ガエル記

本・映画備忘録と「思うこと」の記録

「この子の七つのお祝いに」続

2018-12-21 21:24:31 | 映画


昼間ちょこちょこ考えていました。
本作・真弓と麻矢は今だったら人気マスコットになれただろう、と。
前回も書いたようにこの映画が公開された当時はそれほどの人気が出た映画でもなかったと思うし、内容も暗く重く岸田今日子=真弓と岩下志麻=麻矢の演技がぶっ飛んでいる感はあってもさすがに悲惨でトラウマだという意見が多かったようです。
だがしかし今の風潮としては陰惨なキャラクターであればあるほどアイドルの要素となります。二人の女性の壮絶な人生と振り切れた狂気はかなり強力な魅力を持つマスコットになり得ましょう。母田(おもだ)くんもなかなかのキャラクターといえますね。
真弓の武器は針で麻矢の武器はカンナ棒です。

こういう本来なら笑えない陰惨な運命を背負ったキャラクターを逆に面白いと感じてマスコットにしてしまうという現在の風潮は良いのか悪いのか。いや、良いことなのだろうと思います。皆から嫌われる化け物も怪獣も変質者もどこかに愛する部分を見つけてアイドル化してしまうのですから。
とはいえこの風潮は今始まったわけではありませんね。悲劇の運命のフランケンシュタインの怪物も恐ろしいドラキュラ伯爵も情け容赦ないゴジラもいつしか皆が愛する存在へと変わっていったのですから。
そうした不遇な存在を忌み嫌うより共感を持ちマスコットにしてしまう気持ちは悪いものではない気がします。
ペニーワイズもゾンビも今はみんなの友達です。
真弓と麻矢の二次創作ができてマスコット化するような時代であったら少しは救われるのではないでしょうか。

それにしても、と思います。
かつての女性の描き方はなんとも切ないです。
麻矢が仇と憎んだ酷い父親・高橋は実は良い人で男たちは皆善人であり、麻矢の育ての親以外の女性は皆嫌な人格に描かれている作品です。
そもそも真弓と高橋は戦後の引き上げで仕方なく夫婦になった関係なのにどうして真弓はここまで高橋に固執するのか。そのあたりの説明がないのです。
女性はこういうもの、という意識がこの映画の悲劇のような気がします。

「この子の七つのお祝いに」増村保造

2018-12-21 05:30:30 | 映画


久しぶりに映画見ました。この映画は遠い昔に観たきりでした。占いをする映画だった、くらいにしか覚えてなかったのでまるきり理解してなかったのでしょうね。
アマゾンプライムにあってので少し見てつまらなかったら止めようと思っていたのについつい引きずり込まれてしまいました。増村保造監督にはかなりはまって観た時期があるのでそんなにつまらないはずはない、とは思っていたのですが。その時期にこの作品はなぜか見返していないのではないかと思います。何もかも不確かですが。

この作品、なかなか奇天烈な印象を受けてしまうので他の方の批評などが気になったのですが、どういうわけか批評も奇天烈なものが多いのです。なぜかふざけた感じのレビューばかりであるのがおかしかったですね。そういう気持ちにさせてしまう映画なのかもしれません。
確かに推理ドラマもしくはホラー映画としての印象よりも岸田今日子・岩下志麻の演技のほうが心に残ってしまう凄まじさがあるのです。男優たちは皆控えめでまっとうなのに女優たちの演技が過剰なのはどうしてなのか。ドラマストーリーも男性たちが一様に正常なのに女性たちは気ぐるいなのはなぜなのか。そういう部分も考えてみる要素があると思います。


以下ネタバレになります。




何故上でと男性は正常なのに女性たちばかりが奇天烈なほどおかしい、と書いたのかと言うと、今現在の人は「?」となるかもしれませんが、昭和の時代多くの作品で「女性というのは男性と違って感情的に過剰で自分で抑えることができないのだ」というような意識がかなり強くあって設定としてもよく扱われていたのです。今の女性たちなら反駁することでしょうが、「女性はすぐヒステリーを起こす。男に捨てられた女性はおかしな行動をとりやすい」というような事柄です。オールドミス(年を取った独身女性)は嫉妬とヒステリーで手は付けられない、といったようなことです。今はオールドミスだらけですからそんな言葉も死んでしまいました。嫉妬とヒステリーはむしろ年配男性に多く見られるようにも思います。これも偏見ですが。

この映画はそういう意識が強く表れていると思えます。ただしこの映画が上映されたのは1982年です。昭和57年ですね。作品としては出来不出来もあるでしょうが、昭和も末期なので女性の描き方としては古臭く見えてしまったのではないでしょうか。
設定として戦時中が絡んでいるから、という意味ではなく女性の描き方として女の怨念という題材は興味を持たれるものではなかったのでは、と思われます。
増村保造監督の映画の遺作となる本作ですが、つい引き込まれてしまう面白さは感じられますが、肝心の女の怨念の描写に笑ってしまう人が多いのは時代の違いでもあり、むしろそうなってよかったとも言えますね。
今だったら更に進化していて、岸田今日子さん演じる真弓が人気者になってしまうほどのキャラ立ちかもしれません。今はこういう過激な精神のキャラはむしろマスコットとなってしまうのですよね。「IT」のペニーワイズのような。

女性たちで唯一正常で心優しいのが幼い麻矢(岩下志麻)を引き取って育てた当時まだ女学生だった結城昌代(中原ひとみ)でこの女性の存在があってほっとしました。

ここで時間が来ましたのでまた続き書きますw