玄文講

日記

カサゴ釣り

2005-04-03 22:03:13 | 個人的記録
陸の見えない沖合いで小さな船に寝そべりながら、鼻が日射しにやかれている。
人の通る隙間もない狭い船の中では私以外の乗客も寝そべっている。

小刻みに振動している穏やかな小波が周囲360度にわたってどこまでも広がり、四月初めとは思えない陽気のおかげで持ってきたレインコートもブラケットも脱ぎ捨てた。

たまに向こうを通る赤く錆びた中型の工業船が白い蒸気を吹き上げながら通り過ぎ、そいつの作った波が小舟をハンモックのように上下に激しく揺らす。

私は今日、千葉県の富浦海岸まで海釣りに来ていた。ねらう獲物はカサゴである。
それはおこぜのような不細工な赤色の魚で、鋭い背びれを持ち、横に大きく開いた口はかまれるとケガをする。

釣り方は簡単だ。生きたイワシの下顎から鼻にかけて針を通し、釣りさおを水深30メートルの底までたらし、小刻みに上下させる。
引きは強いのでかかればすぐに分かるから、急いで引き上げればよい。

私のバケツの中には既に五匹のカサゴが泳いでおり、先ほどからカサゴは急に釣れなくなった。
船頭が言うには「波が穏やかになりすぎた」からだそうだ。

釣れない時は飲むに限る。
私はキムチをつまみにビールを飲みながら、釣りさおをたらした。
水鳥が物欲しげにうろついているので、サバの切り身や死んだイワシを放り投げてやる。するとキューと鳴きながら翼を広げて寄って来る。

やがて私は早起きしたせいもあるのだが、眠くなり寝そべったのである。

気がつくと日は真上に来ていた。
船はいつの間にか陸が見える所まで引き返しており、今日の釣りは終わった。


カサゴは身が引き締まってプリプリとしており、それらを私は煮つけにして食べた。
久し振りの豪勢な食事であった。