忘れえぬ体験-原体験を教育に生かす

原体験を道徳教育にどのように生かしていくかを探求する。

実践コミュニケーションをめぐって(5)深い「傾聴」の仕方を学ぶ

2011年12月31日 | 実践コミュニケーションの講義をめぐって
前回の「偏愛マップ」を用いたグループ・ワークは、学生の感想を読んでもらうとわかるように大成功であった。人は誰でも自分が好きなことを語ることは無上の喜びなのである。そこを「偏愛マップ」(好きなものマップ)で意識的に取り上げて、そこから学生相互のコミュニケーションを深めていく、何よりもコミュニケーションの楽しさを味わってもらうというねらいはみごとに成功したようだ。

実践コミュニケーション第4回目は、「深い傾聴の仕方を学ぶ」ということで、参加学生同士が互いに少し内面に踏み込んだ話ができ、同時にカウンセリング的な「傾聴」の大切さを学び取ってもらえるようなプログラムにした。

また学生に配布したプリントより抜粋する。

まずはカウンセリング的な「傾聴」の意味や基本を示す。
1)深い「傾聴」の仕方を学ぶ
①傾聴は、「耳を傾けて熱心に人の話を聞くこと」

②より具体的には、互いに次のような変化が起きる過程

話している人‥‥安心できて、聞き手を信頼して、自分を理解してもらえると感じ、さらに内面を話して理解してもらいたいと感じる。

聴いている人‥‥話している人の考え、気持ちを理解でき、理解していることを相手に伝え、その人を尊重できるようになる。

③深い「傾聴」が成り立っているとき、語って人は、気づき、変化し、成長する。聞い聴いている人も、それに伴い、変化し、成長する。

④傾聴のコツ
ア)受容‥‥「うんうん」とうなずいたり、相づちを打つ。
  
イ)支持‥‥「そうだね」「それはつらいね」と理解を示す。評価・批判はしない。
  
ウ)確認‥‥「○○と感じているのですね」「○○ということですね」と返す。
  
エ)質問‥‥相手の気持ちに沿って質問する。話を引き出す質問を心がける。
  
オ)沈黙‥‥邪魔しない。待っている。しゃべりすぎない

2)「傾聴力」を高めるワーク

《やり方》

①自分の「元気マップ」の作成。自分自身の精神的な支えや元気の素、リラックスできたり癒しになったり勇気を与えてくれる人物、グループ、こと、もの、場所などを、自分を中心として書き込もう。「偏愛マップ」で書き出したなかで癒しや元気の素になっているものはどんどん書き込もう。
 
②ペアを組み、話し手と聞き手を決める。話し手は「元気マップ」を説明する形で3分間、自分のことを語る。聞き手は、一切の反応をせず、ただ黙っている。
 
③同じ話し手が、同じ話でいい(発展させた話でもよい)から「元気マップ」を使って自分のことをさらに3分間、語る。聞き手は、「傾聴のコツ」のア)イ)などで反応しながら話を聴く。(相手の眼を見、相手と呼吸を合わせるとなおよい。)
 
④役割を変えて同じことを行う。
 
⑤ペアを変えて、②③④を繰り返す。
 
《ねらい》
①「元気マップ」を描き、人に語ることで自己理解を深める。 

②無反応でいられた場合と、充分に受容・支持された場合の違いを確認する。

③日常生活の中でも、うなずいたり、相づちを打ったりしながら聴くことの大切さを確認する。


《「元気マップ」を用いたワークの感想》(一部)
★「元気アップ」を作ることによって自分というものが浮き彫りなった気がした。ペアの人の元気マップを見たり聞いたりするのも楽しかった。
★みんなそれぞれが自分がすきなものに元気づけられて今があるんだと思います。
★話しかけずらそうな人でも普通に話すことができた。話すことによって、その人のイメージが変わった。やっぱり話すことは大切なことだと思った。
★相づち、うなずきって本当にささいな事だけど相手からしたら嬉しかったり、安心感があるから大事なことなんだと感じた。
★いつも何気なくふつうに行っている相づちや反応は人と人の間をうまくつなぐ大切なものなんだと思った。
★相手が話している時は相づちをうとうと思った。無反応だと話していても楽しくなかった。自分も相手も楽しく雑談できるように考えていきたいです。
★みんなの好きなことがさらに知れたと思う。共通の好きなものがあるとより盛り上がった。
★改めて人と話すことの楽しさを知れた。とても楽しかった。またやりたいです。


