福島原発事故メディア・ウォッチ

福島原発事故のメディアによる報道を検証します。

事故の「検証」と称する茶番が始まっている――事故調査委員会とIAEA報告

2011-06-05 18:11:31 | 新聞
 5月24日、「原子力の平和利用を推進」する機関、IAEAの調査団が日本にやってきた。
 5月27日、政府の事故調査・検証委員会のメンバーが発表された。
 6月1日、IAEAの報告書の暫定的要旨が政府に提出、公表された。

 IAEA報告書暫定要旨について各紙とも、『津波の危険性を過小評価』と指摘した、と報道した。
毎日:「津波の危険性が過小評価されていた」などと指摘
読売:「津波の想定は過小評価だった」と指摘
日経:「津波の被害を過小評価していた」と断じた
朝日はさらに踏み込んだ。といっても、自前の記事ではなく、時事通信とロイターの記事を引用して、事故原因をはっきり津波と結び付ける記事を2本も載せている。「14メートルを超える津波でほぼ全ての非常用電源を失ったことが事故の要因と認定」(時事通信社)、「原発事故の要因を、5.7メートルの防護壁を超える津波を想定しておらず、非常用電源を失ったことだと指摘」(ロイター)。

 一号機も二号機も三号機も、津波の前に、地震で損傷があったと東電が認めたという報道が出ていた。だが「国際原子力コミュニティー」(マフィアは自分のことをこう言うんですね。IAEA暫定要旨外務省仮訳)の権威筋からお墨付きを頂戴して、これで晴れて、原因は津波です、と言えるようになったわけだ。

 IAEAはもちろん事故調査・検証委員会にも、じゃこの線でよろしく、ということで報告書をおいていった。委員会のほうも当然最初からそういう人選になっている。

 尾池和夫前京大総長は「原子力ルネッサンス懇談会」改め「エネルギー・原子力政策懇談会」のメンバーに名を連ねている。

「原子力ルネッサンス懇談会」は第1回会合が2月に開かれていた(設立趣旨によれば、「官民一体で[世界の原発新設]の受注を獲得することが日本経済の成長戦略にとっても不可欠」なので、「日本国内の壁をどう取り除いていくかについて、検討する場」だったそうだ)が、「ルネッサンス」というせっかくの香り高い名称は震災後、「エネルギー・原子力政策」というみもふたもないものに変わり、「今後の展開についての考え」も変わっている。

 『今回の事故に対して世界的にも原子力発電の見直しの動きが起きています。国内でも、・・・昨年「エネルギー基本計画」に掲げた政策目標が、このままでは見直しを余儀なくされる可能性が高まっています。
 ・・・このままに現状に手をこまねいているだけでは、戦後65年営々として築いてきた日本の科学技術への世界的な信頼を崩壊させかねず、いまこそ日本がもてる科学技術の粋を結集して、原子力発電再興計画を練って行かなくてはならないと思います。』


 気を引き締めて原発推進巻き返しにかかるのだから、カタカナ語なんぞで気取ってる場合ではない。

 この懇談会は、事故の原因を「津波」「津波」と繰り返している。

『東京電力福島第一原子力発電所はこれまでにない空前のマグニチュード9.0の地震には耐えたものの、十数㍍の高さの津波襲来で、原子炉建屋の非常用電源が破断して、原子炉内部の冷却が困難になり、放射性物質の飛散、周辺住民の避難という事態が起き、今なお予断を許さない状況が続いております。
 ・・・巨大津波による非常用電源などの破損による「冷やす」「閉じ込める」が、機能しなかったことは技術的に十分に検証されなくてはならないことと思われます。』


 事故調に入ろうと思ったらこういう組織のメンバーでないといけない。

 さらにもう一人の事故調委員、高須幸雄前国連日本政府代表部特命全権大使は、かつてIAEA常駐代表を務め、天野之弥現IAEA事務局長と一緒に働いたこともあり、IAEAとのパイプは万全だ。

 故高木仁三郎さんは科学技術庁の役人から、「事故調査では委員会に入ってもらうわけにいかない」と露骨に言われると書いておられました。『高木さんのような人がいると結論がどこに落ちつくかわからないから、政府としてはあなたを委員に選ぶことはできない』(『原発事故はなぜくりかえすのか』)

 事故調の委員の方々は、「結論がどこに落ちつくか」政府が安心できる方々というわけです。

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