』の改定がどうしてこんなにケタが違うのだ。そしてそのことにどうしてジャーナリストたちは気づかないのだ?ジャーナリストたちは割り算もできないのか!

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気づかないどころか、読売は、

『毎時1マイクロ・シーベルトは、年間の積算放射線量が1ミリ・シーベルトを超えない目安と位置づけ、』

と毎時1マイクロ=年間1ミリという図式を描いている。どうしてこうなるのだ。4月に、毎時3.8マイクロ・シーベルト=年間20ミリ・シーベルトとした算出過程を思い出してみよう。

毎時3.8マイクロの環境に24時間いたとしたら、3.8マイクロに1年=8760時間をかけて、約33,000マイクロ=33ミリ・シーベルトになるが、24時間外にいる子どもはいないから、屋外・屋内生活の比率を考慮して、これの60%とし、20ミリ・シーベルトという値を得たのだ。同じ計算方法を用いれば、毎時1マイクロは年間5.3ミリ・シーベルトになる。計算をやり直さなくても、3.8マイクロが1マイクロになるのだから、約4分の1強になると思えばいい。だからどうみても、『毎時1マイクロ・シーベルトは、年間の積算放射線量が1ミリ・シーベルトを超えない目安』とはならないのだ。

一方、年間20ミリあらため年間1ミリから出発したNHKも、

『原則として年間1ミリシーベルト以下とし、この目標を達成するための新たな目安を1時間当たり1マイクロシーベルト未満にすることにしています』

と結局は、読売と同じ数学的根拠のない等式に行きついてしまう。こんなことをする記者たちは、単純な割り算もできないのか、できないことにして文科省を批判することを避けたいのか、私たちにもこんな単純な割り算をさせないようにして文科省のごまかしに加担しているのか。

共同通信日経の記事をみると、文科省のごまかし過程がもう少し具体的にわかる。

『毎時3・8マイクロシーベルトの基準を廃止し、毎時1マイクロシーベルトを新たな目安とし、・・・文部科学省は「年間1ミリシーベルトを目指す」とする目標を示しており、これに対応した措置』(共同)
『放射線量を年間1ミリシーベルト以下に抑える目標を示し、校庭などで毎時1マイクロシーベルト以上を計測した場合は表土の除去費用などのほぼ全額を補助することを決めた』(日経)

共同・日経によると、「年間1ミリ」というのは、これまでと同じ努力目標に過ぎない。変えたのは、毎時の基準の方で、毎時1マイクロで具体的なアクションを起こすということだから、この点では、読売が正しく、『年間の積算で20ミリシーベルト未満とする数値を廃止することを決め、新たな目安を年間1ミリシーベルト以下とする』と報じたNHKが(意図的に?)誤っていたことになる。

ところが、ことはそんなに単純ではない。というのも、日経によれば、文科省は、

『同省によると、校庭が毎時1マイクロシーベルトの場合は子供が学校で受ける放射線量は年1ミリシーベルト未満になる見込み』

と記者たちに言っているからだ。文科省はここで、記者たちに「めんどくさい割り算はしないでね、以前の毎時3.8マイクロ=年間20ミリと、今度の毎時1マイクロ=年間1ミリとは比較しないでね」と言っている。そして、記者たちは、だれ一人としてこれに向かって突っ込んだ質問をした形跡がない。共同はこの不整合を「目標に近づいた」とヨイショし、日経は、毎時1マイクロ=年間1ミリと言ったのは文科省、おれのせいじゃないよ、と言い訳している。そして、読売とNHKは、「どーせ、わかんねえよ」とたかをくくって、堂々と文科省の手先になってだまそうとしている。それとも、こいつら自身が本当に「わからなかった」のかもしれない。

上杉隆・烏賀陽弘道『報道災害[原発編]』では、大手メディアの記者連中がいかに当局一辺倒で、無批判に提出されたものをいただくだけで満足し、突っ込んだ質問をしようとする独立系記者を会見場で黙らせようとするか、生々しく描写している。「独りよがりの質問なんかしてんじゃねーよ」とか凄みをきかせて現場で脅しをかけるそうだ(特に読売と日経記者が強烈らしい)。烏賀陽氏はこれを『報道の劣化』とか『クエスチョニングがない』とか批判していらっしゃいますが、要するに御用聞きのヨイショ精神と、らくして仕事を片付けようという特権保持者のさぼり根性でしょう。もう、言うまでもないのだが、

大新聞・テレビなんて、絶対にあてにしてはいけない!

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