実践コミュニケーションをめぐって(4)「偏愛マップ」を用いて質問する

2011年12月29日 | 実践コミュニケーションの講義をめぐって
実践コミュニケーションの講義第二回目は、ペアを組んでの「偏愛マップ」による対話が中心であった。相手が何を愛し、何に関心をもっているかを意識し、そこから話を始めると対話が盛り上がり、深まる。実際の「偏愛マップ」が手元になくとも、相手の脳内「偏愛マップ」を推察しつつ話しをすれば、コミュニケーションは盛り上がる。

三回目の講義(実習)は、前回全員が書いた「偏愛マップ」を用いつつ、同時に「質問力」を高めるというテーマを加えた。以下は、学生に配布したプリントより抜粋したものである。

1)コミュニケーションを深める「質問力」(参考:斎藤孝『質問力 ちくま文庫(さ-28-1)』)
①「コミュニケーション」の秘訣は「質問力」にあり。
 (質問は網だ。しっかり作っておけば、いい魚がとれる。)
 ※聞き方がうまければ、自分に話題が乏しくても、相手の深い話を聞けたり、聴くことで相手をサポートできたり、有益な情報をもらえたりなど、コミュニケーションを深めることができる。

②相手の苦労や積み重ねてきたものを掘り起こすような質問は、対話が深まる。

③相手の奥底にあるような経験を引き出すような質問は、対話が深まる。

2)「偏愛マップ」によるワーク(斎藤孝『質問力』を参考にして改変)
《やり方》
①「偏愛マップ」を示しながら、「自分が愛するもの」について3分以内でスピーチできるようにメモを取る。(プリント中のシートを使用)
②3グループ(1グループ6~7人ほど)に分かれる。
③グループ内で順番に、自分の「偏愛マップ」を示しながら「自分が愛するもの」について3分以内でスピーチする。
④一人のスピーチが終わったら、他のメンバーがスピーチの内容に関して一つずつ質問していく。
⑤スピーチをした人は、それらの質問から、自分が答えたい、答えやすいと思った質問二つを選んで答える。そのあとなぜその二つを選んだかを説明する。
⑤ ③④⑤を全員が終わったあと、どんな質問が一番答えやすかったかを話し合う。また誰のスピーチがいちばんうまかったかを全員で話し合って決める。
 
《ねらい》
①「偏愛マップ」を用いることで、自己紹介のスピーチを、これまでと違った角度から工夫して行う。
②どんな質問が、会話をより深めたり、相手のより深い話を引き出したり、相手が本当に話したいことに沿うのかを確認する。(グループで確認しあうことが大切)
③どんなスピーチがよいスピーチかをみんなで確認する。


