福島原発事故メディア・ウォッチ

福島原発事故のメディアによる報道を検証します。

ヤクザ化する権力と地元、そして利権労組:大飯原発再稼働をめぐる恫喝と居直り

2012-05-31 00:47:32 | 新聞
5月30日夜のニュースでは、野田首相が『首相の責任で』大飯原発の再稼働の決断を下すべく、(仙谷つき)4大臣会議を開くという報道をしていた。ここしばらく電力不足のおどしから、「電力会社の都合」という居直りにいたるまで、なにがなんでも再稼働というがむしゃらな姿勢が露骨だった原発マフィア政府と電力会社が、ついに法治国家の正当性さえかなぐり捨てて何でもありの強硬手段に出てきている・・・
=====

野田は17日段階では、

『再稼働の必要性について「突然停電になった場合、人工呼吸器に頼っている人の人命にもかかわる。・・・」と強調し』、

と、命にかかわる電力不足、というすでに馬脚があらわれたシナリオに頼っていた。しかし、その1日前の16日に『再稼働の是非を政治判断する野田佳彦首相と三閣僚の会合に参加している仙谷由人政調会長代行は』、自分がメンバーに入ってもいない民主党の原発関係の『二つの作業部会・・・の合同会議』に大きな顔でしゃしゃり出て、

『自ら発言を求めて「需給問題とは別に、再稼働せず脱原発すれば原発は資産から負債になる。企業会計上、脱原発は直ちにできない」と強調した』

という。仙谷は、再稼働は電力不足のためではなく、関電の経営のためだ、とはっきり言ったのである(枝野も仙谷の尻馬に乗って、18日には『「コスト面から電力会社が原発を動かしたいと思うのは当然」と電力会社を擁護した。』という)。

安全でなかろうが、必要でなかろうが、関電の金のために原発は動かす、と。このことは、東京新聞の【こちら特報部】が報じた関電幹部の発言、

『幹部明言「電力需給の問題とは別」・・・(大阪府市エネルギー戦略会議の)委員の一人が「夏の需給対策のために再稼働するわけではないのか」と質したのに対し、関西電力幹部は「安全な原発は稼働させていただきたい。需給の問題とは切り離して考えている」と発言。電力需給は二の次という”本音”を漏らした』

すなわち、関電は、再稼働が認められないようなら、『経営危機必至』となるのだ。

問題は金、という『本音』。だから、金のためには何でもするという、ヤクザのおどしの論理が働く。人命を奪う大停電、企業の海外移転と失業、ニッポン人の『集団自殺』。どすの利いた大声の恫喝に、利権の地元が唱和する。美浜町

『関西に電気のありがたさを知らせるため、計画停電を最重要課題にすべきだ」と』

こともあろうに、保安院と関電に『要請』したそうだ。テメーたちのやりかたじゃ手ぬるいわい、ぐっとしめてやらんかい、ぐっと!と人命の喪失、失業、自殺、蒸し風呂のような地下鉄、だらりと溶けたアイスクリームであふれた冷凍庫・・・、計画停電で思い知らせてやれ!

原発たかり県の地元知事様も負けてはいない。再稼働するのに、『関西の同意は待っていない』と、先月、枝野大臣にごねたときとは180度転換して、しびれを切らした利食いに走る。そして、空威張りの強気のおどしも忘れない。

『「消費地が電気は必要ないとか、国も必要性を感じないというならば、無理してその地域のために動かす必要はない。」』

いらないっておっしゃるんなら、よろしんですよ、だって、どっちにしろ、関西の同意も関西の需要も関係なく、自分たちと関電の利益のために、大飯は再稼働するんですから。

西川・福井県知事は、4月までは、おそらくまだかっこをつけていた。滋賀や京都や大阪に行くと肩身が狭い、などと言う県民の声もあったのかもしれない。しかし、ここまで待たされて、しかも政府のいちいちの工作、『安全確保』の取り繕いも、『電力不足』のプロパガンダもことごとく失敗しては、もう四の五の言ってられない、一二ノ三で再稼働。福井県の産品が不買運動にさらされても、温泉地や観光地がボイコットされても、無実の県民が全国で『不当な差別』に直面しても、知ったことではない。とにかく目前の原発マネーがなければやっていけない。浜岡停止で、静岡県も苦労しているではないか。この、田舎の過疎県には不似合いな電通ビルのような県庁舎も、しょうしゃなアールデコ風の街灯も、温水プールも、県民ホールも、駅前広場もみんなみんな錆びついて朽ち果ててしまう。

