忘れえぬ体験-原体験を教育に生かす

原体験を道徳教育にどのように生かしていくかを探求する。

雪の供物

2010年03月11日 | 原体験をめぐって
私の育った村には立派な神社がある。
子供たちの遊び場であった。
杜は椎や杉、欅の大木が生い茂り、真夏でもすずしい。

小中学生の夏休みは学校から、早朝はラジオ体操
朝食後は朝学習が課せられ、神社や境内がその会場にあてられていた。
午後は自由でも、何かと杜に集まって遊ぶことが多かった。
そうしていつしか杜は子供たちの拠り所になっていたのである。

大人になって郷里を出た者も帰省すると必ず杜に行くことが多い。
私もそういう青年の一人になっていた。
学生の頃、実家には姪っ子が生まれていた。
帰省するとどこにでもついて来て、一日中一緒にいる子だった。
ある春休みの帰省時、2才か3才の彼女を連れて杜に行った時のことである。
まだ雪が残って大きな塊で山になっていた。

「じゃ、お参りしようね。雪あげようか。」
と言いつつ、おにぎりにして姪に差し出した。
私も一つ作り、一緒に拝殿の階段上に捧げた。

「お参りするよ。手合わせて。」と、
姪っ子も手を合わせた時である。
一陣の風が吹いて、椎のこずえが音を立てるや、

「こわい、こわい・・・・・」と姪っ子は何かを感じているようだった。
「大丈夫、大丈夫・・神様、きたね・・」と言いつつ抱き上げると、
姪っ子はしがみついた。

その姪っ子は、今は2人の青年の母で、
旦那の経営会社のサポーターとして、忙しくしている。
しかしその時のことはよく覚えているそうである。

(KENJI)