《「偏愛マップ」を用いたグループ・ワークの感想》
※感想は、記入されたものをすべて掲載した。
★今回グループをやってみて、みんなそれぞれ楽しいことや面白いことをアピールしていてとても楽しく出来ました。また、こういう機会を作ってしゃべってみるのも面白くていいかなぁと思います。自分の事も目いっぱいアピールできて良かったです。
★人に関心をもってもらえるのはうれしいことだと思った。だから質問の中から2つではなく全部に答えたかったです。偏愛マップについて話している人の顔の表情がいつもよりも明るくていいと思いました。相手の人を知ることは楽しい。
★偏愛マップの内容を聞いて質問とかすると、自分の好きな物(事)だから色々話をしてくれたし、表面的な好きな物だったのが、相手が答えてくれることで内面的な部分まで知る事が出来てよかったです。質問とかされて答えたりすると、みんなの反応がすごく楽しくて全部の事を話したくなりました。自分も相手もすごく笑顔で話してくれたのでやってよかったです。何回もやっていくうちにあまりしゃべらなかった人とも色々としゃべれたのでよかったです。最初は緊張したけど話していくうちに緊張がとけていってなんか色々と話したくなりました。またやりたいと思った。
★今回は前回と比べ、人数が多く楽しかったし、質問も色々な事を聞かれたりして、こたえるこちらも楽しかったです。
★今回は前回話を聞けなかった人の話も聞けてよかったです。質問する内容もみんな面白くて楽しかったです。3分ぐらいのスピーチだけでもたくさんの質問が出ておどろいた。みんなで話をひろげていくのが難しかったけど楽しかったです。
★みんな一人ひとりに好きなものがあって普段一緒にいるだけではわからないことが分かったので良かったです。また、このような機会があったらまたみんなで語りあいたいです。とても楽しかったです。
★たくさんの人に自分の好きなことを話すのはたのしいことなんだと気づいた。質問されることによってさらにそのことについてもっと話せることが嬉しかった。人を知るってことはいいことだなぁと思った。会話も盛り上がった。すごく楽しかったです。
★質問することによってなぜ好きかなど知れた。ほとんど話さないので、こういう機会で話すのは良いと思った。(意外とまじめに質問したり、答えたりしていた)少しお互いに気をつかっているところもあったけど、会話ができていたのでよかった。
★みんなそれぞれ好きなもの・ことがバラバラで楽しかった。自分の偏愛マップについて色々と質問してくれて嬉しかった。私はアイドルが好きですが、同じように芸人さんや歌手を溺愛している人とは、共感し合えるところがたくさんあって楽しかった。自分は他人の好きなものの話を聞くのが好きだということが分かった。
★せかされたりしてあまり良いコミュニケーションがとれなかったので少しつらかったです。
★自分の好きな物について話すと、質問されることも好きな物についてなので応えやすい。人は、自分の好きな物について他人に聞いてもらうことは喜びで、それらをさらに追求されることはあまり嫌ではないと思う。誰かと初めて会った時とか(バイトや学校で)私はまず何が好きですか?と聞いています。好きな事について話したり共感してもらうことは誰でもうれしいと思うので、これからのコミュニケーションに役立つのではないかと思います。あとはもっと自分の好きな物、事を充実させたいと思いました。
★意外とみんなこうして話し合っていると、たくさん共感できたり、その人の知りたいことに突っ込んで答えてくれるからさらに深くその人のことが知れるようになっているし、その仕組みがすごいと思った。
★自分の好きなことについて聞かれると嬉しくなるし、どんどん教えたくなりました。改めて質問されると、考えたことのなかった発想も浮かんで楽しかったです。
★1人1回の質問ができるので、必ず気になっていることや理由が聞けて良かった。好きなことを理解してもらえること聞けてよかった。話を広げるのが難しかった。
★まず、せっかく質問してくれたのに全てに答えられなくて申しわけなかった。正直、全てに答えたかった。グループで話し合って、お互いに好きなものが詳しくわかったので良かった。共感できるものがある人もいたし、たとえ共感できなくても、その人が自分の好きな事を話しているのを聞くのは楽しかったし、話に入り込めた気がした。自分の好きな物とか事だからお互いに楽しかったように思った。このグループでもっと好きな事について話をしたかった。