さて、原発マネーの上納金で潤う「じもと」と同じヤクザ根性で恫喝しているのは、現場の上りからうわまえをはねている労組も同じだ。東電労組の委員長は、脱原発などとほざきくさる『「裏切った民主党議員には、報いをこうむってもらう」』と、本格的なヤクザ語法で脅している。選挙の時には、きちんと金を回してるではないか、票だってまとめてやったじゃないか、それなのに、おれたちのボーナスをへらすようなことはさせないぞ、と。

ちなみに、労組と本物のヤクザが原発労働の現場で持ちつ持たれつであることは予想にかたくない。国家による規制産業の権化、労働力流動化日本の『最後の楽園』(渡邊正弘氏)の特権的組織労働者である東電労組組合員は、どんな現場でも線量の高いところには決して出て行かないそうだ。下請け、孫請け、そのまた下の下にはヤクザでなければ片が付かない領域がある。

ちなみに、この民主党議員へのヤクザ恫喝はよっぽどきいたのではないか。東電労組組長が裏切り者はただではおかぬ、と言った翌日には民主党は大飯再稼働に勇み足を一歩踏み出した。野田首相のところに、何とかしてくれと泣きついてきた議員さんがいっぱいいたのだろうか。

ヤクザまがいの暴力的な恫喝と、唾を吐きかけるような侮蔑の態度は、見返りとして、暴力的で冷酷な反応を生む。そうだ、やっぱり東電は破たん処理して、ご立派な正規雇用組合員社員の方がたがすべて路頭に迷うようにすべきなのだ。優秀な息子のゆうだい君が、学費数百万円の有名私立に通い続けることができず、転校した名もない公立校になじめずいじめにあってもしかたがない。それを苦にして利根川に身を投げておぼれていても私は手を差し伸べない。お父さんお母さんが、田園調布の一戸建てのローンが払えず、埼玉県のマンションに引っ越しても、それがなんだ。家を追われた、あるいは家を出ることもできずにとどまっている何万、何十万という福島の人の困難にくらべたら。

おおい町の原発が爆発しても、隣接した滋賀県に住む私はおおい町民を助けたくない。福井県民を助けたくない。原発をえらんのだから、原発のところに帰れ!と鼻先でドアを閉める。

こうした「恫喝の代償」に福井県も気がついている。東京新聞によれば、福井県の原発事故避難計画では、大飯原発事故時には、住民は他の原発が多数ある日本海沿岸の原発銀座を通って県北部に行かなくてはならない。直近の京都府や滋賀県には足も踏み入れない。私のように、「原発に帰れ!」という怒りで我を忘れた心ない人々がおおい町民を(そしてその何の罪もない子どもたちを)いわれのない差別でしいたげるだろうことを、予想しているのだろうか。安全性と必要性について、納得がいっていない、と知事が先頭きって言明しているこれらの府県にたいして、おたくらの『同意は待っていない』で再稼働すると凄んでいる福井県知事としては、避難計画で援助を求めたりして、また、『安全性が…』などと突っ込まれるのがいやなのか。いずれにしても、生きるか死ぬかの避難計画でさえ、住民の命など後回し、原発利権をめぐる深慮遠謀が先に立つ。

ヤクザ文法による恫喝はヤクザ論理による暴力を生む。だがしかし、こうした下層民同士の対立をしり目に、かいらい野田を使った原発マフィアによる正当性無視の再稼働ごり押しというヤクザ政治の結末を、息をひそめてじっと見守っているやつらがまだいる。国家百年の計を手中に握る高級官僚の皆様だ。大飯再稼働が政治的・行政的正当性を欠き、周辺地域の疑義・反対を押し切り、国民の拒絶反応を無視して、こんなふうにいとも簡単に『4大臣』プラス仙谷でけりがつくなら、結局この先なんだって都合のいいように決められるではないか。

奴らは、もう「まともに見えるプロセス」をとりつくろう努力も放棄してしまっている。やろうとしても、最近の原子力委員会の裏会合のごとく、いつでもどこでもぼろが出る。だから、『首相の責任』でやりたいように決める。原発も消費税増税も憲法改正も。景気が悪くなったら戦争でひと稼ぎ・・・。脱原発の行方は、原発以外の点でも私たちの将来を決める。原発を止めることができなければ、何もとめることができないだろう。軍部(『昔陸軍、今東電』というのだそうだ)の暴走を、町がすべて焼かれ、原爆二発が落ちるまで止められなかったように、原発マフィアやその他もろもろのマフィア複合体のむき出しのやりたい放題を、やはりむき出しの核燃料とともに、奴らが自壊するまで耐えなければならないのか。

最新の画像もっと見る