実践コミュニケーションをめぐって(3)「偏愛マップ」を用いたコミュニケーション

2011年12月25日 | 実践コミュニケーションの講義をめぐって
実践コミュニケーションの第2回目は、「偏愛マップ」によるワークを中心としたものであった。このワークは、斉藤孝の『コミュニケーション力 (岩波新書)』に紹介され、詳しい方法としては『偏愛マップ―キラいな人がいなくなる コミュニケーション・メソッド』で詳述された方法をもとにしている。一枚の紙に、自分が愛する物や事をできるだけ細かに具体的に記入する(方式は自由)。二人あるいは数人でそれを見せ合って、そこから自由に話題を選んで話すというシンプルなものである。しかし、これを行うと教室や会場がみごとに盛り上がり、これでいままで失敗したためしはないとのことである。

私も、読んで非常に興味をもったし、互いに話したこともあまりない学生たちもいるクラスで最初に行うには最適だろうと判断した。

以下は学生たちに渡したプリントから。齋藤のものを元にして私なりにアレンジしてある。

《「偏愛マップ」によるワークのやり方》
 
①「偏愛マップ」の作成
右のシートを使用。自分が偏愛するもの(好きなもの)を適当なジャンルごとに書き出してみよう。描き方のルールはないが、相手が見やすく、共通項を見つけやすい描き方がよい。
 
②座席の近くの人とペアを組む。互いにまだよく知らない人がよい。
 
③お互いの「偏愛マップ」を交換する。どちらが最初に質問する人になるかを決める。質問する人は、相手の「偏愛マップ」をじっくりみながら、自分と共通する部分、あるいは興味のある部分について質問をしていく。(5分ほど)
 
④ペアの役割を交換し、同じことを繰り返す。(5分ほど)

⑤ペアを変えて③・④を繰り返す。(以上は、斉藤孝『コミュニケーション力』『偏愛マップ』などをもとに作成)
 
《ワークのねらい》

①コミュニケーションがうまくいく基本は、相手の好きなことが何かを知り、それに耳を傾けること。相手が興味も関心もない話題を選んでも、相手は楽しくないし、盛り上がらない。興味のあるところから始めて、徐々にコミュニケーションを深める。

②自分が日々出会う人たちが「何を愛し、何に関心をもっているか」に関心をもつことは、相手をより深く理解することにつながる。相手が心の中にどんな「偏愛マップ」をもっているのか、つねに意識して関心をもち、それを、コミュニケーションを深める手がかりとしよう。

③互いに共通する「偏愛」が発見できれば、一気にコミュニケーションと理解が深まる。


《「偏愛マップ」を用いたワークの全体としての感想》

★人と会話するのは楽しいと思った。その人のことが少しでもくわしく知れた。

★すごい盛り上がりました。自己紹介よりもくわしく、相手の好きなことがわかって、意外と自分と同じものを好きだったりして、話が広がりやすかった。

★共感できる人がいて話をしていて楽しかった。このマップを通じて、今まであまり話さなかった子とも仲良くなれた気がする。共通のものに関して今度はなしてみたいと思った。

★好きなもので初めて話す人のこともよくわかったので楽しかったです。

★結構仲の良い人とペアになったりしたが、意外と知らないことともありました。真剣にそして笑顔で自分の話を聞いてくれて嬉しかった。好きなことがかぶっていたりすると、それもまた嬉しくなる。

★聞くと、好きなことだから色んなことをしってて話してくれたので楽しく出来ました。

★仲良くない人とも仲良しになれた気がした。質問しあうことでコミュニケーションがとれた。

★全く話したことのない人たちと話してみて、とても色々なことや意外な共通点があったりして楽しかったです。

★お互いに、好きなものの話は楽しいと思うし、好きなものが一緒だと、もっとうれしいと思う。普段しゃべったことのない子でも、偏愛マップを見せ合いながらだとしゃべることができた。

★いつも話しかけずらいと思っていた人とでも、ペアになると意外と話せた。相手の好きなことを聞くと私も楽しい気分になれた。

★話はどんどん広がるんだと思いました。友達の知らない部分が見れてうれしかった。

★話したことがある人とでも知らなかったことがたくさんあってとても面白かった!ちょっと仲良くなれたような気がする。意外に共通点があって盛り上がる点がって楽しかった。

★そこまで親しくない友達の好きなもの、考えることが知れてよかった。意外な共通点や違う意見などの交換が楽しかった。

★みんなの、見ているだけでは分からない所を知れて楽しかったです。他の人とももっとやってみたいです。

★自分とは違う趣味を持っているけど、話が盛り上がった。他人に関心を持つことは大切。

★相手の知らなかった意外な一面を知ることができた。共通点もあって話しがとてももりあがった。いろいろオススメしてもらえてためしてみたいものがたくさんできました。

学生に配布したプリントは、以下を参照のこと。実践コミュニケーション(2)

実践コミュニケーションをめぐって(2)

2011年12月14日 | 実践コミュニケーションの講義をめぐって
以下は、Noboruの「実践コミュニケーション」の第一回目の内容の紹介である。すでに一回目から、相互の自己紹介をかねたかんたんなワークを学生同士でやってもらった。そのワークを行っての感想を、時間の最後の10分ほどで書いてもらったので、それも紹介したい。

まずは、私の手短な自己紹介をする。そのあと、学生相互の自己紹介をしてもらったのだが、ふつうの自己紹介ではでは面白くないので次のような形にした。(学生同士はある程度知り合っており、自己紹介も何度か行っているかもしれないので)

《ワークのやり方》

「なりきり自己紹介」
①AさんがBさんに自己紹介、BさんはAさんにインタビューしてさらにAさんの情報を得る。立場を入れ替えて逆も行う。

②グループの中でAさんはBさんになったつもりでBさんの紹介をする。BさんはAさんになったつもりでAさんの紹介をする。Cさん、Dさんも同様に行う。
 ※できるだけ、話し方、言葉遣い、しぐさ、態度なども似せて行う。

③グループの中で、この「なりきり自己紹介」を行っての感想を述べ合う。

《ワークのねらい》
インタビューをすることで、相手が言おうとすることを相手中心に聞き取る訓練、相手が話しやすいように聞く質問しつつ聞き取る訓練、相手の立場にたって聴く訓練などになる。また、他の人が自分になりきって自分の紹介をしているのを見て、自分を客観視、自己理解につながる。

《「なりきり」自己紹介を行って全体としての感想》(一部)
★自己紹介の内容がそれぞれ面白かった。自己主張が強い人や自分のことをしっかり把握している人は自己紹介の内容が濃いと思った。
★普通に自己紹介するより楽しかったです。盛り上がったー。
★みんなにむかって一人の人のことを紹介するコトは難しいけどたのしいことだと思った。いろんな人の話が聞けてたのしかった。
★他人が自分の自己紹介をするのを見るのは恥ずかしいけど、みんなもきっとそんな感じなのだと思った。コミュニケーションって大事だと思った。
★自分の自己紹介をするよりも、難しく感じた。でも、これで、相手が自分をどう思っているかがわかるから良いと思った。
★実践コミュニケーションだけあって、あまり知らない人話すのは緊張するけど、社会に出る練習として今日は良かったと思います。

《私自身の感想》
第一回目ということもあり、私自身かなり緊張した。学生もみな真面目に取り組み、一人終わるごとに拍手が出たりして盛り上がりもあった。この調子なら今後もうまくいきそうだと、次回からが楽しみになった。

実践コミュニケーションをめぐって(1)

2011年12月03日 | 実践コミュニケーションの講義をめぐって
私、Noboruは、東京都内のある短大で今年の9月より半期15回にわたって、実践コミュニケーションという講義を持つことになった。講義といってもコミュニケーションをめぐる実習が中心であり、参加学生は20名弱である。

この講義(実習)は、このブログの中心テーマである、いわゆる「原体験」とは直接つながるものではないが、15回のうち後半の3回ほどで、ある程度つながりのある実習を行っている。それで、その前の実習と関連させながらこのブログで報告することにも意味があると思われる。

学生に向けたシラバスに書いた学習目標および内容は次の通りである。

『人は、人や社会とのかかわりの中で成長し、大人となっていきます。
かかわりの手段は、聴き、話し、書き、読むというコミュニケーションです。
自分自身の日常のコミュニケーションのあり方を、教室で演習によって振り返り、
参加者同士で反省し合うと、ふだんは見えなかった問題点が見えてきます。
問題点に気づくとこれまで以上に豊かで深いコミュニケーションが可能になります。
クラスへの参加者が相互に学び、教え合って成長していくのを援助・促進する、
それが「実践コミュニケーション」の目標です。』

現時点ですでに15回中、11回の講義を終えている。これまでの講義(実習)内容をかんたんに示すと、以下の通りである。

第1回:導入‥‥「なりきり」自己紹介→相手の立場にたって聴く、話す。聴きながらメモする。

第2回:聴く技術(1)‥‥「偏愛マップ」での対話→相手が愛し関心をもつことで話すと対話が深まる。日常でも相手の脳内「偏愛マップ」を探り想像しつつ話す。

第3回:聴く技術(2)‥‥「偏愛マップ」でグループ→相手の背景にある経験を引き出す質問で対話が深まる。

第4回:聴く技術(3)‥‥内容のない雑談が、人との距離を縮めて人間関係の幅を広げる。「元気マップ」を用いて深い「傾聴」の仕方を学ぶ。受容と支持。

第5回:自己理解と話す・聴く(1)‥‥「元気マップ」に小さな悩みを付け加えて話す。深い「傾聴」→相手の気持ちに沿って、気持ちや思いを引き出す質問をする。

第6回:自己理解と話す・聴く(2)‥‥ペアで「喜怒哀楽+気」を用いて交代で自分を語る。聞き手はメモを取りつつ「確認」、グループで確認した内容を語り、それについて本人が「質問」を受ける。

第7回:自己理解と話す・聴く(3)‥‥三人で組んで深い「傾聴」の練習を行い、一人が観察者としてチェックをする。

第8回:伝える技術(1)‥‥相手の長所を理解し、それを的確に伝えるグループワーク

第9回:伝える技術(2)‥‥感動した作品についてグループの中で伝えあうワーク。

第10回:伝える技術(3)‥‥感動した作品について全体の前で一人ひとりがスピーチする。

第11回:伝える技術(4)‥‥「人生に何があったかを振り返るシート」を作成し、これまでで自分にとってもっとも重要だった体験を探る。ペアを組んで話す人、聴く人を役割交代しつつ、自己探求と傾聴を行う。

(現時点での実施はここまで)

第12回:伝える技術(5)‥‥作成した「人生に何があったかを振り返るシート」に基づいて、自分にとってもっとも重要だった体験を文章にまとめる。ペアを組んで、その体験について再度、話し、聴く。

第13回:伝える技術(6)‥‥もっとも重要だった体験について書いた原稿をスピーチ用に練り直し、一人ひとりがスピーチを行う。

第14回:グループにおける話す・聴く

第15回:まとめ

ということで最近行った第11回と、次の二回(第12回と13回)が、自分にとってもっとも重要だった体験について探求し、発表するということで「原体験」の問題につながりがある。

この講義(実習)全体は、実社会やビジネス面でのコミュニケーション力を養成するというより、人間的な意味でのより深いコミュニケーションをし合い、それを相互の成長につなげてくということを狙いとしている。それゆえ、お互いの原体験に触れ、そのような深い体験を共感的に理解しあえるということは、この「実践コミュニケーション」という講座の中でもかなり重要な意味をもってくるのだ。

私としては、初回から段階を踏んでそのような深いコミュニケーションにまで進んでもらいたいという願いをもってこの講義(実習)に取り組んできた。これは私にとっても初めての試みだったので必ずしも私の狙い通りに学生たちが実践し、理解を深めているとは言えない。そのあたりを、私自身の反省も含めて、実際に行ったことや学生の反応を正直に語りながら、初回から紹介していきたい。